入院時の情報提供は何を渡すもの?
在宅医療や外来で患者さんに関わっていると、どうしても入院が必要になる場面が出てきます。そのとき、薬局から病院へ患者さんの情報を提供することがあります。
たいぞーさんが挙げる基本の情報は、次の3つです。
- 今飲んでいる薬がどのような薬なのか
- 直近の処方内容に変化があったのか、なかったのか
- 薬局で把握している直近の患者さんの状態の推移
たいぞーさんは、これらを共有するだけでも病院の薬剤師は助かる、という声を聞いたことがあるといいます。
(情報提供を)積極的に薬局から病院に行っていくというのは、それだけでも患者さんの治療に貢献するだけの価値があるなということを思います。
入院中は「恵まれた環境」と言える理由
たいぞーさんはここで立ち止まり、入院時の情報提供をあらためて考え直します。注目したのは、入院中に患者さんが置かれる環境です。
入院中は、外来や在宅よりも圧倒的に多くの医療者に囲まれ、患者さんの状態を密に観察してもらえます。看護師や医師、薬剤師が常にそばにいて、変化があればすぐに気づける環境です。
これ(入院中の環境)はとても、医療を提供する上では恵まれた環境だなというふうに思います。
たいぞーさんは、そうした環境だからこそ治療薬の見直しや調整を試みやすい状況でもあるのではないか、と考えています。
患者さんが自身で過ごす時間が発生し、薬を変えた後の観察タイミングを調整しにくい
看護師・医師・薬剤師が常にそばにおり、変化にすぐ気づけるため、薬の見直しや調整を試みやすい
この環境の違いに目を向けると、薬局からはもう一歩踏み込んだ情報を渡せるのではないか、というのがたいぞーさんの問題提起です。渡せる情報は2つあるといいます。
外来では踏み切れなかった減薬を、入院中に託す
1つ目は、外来や在宅では踏み切れなかった減薬についての判断を、病院と共有することです。
薬局で関わる中で、減量・調整・中止を検討できそうな薬があっても、外来や在宅では患者さんが自身で過ごす時間がどうしても発生します。そのため中止後の経過をうまく観察できず、判断に踏み切れない薬剤が治療の中にはあるのではないか、とたいぞーさんは話します。
一方で入院中なら、密に経過を追えます。踏み切れなかった薬剤の減量や中止にも挑戦しやすくなる、というのがたいぞーさんの見立てです。
そこで、薬局からの情報提供に次のような一言を添えることが提案されています。
この薬は減量や中止ということが検討できるのではないかと思っていたけども、一歩踏み出し切れずに関わりきれてなかったところなので、
もし可能であれば、入院中にそういったことも検討いただければ幸いです
たいぞーさんは、こうした情報を添えることで、情報提供の価値はぐんと高くなるのではないかと考えています。
外来・在宅で気づく
減量・中止を検討できそうな薬に薬局が気づく
踏み切れない
中止後の経過を観察しにくく、判断を保留する
情報提供で託す
入院時に「入院中に検討いただければ」と添えて病院へ伝える
入院中に試みる
密に経過を追える環境で減量・中止を検討しやすくなる
急な入院に、薬が関わっていないか
2つ目は、急変による入院に薬剤が関わっていないかを、薬学的な視点で読み解いて伝えることです。入院には予定されたものもありますが、状態が急変して入院する場面もあります。
たいぞーさんが挙げる例は、誤嚥性肺炎で急に入院することになった患者さんです。
その患者さんが抗コリン作用 ── 神経伝達物質アセチルコリンの働きを抑える作用。口の渇き、便秘、排尿障害などの副作用を起こすことがあり、高齢者では特に注意が必要とされますのある薬を複数飲んでいて唾液分泌が低下している可能性や、嚥下機能を落とす薬剤を使っている可能性も、もしかしたらあるかもしれません。
こうした薬剤の存在は、もちろん病院でも精査されるものだとたいぞーさんは前置きします。そのうえで、薬局から「この薬剤も原因の一つかもしれない」という情報を渡しておけば、入院時の介入がよりスムーズになるのではないかと話しています。
たいぞーさんは、これが入院時の情報提供において薬剤師にできることだ、とまとめています。
退院後までつながる薬薬連携へ
薬局が踏み込んだ情報を渡すことは、入院中の病院での介入につながります。たいぞーさんはさらにその先、退院して外来や在宅に戻る場面にも目を向けます。
退院のタイミングで病院の薬剤師から薬局の薬剤師へ情報が共有されれば、患者さんの治療はより連続性を持ってつながったものになっていく、とたいぞーさんは考えています。
入院時
薬局から病院へ、薬学的視点を添えた情報を提供する
入院中
病院で薬の見直しや介入が行われる
退院時
病院の薬剤師から薬局の薬剤師へ情報を共有する
地域での生活
連続性のある治療を薬局が引き継ぐ
こうした往復によって、地域で暮らす患者さんに、病院と薬局の薬剤師が連携して質の高い治療を届けられます。たいぞーさんは、これが質の高い薬薬連携につながるのではないかと話しています。
たいぞーさんは、今回の話が入院時の情報提供に薬学的視点を添えることを考えるきっかけになれば嬉しい、と締めくくっています。
まとめ
入院時の情報提供は、薬の内容や処方の変化、状態の推移を伝えるだけでも価値があります。たいぞーさんは、入院中の観察しやすい環境を踏まえ、薬局からさらに踏み込んだ情報を渡すことを提案しています。
- 入院中は多くの医療者が密に観察できるため、薬の見直しや調整を試みやすい環境です
- 外来・在宅では踏み切れなかった減量や中止の検討を、情報提供に添えて病院に託せます
- 急変による入院では、抗コリン作用など薬剤が関わっている可能性を薬学的に伝えられます
- 退院時に病院から薬局へ情報が戻ることで、治療の連続性と質の高い薬薬連携が生まれます



