副作用の説明は「するか、しないか」の二択なのか
たいぞーさんは薬局で在宅医療や外来患者対応に携わりながら、社内の新人育成や研修講師、勉強会やセミナーの開催なども行っている薬剤師です。今回は、副作用情報を患者さんにどう伝えるかという、その難しさがテーマです。
たいぞーさんによると、副作用情報をどこまで患者さんと共有するかは、薬剤師にとって常に悩ましい問題だといいます。副作用情報は、早期発見・早期対処のために患者さんに知っておいてもらうべき大切なものです。
しかし同時に、副作用情報は患者さんの不安を強め、治療の開始や継続を妨げることもあります。情報提供は慎重であるべきだとしつつ、たいぞーさんは説明の是非を二択で考えることに疑問を投げかけます。
ただ説明をするかしないか、その二択で考えると、そもそも(副作用の)説明をするということの本質を見失ってしまいます。
患者さんを不安にさせているのは、症状そのものではない
たいぞーさんがまず考えたいのは、副作用を聞くとなぜ患者さんが不安になるのかという点です。その理由の一つとして、症状が出たときに自分ではどう対処したらいいのかわからない、という未来への不安があるのではないかと推測しています。
症状そのものというよりも、自分自身が困ってしまう未来が想像されることが、何より不安を増幅させてしまう要素になるのではないかなというふうに思うのです。
副作用への不安を「困る未来の想像」と捉えると、薬剤師にできることは大きく2つあるのではないか、とたいぞーさんは話します。
副作用を知る
症状が出るかもしれないと説明を受ける
困る未来を想像する
症状が出たら自分でどう対処すればいいかわからない
不安が増幅する
症状そのものより、困る自分の姿が不安を強める
治療に影響する
治療の開始や継続が妨げられることがある
判断するのは患者さんではなく医療者
たいぞーさんが挙げる1つ目の取り組みは、患者さん自身に判断を委ねない状態を作ることです。副作用と思われる症状が出たときに患者さんが自分で判断して対処する状態にしてしまうと、患者さんは困り、悩んでしまうと考えています。
患者さん自身が自分で判断をして悩む必要というのは、僕はないのではないかなというふうに思っています。
そのために、たいぞーさんは患者さんに相談先をあらかじめ伝えておくことを勧めます。相談体制を作っておくことで、不安の多くは確実に減っていくのではないかという考えです。
何かあればすぐに薬剤師に連絡してください。こちらで状況を確認して判断をしますので、ということをお伝えしておく。
医師に相談するという選択肢ももちろんありますが、薬剤師が説明して対応しているのであれば、薬剤師自身もその責任を背負うべきだとたいぞーさんは話します。患者さんの相談先として、医師と薬剤師の2つを用意しておくことも大事だといいます。
副作用の多くは「元に戻る」と知っておく安心感
たいぞーさんが挙げる2つ目の取り組みは、副作用の多くは早期に対処すれば元に戻ることが多い、という事実をきちんと共有しておくことです。副作用がずっと体を阻害し続けると思えば、患者さんがとても怖く感じるのは自然なことです。
しかし、多くの症状は可逆的 ── 元の状態に戻ることができる性質のこと。薬の副作用では、原因となる薬の調整や対処によって症状が改善し、元の状態に戻ることを指しますで、早く気づいて早く対処すれば改善して元に戻ることが多いといいます。
たいぞーさんは、気づいたら相談すればいい、対処できれば元に戻るという2つを患者さんが知っているだけで、不安は大幅に軽減され、治療を妨げる要因にはなりにくくなると考えています。
症状が出たら自分で判断しなければならず、副作用がずっと続くかもしれないと怖くなる
気づいたら薬剤師に相談すればよく、早く対処すれば元に戻ると知って不安が軽くなる
自己判断で薬をやめることのリスク
ただし、副作用の情報提供にはもう一つ注意が必要だとたいぞーさんは話します。患者さんが副作用かもしれないと思って自己判断で薬を中止してしまうケースです。
自己判断で薬を中止すれば、副作用のリスクは下げられます。一方で、治療効果が得られないという重大なデメリットが発生します。
副作用に見舞われるリスク
本来得られるはずだった治療効果
治療を行えないことと、副作用に見舞われること。この2つのメリットとデメリットのバランスを評価するには医療者としての専門的な能力が必要で、その判断は医療者の役割でもある、とたいぞーさんは述べます。
ここ(自己判断で中止しないこと)は必ず伝えておくことが大切なことだなということを思います。
すべての副作用を伝える必要はあるのか
たいぞーさんは、すべての副作用を患者さんに伝える必要はないのではないか、とも考えています。説明よりも、薬剤師のフォローアップでリスクを回避するほうが適切な副作用があるという視点です。
たいぞーさんが挙げるのは、次の2種類の副作用です。
- 発現が予測しやすく、患者さんに確認すれば発現状況に気づけるもの
- 専門的な判断が必要で、患者さん自身では評価や判断が難しいもの
これらの副作用については、薬剤師がフォローアップ ── 薬を渡した後も、電話や訪問などで患者さんの服薬状況や体調の変化を確認し、必要に応じて対応することを行うことでリスクを回避するのが、より適切な関わり方ではないかとたいぞーさんは話します。
患者さんに説明をすることで不安を与えることなく、薬剤師が介入をすることでそのリスクを回避するような体制を作っておく。
副作用と上手に付き合うための薬剤師の役割
たいぞーさんは最後に、副作用の情報は伝えるか伝えないかの二択ではない、とあらためて強調します。大切なのは、不安を生み出す原因を理解して、不安を取り除く仕組みを作ることだといいます。
そのうえで、薬剤師が介入できる副作用はきちんと介入して回避すること。それが副作用への関わり方であり、患者さんと一緒に上手に薬と付き合うことにもつながる、とたいぞーさんは話します。
たいぞーさんは、今回の放送が、副作用を回避するために薬剤師がどう関わるかを考える気づきになれば嬉しいと締めくくっています。
まとめ
副作用への不安は症状そのものより「困る未来の想像」から生まれるため、たいぞーさんは説明の有無ではなく、不安を取り除く仕組みと薬剤師の介入で治療を守ることを提案しています。
- 副作用の説明は「するか、しないか」の二択で考えると本質を見失う
- 「何かあれば薬剤師に連絡を」と伝え、判断は医療者が担う関係を明確にする
- 副作用の多くは早期に対処すれば元に戻ると共有することで、不安は大きく減る
- 自己判断での中止は治療効果を失うリスクがあることも必ず伝える
- 予測しやすいものや専門的判断が必要なものは、説明よりフォローアップで回避する



