好きなアーティストは誰?ランキングで曲を選ぶ吉田さん
この回は、中さんからのリクエストで始まります。前回の「飽きるとはなんぞや」という話に個人的にかなりハマったものの、吉田さんの感覚がまだよくわからないので、もう少し深掘りしたいというものです。
飽きるってなんぞや話がちょっと個人的にだいぶハマってしまいまして。
中さんが最初に聞いたのは、好きなアーティストはいるのかという質問です。吉田さんは、自分たちは小室哲哉 ── 1990年代に数多くのヒット曲を手がけた音楽プロデューサー。プロデュースした楽曲がチャートを席巻し、その時代を「小室ブーム」と呼ぶこともありますの世代で、小室哲哉の曲は好きだったと振り返ります。
ただし吉田さんは、当時CDを借りてカセットテープに録音していたころも、好きなアーティストを選ぶのではなく、ランキングを見てツタヤに借りに行っていたそうです。
それ(CD)ももう好きやから借りるじゃなくてランキングで借りに行ってました。
今の推しを聞かれた吉田さんは、ミセスグリーンアップル ── Mrs. GREEN APPLE。若い世代を中心に人気を集める日本のバンドで、ライブのチケットが入手困難になるほどの勢いがありますの名前を挙げます。けれど理由は、勢いがあってチケットも手に入らないと聞くので、どんなライブをしているのか一瞬見てみたいと思った程度でした。
推しかって言われると、別にチケットを買おうともしてないし、動いてないから推しではないかも。
樋上さんは、それは「吉田さんの推し」ではなく「世間の推し」だとまとめます。中さんは、音楽自体は好きなのに好きな人を聞かれるとわからないという吉田さんの状態を不思議がります。
吉田さんの説明では、カラオケでも好きだから歌うのではなく、自分の声に合うから歌うのだそうです。子どもが生まれる前に通っていたボイトレでも、歌いたい曲を持っていくのではなく、声が映えたり練習になったりする曲を先生に選んでもらっていました。
(ボイトレは)歌いたい歌があるから行くんじゃなくて、レッスンに行ってるから。
中さんが「自分の欲求があんまりないんですね」と返すと、吉田さんも「そこの欲求がないかもしれない」と認めます。
ビール、アクティビティ、映画。好きはあるのに固執しない?
樋上さんは音楽に限らず、吉田さんに「これが好き」と思うものはあるのかと尋ねます。吉田さんの答えはビールとアクティビティで、迷っている様子に中さんと樋上さんがつっこむ、にぎやかな場面になります。
好きなことあるけど、なんかその固執しないかもしれないです。
吉田さんはビールなら何でも飲むものの、嫌いなものは飲まないといいます。映画も好きで劇場によく足を運んでいますが、同じ作品を何度も見ることはなく、誰が出ているかより面白そうかどうかで選んでいるそうです。
ジャンルについて聞かれると、吉田さんはホラー映画はあまり見ないと答えます。樋上さんと中さんは、吉田さんの選び方を「嫌いを見ない」と言い表しました。
樋上さんは、映画は高校生ぐらい、ビールは二十歳ぐらい、アクティビティは25歳ぐらいからと、好きなものが加わった時期を確認します。そのうえで、新しい趣味が増えると、前の趣味に使う時間が減るような変化はなかったのかと尋ねます。
吉田さんによれば、アクティビティを始める前のほうが人と会っていたそうです。子どもが小さく行動範囲が限られていたころは、いわゆる女子のランチ会に参加していましたが、アクティビティを始めてからは行かなくなりました。
つまらないから。つまらないなと思ってたんで。
中さんは「つまらないけどやってたやん」と驚きます。吉田さんは、人との付き合い方も同じような感じだと話を広げていきます。
同窓会が嫌いな理由は「過去やから」
吉田さんが例に出したのは同窓会です。中さんも同窓会は「しんどい」とあまり好きではない様子ですが、吉田さんははっきり「嫌い」だと言います。
吉田さんの理屈では、同窓会は今会いたいから集まるのではなく、過去に一緒だったという理由で集まる場です。その理由がよくわからないので行かない、というのが吉田さんの考えです。
樋上さんはここで、吉田さんは好きなものに向かうより、嫌なことを省くほうに意識が向いているのではないかと指摘します。吉田さんの答えは短いものでした。
中さんは、大学の先生には会いに行っているのではないかと食い下がります。吉田さんは、先生には自分が会いたいから会うのであって、同窓会のように会いたいかどうかに関係なく過去の人たちが集まる場とは違うと説明します。
今も続いてるからっていうのがありますね。更新されていってるからっていうのがありますよ。過去の時で止まってない人。
同窓会と先生の違いについて、吉田さんと樋上さんの説明を整理すると次のようになります。
過去に一緒だったという理由で、会いたい人も会わなくていい人も大勢集まる場
年に1回などの頻度で会い続けていて、関係が今も更新されている人
中さんは、過去だからと切ってしまうと、先生のように毎年続く関係が新しく生まれる可能性もなくなると指摘します。吉田さんは「別に欲してない」と答え、中さんはその線引きが少し極端だと感じたと話しました。
嫌なものを省くスタンスに、偶然の出会いは入るのか
話がまとまりきらないまま、中さんは吉田さんのやり方を「自分にとって邪魔だとジャッジしたものを排除していくスタンス」と言い換えます。吉田さんは、自分ではっきり言ったわけではないとしつつ、「多分そうなんかもしれない」と受け入れました。
中さんが気になったのは、今は必要ないと思っていても、ふと入ってきたことが後で役に立つ場合もあるという点です。自分のジャッジで全部切ってしまうと、不確実なものに出会えないのではないか、という問いでした。
それだから不確実性みたいなのを取り入れるタイミングってあるんかなって。
これに対する答えは、吉田さん自身の経験にありました。25歳ぐらいから始めたアクティビティも、ふわっと入ってきたものだったのです。
急に1秒後に(いらんとは)決めないですよ。
吉田さんは基本的に何でも一度はやってみるものの、優先度が低いと判断したものには「もういらん」と思うそうです。他の人より、優先度の低いことをやらない傾向があるかもしれないと話します。
中さんはそれを「見切りが早い」と表現します。吉田さんにとっては、飽きるというより、やりたいことができなくなると感じたときに「やらんとこうかな」と思う感覚に近いようです。
やめられない理由と、吉田さんの「半年ルール」
中さんは次に、よく言う「やめるタイミングがわからない」の背景にある強迫観念について尋ねます。吉田さんは、続けることを善とする感覚があり、やめることには敗北感のようなものを強く感じると認めます。
(続けてしまうのは)やめたくないんでしょうね、きっと。
それなら新しいことを始めにくくなるのではと中さんは考えますが、吉田さんの答えは違いました。やめること自体はできて、やめるかどうかを判断する時期までは続けるのだそうです。その期間の目安は半年ほどだといいます。
だからやめるかやめへんか決めるまでの期間はある程度あるから、それまではやる。
吉田さんの話から、新しいことへの向き合い方を順に並べると次のようになります。
入ってくる
アクティビティのように、きっかけがふわっと入ってくる
やってみる
すぐにいらないとは決めず、基本は一度やってみる
半年ほど続ける
やめるかどうか決めるまでの期間は、ひとまず続ける
判断する
優先度が低ければやめ、続けると決めたものはずっと続ける
樋上さんは、吉田さんには飽きるということがないため、続けると決めたものは熱が冷めずにずっと続くのではないかと補足します。中さんは、それは習慣に近いのではないかと考えつつ、その先に「もっと難しいところに挑戦したい」といった欲求があるから続いているのだろうと話しました。
「好き」の熱は、グンと上がるかジワジワ上がるか
中さんから「まとめていただいてよろしいですか?」と振られた樋上さんは、吉田さんの話を「そうなんやぐらい」で聞いていて、そこまで不思議ではなかったと話します。そのうえで出した見立てが、好きの熱の持ち方の違いです。
樋上さんの見立てでは、同じ「好き」という言葉でも熱の持ち方が人によって違うのかもしれません。樋上さん自身はグンと上がってまた下がり、ある程度まで下がると「飽きた」の領域に入るそうです。
グンって上がるよりはジワジワジワって上がっていったら、そこからもう(キープしてる)。
樋上さんの見立てを図にすると、2人の「好き」の違いは次のように整理できます。
グンと上がり、そこから下がっていくと「飽きた」の領域に入る
ジワジワと上がり、ほどよい熱のままずっとキープしている
中さんは「素晴らしいまとめ」とたたえ、樋上さんはリスナーにも「みんなの好きは何ですか?」と問いかけて番組を締めくくりました。
まとめ
推しがいない吉田さんは、好きなものを追いかけるより嫌なものや優先度の低いものを省くことで、自分の時間を整えていました。一方で、入ってきたものは一度試し、続けると決めたものは長く続けるという一面もあり、樋上さんはそれを熱の持ち方の違いとして受け止めています。
- 吉田さんは音楽も映画も、好きなアーティストや出演者ではなく、ランキングや面白そうかどうかで選んでいる
- 同窓会を嫌う理由は「過去やから」で、今も関係が更新されている人には自分から会いに行く
- 新しいことは一度やってみて、半年ほどで続けるかやめるかを判断している
- 樋上さんは、好きの熱がグンと上がる人とジワジワ上がってキープする人がいると見立てた







