試験直前の詰め込み勉強で気づいた「もったいなさ」
たいぞーさんは、薬局で在宅医療や外来患者対応に取り組みながら、社内の新人育成や研修の講師も務める薬剤師です。番組では「薬学で患者を語る」をテーマに、現場で感じたことを発信しています。
この回でたいぞーさんが話すのは、12月7日に控えた在宅療養支援認定薬剤師 ── 在宅医療に関わる薬剤師向けの認定資格。在宅患者への薬学的管理や多職種連携に必要な幅広い知識が求められ、筆記試験などを経て認定されますの筆記試験に向けた勉強の様子です。
たいぞーさんは試験前の1週間、毎日4時間以上の勉強時間を確保し、受験生さながらに机に向かっているといいます。試験日は以前からわかっていたので、もう少し計画的に進めていれば落ち着いて学べたかもしれない、と率直に振り返っています。
時間と労力をかけて勉強するなかで、たいぞーさんが強く感じたのは、試験勉強を資格取得のためだけに使うのはもったいない、ということでした。
この試験勉強というのを、箔付けの資格を取るためだけに使うというのは、とてももったいない気がするなということを、必死で勉強しながら今思っています。
たいぞーさんによれば、受かるだけの勉強なら近道もあります。学会が提供するEラーニングの最後に小テストがあり、その問題だけを抜き出して覚えれば、試験には通るかもしれないといいます。
ただ、テストの一部だけを覚える勉強は、現場で使える力にはなりません。たいぞーさんは、そこに時間をかけるのも、それはそれでもったいないと考えています。
資格試験は「土台を厚くするきっかけ」なのか?
たいぞーさんは、資格取得に向けて積み上げている学びが、患者さんに関わる際の自分の中の大きな土台になっていくと感じています。
在宅で患者さんに関わるには、本当に幅広い分野の知識が必要になります。たいぞーさんが今回の試験勉強で取り組んでいる分野は、次のように多岐にわたります。
こうした分野を網羅的に学び直すことは、確実に自分の実践力を上げることにつながっている、とたいぞーさんは話します。EBM ── Evidence-Based Medicineの略で「根拠に基づく医療」のこと。研究で得られた科学的根拠と臨床経験、患者さんの価値観を組み合わせて治療方針を決める考え方ですのような考え方も、その一つです。
一方で、これだけ幅広い分野を、普段の生活や仕事の中で短期集中して学ぶのは難しいとも感じています。「えいや」と踏み出すこと自体が、なかなかできないからです。
だからこそ、たいぞーさんは試験という半ば強制的な仕組みに乗っかることに価値を見出しています。逃げずに学習の機会と向き合えることが、資格取得に挑戦する大きな意味だと考えています。
5〜6年前の受験と何が違う? 経験とつながる学び
たいぞーさんにとって、今回は2回目の受験です。5〜6年前の前回も、今回と同じくEラーニングを中心に勉強して試験に臨んだといいます。
ただ、同じ勉強法でも、自分の中に学びとして積み上がっていくものが少し違う、とたいぞーさんは感じています。
薬剤師3年目の受験。新しい知識を必死に覚えて定着させる感覚が強かった
薬剤師10年目の受験。知識を学びながら、過去の患者さんや今後の場面での使い方を具体的にイメージできている
今回の勉強中、たいぞーさんの頭には、かつて関わった患者さんのケースが浮かぶといいます。
あの時のあの患者さんのケースって、こういうことを知っとったらもっとこんなふうに関われたかもしれないとか、こういう患者さんがいたらこんなふうにこの知識って使えるかもなっていう。
前回の受験は、薬剤師になって3年目、受験資格の最低ラインを満たしたばかりのタイミングでした。たいぞーさんは、当時はまだ実践経験が乏しく、現場での仕事のイメージが自分の中に積み上がっていなかったのだろうと振り返ります。
薬剤師として10年を迎えた今は、様々な患者さんや他職種の方と関わってきた経験が、今の学びとつながっています。たいぞーさんは、経験と知識が結びつく学びを、専門資格を取ったうえで患者さんへの関わりを一歩飛躍させる第一歩と捉えています。
たいぞーさんは、在宅領域の資格試験の勉強を通して、現場で生きる学びがどう積み上がるのかという現場のリアルが伝われば嬉しい、と締めくくっています。
まとめ
在宅療養支援認定薬剤師の試験勉強を、たいぞーさんは合格のための作業ではなく、在宅で患者さんに関わる力の土台を厚くする機会と捉えています。現場経験を重ねた今だからこそ、知識が具体的な実践のイメージと結びついて積み上がっていくと話されています。
- テスト問題だけを覚える勉強は、現場で使える力にはなりにくい
- 在宅医療には、褥瘡や緩和ケアから救急対応、EBM、漢方まで幅広い知識が必要になる
- 試験という半ば強制的な仕組みは、幅広い分野を集中して学び直すきっかけになる
- 薬剤師3年目と10年目の受験では、学びが経験とつながる感覚が大きく違う



