高い声は「頑張って出すもの」という思い込み
今回のテーマは、多くの人が声について勘違いしていることです。
特に高い声を出すときに、この勘違いをしている人が多いとミカさんは話します。
それは「高い声は頑張って出すものだ」という思い込みです。
お腹をキュッと絞り上げ、息や声をヒュッと出す。そんなイメージで高い声を出そうとしている人が多いといいます。
ミカさん自身も過去はそう思っていたそうで、あるとき生徒さんから同じような話を聞き、記憶がよみがえったと語っています。
高い声を出すときには、お腹にグッと力を入れて、頑張ってヒュッと絞り上げるようにして声をピュッと出す。そんなイメージだったんです。
その生徒さんは今では、そうしなくても高い声を楽に出せるようになった方です。だからこそ「あのまま練習していたら、いつまでも楽に出せなかった」と気づいたのだといいます。
なぜ力任せだと出なくなるのか
高い声は「頑張れば出る」と思われがちですが、その頑張りは力み具合のことではない、とミカさんは指摘します。
声を出すポジションや力の使い方のバランスを支えるという意味では頑張るけれど、力任せに絞り出すものではない。むしろそうすると出ない、というのがポイントです。
ここで筋肉の話になります。声を出すときに使う筋肉は、グッと力が入ると硬くなります。
筋肉が硬くなると、柔軟に動かすことが難しくなってしまいます。
声を出す仕組みとして、声帯を薄く引っ張ると高い音が出て、緩めると低い声が出ます。
ところが、この引っ張るときにグッと力を入れると固まってしまい、それ以上引っ張ることも緩めることもできなくなります。
もうこれ以上引っ張ることもできないし、緩めることもできないみたいなことが起きてしまう。そうするともうそれ以上の音程って出ないし、苦しいので聞き心地も良くない。
つまり力任せに張り上げると、そこが行き止まりになってしまうというわけです。
より薄く引っ張れるようにするために力を抜く。ただし抜きすぎると引っ張る力もへにょへにょになるので、ある程度は使う。
この入れすぎと抜きすぎの間のバランスを取ることが、声を育てる上で大切になります。
レッスンでやっているのはシンプルなこと
こう聞くと、ボイストレーニングでは一体何をするのかと思う人も多いはずです。
筋肉を薄くするための動かし方などと聞くと難しそうですが、実際にやっていることはそれほど難しくないとミカさんは言います。
アプローチはいろいろありますが、この日のレッスンで行ったのは「音量を下げながら発声練習する」という方法でした。
その生徒さんはまさに張り上げてしまうタイプで、ガチガチに固まっていました。
そこで力を抜いてもらうと、今度はずっと裏声になってしまう。力を入れるか抜くかのどちらか極端で、その間の筋力が使えていなかったのです。
そこで、大きい声だと力んでしまうため、小声だけれど地声で出るゾーンの発声練習をしてもらいました。
あ、そうそう、それぐらいです。ああ、そんなに抜かないです。
音量を手がかりに、筋肉の使い方を伝えていったわけです。近所迷惑にもならないので、家でも練習できる方法です。
実際に仕組みのことを考えて、こちらとしては小さい声で地声でと言っているんだけれど、やる方としては小さい声で地声で発声練習をするだけなんですよ。
ボイストレーナー側は複雑なことを考えていても、生徒がやる行動はシンプルにする。続けられて、家でも実践できることが大切だからです。
喋り声も同じ。力むほど届かなくなる
ここまでは歌の話でしたが、喋り声も同じだとミカさんは言います。
「ここを伝えたい」というときに、力任せに強い声を出すと、かえって響かない、届かないということが起きてしまいます。
「あの人、大きい声で言ってるな」と思われてしまったら、もったいないというわけです。
だからこそボイストレーナーは、その人の声がより生きる方法を耳で聞きながら試行錯誤し、合うパターンを探していきます。
今こうやって喋っていると、ボイストレーナー側は複雑なことを考えながらやっているんだなって思いました。二十年やっているのでそれが普通でしたけど、言葉にするとなかなかなことをしていますね。
今日から試せる「少しだけ力を抜く」
基本的に、声を出すときには力まない、頑張りすぎない、押し出さないことが重要になります。
カラオケで高い声がうまく出ないと感じている人は、力を少しだけ抜いて声を出してみてください。意外とポンと出るかもしれません。
プレゼンでパワフルに伝えたい人も、肩の力を抜いて姿勢を正して声を出す。力まないほうが通る声、聞き心地のいい声が出ます。
声の出し方は自転車に似ている、とミカさんは言います。一度コツをつかむと、絞り上げる出し方に戻ることのほうが難しくなるそうです。
昔は絞り上げるように歌ったりしてたんですけど、あの歌い方を今やろうとすると、逆に難しい、しんどいみたいなことがあるんですよね。
一度集中的にボイトレでコツをつかめば、その後の人生が楽になるのではないか、と締めくくっています。
まとめ
高い声は頑張って絞り出すものではなく、力を入れすぎず抜きすぎない絶妙なバランスで出すもの。喋り声も同じで、力むほど声は届かなくなります。まずは少しだけ力を抜いてみることから始めてみてください。
- 高い声を「頑張って絞り出すもの」と思うのはよくある勘違い
- 筋肉に力が入りすぎると声帯が固まり、それ以上音程が出せなくなる
- 大切なのは力の入れすぎと抜きすぎの間のバランス
- 小声で地声の発声練習など、レッスンでやることは意外とシンプル
- 喋り声も同じで、少しだけ力を抜くほうが通る声・聞き心地のいい声になる
