薬の作用機序だけでは「薬のせい」と言い切れない
薬剤師が患者の体で薬がどう働くかを考えるとき、まず思い浮かぶのが薬理作用、いわゆる作用機序です。
ただし、作用機序からわかるのは「薬が体にどんな変化を起こすか」という部分にとどまります。
問題は、その体の変化が薬以外の要因でも起こることです。環境要因で変わることもあれば、病気で変わることもあります。
そのため、目の前の変化について「それは薬ですか、病気ですか」と問われても、変化そのものだけでは薬のせいかを見極められません。
それって薬なんですか、それとも病気なんですかって言われると、どっちかはわからないですけど、薬の可能性もありますみたいな話しかできなくなってしまいます。
時間軸で見ると「薬のせい」の精度が上がる
そこで役立つのが、その薬がいつ頃働き始めるのかという時間軸の考え方です。
薬が効き始めるタイミングをつかんでおくと、目の前の変化が薬による可能性をより高い精度で見極められるようになります。
その時間軸を予測するための基本情報が、薬の体内での動き、いわゆる血中濃度の推移です。
血中濃度が薬の影響を見ていく基本になること自体は揺るぎません。
一方で、薬の特性によっては、血中濃度だけでは体の中の動きを見極めきれないものもあるとたいぞーさんは指摘します。
血中濃度だけで薬を見ようとすると、かえって判断を誤ってしまいかねないという注意です。
血中濃度で見るべきか、体の変化で見るべきかの分かれ道
ここで必要になるのが、その薬をどちらの見方で捉えるかの判断です。
血中濃度の動きで体内の動きを予測したほうがよい薬なのか、それとも体に起こる変化からおおむねのタイミングを捉えたほうがよい薬なのか。この見極めが求められます。
そして、その分かれ道を判断する手がかりが、話の冒頭に出た薬力機序に戻ってきます。
その薬が体の中でどう作用するかを考えていくと、血中濃度で見て理解できる薬なのか、血中濃度だけでは読み解けない薬なのかが見えてくるという流れです。
作用機序を理解する
薬が体にどんな変化を起こすかを押さえる
時間軸で捉える
いつ頃効き始めるかを考え、薬の可能性を見極める
血中濃度で予測する
体内での薬の動きを推移から予測する
薬力機序で判断する
血中濃度で読める薬か、読めない薬かを見分ける
SSRIが示す「効くタイミングのずれ」
たいぞーさんは具体例として、抗うつ薬などで使われるSSRIを挙げます。
神経の伝達物質であるセロトニンは、信号を送るために放出され、その後また神経へ戻っていきます。SSRIは、その戻っていく過程を止める薬です。
結果として、放出されたセロトニンがその場にとどまるように変化します。
ここが重要な点です。戻る過程を遮断する働き自体は、薬を飲むとすぐに起こります。
その戻っていく過程を遮断する、止めていくことになるんですけど、それは薬を服用するとすぐに起こるんです。
ただし、放出されたセロトニンがどんどん溜まっていく過程で薬の効果が出るため、溜まるまでには少し時間がかかります。
つまり、薬が作用し始めるタイミングと、体の変化が起こるタイミングがずれているのです。
服用するとすぐに、セロトニンが戻る過程を遮断し始める
セロトニンが溜まって初めて効果として実感でき、時間がかかる
血中濃度だけでは見えない「効き始め」をどう読むか
血中濃度で見ていると、セロトニンが戻る過程を止めるタイミングはわかります。
しかし、実際に体の変化が起こるのはセロトニンが溜まってからなので、この薬がいつ頃効き始めるかは、血中濃度とは別の軸で考える必要があります。
だからこそ、たいぞーさんは「薬の動きは血中濃度のみにあらず」という視点を持つことの大切さを強調します。
この視点は、たいぞーさん自身が臨床現場で薬学を使うときに強く意識している注意点だと話します。
実際の患者にどう生かしているかは個別の症例に踏み込むため、オンラインサロンなどのクローズドな場で語っているとのことです。
まとめ
薬の影響を見極めるには、作用機序と時間軸の両方を押さえ、血中濃度だけに頼らない視点が欠かせません。SSRIのように効くタイミングがずれる薬では、この視点が判断の精度を左右します。
- 作用機序からわかるのは「薬が起こす変化」だけで、その変化は病気や環境でも起こりうる
- 薬がいつ効き始めるかという時間軸を持つと、薬の影響を見極める精度が上がる
- 血中濃度は基本情報だが、薬の特性によっては体内の動きを読み切れない場合がある
- SSRIは作用の開始と効果の実感にずれがあり、血中濃度とは別の軸で効き始めを考える必要がある
- 血中濃度で読める薬かどうかを見分ける手がかりは、薬力機序の理解にある



