薬剤師を天職と思えるまでの出発点
たいぞーさんは薬局で在宅医療や外来患者対応にあたりながら、社内の新人育成や研修の企画、講師などにも取り組んでいる薬剤師です。勉強会やセミナーの開催、外部講演のほか、オンラインサロンの運営も行っています。
この放送のテーマは「本気で向き合って先にある仕事の面白さ」です。たいぞーさんはまず結論から切り出します。
ただし、最初から天職だと思えていたわけではないと話します。むしろ出発点は、強い志とはほど遠いものでした。
正直言うと、僕は昔から薬剤師になりたいという強い思いを持っていたわけではなくて、高校での進路選択のなりゆきの中で薬学部という道に進みました。
医療への強い志も、患者さんの役に立ちたいという理想も持っていなかったといいます。だからこそ学生時代には、この仕事で本当にいいのかと悩んだこともあったそうです。
仕事の見え方が変わった転換点
たいぞーさんは、薬剤師の仕事を「しんどい」「忙しい」「割に合わない」と感じてしまう気持ちもよくわかると話します。そのうえで、ある時をきっかけに仕事の見え方が変わっていったと振り返ります。
転換点になったのは、目の前の仕事に本気で向き合うようになったことでした。以前のたいぞーさんは、薬剤師の仕事を「薬を揃えて渡し、きちんと説明して情報を伝えること」だと捉えていたといいます。
しかし、そうではない関わり方があることを学びます。患者さんの状態が今どうなっているのか、この薬は今のこの患者さんに本当に合っているのか。そうしたことを薬剤師が専門性を持って考える、という関わり方です。
この学びによって、仕事に向き合う一本の軸が定まったと話します。それが、たいぞーさんが今も大事にしている「薬学で患者を語る」という考え方でした。
コミュニケーションだけでは薬剤師じゃなくてもいい
患者さんを診るとき、雑談をする力や共感する力といったコミュニケーション能力はもちろん大切だと、たいぞーさんは前置きします。ただし、それだけでは薬剤師である必然性がないと指摘します。
コミュニケーションをうまく取るというなら、薬剤師じゃなくてもいい仕事になります。
薬剤師は専門資格を持ち、薬学という専門教育を長い期間かけて学んでいます。その根幹である薬理学・薬物動態学・製剤学の知識を使って、患者さんの状態を読み解いていくことが薬剤師ならではの関わりだと語ります。
薬を飲んだ後に体で起きていること、効果が出ているのか、副作用の兆候はないのかを考える。そこから患者さんの状態を見立て、より良い薬物治療とはどういうものかを考える。これがたいぞーさんにとって面白いことだといいます。
薬剤師にしか見えない患者さんの姿
たいぞーさんは、日々の現場で患者さんに関わる中で得られる情報を、薬学の知識とつなげて考えると話します。ちょっとした一言、血圧の値、生活背景、採血結果、わずかな違和感などがその手がかりです。
それらをつなげたときに「もしかしたらこれかもしれない」という仮説が浮かび、薬剤師にしか見えない患者さんの姿が見えてくるといいます。
情報を集める
患者さんの一言、血圧、生活背景、採血結果、違和感を拾う
薬学とつなげる
薬理学などの知識と結びつけて仮説を立てる
姿が見えてくる
薬剤師にしか見えない患者さんの姿が浮かび上がる
治療に反映
関わりや医師への処方提案を通じて治療が良くなる
見えてきた患者さんの姿をもとに関わった結果、治療が良くなって状態が改善したり、医師への処方提案が治療に反映されたりする。この一連のプロセスを実践するほど、仕事の面白さが増していったと語ります。
本気で向き合った先に面白さは見えてくる
こうした実践を重ねる中で、たいぞーさんは薬剤師という仕事を天職と思えるようになり、今は毎日の仕事を楽しみながら行っていると話します。
そのうえで、この放送で伝えたいことを明確にします。やりたい仕事を選べば仕事が面白くなるわけではない、という点です。
たいぞーさんの場合、それが「薬学で患者を語る」ことの実践でした。これに本気で向き合った結果、今は天職と思えるほど仕事を面白くやれているのではないかと振り返ります。
仕事の時間は人生の中で大きな割合を占めます。その時間を苦行にするか、仕事も含めて楽しめる人生にするか。それは仕事の内容そのものよりも、その仕事にどう向き合うかで決まるのではないかと、たいぞーさんは自身の実感として語ります。
まとめ
なりゆきで薬剤師になったたいぞーさんが、目の前の仕事に本気で向き合ったことをきっかけに、薬剤師を天職と思えるようになるまでの経験談です。仕事の面白さは、内容そのものより向き合い方から生まれるという気づきが軸になっています。
- たいぞーさんは強い志ではなく、なりゆきで薬学部に進み薬剤師になった
- 転換点は、目の前の仕事に本気で向き合うようになったこと
- 薬理学などの知識で患者さんの状態を読み解く「薬学で患者を語る」実践が軸になった
- 薬剤師にしか見えない患者さんの姿をもとに関わることで、治療改善につながり面白さが増した
- やりたい仕事を選ぶより、本気で向き合った先に仕事の面白さは見えてくる



