ロボットが新卒入社?テレビで特集されたPlay Roboticsの近況
番組恒例の「Play Roboticsニュース」では、まずPlay Robotics自身の近況が語られました。佐野さんによると、以前プレスリリースを出したカクイチへのヒューマノイド導入をきっかけに、Play Roboticsが朝の情報番組で取り上げられたそうです。
放送はおよそ5分で、カクイチ側の担当者が出演し、なぜロボットを新卒総合職として入社させたのかが紹介されたといいます。
ね、新入社員としてロボットがね、社員になったっていう。
もう一つの近況は、富士通が川崎に持つ拠点での動きです。エピソード説明では「UIS書き起こしでは「with」」と表記されているこの施設は、スタートアップも気軽に使えるイベントスペースで、Play Roboticsはここに小さなブースを設けて実験を始めています。
横山さんの説明では、この施設は会員登録すれば誰でも無料で使えるコワーキングスペースで、さまざまな企業の人が集まって作業や交流をしているそうです。佐野さんと横山さんは週に2〜3回ほど、この施設にいるといいます。
施設では、富士通・GMO・Play Roboticsが共同で行うハッカソン的な取り組みのために、Unitree G1 ── 中国のロボットメーカーUnitree Roboticsが開発した小型の人型ロボット。研究・開発用途で広く使われています書き起こしでは「Unit3のG1」が1台置かれています。佐野さんいわく、このロボットは「大体椅子に座ってふんぞり返ってる」とのことです。
ほかにも実験中のロボットアームや開発中のロボット、ペッパーくんなどを持ち込む予定で、二人がいるときなら来訪者を案内できるそうです。
プニプニ触れるキーホルダー型ロボット、みんなで育てる拠点に
Play Roboticsが開発中のコンパニオンロボットについても、新しい進捗が共有されました。このロボットはキーホルダーほどの小さなサイズで、話すことができます。
佐野さんによると、このコンパニオンロボットは「魂移動」ができる設計で、自分で育てたロボットの中身を、別のさまざまなロボットへ移せるようになっているそうです。10月初旬ごろにテスト機が1台完成し、ユーザーテストやインタビューを重ねて完成を目指すといいます。
(このロボットは)画面上でプニプニ触れる触感をなんかこう感じさせるようなギミックがありまして、仕掛けがあるんですけど、いっぱいプニプニしたくなるはずなんで、ぜひ触りに来てくれると嬉しいです。
樋口さんが「スクイーズ的なね」「無限プチプチ的なね」と反応すると、佐野さんはスクイーズはかなり意識していると答えています。
樋口さんは以前から、リスナーも交えて1台のロボットをみんなで育てる企画を面白いと話していました。川崎の拠点ができたことで、その構想が現実味を帯びてきたようです。
うわ、ちょっとなんか育てたいな。将棋めっちゃ強くしましょうよ。めっちゃ将棋指して。
最初はだから駒も持てないくらいあわあわってなるけど、駒をこうやって持つんだよつって、歩は1個前に進むんだよつって。
横山さんも「育ちそう、普通に」と乗り気で、佐野さんは拠点に3Dプリンターも置く予定だと付け加えました。「実験デー」としてみんなで何かを作る場にもなりそうです。
NVIDIAはなぜHugging Faceという「入り口」を買ったのか
世界のニュースの1本目は、NVIDIAがHugging Faceを約1兆9000億円で買収すると発表した件です。佐野さんは9月3日に出たニュースとして紹介し、詳しくは後の回で改めて取り上げると前置きしました。
佐野さんの説明では、Hugging Face ── AIモデルやデータセットを共有するプラットフォームを運営する企業。オープンソースのAIモデルが数多く公開され、開発者の拠点になっていますは世界中のAI開発者や企業が集まり、オープンソースがあふれるコミュニティのような場所です。技術者はそこで情報を共有し、その情報を基に開発を進めています。
樋口さんは、開発環境を提供するNVIDIAが、いわば「知のプール」を買ったことになると受け止めています。
佐野さんが面白いと感じたのは、ビジネスモデルとしての狙いです。ビジネスには入り口を買う、出口を買う、プロセスを買うといった選択肢がある中で、NVIDIAは開発者が最初に訪れる入り口を押さえたと佐野さんは見ています。
佐野さんは「NVIDIAの株を買う数を増やそうかな」とまで話しつつ、投資を勧める意図ではなく個人的な観点だと念を押しました。
ロボットの頭脳は汎用LLMで足りる?ChatGPT 6 Astraの実験
2本目のニュースは、ロボットを動かすAIは実はChatGPTでよいのではないか、という実験結果です。9月中に公開された最新モデル「ChatGPT 6 Astra」を使い、複数の研究機関が検証を行っています。
1つ目は、第三者評価機関の「RoboCurveRoboCurve」が行った実験です。カメラ映像からロボットアームの位置を把握し、何秒後にXYZ座標上のどこにいて、最終的にどこへ行けば物を掴めるか、という「何をすべきか」を考える部分をChatGPT 6 Astraに任せました。その結果、掴んで運ぶ作業を95%の確率で成功させたといいます。
これまでは、ロボット専用のAIモデルを作ってファインチューニング ── 学習済みのAIモデルに追加のデータを与え、特定の用途向けに調整すること。ロボット分野では動作データで専用モデルを作る手法が主流でしたするのが一般的でした。汎用のLLMでも十分いけるのではないか、という可能性が実験結果として出てきたことになります。
2つ目はノートルダム大学の研究です。産業用ロボットは従来、腕をどの速度で何回転させるかをエンジニアがプログラムで書いていました。この研究では、ChatGPT 6 Astraに画像から状況を理解させ、作業に必要なコードをその場で書かせて実行させています。
両腕のロボットに「タオルを畳んでください」と指示すると、ChatGPTがその場でプログラムを書いて実行し、ほぼ100%に近い確率で成功したと佐野さんは紹介しています。
| 実施主体 | ChatGPTに任せた役割 | 結果 |
|---|---|---|
| RoboCurve | カメラ映像から位置と動作先を判断 | 掴んで運ぶ作業で95%成功 |
| ノートルダム大学 | 画像から状況を理解し、制御コードを書いて実行 | タオル畳みなどでほぼ100%に近い成功 |
樋口さんはこの話から、AlphaGo ── Google傘下のDeepMindが開発した囲碁AI。2016年に世界トップ級の棋士に勝利し、AIの到達点を示す出来事として注目されましたを思い出したといいます。専門的な研究の積み重ねを、より汎用的なAIが飛び越えていった出来事に近いのではないか、という連想です。
APIコストは1回1000〜4000円。課題はデータの蓄積で解けるか
汎用LLMでロボットを動かす実験には、課題もあります。佐野さんがネックとして挙げたのは、APIの使用量です。
(成功率は)めっちゃ高いんですけど、まあそれを達成するまでに大体1000円から4000円くらいかかっちゃうみたいなところの使用量がかかるっていうところと、
さらに、コードを書くのに10分、20分とかかるため、現時点ではリアルタイム性がありません。佐野さんは、ChatGPTの進化によってこうしたボトルネックは解消されていくのではないかと見ています。
樋口さんは、1つの作業のコードを書くのに1000円かかっても、同じ作業を1万回繰り返すならそのコードを使い回せる、と指摘しました。佐野さんは、使える部品として再利用しつつ、状況がずれたら書き足す部分が必要になると補足しています。
佐野さんはここで、以前番組で紹介した、ロボットの頭脳を作る会社「SkilledSkilled」の取り組みにも触れました。ロボットを動かしたデータをデータベースに溜め、さまざまなロボットのデータから汎用的に使えるモデルを作っていく方向です。
佐野さんによると、SkilledのCEOは、各専門領域の濃いデータを溜めていけば共通項が見えてきて、効率化に使えると話していたそうです。ChatGPTを使う方向と、自社データでAIを作る方向の両方で競争が進めば、開発は一気に速くなると佐野さんは見ています。
もうだからシンプルな話で、データが溜まれば溜まるほど開発コストが下がっていくわけだから。
デザイナーもエンジニアも一人で。AI時代に価値が上がる「統合する人」
話題はChatGPT 6 Astraの3D空間認識能力から、横山さんの仕事ぶりへと移ります。横山さんは映像認識に強いAstraを、開発中のコンパニオンロボットの3Dモデリング設計に活用しているそうです。
エンジニアの横山さんは最近、デザイナーの領域にまで踏み込んでいます。世界観を作り込んで可愛いデザインを作り、それを工学的な観点から自ら批判し、基板などが収まる形に直し、さらにソフトウェアに落とし込む。当人は「何の人なのか自分でもわかんなくなってきました」と笑います。
一個一個のやることのハードルは下がって、それ(全部の工程)を統合する人の価値がめっちゃ上がってきますよね。
一方で、はんだ付けのような手作業はまだ自分でやるしかなく、そこはフィジカルAIに頑張ってほしいという話も出ました。助手のロボットに「はんだ付けしといて」「3Dプリンター動かしといて」と頼めるようにしたい、という願いです。
佐野さんは、本来ならあと10人ほど雇う必要があった開発を横山さんがほぼ一人で担えるようになり、「横山さんが作って佐野さんが売る」という二人体制で回せると気づいたことを、大きな発見として挙げています。
開発には横山さんのほかに10人ほど雇う必要があると考えていた
AIを活用し、横山さんが作り佐野さんが売る二人体制で回せる見込みに
だからなんかもうね、チームビルディングっていう能力いらなくなっちゃったんですよ、最近。
ただし直後には、AIでチームを組む力はもちろん必要だ、という一言も添えられています。
ヒューマノイドの訓練データが売り買いされる市場が登場
3本目のニュースは、ノルウェーの会社Kinetic Blocksが、ヒューマノイドの訓練データを売買できる市場を開設したという話です。
これまでは、各社が自社の工場でデータを集め、実験し、そのデータを基に開発するのが基本でした。佐野さんは、企業同士でデータを売り買いできるようになれば、開発がずっと楽になると見ています。
特に、現場でニッチなデータを持っている会社は、データさえ取れればそれを売れるようになります。Kinetic Blocksはすでにシード段階の資金調達を済ませており、審査制でデータの質も担保されているといいます。
なのでもうこれでなんか今までなかなかみんながデータを隠そうと思っていたけど、会社によっては別にこのデータ売れるんだったら売りたいなっていう会社も結構あると思いますので。
佐野さんは、メルカリの登場で個人間の売買が加速し、物が安く手に入るようになったことを例に挙げます。Kinetic BlocksはBtoBの市場ですが、プラットフォームができること自体が大きな革命だと捉えています。
樋口さんは、個人が自分の行動データを売るマーケットも生まれるのではないかと想像しました。スキルを売買するココナラ ── 個人が自分のスキルや知識をサービスとして出品・販売できる日本のオンラインマーケットのように、あるいは薬を飲んで体のデータを提供し謝礼を受け取る治験 ── 新しい薬の効果や安全性を確かめるために、人を対象に行う臨床試験。参加者には負担軽減費などが支払われることがありますの「行動データ版」のようなもの、という発想です。
1タスク約1ドル、週8万人超が参加するFigure AIの「Index」
個人からデータを買う動きは、すでに始まっています。佐野さんが紹介したのは、Figure AIが始めたデータ買い取りサービスです。
App Storeで「Index」と検索するとFigure AIのアプリが見つかり、そこから登録する仕組みだそうです。参加の流れは次のとおりです。
佐野さんによると、このサービスは8月末ごろに正式発表され、収録時点の9月17日には週間アクティブユーザーが約8万6000人に達しています。毎秒30分ほどの新しい動作データが溜まっている計算だそうです。
一方で佐野さんは、データの料金は以前よりかなり安くなっているとも指摘します。30分から1時間撮って1作業150円ほどというのは安く感じるものの、この速度でデータが溜まれば世の中が変わりそうで、それが一番怖いと語りました。
樋口さんは、普段の生活で自然に溜まるデータなら、安くても売る価値があると考えます。毎日料理をする人がキッチンにカメラを置いてオンオフするだけで100円もらえるなら、コスパは悪くない、という例えです。
だから(データが)安くなる代わりに、何て言うのか、差し出すコストも安くなっていくというか。
9分寝て90分働く。ショートスリーパー型ロボット「Digit」
4本目のニュースは、Agility Roboticsが出した工場向けの最新ヒューマノイド「Digit 5」です。佐野さんはこれを「ショートスリーパーのロボット」と紹介しました。
前のモデルは1回の充電で4時間働けますが、その分2時間の充電が必要で、稼働と充電の比率は2対1でした。Digit 5は1回の充電で90分しか働けない代わりに、9分で満充電になります。
4時間稼働して2時間充電。稼働:充電=2対1
90分稼働して9分で満充電。稼働:充電=10対1
樋口さんが「働く比率が単純に5倍になったということ」と確認すると、佐野さんはそうだと答えています。短い充電を繰り返すことで、事実上ずっと働き続けられる設計です。
一時間とか九十分働いたら、ちょっとタバコ吸ってくるわとか、コーヒー入れてくるわとかで10分くらい休むじゃないですか。なので90分に9分休むって、別にそんなに作業を止めてるわけでもないなっていう気がして。
樋口さんは、人間の職場の休憩リズムに自然と溶け込める点を評価します。人と一緒に休憩所へ行き、「一服してくる」と9分間充電につながれる、という光景も想像されました。
どのような電池素材でこのブレイクスルーが起きたのかは公開されておらず、社外秘になっているそうです。
故障ロボットに駆けつける「ヒューマノイド救急車」
5本目は日本のニュースです。ヒューマノイド事業に力を入れるGMOグループの「GMO AIRobotics商事正式社名」が、「GMOヒューマノイド救急車」を発表しました。
佐野さんによると、ヒューマノイドは意外とよく故障します。中国やアメリカから仕入れたロボットは日本で直すのが難しく、メーカーに問い合わせると送って返ってくるまでに3ヶ月ほどかかることもあるそうです。
ヒューマノイド救急車は、トラブルの現場に駆けつける専用車両です。対応の流れは次のように説明されました。
駆けつけ
主要部品と修理工具を積んだ車両で現場へ向かう
診断
その場でロボットの故障を診断する
修理・代替
直せるものはその場で直し、直せなければ代替機を置いていく
本国修理
必要に応じてメーカーの本国に戻して直してもらう
佐野さんは最初、名前を聞いてふざけているのかと一瞬思ったそうですが、中身を見て「めっちゃいいサービスじゃん」と感じたといいます。
何ですかね、ロボット買う時に一番怖いのって「壊れたらどうしよう」とかなんですよね。
佐野さんは、ある会社で「腰が壊れて直せず、その場から動かせないので腕の作業しかさせられない」という話を聞いたことがあるそうです。横山さんなら直せるかもしれませんが、直せない会社も多いと考えています。
樋口さんは「JAFだ」とたとえ、救急車という呼び方は、ロボットを人間のように捉えていることの表れだと指摘しました。佐野さんも、やっていることは保守点検でも、救急車という名前は注目を集めるマーケティングとして面白いと話しています。
ハエの脳で遊ぶ実験が流行。人格はコピーできるのか
救急車の話から、ロボットは本体を丸ごと替えてもデータさえ残せばよい、という話題に移ります。佐野さんは、データだけ残せば体を替えられるのがロボットの強みだと述べ、樋口さんは人格とは何かという哲学的な領域に入りそうだと応じました。
そこで佐野さんが紹介したのが、エンジニアの間で流行している「ハエの脳で遊ぶ」実験です。Googleなどが、ハエの脳のノードのつながり、つまり脳の構造をすべてオープンソースで公開したといいます。
エンジニアたちは、そのデータを使ってシミュレーション上のハエの脳にさまざまな作業をさせています。ゲームを遊ばせたり、ドローンにハエの脳を入れてみたりする試みもあるそうです。
(ハエの脳で遊ぶ中で)こういう経験の獲得、報酬の獲得をして、こういう性格に育つみたいなのが、そしてそのデータとしてポータビリティや移動できるロボットの中に入れられるみたいなのが、ちょっとみんながマッドサイエンティスト的に遊ぶ中でわかってきたんで、
佐野さんによると、人間はこれのデータ容量が大きい版なので、同じことが人間の脳でもできるかもしれないとわかってきた、という段階だそうです。報酬学習した脳をコピーして配布すれば、同じ人格がクローンできることにもなります。
樋口さんは「同じ人好きになったらどうするん?」と笑いつつ、コピー側が「あいつは偽物だ」と主張しだすSFのような展開を想像しました。佐野さんは、分けた後の経験によって別の人格に育つこともありうると答えています。
テセウスの船とバンド。ロボット時代の「本物」はどっちか
樋口さんは意識の本質を考える手がかりとして、テセウスの船 ── 船の部品を少しずつ交換し続け、元の部品が1つも残らなくなったとき、それは同じ船と言えるのかを問う古代ギリシャ由来の思考実験を紹介しました。
部品を取り替えながら修理を重ねた船は、最終的に元の物質が残っていませんが、系譜としてはそちらが本物です。一方、外した古い部品を直して組み立て直した船もあり、どちらが本物かが問われます。
佐野さんは、海外のバンドで名前はそのままに、メンバーが少しずつ入れ替わって全員違う人になっていたケースに似ていると反応しました。樋口さんは、まさにそれが人間の体と脳と意識で起こりうると話しています。
じゃあいずれこの三人のヒューマノイド(最前線)もね、最前線も全員違う三人がやってる可能性あるぞ。
佐野さんは「体調が悪いときに代わりに出てもらえる」と前向きに捉え、ハエの脳は無料で遊べるようなのでぜひ試してほしいと呼びかけました。樋口さんの「最悪のニュース回」という締めの言葉どおり、最後は笑いの中で終わっています。
まとめ
この回では、AIの開発者が集まる場所、ロボットを動かす頭脳、その頭脳を鍛えるデータ、そして現場で働き続けるための仕組みが、9月のニュースを通して一続きに語られました。技術の進歩とともに、人格や「本物」とは何かという問いまで浮かび上がっています。
- NVIDIAによるHugging Face買収は、AI開発者が最初に訪れる「入り口」を押さえた戦略だと佐野さんは見ている
- 汎用LLMのChatGPT 6 Astraでロボットを動かす実験は高い成功率を示したが、1回1000〜4000円のAPIコストと時間が課題
- Kinetic BlocksやFigure AIの「Index」など、ロボットの訓練データを企業や個人が売買する市場が広がりつつある
- 9分充電で90分働くDigit 5や、故障に駆けつけるヒューマノイド救急車など、現場で使い続けるための工夫が進んでいる
- ハエの脳をシミュレーションする実験の流行から、人格のコピーや「本物」とは何かという問いが話題になった





