介入のしどころがつかみにくい眼科領域
たいぞーさんは薬局で在宅医療や外来対応に取り組みながら、新人育成や社内研修、外部講演なども行っている薬剤師です。今回は、現場で出会った「本当にすごいな」と思う薬剤師の話から始まります。
前職では会社全体の運営に関わり、特定の店舗ではなく複数の店舗をサポートしながら勤務していたため、多くの薬剤師と関わる機会があったと振り返ります。
その中でも、たいぞーさん自身があまり深く関わる機会が少なかったのが眼科と皮膚科の領域でした。特に眼科で長く勤めていたベテラン薬剤師の姿が印象に残ったと話します。
眼科の患者には、目の乾燥を潤す目薬や白内障の薬を定期的にもらう人、緑内障の治療を続けている人が多くいます。状態が急激に変わることは少なく、比較的落ち着いた患者が多いのが特徴です。
長い人だと半年分ほどの薬をまとめて受け取り、長期間自宅で療養するケースもあります。緑内障でも点眼薬を適切に使えていれば眼圧 ── 眼の中の圧力。緑内障では眼圧が高い状態が続くと視神経が障害されるため、点眼薬などでコントロールする。が安定している人が多いといいます。
そのため「いつもの薬でちゃんと使えているし大丈夫」という患者が多く、薬剤師としてしっかり介入しようと思っても、介入のしどころがむずかしい領域だとたいぞーさんは感じてきたそうです。
粘膜に直接使う薬だからこそ重要になる関わり
一方で点眼薬は、適切に使えなければ効かない薬でもあります。使い方を誤れば、かえって状態を悪化させたり感染のリスクが生じたりする可能性もあると指摘します。
目は体の粘膜に直接薬を使う部位です。だからこそ、使い方をめぐる関わりはとても重要になる領域だとたいぞーさんは考えています。
さらにたいぞーさんが日頃伝えている「薬学で患者を語る」専門性は、内科領域では比較的活かしやすく、患者への関わりの実践例も多く聞いてきたといいます。
これに対して眼科領域については実践例が少なく、その専門性が活きる場面を、今回のベテラン薬剤師から教えてもらったと話します。
点眼で目が赤くなる ― なぜ「添加剤」に着目したのか
そのベテラン薬剤師が関わっていたのは、目薬を点眼すると目が充血したり赤くなってしまう患者のケースでした。
目の赤みは花粉などのアレルギー症状でも起こりますし、目薬そのものにアレルギー反応を起こすことも、内服薬で皮膚に赤みが出るのと同様に起こり得ます。
ただ、その薬剤師が着目したのは薬の主成分としての影響だけではありませんでした。過去の薬歴を見ると、同系統で似た構造の薬を使ったときには赤みが出ていなかったのです。
それなのに、なぜ今回は目が赤くなるのか。そこで着目したのが添加剤 ── 薬の主成分ではなく、保存や安定化、pH調整などのために加えられる成分。防腐剤などが含まれることがある。でした。
2つの薬を比べると添加剤が一つだけ違っていました。この違いが充血を引き起こしているのではないか、と考えたのです。
これもしかしたら目薬の添加剤が(目の)充血などを引き起こしている可能性があるんじゃないか
こっちの種類の薬剤とか、この添加剤を含まないこっちのやつに変えてみると症状が改善するかもしれません
この薬剤師は、そうした内容を医師に処方提案として伝えていた、とたいぞーさんは聞いたそうです。
目薬ならではの「添加剤の影響」という気づき
実際に医師が「確かにそれもあるかもな」と目薬を変更するケースもあり、変更後に目の赤みが改善する例もあったといいます。
たいぞーさんが印象的だったのは、内服薬と目薬での添加剤の影響の違いです。内服薬では添加剤が体に影響を及ぼすことは、ごくごく稀だと説明します。
添加剤の影響が体に出ることはごくごく稀で、影響が出にくい
目の粘膜に直接薬を塗布するため、添加剤の影響も色濃く受ける可能性がある
目薬は目の粘膜に直接薬を塗布します。そのため、添加剤の影響も色濃く受けてしまう可能性があるのだと、たいぞーさんはこの話で初めて認識したと語ります。
添加剤という視点が治療の選択肢を守る
たいぞーさんが強調するのは、添加剤がダメだという話ではない、という点です。あくまで、自分に合わない添加剤があるかもしれないという可能性を頭に置くことが大切だといいます。
本当にそれが薬の要因なのかどうかを見極めていくことで、その人の治療の選択肢が過度に狭まらないようにできる、という関わりがここから見えてきます。
構造の違いや添加剤の違いは比較で見つかるものです。ただし、たいぞーさんはその前段として、過去の薬歴を踏まえて薬剤の過敏症の可能性を判断することも同時に考える必要があると述べます。
こうした薬剤師の科学者としての観点が、治療が悪い方向に進まないよう、選択肢を狭めないことにつながると話します。
たいぞーさんは、患者の治療がより良くなるように、そして選択肢を潰さないように関わることができる。その学びをこの経験から得られたと締めくくります。
添加剤も含めて薬の影響を見る、薬剤師の強み
最後にたいぞーさんは、薬剤師が着目すべき薬の影響の範囲について語ります。主成分だけでなく、添加剤も含めた患者への影響を検討することの大切さです。
そうした視点から薬のことを見ていけるのは薬剤師の強みだといいます。現場の仕事の中でぜひ活かしてほしい、と呼びかけています。
この放送が、薬剤師として着目すべき範囲を広げて考えるきっかけになれば幸いだと述べて、今回の10分講座を終えています。
まとめ
介入のしどころがむずかしいとされる眼科領域でも、点眼薬の添加剤に着目することで薬剤師の専門性が活きる場面があります。過去の薬歴との比較から要因を見極め、治療の選択肢を狭めない関わりが紹介されました。
- 眼科は状態が落ち着いた患者が多く、薬剤師が介入しづらいと感じられやすい領域
- 点眼薬は粘膜に直接使うため、内服薬より添加剤の影響を色濃く受ける可能性がある
- 似た構造の薬で赤みが出ず今回だけ出る、という薬歴の比較から添加剤に着目した
- 添加剤が悪いのではなく、合わない添加剤の可能性を見極め治療の選択肢を守ることが目的
- 主成分だけでなく添加剤も含めて薬の影響を見る視点は薬剤師の強みになる



