薬剤師の役割を問い直したきっかけ
たいぞーさんがこのテーマを話し始めたのは、日々の現場での気づきがきっかけでした。
勤める薬局に、比較的経験の浅い若手薬剤師が異動してきたこと。そして実務実習の学生と集合研修で接する機会があったことです。
その中で、薬剤師の役割をきちんと認識することの大切さを実感したと話されています。
役割を理解しないまま現場に立つと、患者さんへの関わり方に迷いが生じたり、自分の方向性がぼんやりしたものになってしまうのではないか。たいぞーさんはそう考えています。
この子たちは薬剤師の役割というのを真に理解して実習を送っているんだろうか、ということが気になったところもあって。
薬剤師法第1条が示す「責務」
では薬剤師の役割とは何か。たいぞーさんは、どの薬剤師にも共通する軸として薬剤師法という法律を挙げます。
薬剤師法第1条には、薬剤師の責務が定められています。
調剤、医薬品の供給、その他薬事衛生を司ることによって、国民の健康な生活を守ること。これが薬剤師の責務です。
ただ、こうした役割を果たそうとしても、それが具体的に何をすることなのかがわからなければ、現場で行動に移しにくいとたいぞーさんは指摘します。
行動の羅針盤としての第25条
そこで行動の指針となるのが、薬剤師法第25条だとたいぞーさんは話します。
薬剤師として活動していく中での軸を見定める、羅針盤、コンパスのような役割になっているのかなと。
この第25条は、ここ数年で度々改定されて変わってきた項目です。
たいぞーさんが薬剤師になった13年前は、患者さんやその家族、看護にあたる方に対して、医薬品に関する情報提供を行うことが義務付けられた内容でした。
「薬学的知見に基づく指導」をめぐる議論
たいぞーさんが薬剤師になって1年が経った2015年に、薬剤師法の改定が行われました。
このとき第25条の2に、情報提供および薬学的知見に基づく指導をしなければならない、という文言が追加されました。
当時、この「薬学的知見に基づく指導」とは何かが議論の対象になったと、たいぞーさんは振り返ります。
服薬指導のときに薬の知識を持って説明することは普段からやっている、という声もありました。
一方で、それは目の前で薬の知識を説明することではなく、患者さんが自宅で療養する期間まで見据えた関わりだ、という捉え方も語られていたといいます。
どんな治療効果が得られるのか、不利益は生じないのか。曖昧であれば、いつ頃リスクが生じて体調不良をきたす可能性があるのかを予見し、その間も関わる。そうした視点まで含むという議論です。
明文化された「継続的な関わり」
たいぞーさん自身は、この「指導」という文言には継続的に患者を見ていくことが含まれる、という話を講演会で聞いたことがあると語ります。
それは大事な視点であり、薬剤師として大切にしたいと思って仕事をしてきたそうです。
さらに令和2年の薬機法改定で、継続的かつ的確に患者さんを見ていきなさいという文言が追加されました。
たいぞーさんの認識では、それまでの「指導」の中にも継続的な関わりは含まれていました。ただ、より明確に明文化された意味は大きいといいます。
どの薬剤師がどう解釈しても、継続的な患者さんの経過に薬剤師が関わることが役割として定められた。それがこの改定で明らかになったと考えています。
継続的な関わりの本当の意味
今年の令和8年調剤報酬改定でも、フォローアップや継続的な関わりを評価する項目が多数設けられるようになりました。
ただし、継続的な関わりとは、時系列の中でただ度々コンタクトを取ることではないと、たいぞーさんは強調します。
薬学の知識を使えば、効果が出るのは大体いつ頃か、どんな変化がどう起きて患者さんの体がどう変わっていくのかを予見できる。薬剤師はそれだけの専門知識を持っている、という考え方です。
この専門知識を使って、患者さんの治療が本当にうまくいくように、うまくいっていないなら是正できるように関わる。これが薬剤師の大切な責務、役割になるんじゃないかなと。
たいぞーさんは、法律の観点からも、薬剤師を評価する国の制度である調剤報酬改定の観点からも、そこに薬剤師の役割があるのではないかと話しています。
まとめ
薬剤師の役割は、薬剤師法という一本の法律に立ち返ることで見えてきます。第1条が示す責務と、変遷を重ねてきた第25条が、薬剤師が向かうべき方向を指し示す羅針盤になっています。
- 薬剤師の責務の軸は、薬剤師法第1条が定める調剤・医薬品の供給・薬事衛生と、それによる国民の健康な生活の保護にある
- 第25条は改定を重ね、2015年に「薬学的知見に基づく指導」、令和2年に「継続的かつ的確な指導」が加わってきた
- 継続的な関わりとは、ただ度々連絡することではなく、専門知識で治療の経過を予見して是正できるように関わること
- 薬学の知識で患者を見ていく「薬学で患者を語る」実践こそ、いま求められる薬剤師の役割だとたいぞーさんは語る

