回答率15%は高いのか、247社への調査
仮説の検証に使われたのは、東証プライム上場企業への質問票調査でした。658社に送付し、247社から回答を得ています。
この東証プライムは658社に送って247社に回答もらってるんで、回答率15パー弱ぐらい。結構回答あるもんなんですね。
一見すると低く感じられる数字ですが、妹尾教授は企業向けの調査としては高い回答率だと説明します。
とても高い回答率なんで、本当にご回答いただいた皆様にはこの場をお借りして感謝を申し上げたいなというふうに思っております。
企業に向けた質問票調査は、回答率の低さが課題になりやすいとされています。
OKRを実施している企業は3割超という結果
妹尾教授は2018年にも目標管理に関する同様の調査を行っていました。プライム市場に上場する大企業では、目標管理はほとんどの企業が導入しており、9割ほどが実施していると話します。
その中で、目標管理の一種としてOKRを実施している企業は32.2%にのぼりました。
この調査では目標管理には定義を設けた一方、OKRには定義を置かず、企業側の認識に委ねて回答を得ています。
企業側の認識としても3割以上の企業がOKRを目標管理の一種として実施してるっていうのはすごく興味深い結果だなと思っています。
さらに、目標管理とは別にOKRを実施していると答えた企業も10%ほどありました。両方を合わせると、4割ほどがOKRを実施している計算になります。
ただし、この10%の企業がどのような特徴を持つのかは、まだ分析できていないとのことでした。
4つの特徴を通常の目標管理と比べてみると
妹尾教授の分析は、目標管理の一種としてOKRを実施している企業と、通常の目標管理を実施している企業の特徴を比較するものです。
比較したのは、目標の透明性、目標の柔軟性、目標の困難度、報酬とのリンクの程度という4つの特徴でした。
一般的な目標管理制度を運用している企業
目標管理の一種としてOKRを実施していると認識している企業
統計的な分析を2つ行った結果、どちらも同じ結果になったといいます。まず目標の透明性は、OKRを実施している企業の方が高いという結果でした。
ここでの透明性とは、全社から個人まで目標が連鎖し、その連鎖を公開している程度を指します。
想定と逆だった、報酬とのリンクの結果
妹尾教授が個人的に驚いたのは、報酬とのリンクの程度でした。OKRの提唱者の考え方に沿えば、報酬とのリンクは低くなるはずだと予想していたからです。
ところが実際には、OKRを実施している企業の方が、報酬とのリンクの程度も統計的に高くなっていました。
一方で、目標の柔軟性と目標の困難度については、両者に統計的な差はありませんでした。
ぺーたろーさんは、この結果を大きくまとめて整理します。
OKRの方が目標の透明性っていうのは高い。で、報酬とリンクしている程度は高い。で、他の要素はまああんまり変わんなかったよっていう。
| 特徴 | 仮説 | 調査結果 |
|---|---|---|
| 目標の透明性 | 高いはず | 高い(想定通り) |
| 目標の柔軟性 | 高いはず | 差なし |
| 目標の困難度 | 高いはず | 差なし |
| 報酬とのリンク | 低いはず | 高い(想定と逆) |
なぜ透明性は高く、報酬連動も高いのか
ここからは妹尾教授自身の解釈になります。透明性が高かった点については、OKR本来の趣旨に沿った形で説明できるといいます。
今の企業は社内での連携を重視しており、そうした社会的な要請があるため、目標の公開を重視してOKRを導入しているのではないか、という見立てです。
企業としてその全体の目標を達成するために連携しなければいけないと、そういった要請が高まっているので、この目標の公開というところ、目標の透明性というところを重視してOKRを導入している企業が多いんじゃないか。
難しいのは、報酬とのリンクが高くなった理由です。ここで妹尾教授は、日本企業の過去のツール導入のパターンに目を向けます。
成果主義が導入された時、目標管理というツールが再び注目を集めました。
同じように、2000年代初頭に日本で一時流行したバランススコアカードも、成果主義と一緒に導入されることが多かったといいます。
妹尾教授は、新しいツールを導入する際に成果主義的な傾向が入り込みやすいのではないか、と大胆な仮説を述べます。
OKRと言いつつムーンショットではない運用
ぺーたろーさんは、ビジネスの現場では報酬とリンクするのが当たり前という感覚があるため、この結果を不思議に感じると話します。
妹尾教授は、目標の困難度についても本来は高くあってほしいはずだと補足します。
OKRと言いつつ、まあ透明性は高いんだけど、そのムーンショットとまで言えるような目標は設定してないのかな。
花王のように高い目標を設定している事例も記事などで見られる一方、平均してまとめて分析すると、目標の困難度は通常の目標管理とそれほど変わらない運用になっているのではないか、と述べます。
ぺーたろーさんは、4つの特徴を仮説と結果の対比で振り返ります。透明性は想定通り高く、報酬とのリンクは想定と逆に高く、柔軟性と困難度は変わらなかった、という整理です。
平均的傾向をどう学びに変えるか
ぺーたろーさんは、この結果があくまで統計的な平均であることを確認したうえで、運用への学びを引き出します。
何にも考えないで運用すると、なりそうな方に行っちゃうような力学が働くような気がするので、そういうところに気をつけて運用できるといいのかなっていう。
妹尾教授も、この点を重要だと受け止めます。OKR通りにやっている企業もあれば、まったく違うことをやってOKRと呼んでいる企業もあるかもしれないと補足します。
また、提唱者の通りにやればいいとは限らない点も強調しました。提唱者の言っていることと違うような特徴が平均的には日本のOKR実施企業にはありそうだということが、この分析からわかることだといいます。
平均的な傾向がいいか悪いかは、企業業績との関係などをさらに分析しないとわからない、という留保も添えられました。
学術と実務、視点を持ち寄る次の調査へ
ぺーたろーさんは、OKRを使う企業の個別事例を聞きたいと話します。提唱者の理屈と違うのなら、どこがなぜ違うのかを知りたいという関心です。
妹尾教授は、それなら一緒に共同でインタビューに伺いたいと応じます。
ぺーたろーさんは、学術的な観点から聞く妹尾教授と、企業側の視点から聞く自分とでは、異なる面から話を引き出せるかもしれないと語ります。
能登さんのように実務家の視点で聞くと、その両方の視点のどういうふうに折り合い、どういうふうに考えていくのかっていうのはとても大事な観点だと思う。
統計分析ではできない部分を、インタビュー調査で補い合えるかもしれない、と締めくくられました。
連携が大事なOKRなんでね。ぜひ。
まとめ
OKRの4つの特徴を東証プライム247社への調査で検証した結果、透明性は想定通り高く、報酬とのリンクは想定と逆に高いという結果になりました。提唱者の理想と日本企業の実態のギャップが浮かび上がる回でした。
- 東証プライム上場企業への調査で、目標管理の一種としてOKRを実施する企業は32.2%だった
- OKRを実施する企業は、通常の目標管理より目標の透明性が高かった
- 報酬とのリンクは低いはずという仮説に反し、OKR実施企業の方が高かった
- 目標の柔軟性と困難度には統計的な差がなく、ムーンショット型の運用にはなっていない可能性がある
- 結果は平均的傾向であり、提唱者の通りにやればよいとは限らない点にも注意が必要とされた





