民主党が上下院を奪還、決め手はAIデータセンター?
2026年のアメリカ中間選挙で、民主党が上院・下院の両方で多数派を奪還しました。CEOセオさんは、トランプ政権は「ねじれ」の状態になるだろうとし、この選挙で実は争点になっていたのがAIだったと切り出します。
セオさんが注目するのは、AIの重要な土台であるデータセンターの建設です。ビッグテック各社に加え、イーロン・マスク率いるスペースXも「テラファブ」と呼ばれる巨大なAI施設をテキサスに作ると打ち出していました。
各社が自前でデータセンターを作ろうとする中で、建設への規制が強まる可能性が出てきました。セオさんは「AIバブルか崩壊か」というニュースの流れを踏まえ、AIビジネスがどうなるのかを深掘りしていきます。
選挙の結果は、上院が民主党54議席、共和党44議席、下院でも民主党が過半数の218議席を突破しました。セオさんによれば、ちょうど選挙前と逆転した形です。
争点になったのは、AIデータセンターによる電気代の上昇、水の大量使用、騒音の問題です。インフレで生活が苦しい中、住民はさらにAIに圧迫されていると感じていました。
しかもAIって、こう、そういうの作ってる会社がとんでもない大企業とか、まあお金持ちっていうか、そういう層じゃないですか。
セオさんは、ビジネスで成功した人たちがさらに住民を苦しめるのか、という受け止め方が広がっていたと説明します。民主党はAIの規制側にいたため、そちらに票が流れたという見立てです。
データセンターの集積地とされるテキサスやオハイオでも、建設の一時停止を掲げた民主党の候補が知事選で現職を破りました。セオさんはこの動きを、ポピュリズムの表れかもしれないと話しています。
日米の株価が示した「AI株の明暗」
選挙結果を受けて、日本では日経平均が一時3000円下落し、マイナス800円ほどまで戻しました。キオクシアなどの株価も下がったといいます。
一方、アメリカではダウ平均が約3%高と今年最大の上げ幅を記録し、S&P500も1.6%上昇しました。セオさんは、ここでAI株の命運が分かれたと指摘します。
なのでAIといっても、まあみんな同じじゃないんですよ。
データセンターの建設が厳しくなるなら、誰が苦しくなり、誰が得をするのか。セオさんの答えは、すでにデータセンターを持っている側が得をするというものです。アメリカでビッグテックの株が上がったのは、そのためだと説明します。
反対に厳しいのは、これから新規で参入するところです。セオさんは、その代表例としてイーロン・マスクを挙げます。
スペースXはテキサス州でギガワット級の大規模なデータセンター建設を進め、住民との争いも抱えながら、250億ドル(セオさんの換算で3〜4兆円規模)を投じてテラファブを作ると表明していました。セオさんは、マスク氏にとってテキサスで共和党が勝つことは絶対に必要だったが、結果的に負けてしまったと話します。
ねじれ議会と、一枚岩ではない両党の立場
上下院を民主党に取られたことで、トランプ大統領は政策を進めたくても進められない状態になります。大統領には拒否権があり、上下院で3分の2を取らない限り覆せませんが、議会とのねじれは避けられません。
セオさんによれば、トランプ大統領は州ごとに決まる州法を、連邦のルールで上書きしたいと考えています。ねじれをその方法で解消しようとしている、という見方です。
AIをめぐる両党の基本的な姿勢は対照的です。Anthropic ── AIアシスタント「Claude」を開発するアメリカのAI企業。CEOのダリオ・アモデイ氏はAIの安全性を重視する発言で知られますのダリオさんが開発を少し緩めるべきではと発言した際も、トランプ大統領は中国に負けるから突き進めという立場でした。
中国に負けないためにAIを推進。州法も連邦のルールで上書きしたい
安全性を考えてブレーキをかけるべき。住民にツケを回すなと主張
セオさんは、インフレで生活が苦しい今の政治背景を見れば、民主党の主張に票が流れるのは「なんとなくわかる」と話します。
ただし、両党がすべてで対立しているわけではありません。AIデータセンターの電気代は民間企業が払うべきだという点は、民主党も共和党も言っているといいます。
さらに共和党の内部にも、データセンターの建設停止法案を出す人や、AIで実害が出たら企業に損害を負わせるべきだと話す知事がいます。セオさんは、党の中の人が同じではないことで、状況はさらにねじれると見ています。
世論の変化も大きく、データセンターが住民の生活を悪くすると考える共和党支持者は24%から42%に増えました。セオさんはこれを、エリート層とポピュリスト層の戦いが党内でも起きている状況だと表現します。
データセンターは近隣住民に何をもたらすのか
AIデータセンターが作られると何が起きるのか。セオさんは、これは日本でも実際に問題になっていると前置きして説明します。
1つ目は騒音です。データセンターは常に冷やし続ける必要があり、冷却ファンの低周波音が24時間365日、壁や窓を通して届きます。睡眠障害や頭痛などの健康被害を訴える住民が増えているといいます。
2つ目は水と電力です。セオさんによれば、1施設で数万から数十万世帯分に匹敵する電力と冷却用の水を使います。地下水や水道への負担が増え、住民の水道料金や電気代が上がる心配が出てきます。
3つ目は、地域経済への還元が少ないことです。データセンターは建設中こそ大量の人手を必要としますが、完成して運用に入ると、保守や警備など数十名程度で回せてしまいます。
建設中は大量の人材が必要で、地域が潤う
運用に入ると数十名程度で回り、閑散化する一方、水・電力の消費と騒音は続く
ロボット化が進めば、人はさらにいらなくなります。セオさんは、住民から見ると負担と恩恵のバランスがまったく取れていないと指摘します。
日本でも、ソフトバンクがAIデータセンターを作る際、住民に義援金を配ったり電気代を一部負担したりして、建設への理解を求めています。それでも割に合わないと感じる人は多く、家を買った人は簡単には引っ越せないとセオさんは話します。
データセンターが建てられなくなると、影響はAI産業全体に連鎖します。セオさんが語るその流れは、次のようなものです。
建設が困難に
新しいAIデータセンターが建てられなくなる
半導体企業に打撃
NVIDIAやQualcommなどがダメージを受ける
AI企業が伸び悩む
OpenAIやAnthropic、Googleなどの商売がスケールしなくなる
AI費用の上昇
コストのしわ寄せで料金が上がり、使う人が減る
バブル崩壊の可能性
AIバブルが崩壊するおそれが出てくる
規制で守られるのはビッグテックというパラドックス
セオさんによれば、規制が強まる中で有利だと見られているのは、すでに設備を持つGoogleやAmazonなどの大手です。そのため、これらの株価が上がると言われています。
株価が上がる理由はもう1つあります。ビッグテックはデータセンターに100兆円を超える投資を決めており、その結果、各社が大きな赤字を抱えています。
セオさんの紹介によれば、Amazonのフリーキャッシュフローは12か月で見てマイナス6.7兆円です。Googleの親会社AlphabetやMetaも、2026年7〜9月期にフリーキャッシュフローがマイナスに転じました。
ですから、まあ投資をしてるから赤字になってるんで、まあ投資家心理からすれば、それ(投資)やめれば一旦落ち着きますね。
つまり、データセンター投資にブレーキがかかれば「止血」できるので、投資家にはむしろ好材料と受け止められているという見方です。
セオさんはさらに、民主党の「みんなのため」という規制が、結果的に大手を利する可能性を指摘します。その前例として挙げるのが、EUのGDPR ── EUの一般データ保護規則。2018年に適用が始まった個人データ保護の包括的なルールで、違反には巨額の制裁金が科されますです。
GDPRは個人を守るための厳しい規制でしたが、結局恩恵を受けたのはFacebookやGoogleのようなビッグテックだったと言われています。セオさんは、住民を守るはずの規制が一周して、大手への集中と二極化を推し進めることになるのではないか、という見方も裏ではあると話します。
データセンターの行き先とイーロン・マスクの誤算
今後のAIデータセンターについて、セオさんはいくつかのシナリオを挙げます。1つは、州ごとにルールが決まり、作れる州と作れない州に分かれていく展開です。
広い土地があり建てやすかった場所が難しくなれば、データセンターは海外に出るかもしれません。セオさんは日本も候補になりうるとしつつ、日本でも建設には相当な反対が起きていると話します。
場所によってはもしかしたらAIデータセンターというのが、うーん、その一つビジネスになるのかもしれませんけれども、なかなかね、これどうですかね。
少子高齢化で閑散とした地方なら可能性はありますが、誰も住んでいない場所はありません。セオさんは、規制の緩い州や海外に分散していくのが1つの見方だとまとめます。
もう1つのシナリオは、ビッグテックがロビー活動で規制に反対し、ルールづくりを持ちかける展開です。その場合、抑えられた形で建設が再開されるかもしれませんが、作れるのはロビー活動に成功した企業だけになります。
そこで厳しいのがイーロン・マスクです。セオさんによれば、マスク氏は共和党を推してきたため民主党から嫌われており、スペースXの株価も下がっています。
マスク氏はテラファブをテキサスに作るため、今回の中間選挙で支援候補に740億円を投じ、その半分をテキサスに投下しました。それでも支援候補は敗れています。
ビッグテックの設備投資は今や210兆円規模と言われ、セオさんは日本の国家予算に匹敵すると指摘します。そのうえで、AIに関して日本は後発になっているかもしれないと話しています。
| 区分 | 企業 | 背景 |
|---|---|---|
| 上昇 | マイクロソフト、アマゾン、アルファベット | 既存のデータセンターを持ち、投資抑制で赤字の止血が期待される |
| 下落 | NVIDIA、スペースX、テスラ | 建設規制で半導体需要や新規建設に逆風 |
セオさんは、建設問題とAIの成長スピードはAIビジネスの土台にあたる部分なので、今後の状況をよく見ていく必要があると締めくくります。
まとめ
2026年のアメリカ中間選挙では、データセンターへの住民の反発が民主党の勝利を後押ししました。CEOセオさんは、規制が強まると新規参入者が苦しみ、既存設備を持つビッグテックが得をするという、ルール変更の裏側を指摘しています。
- 民主党が上下院を奪還し、AIデータセンターによる電気代・水・騒音の問題が大きな争点になった
- 建設規制が強まると、すでにデータセンターを持つビッグテックが有利になり、新規参入者は厳しくなる
- データセンターは運用後の雇用が少なく、住民にとって負担と恩恵のバランスが取れていない
- EUのGDPRと同じく、住民を守る規制が結果的に大手への集中を進める可能性がある
- イーロン・マスクは740億円を投じても支援候補が敗れ、お金で世論を変えられなかった







