日本薬剤師会学術大会で何を発表するのか
たいぞーさんは、体育の日の連休に新潟県で開催される日本薬剤師会学術大会に参加し、自身が経験した症例をポスター発表する予定だと話しています。
たいぞーさんが発表する症例は、薬局の店頭で患者さんから体調の相談を受けた事例です。患者さんの状態を薬学的にアセスメントし、薬の影響ではなさそうだと判断したうえで、病院でちゃんと診てもらうよう受診勧奨 ── 患者の訴えや状態から、医療機関での診察が必要と判断した場合に、受診を勧めること。薬局薬剤師の重要な役割の一つとされていますを行いました。
この介入をきっかけに、それまで医療機関ごとに近くの薬局をバラバラに使っていた患者さんが、たいぞーさんの勤める薬局をかかりつけ薬局 ── 患者が日常的に利用し、服薬状況をまとめて把握してもらう薬局のこと。複数の医療機関の処方箋を一か所に集めることで、重複や相互作用の確認がしやすくなりますとして選ぶようになったといいます。
それぞれの医療機関の近くの薬局をバラバラに利用していた
いつもと違うクリニックや病院にかかった際も、たいぞーさんの薬局に処方箋を持ち込むようになった
たいぞーさんは、薬剤師としての関わり方が、患者さんが薬局をかかりつけに選ぶという行動の変化につながったのではないかと考え、この症例を発表するそうです。
受診勧奨の見極めはなぜ難しいのか?
薬局に勤めていると、今回発表する症例に限らず、体調の相談を受ける場面は実際によくあるとたいぞーさんは話します。その際には、服用中の薬を確認して判断するとともに、受診勧奨も大事な役割になります。
受診勧奨の見極めを誤ると、本来なら早く治療できたはずの病気の治療開始が遅れるリスクがあります。たいぞーさんは、受診勧奨の見極めを薬剤師の「腕の見せ所」としつつ、判断基準が難しいという声もよく聞くといいます。
(受診勧奨を)100パーセントの自信を持ってバッチリですというふうに言えるかというと、そんなことももちろんなく、手探りの中でやっていることではあるんですけども、
僕の中では一つ判断基準みたいなものがあって、
たいぞーさん自身も完璧ではないと断ったうえで、自分なりの判断基準を持っていると受診勧奨の判断がしやすくなるのではないかと考え、その基準を紹介しています。
まず「薬剤師が対処できるか」を見極める
体調不良の相談を受けると、薬剤師は受診勧奨をするか、自分が話を聞いて関わるかの判断を求められます。たいぞーさんは、いきなりその判断をしようとすると難しいと話します。
たいぞーさんが例に挙げるのは、腹痛、頭痛、ふらつきやめまいなど、患者さんがよく訴える症状です。こうした症状を聞いたら、まずその人が今服用している薬を改めて確認するといいます。
次に、服用中の薬がその症状の要因になっていないかを考えます。薬の作用機序 ── 薬が体の中でどのような仕組みで効果を発揮するかということ。作用機序がわかると、どんな副作用や症状が起こりうるかを予測しやすくなりますを踏まえれば、ある症状を引き起こしうるかは薬剤師がある程度予想できる、というのがたいぞーさんの考えです。
薬が症状を起こす場合には、効果が十分に出ていないことによる症状もあれば、いわゆる副作用として起こる症状もあります。たいぞーさんは、その両方の可能性をきちんと見極めることが必要だとしています。
薬の影響かどうかで判断はどう分かれるのか?
たいぞーさんの判断基準では、薬が症状の要因になっていないとわかれば、その症状は薬剤師が対応できる範疇の外にある可能性が高いと考えます。その場合は、受診勧奨など適切な専門家へつなぎます。
一方、薬の作用機序から見て症状の要因になりうる場合でも、たいぞーさんはすぐに薬のせいと決めつけません。これまで継続して飲んでいた薬の効果が急に過剰になったり不十分になったりするのは、何もなく起こるとは考えにくいからです。
そこで、薬の作用を変動させる要因があったかどうかを確かめます。要因があれば、それを取り除けば元の状態に戻り、回復が期待できるといいます。
変動させる要因が見当たらない場合は、作用機序上は症状を起こしうる薬であっても、薬が影響している可能性は低いと判断します。その場合も、病院への受診勧奨が必要な状態だと考えられます。
服用薬の確認
患者さんが今服用している薬を改めて確認する
作用機序から検討
その薬が訴えの症状(効果不足・副作用)を起こしうるかを考える
起こしえない場合
薬剤師の対応範囲外の可能性が高く、受診勧奨する
起こしうる場合
作用を変動させる要因の有無を確かめる
要因の有無で判断
要因があれば取り除いて回復を期待し、要因がなければ受診勧奨する
丸投げではない受診勧奨とは
たいぞーさんは、患者さんの状態を見ていきなり「自分たちが対応すべきか否か」を考えるのは非常に難しいと繰り返します。だからこそ、まず薬学の専門性を生かし、自分たちにできる領域の中で判断を行うことを勧めています。
薬学の範囲で判断を重ねると、問題が判断できる範疇の内側か外側かが見極められるようになります。そのうえで、なぜ病院に行くよう勧めるのかを、プロとしての見立てとともに伝えられるとたいぞーさんは話します。
ただただ、それは病院でドクターに相談してくださいというふうに、ドクターに丸投げするような対応ではなく、やれることをやった上で、だからこれはここじゃないよと。
相談先がこっちじゃないと思うんだということをきちんと説明をした上で対応する。
たいぞーさんによれば、やれることをやった上での受診勧奨は、患者さんの安心にもつながり、受診する動機付けにもなります。その結果、患者さんがつながるべきところにきちんとつながる対応になると考えられています。
「病院でドクターに相談してください」とだけ伝える
薬学的に検討したうえで、なぜ相談先が病院なのかを説明して勧める
たいぞーさんは、詳しい内容はポスター番号42番の発表で扱っているとし、兵庫県から遠い新潟に来られる人にはぜひ抄録から探して見に来てほしいと呼びかけています。
専門性を生かし続ける薬剤師のキャリアは作れるか?
番組の最後に、たいぞーさんは翌年の2月14日に兵庫県姫路市で講演会を主催する予定だと告知しています。講演会では、薬学の専門性を生かすことで薬剤師が患者さんの薬物治療にどうプラスの関わりができるかを語りたいといいます。
講演会のもう一つのテーマは、薬剤師のキャリアの悩みです。薬剤師のキャリアアップは、マネジメント職に就く道が一般的なルートになっているとたいぞーさんは話します。
しかし、マネジメント職に就くと、専門性を生かして患者さんに関わる仕事の割合は減っていきます。たいぞーさんはこのジレンマを、どう解消すればよいかという問いとして捉えています。
薬剤師がプロとして腕を磨き続け、患者さんに関わり続ける。そしてそれがきちんとキャリアアップとして自分の収入にもつながって、
生活が豊かになることにもつながっていく。そういった仕組みってなんとか作れないものなんだろうかな
姫路の講演会について、話す内容はこれから精査するため変わる可能性があり、時間や詳細な会場も未定だといいます。たいぞーさんは、決まり次第この放送で伝えるとしています。
まとめ
この回でたいぞーさんが示したのは、受診勧奨の判断を、まず「薬が症状に影響しているか」という薬剤師の専門領域から考える方法です。薬学的な見立てがあるからこそ、患者さんに理由を説明でき、安心と受診の動機付けにつながると語られています。
- 受診勧奨の前に、服用中の薬が症状の要因になりうるかを作用機序から検討する
- 薬が要因になりうる場合も、作用を変動させる要因が無ければ受診勧奨を考える
- 見立てを説明する受診勧奨は、ドクターへの丸投げと違い患者さんの安心につながる
- 症例では、こうした関わりが患者さんがかかりつけ薬局を選ぶ変化につながった
- 2月14日の姫路での講演会では、専門性を生かし続ける薬剤師のキャリアも語る予定



