「普通の人」からイギリス駐在員へ、肩書きはなぜ変わった?
サイエントークは、研究者のレンさんとエマさんが科学をエンタメっぽく語るポッドキャストです。この回から、エマさんの肩書きが「普通の人」から「イギリス駐在員」に変わりました。
肩書き変更のきっかけは、コミュニティ「サイエントークラボ」での話し合いでした。「普通の人」では何の説明にもなっていない、というもっともな意見が出て、2人もしっくり来ていなかったといいます。
で、結局まあ期間限定なんですけど、イギリス駐在員は。まあこの期間だけでも名乗っていいんじゃないかという。
で、まあ今後私の立場とかが変化するたびにまあ変えていっていいんじゃない?みたいな。
話は「研究者はいつまで研究者なのか」にも広がります。エマさんは、レンさんも今は一時的に研究をしていないと指摘しますが、レンさんは研究職に就いていて戻れば研究者だ、と答えています。
ただし、東京書籍の件だけは「普通の人」の肩書きで広まってしまったかもしれない、とレンさんは付け加えています。
秋恒例のイグノーベル賞を、どう「ノーベル賞」に変換する?
秋といえば、サイエントークでは毎年恒例のイグノーベル賞回です。レンさんによると、イグノーベル賞はノーベル賞の1か月ほど前の9月に発表され、ノーベル賞は毎年10月中旬ごろです。収録は10月頭で、ノーベル賞はまだ発表されていませんでした。
このエピソードは「科学系ポッドキャストの日」という企画に参加しています。毎月1つの番組がホストになって共通テーマを決め、いろいろな番組がそのテーマで語る取り組みで、まもなく3周年を迎えます。
今月のホストは、先日1000回放送を迎えた青春アルデヒドさんです。設定されたテーマは「これができたらノーベル賞」で、ノーベル賞を取れそうな未解決課題や、ノーベル賞級だと思う研究を語ろうという趣旨です。翌月はサイエントークがホストを務めます。
レンさんは、普通にイグノーベル賞を紹介するだけでは面白くないと考え、このテーマとかけ合わせた企画を用意しました。
で、僕はどうしたらいいかなって考えた結果、イグノーベル賞を紹介して、それをノーベル賞に変換するアイデアを出すっていう。
え、何大喜利的な?
もう大喜利です。
イグノーベル賞とノーベル賞、両方取った人はいる?
レンさんが調べた範囲では、イグノーベル賞の研究がそのままノーベル賞につながった例は見当たりませんでした。ただし、両方を受賞した人物は1人だけいます。
その人物はアンドレ・ガイム ── ロシア出身でオランダなどで研究した物理学者。強い磁場でカエルを浮かせた実験でイグノーベル賞を、グラフェンの研究でノーベル物理学賞を受賞していますです。生きたカエルを磁気浮上させる研究でイグノーベル賞を取り、別の研究であるグラフェン ── 炭素原子が六角形の網目状に並んだ、原子1層分の薄さのシート。鉛筆の芯の黒鉛はこれが何層にも重なったものですの研究でノーベル物理学賞を取りました。
エマさんは、ノーベル賞の後にイグノーベル賞を取るより、イグノーベル賞の後にノーベル賞を取るほうが「努力が報われた」感じがして嬉しいと話します。
レンさんは、イグノーベル賞は単にふざけた研究に贈られる賞ではない、と毎年の説明を繰り返します。人々を笑わせ、そのうえで考えさせる研究に贈られる賞です。
(去年は)お尻から豚は呼吸できるのかみたいなやつとか。それもなんか医学系の研究にね、実際つながったりとかしてて、そういう発展性もあるような内容とか結構あるんだよね。
では、ノーベル賞との違いは何なのか。レンさんは、ノーベル賞は社会的なインパクトが重視され、面白い要素は必要ないと説明します。エマさんは「社会的インパクトがあって笑える研究もあるのでは」と食い下がりました。
まあだけど、今君が言ったように、別にノーベル賞を取ってもいいわけですよ、イグノーベル賞の研究がね。すごければ。だからすごくする方法を僕らが考えればいいんですよ。
罵る少女の代役はおじさん?2025年の全10部門
2025年のイグノーベル賞授賞式も、相変わらずふざけた演出が満載でした。副賞は1円にもならない10兆ジンバブエドルです。
授賞式には、受賞者のスピーチが長引くと小さな女の子が「もうやめて、私は退屈なの」と妨害する恒例の演出があります。「ミス・スウィーティー・プー」と名付けられた8歳の女の子の役です。2025年はその子が欠席し、スキンヘッドで体の大きいおじさんが可愛いエプロン姿で代役を務めたそうです。
レンさんは、2025年の受賞研究は去年より好きで、「何これ?」というものが多く切れ味がいいと評価しています。全10部門は次のとおりです。
| 部門 | 受賞理由 |
|---|---|
| 文学賞 | 35年間、自分の爪が伸びる速さを記録・分析し続けた |
| 心理学賞 | ナルシストやそうでない人に「あなたは賢い」と伝えたときの反応を研究 |
| 栄養学賞 | ある種のトカゲがある種のピザを選んで食べるかを調べた |
| 小児科学賞 | 母親のニンニク摂取が授乳中の赤ちゃんに与える影響を調べた |
| 生物学賞 | シマウマ模様を描くと牛がハエに刺されにくくなるかを実験 |
| 化学賞 | 食用テフロンでカロリーを増やさず満腹感を得られるかを検証 |
| 平和賞 | お酒を飲むと外国語を話す能力が時々向上することを示した |
| 工学設計賞 | 靴の悪臭がシューズラック使用時の快適性に与える影響を分析 |
| 航空学賞 | アルコールがコウモリの飛行能力やエコーロケーション能力を下げるかを研究 |
| 物理学賞 | パスタソースの不快な凝集につながる相転移を発見 |
エマさんは、爪の研究には「こんなんで取れちゃうんだ」と驚き、ナルシストの研究には社会的意義がありそうだと反応しました。平和賞のお酒と外国語の関係は、2人とも実感があるといいます。前編では、このうち5部門を順に掘り下げます。
35年間爪の伸びを測り続けた研究は、なぜ文学賞なのか
イグノーベル文学賞の研究者は、1953年から自分の爪に横縞の傷をつけ、その伸び方を記録し続けました。論文は1本ではなく、何回にも分けて発表されています。
最初は手足すべての爪で測っていましたが、左右で伸びる速さは同じで、足の爪は手より遅いとわかりました。そこで数か月後からは、左手の親指の爪だけを測り続けたそうです。
一本だけ測ったら、まあある意味他の爪の成長速度がもう逆算できるって思ったんじゃない?
この研究者はすでに亡くなっていて、授賞式には息子が参加しました。レンさんは、ノーベル賞は存命でなければ受賞できないが、イグノーベル賞は亡くなった後でも授与される、という違いを紹介しています。
爪の研究でわかったのは、老化すると伸びる速さが遅くなること、最初の数か月の測定では中指の爪が一番速く伸びることです。季節、住む場所、職業が変わっても、伸びる速さは変わりませんでした。
2人とも、この研究者は『ジョジョの奇妙な冒険』第4部の吉良吉影 ── 『ジョジョの奇妙な冒険』第4部に登場する人物。自分の爪の伸び方を記録したり、切った爪を集めたりする癖が描かれていますに似ていると感じたそうです。
文学賞になった理由は、論文の中に唐突に「聖書には爪に関する言及は一箇所しかない」と書くなど、文学的な引用がちょこちょこ入っているためだといいます。レンさんは、部門名は割とネタで決めている気がするとも話しています。
ノーベル賞への変換はレンさんが一例を示しました。爪は目に見えて伸びるため、老化や細胞分裂の限界を調べやすいかもしれません。それが老化を予測する技術につながれば、ノーベル賞もありうるという発想です。
「あなたは賢い」と言われた人はナルシストになる?
イグノーベル心理学賞は、ポーランド、オーストラリア、カナダの研究です。ここでいうナルシストは、自己愛の状態にあり、自分の能力を過大に評価してそれに酔っている人を指します。
レンさんには、この研究が他人事ではない事情がありました。Apple Podcastに「ナルシストすぎてきつい」「強者男性特有の偉そうな匂いがすごくて聞いててしんどい」というレビューが書かれたのです。
いや、でもちょっとナルシストって言われるのはしょうがないと思うよ。受け手のね、あれだけど。きついって書くのはちょっとやめてほしいな。
でもさ、いつもさ、なんかいろいろ迷ってんじゃん。だから別にさ、この方法でいいのだろうかとかいろいろ考えてるしさ。
エマさんは、レンさんを本気できついナルシストだと思っているリスナーはほとんどいないのでは、と励まします。レンさんは、優しいコメントをくれた人たちにも感謝を述べました。
心理学賞の実験では、参加者に知能テストを受けてもらいます。そして本当の結果に関係なく、「知能は平均以上です」か「平均以下です」のどちらかをランダムに伝えます。
狙いは、ナルシストが「自分は賢い」と思う傾向の逆を調べることです。つまり、「あなたは賢い」と言われた人はナルシストの傾向を示すのか、という問いです。
知能の自己評価が上がり、自分は特別だと考える傾向が強まった
知能の自己評価が下がり、自分が特別だとも思えなくなった
研究では、ナルシシズムは固定された性格としてだけでなく、一時的な状態としても現れるとされています。テスト直後の聞き取りで変化が出たことから、レンさんは短期間で変わりうるものだと読み取りました。
あなたの知能は平均以上ですって言われるだけでさ、そんな変わるんだっていうふうに思ったけどね。え、こんな変わりやすいの?っていう感じの方がする俺。
エマさんは自己肯定感 ── 能力の有無に関わらず自分を受け入れ、肯定できる感覚。エマさんは後天的には変わりにくいと聞いたと話していますと自己効力感 ── 自分ならできると思える感覚。努力して結果が出ることで、後天的にも高まるとされますの違いを持ち出しました。今回の研究がどちらに近いのか、2人で議論になります。
自信を操作できたら精神医療は変わる?脳波研究まで話が広がる
ナルシスト研究のノーベル賞化について、エマさんは、自己肯定感を高める画期的なメソッドにつながればいいのではと提案します。レンさんは、自信を上げる方法があれば精神的な疾患に苦しむ人が救われるかもしれない、と受けました。
一方で、2人とも単純に変えてよいものなのかには慎重です。エマさんは、自分を疑うことにも慎重になれるというメリットがあると指摘します。
なんか、あの、人間が進化で得たさ、なんか自分を守るためのメカニズムとか聞いたこともあるし。なんかそういうのが簡単にそんななんかメソッドで変わっちゃうのかっていう気もするけどね。
全くリスク考えずに行動するやついっぱい増えたらやばそう、社会が。
レンさんの結論は、極端な話は置いておいて、精神疾患の治療にうまく使えるものができればノーベル賞の方向に行くかもしれない、というものでした。今の精神医療はまだ探り探りだ、という点で2人の意見は一致します。
エマさんが「心の仕組みが完全に明らかになったら」と言うと、話題は脳波研究に移ります。レンさんは自身のポッドキャスト「脳パカラジオ」で聞いた話として、頭の中で思い浮かべた文字を画面に出力したり、恋か愛かを見分けたりできる段階まで来ているらしい、と紹介しました。
エマさんは、アインシュタインが考えている難しい理論まで読み取れたらすごいと話します。レンさんは、そこまで難しいことはまだ無理で、ある程度単純なことができるようになってきた段階ではないかと推測しています。
ニジトカゲが選んだのは4種のチーズのピザだった
イグノーベル栄養学賞は、トカゲにどちらのピザを与えると選んで食べるのかを調べた研究で、もちろんイタリアが関わっています。用意されたのは、4種のチーズが乗ったクアトロフォルマッジ ── イタリア語で「4つのチーズ」。モッツァレラやゴルゴンゾーラなど4種類のチーズを乗せたピザですと、4分の1ずつ違う具材が乗ったクアトロスタジオーニです。
2枚のピザを木の近くに置くと、15分の間に9匹のニジトカゲが群がりました。その名のとおり、虹色の面白い色をしたトカゲです。
4種のチーズのピザ。大人気だった
4分の1ずつ違う具材のピザ。ほぼ無視された
エマさんは、チーズの栄養素にトカゲが惹かれたのではと予想しました。研究者たちは、チーズの匂いが腐った肉の匂いと結びついているのではないか、と考察しています。腐った肉には動物が集まるので、それに引き寄せられた可能性があるというわけです。
さらに研究は続いていて、クアトロフォルマッジを食べることが繁殖期のメスに利益をもたらすかどうかを調べているそうです。
マジどうでもいいんだけど。
いやいやでもいいね、なんかこのイタリアの面白いさ、あの研究。私はこの研究今、今のところ一番好きかもしれない。どうでもいいけど。
研究者は受賞コメントで「イタリア人はクアトロフォルマッジが大好きだ」と述べ、「そして彼らトカゲはイタリア人のように振る舞った」と締めくくっています。
ノーベル賞化のアイデアは、動物の食の好みの謎を解く方向へ進みました。エマさんは、脳波研究を犬や猫に応用した動物心理学や、動物にも使える翻訳こんにゃく ── 『ドラえもん』のひみつ道具。食べると違う言語を話す相手と会話できるようになりますの高精度版を挙げます。
トカゲと会話できたらノーベル賞取れる可能性ありますよ。
レンさんは、犬の脳波研究はすでにあり、喜びの感情のときの脳波を調べた研究もあったはずだと話します。ただし「わかった」と言えるレベルではないので、どの動物でもわかるようになれば、すごいことだといいます。
ニンニク入りの母乳、赤ちゃんは嫌がる?それとも夢中になる?
イグノーベル小児科学賞は、母親がニンニクを摂ると授乳中の赤ちゃんにどう影響するかを調べた研究です。母親をニンニク入りカプセルとニンニクなしのカプセルを飲むグループに分け、母乳の変化と赤ちゃんの反応を調べました。
エマさんは、赤ちゃんは飲むけれど、臭いから量は少し減るのではと予想しました。レンさんも最初はそう思ったそうです。
実際には、ニンニクカプセルを飲んでから2時間で母乳の匂いがピークに達しました。そして赤ちゃんは、ニンニクありの母乳のほうに吸いつく時間が延び、吸おうとする回数も増えたのです。
その時に与えられてるさ、栄養の全てがさ、母乳だからさ、そこにニンニク要素を加えたとしたらさ、今食べてるご飯にさ、なんかニンニク振りかけるみたいなさ、そういうイメージなのかもしれない。
ただし、飲んだ量そのものはあまり変わりませんでした。赤ちゃんの飲む量には限界があり、どちらにしてもお腹いっぱいになるまで飲んでいるから、という理由などが考えられているそうです。
レンさんは、イグノーベル賞以外の研究で知られている、母親の食事と母乳の関係も紹介しました。
| 母親が摂ったもの | 母乳や赤ちゃんの変化 | 備考 |
|---|---|---|
| ニンニク | 吸いつく時間と回数が増え、量はあまり変わらない | 今回の受賞研究 |
| カカオ・チョコレート | 母乳の苦味が強くなる | 別の研究 |
| 人参ジュース | 育った赤ちゃんが人参入りシリアルを好んだ | 出産前や授乳期間中に飲んだ場合 |
| アルコール飲料 | 吸う回数は増えたが、飲む量は少なかった | 授乳中の飲酒は推奨されていない |
レンさんは、赤ちゃんにはアルコールを分解する能力がほとんどないため、授乳中の飲酒は推奨されていないと注意を添えています。
話は、帝王切開だと腸内細菌叢が育ちにくいのではないかという過去の話題や、母乳には母親の腸内細菌叢が影響しているかもしれないという話にもつながりました。
レンさんの母親は、納豆がいいと何かで見て、妊娠中や授乳期にたくさん食べていたそうです。レンさんも弟も納豆好きですが、関係があるかはわからない、とレンさん自身が念を押しています。
味覚を再現する技術ができたら、肥満問題は解決する?
ニンニク母乳の研究のノーベル賞化について、レンさんは、味覚の好みが成長に従ってどう形成されるかに謎がありそうだと考えます。エマさんは、昔嫌いだったビールがだんだん好きになるような変化も挙げました。
エマさんは、遺伝子と味覚の関係がわかればノーベル賞級ではと提案します。しかしレンさんは、それはもう調べられていそうで、ノーベル賞級ではなさそうだと返しました。
そこでエマさんは、今は想像もしていないけれど、いつかみんなが使う不可欠な技術の元になる研究ならノーベル賞を取れるのでは、と考えます。レンさんが例に挙げたのは、見ただけで味を感じられる機械です。
なんかさ、今ってさ、あのスマホってさ、あの視覚と聴覚だけだけどさ、それなんかあの味覚もできたらいいよね。
遠い国の有名なステーキの味を、ボタン1つで楽しめる技術。エマさんの夢に、レンさんは「もう麻薬だろうなそれ」と返しました。
しかし、エマさんが味覚だけを楽しめて栄養は摂らずに済むならダイエットに役立つと言い出すと、話は肥満問題に向かいます。
味覚の仕組みを解明
味覚の好みがどう形成されるかがわかる
味覚を再現する技術
食べなくても味を楽しめるようになる
食欲を抑える
食べたい欲求を味覚で満たせる
肥満問題の解決
世界から肥満の人がいなくなればノーベル賞の可能性
今ね、肥満薬の市場とかバカでかいからね。流行りだからな。
最後にエマさんは、ノーベル賞には2つの方向があるのではと整理しました。ゼロからプラスを作り上げる基礎科学と、困っているマイナスをゼロにする課題解決です。レンさんは、去年はAIの基礎となるニューラルネットワークの研究が受賞したことも挙げています。
牛をシマウマ柄に塗ると、ハエはなぜ寄ってこない?
イグノーベル生物学賞は日本人の受賞で、牛にシマウマのような縞模様を描くとハエに刺されにくくなるかを調べた研究です。レンさんによると、ここ何年か日本人の受賞が続いています。
この研究には前段があります。2016年には、黒や茶色の馬に比べて白い馬には吸血バエ ── 動物の血を吸うハエの仲間。家畜にたかってストレスを与え、病原体を運ぶこともありますがたかりにくい、という研究がイグノーベル物理学賞を受賞しています。
白い馬
黒や茶色の馬より、白い馬には吸血バエがたかりにくい
模様の実験
黒一色より白一色・縞模様・水玉模様でハエの着陸が減り、特に縞模様が効果的
シマウシ
黒い牛に白いスプレーで縞を描くと効果があった
実験では、黒い牛に白いスプレーで縞模様を描くパターンと、対照群として黒いスプレーで描くパターンを用意しました。白黒の縞模様の牛では、尻尾や頭を動かしてハエを払おうとする行動が25%減ったそうです。
縞模様が効く理由はまだ謎ですが、ハエが着陸しようとする最終段階で着陸に失敗することはわかっています。距離をうまく測れなくなるなど、視覚的に惑わされている可能性があるといいます。
しかもこれ、これ地味にインパクトでかいんじゃないかなと思ってて、そもそも。だって結構簡単にできちゃうじゃん。牛縞々にするっていう。まあ牛の気持ちは一回置いといて。
レンさんによると、ハエが多いと牛はストレスを溜め、それが病気の原因になったり、牛乳の量が減ったりします。アメリカでも畜産業に結構な影響が出ていて、殺虫剤は耐性ができてしまい、効果的とは言えないそうです。
レンさんは、縞模様の衣服でもハエが来にくくなるのではとも考えます。エマさんはボーダーの服の人が刺されにくいかを調べたら面白いと応じましたが、蚊に効くかどうかはわからない、とレンさんは釘を刺しました。
シマウシで温暖化と食糧問題を解決できる?
シマウシ研究のノーベル賞化について、レンさんはストレートな案を出しました。この研究がきっかけで畜産業の効率が上がり、食糧問題が解決するというものです。
エマさんは、少ない牛で多くの牛乳がとれれば、牛のゲップによるCO2の問題が減り、地球温暖化対策にもなるのではと付け加えます。
レンさんはサイエンススポットで紹介した話として、世界一白い塗料で地球の表面を白くすれば温暖化を解決できる、という説も紹介しました。ただし塗る面積が広すぎて材料が足りないという結論で、CO2の問題も解決しません。
シマウシで温暖化と食糧問題解決でしょ。
おー、素晴らしい。これ絶対絶対さ、ならない気がする。
次にレンさんは、虫の視覚を狂わせる仕組みがわかれば、殺虫剤などの化学物質を使わない世界初の虫除けシステムになると主張します。エマさんは、商品化には素晴らしいけれどノーベル賞級ではないと譲りません。
世界、世界初の殺虫剤を使わなくてもいい虫除けシステム。
もう許してくれ。
エマさんは、縞模様がハエを遠ざける仕組みが、どの生物にも見られない新しい生体メカニズムで、しかも人間にもあったとわかればすごい、という案を推します。結局、2人は「未知の生体メカニズムの発見」ということにして落ち着きました。
そもそも生物系のノーベル賞はどんな研究に贈られているのか。レンさんは、痛みを感知する受容体の発見、microRNA ── タンパク質を作らない短いRNA。遺伝子の働きを調整する役割を持ち、その発見が2024年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました、体内時計のメカニズム、C型肝炎ウイルスの発見などを挙げています。
前編はここまで。トリビアアワードと新マイクのお知らせ
シマウシまで話したところで、レンさんは1時間半ぐらい喋っているのにまだ半分しか進んでいないと気づき、イグノーベル賞2025の回を前編・後編に分けることにしました。
次回の科学系ポッドキャストの日は、サイエントークがホストを務め、テーマは「トリビア」です。あわせて募集中のトリビアアワードは10月17日ごろまで受け付けていて、特に音声部門の応募がもっと欲しいそうです。
だからサイエントクに爪痕残してやるぜぐらいの気持ちで送ってきてほしい。
最後に、マイクが新しくなったことも報告されました。ポッドキャスターアワードの副賞としてもらったマイクで、ロンドンまで届けてもらったそうです。
これまでは別々のパソコンと別々のマイクで収録していたため、レンさんがお互いのマイクに入った音を消していました。新しいマイクは互いに接続できるので、編集も楽になるといいます。
まとめ
前編では、2025年のイグノーベル賞から5部門を取り上げ、レンさんとエマさんが「これができたらノーベル賞」という視点で発展の道筋を考えました。老化研究、精神医療、動物との対話、肥満の解決、未知の生体メカニズムなど、大喜利のような発想から本気で考えさせられる論点が次々に出ています。
- イグノーベル賞とノーベル賞の両方を受賞したのは、カエルの磁気浮上とグラフェンのアンドレ・ガイムだけ
- 「あなたは賢い」とランダムに伝えるだけで、知能の自己評価やナルシストの傾向が変わった
- ニジトカゲは4種のチーズのピザに群がり、母乳がニンニク入りだと赤ちゃんの吸いつきが良くなった
- 白黒の縞模様を描いた牛では、ハエを払う行動が25%減った
- ノーベル賞には、ゼロからプラスを生む基礎科学と、マイナスをゼロにする課題解決の2つの方向があるという整理に行き着いた




