薬剤師は「どれだけ覚えているか」で測られがち
たいぞーさんは、薬局で在宅医療や外来対応にあたりながら、新人育成や研修講師、勉強会やセミナーの開催、オンラインサロン運営にも取り組んでいます。
この配信では「薬学で患者を語る」というテーマで、現場で感じたことや薬剤師という仕事の面白さを共有しています。今回のテーマは知識の上手な使い方です。
現場で働いていると、どれだけ知識を蓄えているか、どれだけ薬のことを覚えているかが、薬剤師の能力として測られる場面があると、たいぞーさんは感じています。
薬の副作用は何か、薬同士の組み合わせで相互作用は大丈夫か、疾患の禁忌にこの患者さんは該当しないか。こうしたことを考えるうえで、確かに「知っている」ことはとても大事だと話します。
記憶に頼ることの限界とリスク
一方で、たいぞーさんは、知っていること自体は大事でも、記憶していることに頼るのには限界とリスクがつきまとうと指摘します。
たとえば1年目と、10年目・20年目の薬剤師では、頭の中に記憶している知識の量や経験に、どうしても差が出てきます。
では、経験が乏しい若手ならミスをしても仕方ないかというと、そうではないと言います。記憶などの不完全なものを頼りにして抜けや漏れが生じ、曖昧なまま対応してリスクが生じた場合、経験年数を言い訳にはできないという立場です。
確か大丈夫だったはずとか、この前は問題なかったような気がするというようなことで判断するというのは、新人であれ、ベテランであれ、とても危険な判断だと思います。
知識はいらないのか、それとも
記憶に基づく判断が危ないなら、知識そのものが不要なのかというと、それはまた違う話だとたいぞーさんは言います。
むしろ逆で、知識は必要だと考えています。ただし、その使い方がポイントになると話します。
知識は「ゴール」ではなく「思考の入り口」
たいぞーさんの考える知識の役割は、すべてを覚えておき、その覚えていることをそのまま使う、というものではありません。
どこを見ればいいのか、その情報の元はどこにあったのか。そして、目の前の処方内容や患者さんの状態に対して「あれ?」という違和感や問題点に気づく。そうした場面でこそ知識は役立つと言います。
処方内容を見て「この組み合わせはどうなのか」と考えたり、症状や疾患に対して「この薬で大丈夫か」と違和感を持ったり、「確かあの情報源に載っていたはず」と情報へ最短でアクセスするきっかけになる。これが知識の大きな役割だと話します。
つまり知識は、物事のゴールラインで使うものというより、考えを巡らす入り口に使っていくのが上手な使い方だという整理です。
すべてを覚え、記憶している知識をそのまま答えに使う
違和感に気づき、正しい情報源へ最短でたどり着くきっかけにする
新人とベテランの差はどこにあるか
たいぞーさんは、新人とベテランの差は、知識を覚えているか覚えていないかの差ではないと言います。
知識があることで、ベテランはよりスムーズに情報源にアクセスし、最短で患者さんに最適なアプローチができる。これが知識の持つ力だと話します。
知識がなければ、そもそも何を調べたらいいかも、根拠になる情報がどこにあるかもわからず、闇雲に調べることになります。重要度の判断も難しくなり、情報を上手に扱えなくなると指摘します。
だからこそ、覚えることと調べることは対立しません。むしろ、適切に調べるために覚えるのが、知識を蓄えるうえでの正解だと語ります。
現場では時間が限られた中で、患者さんや医師への対応が求められます。全部を一から調べていては間に合わないため、インプットした知識を使って最短で情報にアクセスし、正確に対応していくことが大事なスキルになると話します。
「調べる質」を左右する情報源へのアクセス
たいぞーさんは、調べるという行為そのものも、どこで調べるかで質が変わってくると言います。
信頼できる情報源にアクセスできるか、一次情報にきちんとたどり着けているかも重要です。こうした情報源へのアクセスも含めて知識だと捉えています。
薬剤師の価値は「全部知っている人」ではないと、たいぞーさんは話します。必要なときに正しい情報源にたどり着き、それを思考して患者さんに還元できる人こそ、価値ある薬剤師だと言います。
この視点を持つだけで、日々の学び方や現場での判断の仕方も大きく変わると言います。「これは覚えるべきなのか」「これはどう使う知識なのか」を考えながら知識に触れてみることを、たいぞーさんはすすめています。
まとめ
この回でたいぞーさんが伝えたのは、知識を覚えること自体をゴールにせず、思考の入り口として使うという視点です。記憶への過信を避けつつ、正しい情報源へ最短でたどり着くための土台として知識を活かす姿勢が語られました。
- 記憶に頼った「確か大丈夫だったはず」という判断は、新人でもベテランでも危険
- 知識は答えそのものではなく、違和感に気づき情報源にたどり着くための入り口
- 新人とベテランの差は知識量ではなく、情報源への最短アクセスのしやすさ
- 覚えることと調べることは対立せず、適切に調べるために覚えるのが正解
- 一次情報など信頼できる情報源へのアクセスも含めて「知識」と捉える


