ロンドンの部屋から最後の生配信、5年でどこまで来た?
サイエントークは、研究者のレンさんとエマさんが科学をエンタメっぽく語るポッドキャストです。5周年を記念した今回の配信は、YouTubeの生配信に加え、初めてXでの同時配信も試みられました。
エマさんは、周年ライブ配信を毎年違う場所で行ってきたことを振り返ります。1年目の2022年4月ごろは、2人がまだ同棲前の恋人同士で、エマさんの家のリビングのソファで収録したといいます。
いや、でもこの家本当に最後だよ、もう。
2週間ぐらいで日本に帰るんで。
今回の配信場所は、2人が暮らしてきたロンドンの部屋です。約2週間後に日本へ帰国するため、この部屋からの配信はこれが最後になります。
配信当日は平日でしたが、2人とも休みを取り、午前中は家の近くの公園でピクニックをしていました。パンやサンドイッチ、コーヒー、サラダを買い、鳥の動きを眺めてぼーっと過ごしたそうです。
ロンドンの気温は20度弱で、日が落ちるのは夜8時ごろ。レンさんは「こっからイギリス楽しい季節」と話し、エマさんは残りの2週間を楽しもうと応じています。
「イギリス駐在員」の次、エマの肩書きはどうする?
レンさんが最初にリスナーへ意見を求めたのは、エマさんの肩書きです。番組では「研究者とイギリス在住デザイン」のように紹介してきましたが、帰国すればイギリス駐在員ではなくなり、「元イギリス駐在員」では今の姿を表せません。
いやもう、研究者とその妻でいいんじゃね?
エマさんからは「その妻」「その相棒」といった案が出ますが、レンさんは研究者に紐づかない、まったく別の肩書きのほうが面白いと考えています。研究者とアシスタントという形式はありがちで、実際に2人は「平等」と言われてきたからです。
コメント欄からは「相方」「動画職人」「コメンテーター」「絵描き師」などの案が寄せられました。コメンテーターについては「胡散臭い」というコメントもあり、2人も少し共感しつつ、コメンテーターを敵に回しかねないと笑っています。
話題は「どこから名乗っていいのか」という問いに広がります。エマさんがデザイナーはお金をもらっている人ではないかと言うと、レンさんは研究者も同じだと返します。
自称でしかないよね。研究者とか科学者とか言うけど。
もう一つの論点は、夫婦であることを伝えるかどうかです。初めて夫婦だと知って驚いたというコメントを受け、エマさんは、夫婦だとわかるようにしたほうがいいと話します。
番組の初期は、2人が恋人同士であることをあえて言わない時期がありました。コラボ相手に1つのイヤホンを2人で使っていたことからカップルだと気づかれ、そこから結婚へと進んだ経緯が語られています。
レンさんは最近、プロフィールに「科学をエンタメっぽく語る、夫婦の対談ポッドキャスト」とあえて書き込んでいるそうです。夫婦のパーソナリティは珍しいため、夫婦であること自体を番組の特徴として打ち出すという考え方です。
リスナーからは「サイエントークは夫婦で科学をエンタメっぽく語るポッドキャストです」という冒頭案も届きました。レンさんは、肩書きをセットにせず名前だけを並べ、研究者であることは説明欄に書く形もシンプルでよいかもしれないと話しています。結論は持ち越しになりました。
1年前の振り返りと、近本光司さんへのエール
配信の中盤は、ちょうど1年前に何をしていたかの振り返りです。1年前のレンさんは日本でロンドン行きの準備中で、引っ越しを終えた空っぽの家から1人でビデオポッドキャストを撮って公開していました。
最近、その動画だけを見た人に会うことがあり、「何の人?」という反応で恥ずかしかったとレンさんは笑います。
同じ時期には、近本さんとのコラボ回を4月16日と23日に公開していました。配信の前日、近本さんが試合中のデッドボールで手首を骨折したというニュースがあり、2人は心配を口にします。
人間、野球選手、近本選手を応援してるっていうか、人間、近本さんを応援してるもん、俺。
エマさんも、野球人生だけでなく、引退後の人としての活躍も楽しみだと応じています。
ほかにも、現役高校生と語った「シミ君回」や、マクスウェルや量子論を扱った物理の回、初めての旅行となったオランダの回が挙がりました。旅行の回は多く収録したものの、ダラダラ話してしまった回は記録として保留にしているそうです。
新しいリスナーはどこから来た? 「最近」の感覚がずれる理由
番組は昨年8月ごろに200回を超えました。コメント欄には、ドーパミンの回から知った人、チカブレ(別番組)経由や宇宙人回から来た人、4年前の第2シーズン開幕「ビッグバン」回から聴いている人など、さまざまなリスナーがいました。
ビッグバンの回が4年前と知ったレンさんは、時間感覚のずれを『ONE PIECE』にたとえます。ドレスローザ編がもう10年前に感じられないように、配信したときの感情は今も覚えているといいます。
レンさんによれば、論文では年号が重要で、2016年の論文を見ると意外と最近だと感じるものの、もう10年前です。エマさんも、コロナが6年前だと気づいて驚きます。
いやあと、いや思うのが、俺ら絶対同じ話してると思うんよね。
同じ話を繰り返していることへの対策として、エマさんが挙げたのがけんすうさんの作るPodyです。レンさんは過去回の復習に使っており、エマさんはショート動画の切り抜き箇所をGeminiで探しつつ、Podyも参考にしているそうです。
1年で一番手間がかかった企画「トリビアアワード」
レンさんがこの1年で最も印象に残った企画として挙げたのが、トリビアアワードです。リスナーからトリビアを募集し、声か文字で送ってもらった企画で、3回にわたって公開し、結果発表の回も出しました。
この一年で作るのに一番時間かけたのトリビアアワードだわ。
手間がかかったのは、企画づくりから公開までの工程が多かったためです。
レンさんは、つらかったと言いつつもフォーマットはできているので、今年も夏から秋ごろに開催したいと話しています。いろいろな番組の人がトリビアを送ってくれたことで、聴くポッドキャストが増えたという声もあったそうです。
途中で「バイクで世界一周中で、音源をダウンロードしてヘルメットの中で聴いています」というコメントが届きました。今はモンゴルとロシアの国境にいるという書き込みに、2人は驚いています。
宇宙の匂いはラズベリー? ねるねるねるね宇宙味の秘密
エマさんが印象的な回として挙げたのは、ねるねるねるねです。配信では、クラシエから再び贈られた「ねるねるねるね 宇宙のフルーツ味(ミックスベリーとパイナップル)」を作りながら話が進みました。
パッケージには「宇宙はラズベリーの匂いがする」と書かれ、宇宙飛行士の話をもとにミックスベリー味にしたと説明されています。レンさんによれば、宇宙そのものには匂いがないはずですが、宇宙から帰ってきた宇宙服からそうした匂いがするといい、山崎直子さんが協力していたはずだと話しています。
コメント欄からは「宇宙の匂いはギ酸エチル ── ラム酒やラズベリーのような甘い香りを持つ有機化合物。銀河の中心付近のガス雲で検出されたことで知られていますらしい」という解説も届きました。これに対しレンさんは、話はもっと複雑だと補足します。
確かにギ酸エチル自体はすごいブルーベリーっぽい香りはするんだけど、
ブルーベリーっぽい香りを持つが、宇宙のかなり遠くにあり、身近にあるわけではない
宇宙服から感じるベリーっぽい匂いは、別の物質に由来していたはずだとレンさんは話す
作り方は、通常3袋のところ4袋入りで、「お月様ソース」と「流れ星トッピング」が付いています。食べたレンさんは、本体はブルーベリー、お月様ソースはパイナップルの味だと驚き、ブルーベリー味より宇宙味で出したほうが絶対に気になると話しました。
2年目か3年目の配信でねるねるねるねを食べ、数年後にコラボし、公式から宇宙味をもらってロンドンで食べている。その流れを、2人は感慨深く振り返っています。イギリスの硬水で作ると味が変わるのかという質問も届きました。
脱線と喧嘩、そして「ふわふわした個人」でいる自由
最新のお便り回について、レンさんは編集中に脱線しすぎではないかと感じたと明かします。エマさんは、脱線したほうがいいのではと返し、2人の小さな喧嘩のエピソードを語りました。
どっちが先に何か謝るか謝らないかで、それで揉めて、で、パン買ったら忘れるっていう。
レンさんは今年を「科学回多め」と振り返ります。シリーズものが終わり、最近は一話完結で楽しくやっているそうです。
最近はポッドキャスト総研や朝ポキなど、プロのポッドキャスト制作者とも交流しました。そこでレンさんが感じたのは、事務所に入らずに好きなことを縦横無尽にやる個人の大切さです。
やっぱ個人、こういう個人いるの大事なんじゃない?と思ったね。なんか、この、ふわふわしてる個人というかさ。
エマさんは、YouTubeでは有名になると事務所から声がかかるイメージがあるのに対し、ポッドキャストは初めから個人は個人、企業は企業という印象だと話します。レンさんは、その自由さを大事にしていきたいと語りました。
次のVSシリーズは何と何を戦わせる?
リスナーから「VSシリーズがまた聴きたい」というコメントが届きます。VSシリーズには、人間とウイルスのような科学テーマの回と、犬と猫のような対立軸の回があり、2人の間でも一瞬話が食い違いました。
科学テーマについては、リクエストのあった「VS寄生虫」を準備中です。一方、ディベート型の対立軸はなかなか見つからないといいます。レンさんは、反対意見がぶつかると面白いという話をナベさんから聞いたことを挙げ、VSはその典型だと話しています。
配信中に挙がったテーマ案には、次のようなものがあります。
- うどんとそば
- スコーンに先に塗るのはクリームかジャムか(イギリスで大論争になるという)
- コーヒーとティー
- 洋菓子と和菓子
- 甘いお菓子と塩辛いスナック
コーヒーとティーの話から、レンさんは、今まで食べなかったものを最近おいしく感じるようになったと話します。紅茶やきのこ、豆苗がその例で、エマさんも、レンさんと出会うまで10年ほどハンバーガーを食べていなかったといいます。
2人は、もともと真逆だった食の好みが一緒に暮らすうちに近づいてきたと振り返ります。レンさんは、夫婦の顔が似てくるのは食べ物も関係しているのではないかと話していますが、あくまで推測として語られています。
日本科学未来館とのコラボと、6年目に向けて
これからの話として、まず配信の3日後ごろに公開される日本科学未来館とのコラボ回が告知されました。ポッドキャストに加え、科学館を見学した動画も公開されます。
なかなかないと思うよ。科学館とさ、こんな個人が。
レンさんは、広報担当者にもいろいろ協力してもらったと感謝を述べ、ゴールデンウィークなどに科学館へ行きたくなったら、ぜひ足を運んでほしいと呼びかけました。
6年目について、エマさんは毎年と同じく「続けること」を目標に挙げます。子どもができたり仕事が忙しくなったりすると、続けることは難しくなっていくかもしれません。
多分これから時間が経つにつれて続けることが難しくなってくる気がする。
レンさんは、配信者のあるあるとして時間の問題を認めつつ、それを言い訳にはしたくないと話します。エマさんも、日本に帰ったらレンさんの手伝いをもっとしたいと語っています。
新居に自宅スタジオを、そして神戸のイベントへ
エマさんが楽しみにしているのは、日本の新居での自宅スタジオづくりです。今のロンドンの部屋は寝室を含む2部屋しかありませんが、新居は部屋数が増えるため、1部屋をポッドキャスト収録用にする計画です。
ロンドンの2部屋の住まい。画面の半分ほどが机で、ロンドンらしさは見えない
日本の新居で1部屋を仕切り、ポッドキャスト専用の収録スペースにする
熱心に調べるエマさんを見て、レンさんは「やってることは本当にデザイナー」と言い、エマさんも「デザイナーエマでいいかな」と応じます。冒頭の肩書きの話が、ここで少しだけ答えに近づきました。来年のライブ配信は、新しい部屋からになるだろうとエマさんは話しています。
最後に、レンさんが5月16日ごろに神戸で開かれるイベント「ポッドキャストミキサー」に出演することが告知されました。エマさんは参加できません。関西のイベントは少ないため、チケットはまだ買えるはずだとレンさんは話しています。
加えて、約340人が参加する無料LINEグループ「サイエンチャット」と、書籍化の土台づくりが進む有料コミュニティ「サイエントークラボ」も紹介されました。本はまずレンさんが土台を作り、その後エマさんもいろいろと参加する予定です。
まとめ
5周年の生配信は、ロンドン最後の部屋から、肩書き、1年の振り返り、ねるねるねるね、VSシリーズ、そして帰国後の展望まで、2人らしい脱線を交えながら進みました。6年目は、個人としての自由さを保ちつつ、無理なく続けていくことがテーマになりそうです。
- 帰国に伴うエマさんの新しい肩書きは未定ですが、夫婦であることを打ち出す方向が話し合われた
- この1年で最も手間をかけた企画はトリビアアワードで、今年も開催したい考え
- 宇宙味のねるねるねるねをきっかけに、宇宙の匂いとギ酸エチルの関係が語られた
- VSシリーズは寄生虫回を準備中で、ディベート型のテーマもリスナーから多く寄せられた
- 日本科学未来館とのコラボ回、新居の自宅スタジオ、神戸のポッドキャストミキサー出演が今後の予定





