ロンドン在住の2人が向かった最初の国は?
ロンドンに住んでいるレンさんとエマさんは、今年1年でできるだけヨーロッパを回ろうと決めました。その最初の行き先がオランダです。
オランダ旅行のきっかけは、エマさんの出張でした。出張に合わせて2泊3日の個人旅行を組み、最大の目的を、エイセ・エイシンガの博物館を訪ねることに置いています。
でも確かに一番の目的はエイセエイシンガーさんの博物館に行くことでしたよね。
エイシンガの世界最古のプラネタリウムはかなりの田舎にあるため、2人はレンタカーで向かいました。運転はレンさんの担当で、前年のトルコ旅行でいわゆる「デスロード」を走った経験があるため、運転には自信があるそうです。
事前の準備は、レンタカーの予約と宿泊先の確保ぐらいだったといいます。オランダの物価について、レンさんは宿泊費は1泊1万円を確実に超えて2万円弱ほどで、大阪のような日本の都会とそれほど変わらない感覚だと話しています。
オランダの外食は日本より高めです。ハンバーガーは2人で26ユーロ、1ユーロ160円ほどで換算すると約4000円でした。美術館のチケットも3000〜4000円ほどしたそうです。
空港がオレンジ色だった理由とミッフィーの故郷
オランダのスキポール空港に着くと、案内表示がオレンジ色でした。レンさんが「オランダだからオレンジなんだ」と言い出し、2人はイメージカラーの由来をAIに聞きながら空港を歩いたといいます。
レンさんによると、オランダのオレンジは、独立当時の王家だったオラニエ家 ── オランダ王家の家名。英語読みではオレンジ家にあたり、オランダ独立の指導者を出した一族ですに由来するそうです。サッカーをしていたレンさんにとっては、オレンジのユニフォームのオランダ代表の印象も強かったようです。
エマさんにとってのオランダのオレンジは、ミッフィーの服の色でした。ミッフィーは色違いがいろいろあるものの、エマさんはオレンジがデフォルトだという印象を持っていました。
エマさんは、本場オランダのミッフィーは日本でよく見るものと違うと感じたそうです。2人の観察をまとめると、次のような違いがありました。
体がふっくらしている。色はおなじみの定番が中心
顔は正方形に近く、体はシュッとしている。全身ピンクや黄緑、紫など、日本では見ない色も多い
(オランダのミッフィーは)ミッフィーっていうか、ただのウサギのぬいぐるみだろと思ったけどね。
ハイネケン工場で唱えさせられた「誓い」
エマさんが仕事をしている間に、レンさんは一人でオランダのビール、ハイネケンの工場見学に行っていました。昼からビールを4杯飲んだそうです。
ハイネケン工場の見学では、オランダ語の乾杯「プロースト」を全員で唱え、ハイネケン以外のビールは二度と飲まないと復唱させられてから乾杯したといいます。
そうそう。言って、言わされて乾杯するっていう。なんかもう宗教みたいな。
カルトじゃんカルト。
ハイネケン工場の展示には科学の話もありました。ハイネケンには「A酵母」という秘密の酵母があり、そのおかげでおいしいのだという説明で、作り方は企業秘密とされていたそうです。
エマさんは、一番洗脳された人がハイネケンに就職して今度は布教する側になる「ハイネケンループ」があるのでは、と笑います。普段あまりビールを飲まないエマさんも、ハイネケンは香りがよく飲みやすかったと話しています。
「クレイフィッシュ」を頼んだら何が出てきた?
アムステルダムの夜ごはんで、2人は「ザリガニ事件」に遭遇しました。海外のレストランのメニューは基本的に文字だけなので、エマさんはいつもGoogleマップの写真を見て料理を選んでいるそうです。
魚が食べたかったエマさんは、メインの位置にあった「クレイフィッシュ」を魚料理だと思って注文しました。ところが出てきたのは、10センチほどの小さなザリガニが10匹ほど並んだ皿でした。
ザリガニ料理は緑のソースにレモンをかけるもので、味はまずくなかったそうです。ただ、剥いても身は3センチほどしかなく、10匹で15ユーロほどでした。エマさんは「非常に腹が立った」と振り返っています。
レンさんが調べたところ、クレイフィッシュという英語は、ザリガニを意味するフランス語の「ヴィッセ」の部分をフィッシュと聞き間違えたことから来ているそうです。
いや、もう昔の人がさ、聞き間違えてなかったら私このミスしなかったのにな。
それでもエマさんは、食べたことのない料理を経験できたと前向きに捉えています。次はフランスでエスカルゴも食べてみたいと話していました。
ゴッホとフェルメールの本物を見た美術館巡り
レンさんはオランダ出身のゴッホの作品を集めたゴッホ美術館に行き、その後2人でアムステルダムの国立美術館も訪れました。国立美術館はかなりの規模だったそうです。
アムステルダム国立美術館では、フェルメールの『牛乳を注ぐ女』やワーテルローの戦いを描いた巨大な絵など、有名な作品の本物を見ることができました。展示は1600年頃から100年ほどの区切りで年代順に並んでいたといいます。
国立美術館には、ゴッホをはじめ、日本の浮世絵や着物に影響を受けた画家の作品もありました。レンさんは、ゴッホが37歳で亡くなり、10年足らずで2000点以上を描いたと知って、ゴッホを好きになったと話しています。
エマさんはゴッホの絵の点描に注目しました。レンさんによれば、補色を隣り合わせると色がより際立つという色彩の知識を学んで取り入れていたそうです。
エマさんが一番行きたかったのはアンネ・フランクの家でした。ただ人気が高く1か月ほど前には予約が必要で、旅行の予約が2週間ほど前だった2人は行けませんでした。
アムステルダムでは、飾り窓地区として知られるレッドライト・ディストリクトも歩いています。大人向けの店が並ぶなか、さまざまな職業のコスプレをしたラバーダックを並べた店が何軒もあり、2人は「謎」と首をかしげていました。
自転車まみれの街と、高すぎる小便器
アムステルダムの街は、運河が街中を流れていてとてもきれいだったそうです。レンさんは、アムステルダムが歴史的に早くから計画的に開発された計画都市のモデルケースで、運河が何重もの円を描いていると説明します。
アムステルダム駅は東京駅のモデルになった駅で、実際に似ていたといいます。地下鉄はきれいで大きく、自転車をそのまま持ち込めるほどのサイズ感でした。
オランダは、レンさんいわく世界で最も自転車が使われている国です。自転車専用の道もきちんと整備されていました。
一方でレンさんは、ロンドンのあるイギリスはヨーロッパの中でも自転車に乗る人の率が16%と低いと紹介し、オランダの自転車の多さは「異常」だったと話しています。
オランダは平均身長が世界一高い国でもあります。男性の平均は183センチ、女性の平均は170センチだそうです。
身長185センチほどのレンさんが一番驚いたのは、男性用トイレの小便器の高さでした。下の余裕が10センチもないほどで、日本なら絶対に無理な高さ、子どもには使えないのではと感じたといいます。
風車とチーズの村、そして32キロの堤防
アムステルダムの翌日から、2人はレンタカーで各地を回りました。最初に訪れたのは、風車のあるザーンセ・スカンス ── アムステルダム近郊にある、伝統的な風車や木造家屋を保存した観光地。オランダの典型的な田園風景が見られますです。
ザーンセ・スカンスは、小川が流れ、緑の芝生が広がり、風車が立つ「ザ・オランダ」な風景でした。ただ訪問日はとても寒く曇っていて、エマさんはその点だけ残念だったと話しています。
ザーンセ・スカンスにはカモなどの鳥がたくさんいて、人懐っこく自分から人に寄ってきたそうです。牧場のようなエリアで、牛やヤギ、羊もいました。
ザーンセ・スカンスのチーズ工房で買ったチーズは絶品でした。チーズは30センチほどの大きな丸い塊で売られていて、試食し放題だったため、レンさんはずっと試食していたといいます。
小さめのサイズを買ったチーズはすぐになくなってしまい、2人は大きいほうを買えばよかったと後悔しました。次にフランスへ行ったら、大きめのチーズを買おうと話しています。
2人は、レンさんいわく世界最大の堤防も訪れました。全長32キロで、長すぎて堤防なのか橋なのかよくわからないその上を車で走ったそうです。
観光地らしくない町フラーネカーに建つ世界遺産
旅の最大の目的だったエイセ・エイシンガのプラネタリウムは、フラーネカーという町にあります。フラーネカーは混みすぎておらず観光地らしくない落ち着いた町で、エマさんは日本の高級住宅街のような雰囲気だったと話しています。
エイシンガのプラネタリウムは、普通の家のような建物の中にあります。エイシンガが自宅のリビングの天井に作ったもので、サイエントークでも以前のエピソードで取り上げています。
レンさんによると、エイシンガのプラネタリウムは2023年に世界遺産になりました。エイシンガの本業は天文系ではなく羊毛業者だったため、施設には羊毛の展示も一緒に並んでいるそうです。
2人は、普通の家に入って天井を見るだけだと思っていたといいます。ところが館内は最新の設備がそろっていて、タッチパネルやクイズコーナー、本物の昔の顕微鏡、家の3Dモデルを使った映像まであり、思った以上に充実していました。
240年以上動き続ける機械仕掛けの天井
エイシンガのメインのプラネタリウムは、15畳ほど、20人ほどが輪になって解説を聞ける広さの部屋です。天井にたくさんの星が描かれています。
エイシンガのプラネタリウムは電気式ではなく機械式です。エマさんは、重りの時計や振り子時計で少しずつ動き、今も惑星の位置関係が全部合っていることに驚いたと話しています。
エイシンガのプラネタリウムを動かす仕組みには、人の手による管理が欠かせません。2人が聞いた説明を順に並べると、次のようになります。
重りが落ちる
重りが下がる力が動力になる
歯車が回る
大小の歯車が重なり合い、少しずつ動きを伝える
天井の惑星が動く
惑星の位置関係が現在でも正確に再現される
担当者が重りを上げる
重りが床につくと動きがずれるため、定期的に引き上げる
屋根裏の歯車も見学でき、釘を手作業で等間隔に打って歯にしているのがわかったそうです。少し歪んでいるのにそれで正確に動くことに、2人は驚いていました。
(エイシンガのプラネタリウムは)今日が何月何日で何曜日まで天井見たらわかるようになってたじゃん。
エイシンガのプラネタリウムは、日食や月食、日の出や日の入りの情報まで表示します。レンさんは「ここまでする?」とこだわりに感心していました。後世に残すためのメンテナンス方法が書かれたノートも展示されていて、レンさんは「まじで知の世界だった」と振り返っています。
アストロラーベとクロノメーターに見たアナログの極み
エイシンガの博物館には、エイシンガ以外の人が作った、さまざまな時代の天体観測の道具も展示されていました。エマさんはアストロラーベ ── 天体の高度を測り、時刻や緯度を求めるための古い天文観測器具。古代ギリシャで生まれ、中世のイスラム世界やヨーロッパで発達しましたなどを見て「知だー」となったそうです。
レンさんが注目したのはクロノメーター ── 航海で使われた高精度の携帯時計。正確な時刻と天体観測を組み合わせることで、海上で経度を割り出せるようになりましたです。船の上で星の角度を測る機械と組み合わせ、自分がどこにいるかを把握していたという展示に「すげえ」と思ったといいます。
エマさんは、昔の機械式の道具は仕組みが目で見てわかるところが面白いと話します。
なんか、でもそういうの(GPSとか)ってさ、もう全部さ、電子化されててさ、もう仕組みとかわかんないじゃん。
でもその昔の人たちが使ってるのって仕組みがさ、目でわかるじゃん、機械式のやつって。
レンさんはこの世界を「究極のアナログの世界」と表現し、エマさんは「アナログを突き詰めるけど、なるべく正確にしようと努力してる感じ」と言い添えています。
レンさんはさらに、昔の道具の装飾に「謎の余裕」を感じたと話します。エイシンガのプラネタリウムも水色できれいに彩られていて、本来いらないはずのデザインにもこだわりがあり、展示を見るのが面白かったそうです。
エイシンガの博物館は本物の家なので、昔使っていたベッドやキッチンも見られます。屋根裏はミシミシときしみ、本物の家らしさを感じたといいます。
エマさんは、エイシンガのプラネタリウムはアムステルダムやザーンセ・スカンスよりも満足度が高かったかもしれないと話しています。フラーネカーは観光地ではないぶん、レストランも安くておいしかったそうです。
フラーネカーへの交通手段は、おそらく車ぐらいしかありません。町にはアジア人がおらず、中国人観光客が多かったザーンセ・スカンスとは対照的で、まだあまり知られていない場所なのかもしれないと2人は話しています。
ストロープワッフルと、レンタカー返却の大失敗
アムステルダムでは、アムステルダム最大の野外市場であるアルバート・カイプマーケットにも行きました。屋台が300〜350メートルほど続く市場です。
アルバート・カイプマーケットで食べたのは、ストロープワッフルです。クレープほどの薄い生地2枚の間にシロップが挟まったもので、分厚いワッフルのイメージとは違っていたそうです。
一方で、旅の終盤にはレンタカーの返却でトラブルが起きました。返却はスタッフ不在で、駐車場に車を止めて鍵をキーボックスに入れるだけのスタイルでした。
駐車券を取って入場
駐車場への入り方がわからず、ゲートで新しい駐車券を取って入った
鍵の駐車券に気づく
鍵に駐車券が付いていたと後から気づき、丸一日分の料金を心配して急いで清算した
置き場所の指示を発見
新しい駐車券は車のダッシュボードに置くよう書かれていたと知る
翌日に届けに行く
駐車券だけをレンタカー屋に届けに行くことになった
レンタカーの件で落ち込んだその日の帰り道、レンさんは駅のど真ん中にあった嘔吐物を踏んでしまい、半ギレで帰ったそうです。エマさんによれば、レンさんは「僕はもうダメだ」と泣き言を言い続けていました。
翌日にレンタカー屋で説明したところ、大丈夫そうだったといいます。ただ、借りるときに払ったデポジットが全額返ってくるかは、収録時点ではまだ確認できていませんでした。
田舎に行くほど旅が楽しくなる理由
最終日の午前中、2人は電車でユトレヒトへ行き、ドム塔の周りを1時間ほど散策してから帰りました。
次の行き先はすでにノルウェーに決まっていて、フィヨルドの絶景を見に行く予定です。旅行の話ばかりにならないよう、通常のエピソードに旅行回を追加する形にしようと話しています。
エマさんはヨーロッパの街並みに少し慣れてきたと言いつつも、この先の人生でこれほどヨーロッパへ行ける機会はないとして、なるべく足を運びたいと話しています。
エマさんがこのオランダ旅行で学んだのは、首都や観光地よりちょっと田舎に行ったほうがいいかもしれない、ということでした。田舎はきれいでゴミも落ちておらず、少し安いからです。
レンさんは、ツアーでは田舎へ行くのが難しいため、個人手配のほうが楽しめそうだと話します。車があれば行動範囲が広がり、日本の国際免許でもいろいろな国で運転できるそうです。
オランダ旅行のVlogは「学び散歩シリーズ」として全3回でYouTubeに公開されました。特に3本目のエイシンガのプラネタリウムの動画は、レンさんが調べた限り日本語では初めてだそうです。
まとめ
オランダ旅行はザリガニ事件やレンタカーのトラブルなど波乱続きでしたが、最大の目的だったエイセ・エイシンガのプラネタリウムは、2人の期待をはるかに超える場所でした。
- アムステルダムでは運河の街並みや自転車の多さ、平均身長の高さを実感した
- 「クレイフィッシュ」はザリガニのことで、フランス語の聞き間違いが語源とされる
- 1781年に完成したエイシンガのプラネタリウムは、重りと手作りの歯車で今も正確に動いている
- 機械式の観測道具は、仕組みが目で見てわかるところに面白さがある
- 首都や観光地より田舎のほうがきれいで安く、満足度が高いこともある






