「やりたいこと」より「おかしいこと」が思考の引き金になる?
この回のきっかけは、以前の放送で永瀬さんが話した「AIが台頭する中で、やりたいことを考える力が衰えているのではないか」という疑問です。中さんはこの話に「確かにな」と感じたといいます。
俺はそういうのを普通にナチュラルにずっと考えてたから、(みんなも)当たり前やろと思ってたけど、みんなそうじゃないんかって思った時に、いろいろ考えてて。
中さんはYouTubeなどを見ながら考えるうちに、1つの問いにたどり着きます。それが「自分がこの社会や世の中に対して、おかしいと思っていることはないか」という問いでした。
これおかしいよねって、この社会とか世の中とかに対して思ってることってないですか?っていう問いなんですよ。結構それが大事な気がしてて。
中さんは、長く生きてきても「やっぱりおかしいよな」と感じることが、脳を活性化させる1つの引き金になるのではないかと考えています。
中さん自身の例は、いま取り組んでいるシステム開発の事業です。業界に残るアナログな作り方を、中さんは「もう許せない」とまで言います。自分でもずっと作ってきて、周りにも作ってもらいながら「なんでこんなことせなあかんねん」という思いが抜けないのだそうです。
だからなんとか効率化できないかっていうのは、やっぱ常にずっとそれだけは考え続けてて。おかしいやん、どう考えてもこんなことって思わないですか?
樋上さんも「それは思いますよ」と同意します。中さんは、自分の場合は「おかしい」と思う度合いが強いのだと話します。効率化をうたいながら、実際には要領が変わってやることが増えている状況もあるといいます。永瀬さんも、翌年にはさらに大きく、よくわからないシステムが送られてくると重ねました。
中さんにとって、この違和感こそが事業に一番熱が入る理由です。誰にも使ってもらえなくても、自社だけでも絶対に開発して変えていくといいます。
中さんの提案は、思考の入口を変えることでした。「やりたいこと」は意外にピンと来にくいものです。そこで、普段から感じている「これおかしいよな」をフックにするほうが、思考が広がりやすいのではないかと考えています。
意外に難しく、ピンと来にくい
普段の引っかかりがフックになり、思考を引っ張っていきやすい
食まで効率化していいの?永瀬さんが抱く冷凍食品への違和感
中さんの問いに、永瀬さんが「明確にある」と挙げたのは食の話です。人間にとって衣食住は三本柱なのに、最近は冷凍食品を温めて食べるなど、作る工程を省く傾向があると永瀬さんは感じています。
あれめっちゃ謎なんですよ。なんでそこ(食)を豊かにしていかへんやろ。
永瀬さんによれば、料理は作るプロセスも含めて、家族と過ごす楽しい時間になり得るものです。それを全部省いてしまえば、家族が集まる必要もなくなっていくのではないか、と疑問を口にします。
永瀬さんが特に気にしているのは、一人暮らしの人などに向けて「作る時間は無駄」と打ち出す冷凍弁当の広告です。こうした広告を見ていると、食の喜びをどんどん減らしていくことが何なのか、不思議に思うといいます。
永瀬さんは、冷凍食品が家族の食卓をどう変えるかも具体的に説明します。手作りの料理はできたてが「今が食べ時」なので、家族が揃って食べる集いの場が生まれます。冷凍食品は、各自が好きなタイミングで温めれば済むものです。
なんかその人のタイミングに合わせてあっためたらいいってなってくるから、そもそも(家族が)揃わんくないと。
冷凍食品を温める
作る工程と「できたての食べ時」がなくなる
各自のタイミングで食べる
好きなときに温めればよくなる
食卓に揃わなくなる
家族が集う場が生まれにくくなる
永瀬さんは、食べるものが画一的になる点にも違和感を持っています。きんぴらを作ろうと冷蔵庫を開けると、ごぼうの日もあればレンコンの日もある。そんな日ごとの違いも料理の楽しさだといいます。
そういうの頼み出したら絶対同じものになってくるじゃないですか。味はそら美味しいんかもしれんけど、そこら辺を薄くしてって大丈夫なのかっていう、人間は大丈夫なのか。
中さんは、効率を重視しそうな永瀬さんが、食については効率化すべきでないと考えている点を面白がります。そのうえで「忙しい中でチンできたら楽だと思うのも人」と指摘し、永瀬さんも「それはそう」と認めました。
永瀬さんの疑問は、旅先での食事にも向かいます。観光地まで来て、理由もなく「マクドがあるから」とチェーン店で済ませる様子には首をかしげるそうです。チェーン店しかない場合や、地元の料理が高すぎる場合、好みでない場合は気にならないといいます。
「作る楽しさ」が見えるかどうかで違う?家に帰りたくなる食卓の話
永瀬さんの食の話について、樋上さんは「理解できるし、その通り」と受け止めます。そのうえで、永瀬さんがそう思えるのは料理を作ること自体に楽しみを見出しているからだろうと話しました。
でもなんかその作ることに私はまだ楽しみを見いだせてないから。
樋上さんも、手作りの料理が美味しいことは認めています。母親に「今日は総菜を買ってきた」と言われたら残念だといいます。永瀬さんは「今日は鍋にしたで」と言われたら「よっしゃ帰ろう」となる、と続けました。
一方で樋上さんは、時短の広告にも納得する部分があったといいます。楽に作れる料理なら、一緒に食べる時間や子どもと遊ぶ時間を長くできるという考え方です。
だからその作る時間も一緒に楽しむことができるレベルで、自分に作るスキルがあれば、もちろんその時間も子供と過ごせたりとか、いろいろ見出せるものあるかもなんですけど。
作る過程そのものが楽しく、子どもと一緒に作ることもある。失敗しても面白く、続けるほど良くなる
手作りの良さはわかるが、まだ作る楽しみを見出せていない。時短で一緒に食べる時間や遊ぶ時間を増やす考えにも納得する
永瀬さんは、土日に子どもと料理を作ることもあるそうです。中さんは、作ることも一緒に楽しむエンターテインメントだと受け止めました。永瀬さんは、失敗しても面白く、工夫を重ねるほど食が充実していくと話します。
中さんは、永瀬さんの違和感の裏には「好き」が隠れていると指摘します。料理が好きだからこそ、それが省かれることに「なんで?」と感じるのかもしれない、という見立てです。
ただ永瀬さんも、面倒なものは面倒だといいます。買い物の時間を確保し、生ものが持つように週の中頃にも買い足すなど、考えることは多いそうです。それでも作り続けるのは、作ってもらう側の気持ちを想像するからだといいます。
ほんならあの冷凍庫のAって書いてあるやつ温めてって言われたら、Aを温めるんやったら俺ここで(食べて帰って)もかなって。
作ってあるとわかれば帰ろうと思える、と中さんも同意します。永瀬さんは自分の持論として、家とはそういう場所ではないかと締めくくりました。
通勤はなぜ「チェンジ」できない?樋上さんの移動時間への疑問
中さんに話を振られた樋上さんは、「私、脳固まってっからな」と笑います。中さんは、おかしいと思っていても、社会に適応するために割り切っている人も多いはずだとフォローしました。永瀬さんは、言語化していないだけかもしれないと添えます。
樋上さんが挙げたのは、移動時間への違和感です。仕事では、近くない県で仕事をすることもあり、「そこの人がやればいいのでは」と感じる場面が多いといいます。
樋上さん自身は毎日伊丹 ── 兵庫県南東部の市。大阪国際空港(伊丹空港)があることで知られますから六甲 ── 神戸市の六甲山麓一帯を指す地名。阪神間の住宅地としても知られていますまで通っています。電車に乗るとき、逆に伊丹へ仕事に来る人がいることに気づいたそうです。
もしかしたら六甲から伊丹に来て仕事している人おるかもしれんくて。もし似たり寄ったりな仕事なんやったら、同じ仕事やったら(その人と)チェンジしたい。
永瀬さんは、働く曜日についても、事務方なら月曜日に働かなくてもいいのではと思うことがあると話を広げます。樋上さんの関心は移動にあり、わざわざ新幹線に乗る出張にも「向こうにもできる人がいるのでは」と感じるそうです。
樋上さんは、移動時間を有効に使えているわけでもないといいます。住んでいる近くに今の会社のような職場があれば一番だと、ずっと思っているそうです。
中さんが「会社の近くに住むことは考えなかったのか」と尋ねると、樋上さんは「伊丹が好きやったから」と答えます。中さんは、仕事を替えるか家を替えるかのどちらかだと笑いました。
樋上さんは、近くの人がやってもいい仕事を、遠くの人がわざわざ移動してやることを「面白い」と表現します。そこにはお金も時間もかかっているからです。みんなが自分の近くで働くのが当たり前なら、遠くの人に頼むことは起きないはずだと考えています。
中さんが在宅勤務は望ましいかと聞くと、樋上さんは「そうですね」と答えます。移動時間にできることは限られていて、移動がなければ買い物に行くなど、できることの範囲は確実に広がるからです。永瀬さんは、移動が長いのでずっとパソコンを持ち歩いていると話しました。
会社に行く意味はコミュニケーションにある?
樋上さんは、移動時間への疑問とあわせて、会社に行く意味についても話します。会社で人と話せれば、そこに来た意味があると感じられるそうです。
なんかめっちゃ忙しい時期とかに会社来ました。おはようございますとお疲れ様でした以外ほぼ何も喋らんかったなみたいな日が続くと、結構しんどい。
そうした日は「これなら家でやっても同じ」と感じるといいます。樋上さんにとって、片道1時間かけて通う意味は、職場でのコミュニケーションにありました。
いまは隣の席の永瀬さんと仕事や雑談の話ができるので、問題ないそうです。永瀬さんも、朝から帰るまでほぼずっと話しているといいます。ラジオを聴きながらツッコミを入れることもあるそうです。
中さんは、樋上さんの話から「コミュニケーションが大事」だと受け止めます。永瀬さんは、会社に来る理由は人それぞれだと補足しました。会社のルールだから来ている人もいて、全員がコミュニケーションを求めているわけではないといいます。
樋上さんは、話したくても「話しかけるほどのことがない」とためらうこともあると話します。永瀬さんも、静かに作業している人に話しかけるタイミングは難しいと同意しました。斜め前の席の人にわざわざ「今の面白くない?」とは言いにくい、という話にもなります。
中さんは「みんなにこれからいろいろ聞いていこう」と話を収めます。最後に樋上さんが、リスナーにも日頃のおかしいと思うことを周りの人と話してみてほしいと呼びかけ、回を締めくくりました。
まとめ
この回は、AI時代に考える力をどう保つかという問いから出発し、中さんが「やりたいこと」より身近な「これおかしくない?」を入口にしようと提案しました。業界のアナログな作業、食の効率化、通勤の移動時間など、3人それぞれの違和感の裏には、大事にしたいものや好きなことが隠れていました。
- 中さんは、社会への「おかしい」という違和感が脳を活性化させる引き金になると考えている
- 永瀬さんは、料理を作り家族が揃って食べる時間を、効率化すべきでない大事なものと捉えている
- 樋上さんは、手作りの良さを認めつつ、作る楽しさを見出せない立場からは時短にも利点を感じている
- 樋上さんは通勤や出張の移動に疑問を持ち、会社に行く意味はコミュニケーションにあると話した
- 違和感の裏には「好き」や大事にしたい価値観があり、それを言語化することが思考の手がかりになる





