週末ごとに通うシェア別荘SANUの使い心地
雑談回の冒頭で今井さんが触れたのは、青木さんが週末のたびに通っているシェア別荘「SANU」のことです。エピソード説明では「サブスクのシェア別荘『SANU』」と紹介されています。
ほんとあの俺、山野(SANU)の人なのかっていうぐらい。
青木さんによると、SANUはサブスクで数万円の料金を払うと、一定の回数泊まれる仕組みです。先日も日曜日に出かけ、月曜日の午前中には帰ってくる日程で行ったといいます。
まあね、単純にね、涼しいんだよね。よく寝れる。
シェアオーナーの紹介で泊まったことがある今井さんは、予約が埋まらないのかと尋ねます。青木さんは、金曜・土曜は埋まりやすいものの、今のところ供給はちょうどよいと答えています。
青木さんの見立てでは、SANUはあらかじめ予約すれば泊まれ、直前のキャンセルが出ることもあります。平日に行ける人なら、ほとんど問題はないそうです。予約の上限や先の予約が取れる期間については、細かな決まりがあるので詳しくはサービスに確認してほしいとのことでした。
SANUで何をする?焚き火も散歩もしない過ごし方
SANUへはチェックインが15時なので、昼過ぎに出て現地でランチを食べるくらいのペースで向かうといいます。青木さんが行く先はせいぜい2時間ほどの場所が多く、キャンプのように急ぐ必要がない点も楽だそうです。
今井さんが焚き火はするのかと聞くと、青木さんの答えは「しない」でした。
あ、しない。もう僕めんどくさいこと嫌いだから。
うん、もう家にいる時と何ら変わんない生活してる。
青木さんのSANUでの過ごし方は、本を読む、昼寝をする、仕事をする、といったものです。散歩も少しはするものの、ぼーっとしたいので散歩だと「もったいない」感じがすると話しています。
読まなきゃいけない本と、読みたい本の割合は?
SANUで本を読むという話から、青木さんは今井さんに、日々本を読んでいるかと尋ねます。今井さんは全然読めていないと言いつつ、座って目が空いていたら読むようにしていると答えます。
編集者の今井さんには、仕事として読まなければいけない本がたくさんあります。そこで青木さんは、読まなければいけない本と、それを差し置いてつい読んでしまう本の比率を聞きました。
でもやっぱその後者(読みたい本)の割合が減ってくると、自分の生活が良くないなみたいな。
しなきゃいけないことしかできてない状態はなんか嫌だなと思いますね。
今井さんにとって、読みたい本が読めない、映画館に行けないという状態は、忙しくなりすぎている「アラート」です。しなきゃいけないことしかできない状態そのものが、ストレスになっていると話しています。
20歳で夢中になったサリンジャーと、52歳での再会
読書の話題を受けて、青木さんは最近、サリンジャー ── J・D・サリンジャー。アメリカの作家で、『ライ麦畑でつかまえて』『ナイン・ストーリーズ』などで知られます。若者の繊細な自意識を描いた作品が多く読まれてきましたの『フラニーとズーイ』を読み直していると切り出します。20歳ごろに野崎孝訳で読んだ作品を、今は村上春樹さんの訳で読んでいるそうです。
二十(20歳)ぐらいの時にもう本当に死ぬほど好きだったけど、サリンジャーが。
で、今読むとさ、これ今じゃんってなる。本当に。
青木さんの説明では、サリンジャー作品の大半は、5人ほどの兄弟がいるグラス家の話です。『ナイン・ストーリーズ』の有名な短編は長男が自殺する話で、『フラニーとズーイ』は末っ子の妹フラニーと、その一つ上の兄で25歳の俳優ズーイが中心になります。
青木さんによると、フラニーは極端な自意識と潔癖な感性から、身の回りの些細な欺瞞が気になりすぎて、おかしくなってしまいます。そこにズーイが、東洋哲学などを引用しながら語りかけるという物語です。グラス家は、子ども時代に全員が賢い子どもの出るテレビ番組で活躍した、天才系の家系として描かれています。
「あ、そりゃ俺はこれ好きだったはずだわ」とか、「あ、だから俺今こんなになっちゃったのか」とか。
青木さんにとって『フラニーとズーイ』の再読は、懐かしさと同時に、作品と「出会い直した」感覚があるといいます。大枠は覚えていても、一つひとつの表現に「こんなことを書いていたのか」と驚きながら読んでいる途中だそうです。
毎年の正月に読み返す『エンタメの夜明け』
青木さんから好きな本を何度も読むかと聞かれ、今井さんは何冊かあると答えます。その一冊が、年始の1月3日までにほぼ毎年読んでいるという『エンタメの夜明け』です。
今井さんによると、『エンタメの夜明け』はディズニーランドを日本に招致するまでを描いた短い本です。招致したのは堀貞一郎さんで、今井さんはオリエンタルランドの初代社長かもしれないと話しています。
今井さんいわく、堀さんはホーンテッドマンションで部屋が伸びていく演出のナレーションを担当した、とてもいい声の人です。本にはもう一人、堀さんの師匠で元電通の小谷正一さんが登場します。
今井さんが挙げた小谷さんの仕事は、デパートの屋上で無料の絵画展を開き、エスカレーターで降りてくる客に物を売る「シャワー効果」の仕組みづくりや、パ・リーグの創設です。6球団ができたあとプロ野球に入りたい人が大勢いたため、「もう一個作ったらよろしいや」ともう1リーグを作ってしまったといいます。
この小谷正一の話が僕はすごい、なんか割とこう、なんか理想とするビジネスマンというか。
今井さんが理想とする人物には、小谷さんのほか伊丹十三さんもいるそうです。小説では、世代的にも好きな金城一紀さんの『GO』や『レヴォリューションNo.3』を、何度も読み返しているかもしれないと話しています。
「絶対面白い」佐藤正午という作家
青木さんは、積読が多すぎて何度も読み返すことは難しくなってきたと言いつつ、最近では松家仁之さんの『火山のふもとで』を3回ほど読んだと話します。もう一人挙げたのが、小説家の佐藤正午さんです。
青木さんによると、佐藤正午さんの作品は『鳩の撃退法』や『ジャンプ』など、昔から何本も映画になっています。映画そのものはそれほどと思わないものの、小説家としてはベスト3に入るほど好きだといいます。
タイトルからコメディのようだと感じた今井さんに、青木さんは伊坂幸太郎さんの作品にある「おかしみ」を引き合いに出して説明します。
なんかすごいそのおかしさの向こう側に悲しさとか喪失があったりもするし、でもその奥になんか希望みたいなものがちょっと見え隠れするみたいな。
今井さんがその場で『鳩の撃退法』のあらすじを読み上げると、元直木賞作家の送迎ドライバーが偽の1万円札を使ってしまい、裏社会の人物も絡んでくるという筋書きでした。今井さんは「確かにめちゃくちゃ伊坂幸太郎」と納得しています。
あのね、絶対面白いのよ。
青木さんは佐藤正午さんの新刊が出るとすぐに買い、良かったものは1冊を2回は読むといいます。80年代前半から書き続けている作家で、青木さんにとって珍しい存在のようです。
25歳までに読まないと意味がない本はある?
佐藤正午さんを読む中で、青木さんはサリンジャー好きだったことを久しぶりに思い出したといいます。当時はサリンジャーと、『赤頭巾ちゃん気をつけて』の庄司薫さんを同じノリの作家として読んでいたそうです。
もう若い人しか絶対好きじゃないタイプの。
青木さんの感覚では、村上春樹さんの作品は30代後半から距離ができ、40歳ごろにはあまり読まなくなる人が多いのではないかといいます。サリンジャーはそれよりもっと手前の、若いうちに読むべき作家だという位置づけです。
マジで二十五(25歳)ぐらいまでに読まないと意味ないみたいな本。
今井さんも、「その時読めてよかった」本はたくさんあると同意します。
青木さんは、最も有名な『ライ麦畑でつかまえて』には全くハマらなかったそうです。ところが『ナイン・ストーリーズ』で少しいいと思い、『フラニーとズーイ』でどハマりし、もう一度ほかの作品を読み直したら全部よく読めたといいます。
ライ麦畑
有名だが全くハマらず「意味わかんねえな」と感じる
ナイン・ストーリーズ
読んでみて少しいいと思う
フラニーとズーイ
どハマりする
再読
ほかの作品もすべて読み直し、よく読めるようになる
今井さんはこの流れを、苦手な食べ物でも一度おいしいものを食べると食べられるようになる体験にたとえます。快と不快のうち、快のほうだけ拾えるようになるのかもしれない、という見立てです。
青木さんは、今の若い人もサリンジャーに出会ったらハマるだろうと話します。今井さんは文庫のカバーを変えて新しい出会いを作る取り組みをいいことだと言い、青木さんも著作権が切れた作品なら出版社にもうまみがあり、みんなの都合がマッチした企画だと応じています。
耳かきカメラとバイク用ナビ、最近買ってよかったもの
今井さんが最近買ってよかったものを尋ねると、青木さんはネット広告で見かけて買った、先端にカメラとライトが付いた耳かきを挙げます。スマホで映像を見ながら耳かきができる道具です。
俺の耳なんかこんなになってたみたいなこととか、今まではさ、なんか適当にやってることがなんかこう見えるのは楽しかったかな。
ただし青木さん自身、「全然奥行きないな、これは」と笑っています。
バイクに乗る今井さんは、ナビアプリ「ツーリングサポーター」を紹介します。これまではGoogleマップやYahoo!カーナビを使っていましたが、バイク用があると知って試したところ、一般のナビとは違ったそうです。
今井さんによると、ツーリングサポーターは目的地を設定すると、近くのツーリングスポットを「行けばこういう景色が見られる」とレコメンドしてくれます。希望すれば走ったコースのログも残り、道のりそのものを楽しむためのアプリとして作られているといいます。
ドライブもそうなんですけど、景色がいいことの情報ってそんなにない。
お店の情報はあっても、景色のよい道の情報はなかなか見つかりません。今井さんは、その点をはっきりガイドしてくれるのが面白そうだと話しています。
マイナカードと免許証を統合して変わったこと
青木さんが最近やったのは、iPhoneにマイナンバーカードを入れたうえで、運転免許証とマイナンバーカードを統合する手続きです。更新時に選べるようですが、更新までまだ間があった青木さんは、免許試験センターに予約して手続きに行ったといいます。
超小型の財布を使う青木さんにとって、カードを減らせることは大きな利点です。マイナ保険証も使っているため、以前は保険証・免許証・マイナンバーカードの3枚だったものが1枚になりました。
保険証、運転免許証、マイナンバーカードの3枚
マイナンバーカード1枚。iPhoneにも入り、コンビニで住民票も取れる
一方で、iPhoneに入れても、運転免許としてはカード本体を携帯しなければならないルールだそうです。
なんだよってなってるけど、あれは嬉しいね。めちゃくちゃ嬉しい。
今井さんは、病院によってはマイナ保険証より保険証を出してほしそうにされる経験を話します。青木さんも「両方出してください」と言われることがあり、読み取り機をきちんと整備できていないなど、面倒な事情があるのだろうと推測しています。
なぜ飲食店はキャッシュレス化できないのか
デジタル化の話題から、今井さんは知人の飲食店主に聞いた話を紹介します。その店はPayPayは使えるものの、ほかのキャッシュレス手段はあまり導入していませんでした。
本気で国がデジタルを導入したかったら市場で使えるようにしてもらわないと困るって言ってて。毎朝の買い付けは現金なんだと。
店主によると、PayPayは入金が一番早いと言われていても2週間かかります。青木さんはすぐに「キャッシュフローの問題だ」「明日の仕入れの金がないってことか」と理解しました。
毎朝の仕入れ
市場での買い付けは現金払い
キャッシュレス売上
PayPayでも入金まで2週間かかる
資金繰り
昨日の売上の現金で今日の仕入れをする必要がある
結果
市場で使えるなら喜んで導入するが、現状は難しい
青木さんは、手数料が高くてもキャッシュレスに対応したほうが売上も利益も増えるのではと思い、ずっと謎に感じていたそうです。市場に限らず、食材の卸業者や酒屋への支払いが現金なら、小規模な事業者ほど事情は同じだと納得していました。
いやーそれはそういうの知るの好きだな。俺絶対どっかで得意げにその話するわ。
面白すぎない動画が落ち着くのはなぜ?
今井さんは最近、YouTubeでは面白すぎない動画を見ているときに落ち着くと打ち明けます。例に挙げたのは、高校生あるあるでTikTokで人気になり、今はサラリーマンあるあるを演じている兄弟芸人の土佐兄弟です。
土佐兄弟の動画は、実の兄弟が上司と部下を演じ、営業先へ向かう車中の会話や、アポをすっぽかして焦る部下に冷静に対応する上司などを描くものです。今井さんは、爆笑はしないけれど、ぼーっと見るのが楽だといいます。
青木さんは、コンテンツには情報を伝える、感情を動かすなど目的があるとしたうえで、面白すぎないコンテンツは別物だと考えます。
青木さんの見立てでは、面白すぎないコンテンツを見るときに求めているのは、やりとりの渦中に身を置くことです。この番組を聴く人も、面白い話をしているとは思っていないだろう、と青木さんは話しています。
なんか一人でさ、山小屋にいるってさ、最初の方楽だけどさ、すごい辛くなってくるじゃん。
別に面白い話しなくてもいいんだけど、誰かがなんかゴソゴソ動いててくれるだけでもいいみたいなさ。
今井さんはコロナ禍でラジオが流行った理由もそこにあるのではと応じ、青木さんは自分たちも「5匹目ぐらいのドジョウ」を狙ってこの番組をやっていると笑います。
面白そうだから観たくない、「面白い=ストレス」説
青木さんは、Netflixで面白そうな作品ほどなかなか見られず、マイリストが溜まるばかりだと話します。
今井さんは、映画や音楽、ドラマには監督の意思があると考え、日本の映画でも家では字幕を出すほど一字一句を逃したくないといいます。だからこそハードルが上がり、「ちょっと酔ってるしやめとくか」となってしまうそうです。
今井さんが、面白いものが溢れすぎているからかと尋ねると、青木さんはそれもあるとしつつ、日常系の漫画やアニメを例に出します。日常系の作品には面白くない部分があり、読者はキャラクターとわちゃわちゃしている感覚を味わいたくて見ているのだろう、という考えです。
日常系の漫画や土佐兄弟の動画。やりとりの中に身を置く感覚で、楽に見られる
闘技場を見るような体験。身を置くのは嫌な世界なので、見るのにストレスがかかる
身を置くのが嫌なものが面白なんだよね。
青木さんにとっては恋愛リアリティショーがその例で、渦中に身を置くのは嫌だから面白く見られる一方、面白いことはストレスなので、実際にはほとんど見られないといいます。
朝倉未来のリアリティショーに見るプリミティブな世界
リアリティショーの話から、今井さんは格闘家の朝倉未来さんが主催するリアリティショー「ラブリング」を紹介します。DMM TVで配信されているようで、後輩から聞いた内容だそうです。
今井さんによると、ラブリングでは、同じ女性を好きになった男性同士がリングでタイマンをします。ただし勝ったほうがデート権を得るのではなく、女性がどちらがかっこよかったかで選ぶ仕組みです。
むちゃくちゃ変数の多いゲームなんですよ。
青木さんは、タイマンで生き様を見せるという構図に驚き、コンテンツが原始的な世界に近づいていると話します。
いやーなるほどな。なんかでもマジでプリミティブな世界にこうなってきてんだね、コンテンツもね。
まとめ
約2か月ぶりの雑談回は、SANUでの週末から始まり、再読したくなる本、生活を少し便利にした道具、飲食店のキャッシュレス事情を経て、「面白いものほど観られない」という心理へと広がりました。どの話題にも、二人が日々の小さな違和感をていねいに考える姿勢がにじんでいます。
- 今井さんは、読みたい本が読めず「しなきゃいけないこと」だけの状態を、忙しすぎるサインと捉えている
- 青木さんはサリンジャーを村上春樹訳で再読し、20歳で読んだ作品と「出会い直した」と感じている
- 飲食店のキャッシュレス化が進みにくい背景には、現金での日々の仕入れと、入金まで2週間かかる資金繰りの問題がある
- 青木さんは、面白すぎないコンテンツの本質をコミュニケーションだと考え、面白いものは身を置きたくない世界だからこそストレスになると話した



