「グレーをやらせる会社はブラック」とはどういうことか
今回のテーマは、たいぞーさん自身が「少し強い言い方」と前置きしたうえで切り出したものです。
これは現場で働く上で避けて通れない、とても大切なテーマだと話されています。
そもそも医療現場には、前提として「グレー」というものが存在します。医療の仕事は、法律や制度によって「やるべき仕事」「やってはいけない仕事」が数多く規定されているからです。
なぜ医療現場には「グレーゾーン」が生まれるのか
ただし、法律や制度で全ての業務をガチガチに固めてしまうと、現場が全く動けなくなってしまいます。
現場には医師、看護師、薬剤師など多くの専門家が働いていて、プロでなければ見えない視点や、患者の状態に応じた臨機応変な判断が必要になるからです。
そのため法律や制度は、全てを規定するのではなく、大枠として道筋を示すにとどめています。あとはプロの判断、現場の判断に委ねられる「解釈の余地がある領域」が必ず存在します。
これがいわゆるグレーゾーンです。そこがどういう仕事なのかを考えながら、プロとしての責任のもとで動く。それがプロフェッショナルの仕事のあり方だとたいぞーさんは説明します。
ここまでは医療現場の当たり前の前提だといいます。問題はその次、グレーなものをどう扱っているかにあると話されています。
組織がやるべきは「グレーをグレーのまま渡さない」こと
組織としてやるべきことは明確だといいます。
たいぞーさんは前職で組織運営に関わる仕事もしていました。グレーな部分をきちんと見つめて仕事を組み立てることは、患者にしっかりした仕事を届ける上でとても大切だと振り返ります。
具体的には、法律や制度の全体像を踏まえることが必要になります。関連する法律、制度、通知、調剤報酬改定の仕組みなどを踏まえたうえで、その業務が「ホワイトなものである」と説明できる状態にしてから現場に落とし込む。
そして、その根拠をきちんと持ったうえで現場に実践してもらう。ここがとても大切だと強調されています。
15年前、調剤事務に薬の取り揃えを任せるか悩んだ経験
たいぞーさんは、この考え方を象徴する自身の経験を紹介します。15年前ほどのことだといいます。
当時悩んでいたのは、調剤事務スタッフが薬を取り揃えるという業務を運用するかどうかでした。
今でこそ2019年の0402通知によって、薬の取り揃えは薬学的な専門性を介さず、薬剤師以外のスタッフに任せられる業務の代表と示されています。
しかし当時はそうした明確な通知がなく、調剤事務に調剤の一端を担わせるのは法律違反ではないか、という声もある状況でした。
薬剤師法や薬局ビジョンから読み解いた「ホワイトの根拠」
たいぞーさんは、様々な情報を組み合わせて総合的に判断したといいます。
参考にしたのは、薬剤師法第一条や第二十五条、調剤報酬のあり方、日本薬剤師会が示す調剤指針、厚生労働省の「患者のための薬局ビジョン」などです。
そこから考えたのは、薬剤師がどこにリソースを割いて仕事をするのか、という問いでした。薬剤師が患者や地域に関われる時間は限られています。
限られた時間の中で「何をして何をやらないか」を決めなければ、本当にやるべきことを実践できないまま終わってしまう。それは十分にありえることだといいます。
棚から薬を取るという専門性の小さい仕事に薬剤師が時間と労力を費やすことは、本来もっと専門性を生かして患者に健康という価値を届けられる時間を失っている、とたいぞーさんは考えました。
だからこそ、薬剤師が専門性を最大限に発揮できる場所で仕事をする。そのために専門性の少ない部分を切り離すことは、国民の健康な生活を守ること、つまり薬剤師法第一条を達成することにもつながると整理しました。
法律・制度・通知などから根拠と目的を整理し、説明できる状態にしてから現場に渡す
「多分大丈夫」「他もやってるから」と、根拠なく判断を現場に丸投げする
こうして整理された仕事は、表面的にはグレーの仕事に見えるかもしれません。しかしその根幹には、ホワイトなものとして整理された根拠と目的があると話されています。
「多分大丈夫」で回す現場が、なぜ危険なのか
一方で、根拠なく現場にやらせてしまうケースがあれば、それは完全なブラックだといいます。
多分大丈夫とか、他もやってるから大丈夫だよとか、とりあえず現場を回すためにというような状態で、根拠もなく現場にやらせてしまうケース
その判断を現場に丸投げしてしまっている。これはとても大きな問題だと思います
だからこそ見るべきポイントはシンプルだといいます。その業務にきちんとした根拠があるか、そしてその根拠を説明できる状態になっているか。ここが担保できていれば、解釈の中での仕事は怖いものではないと話されています。
むしろ現場に適した質の高い医療を実践することにもつながる。逆にここが曖昧なまま運用されれば、構造的にとても危険なものになるといいます。
この問いを持てるかどうかが、個人としての質も、組織としての質も大きく分けるとたいぞーさんは締めくくっています。
まとめ
医療現場には解釈の余地がある「グレーゾーン」が必ず存在します。それをグレーのまま現場に丸投げするか、根拠を整理してホワイトな状態にしてから渡すか。その分かれ目が、組織がブラックかホワイトかを決めるという回でした。
- 医療現場には法律や制度で規定しきれない「グレーゾーン」が必ず存在する
- 組織の責任は、グレーをグレーのまま現場に渡さず、根拠を整理してから落とし込むこと
- たいぞーさんは15年前、調剤事務に薬の取り揃えを任せる判断を、薬剤師法や薬局ビジョンなどから根拠づけた
- 「多分大丈夫」「他もやってるから」で判断を現場に丸投げするのがブラックな運用
- 「なぜ許容されているのか、根拠は何か」と問える力が、個人と組織の質を分ける


