コロナ禍の「チーズとお酒のセット」から始まった定期便
山川さんは前回に続いてチーズを深掘りしたいと切り出し、今回はCHEESE STANDの企画「CHEESE STAND CLUB」について詳しく聞きたいと話します。
藤川さんによると、CHEESE STAND CLUBの原点はコロナ禍に始めた定期便です。チーズとお酒のセットに、シェフに考案してもらった「今まで食べたことのない組み合わせ」のレシピと材料を添えて、毎月送っていました。
お塩とかはご自宅にあるものを使ってくださいみたいな感じで。で、あとナチュラルワインとかで、セットにして送ったことがあるんですね。
藤川さん自身はこの定期便をとても楽しんでいたものの、普段料理をしない人には難易度が高く、離脱が多かったといいます。藤川さんはレシピを書いた経験もなく、「分かりづらい」という声も届いていました。
チーズとお酒、シェフ考案のレシピと材料を送る定期便。料理の難易度が高く離脱が多かった
チーズ工房「チーズスタンドラボ」の新しいチーズを毎月届ける定期便として再出発
それでも藤川さんは、定期便で毎回新しい価値を届けたいという思いを持ち続けていました。その後、熟成チーズを作る工房「チーズスタンドラボ」を立ち上げたタイミングで、毎月届ける定期便を改めて始めたと話します。
チーズをもっと身近にするために、こんなチーズがあってもいいんじゃない?みたいなことを作る場所でもあったんですね。
藤川さんは本来、CHEESE STAND CLUBをコミュニティとしても育てたかったそうです。当初はYouTubeやインスタライブで配信していましたが、今は止まっていると話しています。
毎月第1土曜日に届く、いまのCHEESE STAND CLUBの仕組み
現在のCHEESE STAND CLUBは、申し込むと定期的にチーズが送られてくる仕組みです。藤川さんによると、届くのは毎月1回、第1土曜日の予定だといいます。
毎月1回、第1土曜日かな?に届けられるチーズ。チーズとワインのセットの人もいれば、(ワインが)ないのも選べるって感じです。
シェフがいた頃はジャムやちょっとしたパンを添えることもありましたが、今はチーズのみを送っているそうです。
東京チーズ最中から筋子青のりまで、試作が並ぶラインナップ
山川さんはCHEESE STAND CLUBのホームページに載っている過去のラインナップを眺めながら、気になった商品を一つずつ藤川さんに尋ねていきます。最初に挙がったのは「東京チーズ最中」でした。
あんことチーズって合うじゃないですか。だってバターとあんこが合うんだもん。
藤川さんはお土産を作りたくて最中を試したところ意外と美味しく、パッケージまで作っていたといいます。ところが挟むと最中の皮が湿気てしまい、ホワイトチョコやココナッツミルクを塗っても解決できず、東京チーズ最中の商品化は頓挫しました。
ほかにも、コーヒーの熟成チーズや、料理として届けた「スモーク香るラザニア」があります。コーヒーの熟成チーズは、山川さんも以前に藤川さんが持ってきたものを食べたことがあったそうです。
山川さんが「やっぱり」と挙げたのが「セミハードチーズ筋子青のり」です。藤川さんによると、これはCHEESE STAND CLUBから派生して、実際の販売につながった商品です。
そういうちょっと実験的で、すごい反響が良かったものとかを、今販売してるって感じですね。
試作
チーズスタンドラボで実験的なチーズを作る
お届け
CHEESE STAND CLUBの会員に定期的に送る
反響
反響の良かったものを見極める
商品化
セミハードチーズ筋子青のりのように販売につなげる
「ラボ」という名前が苦手だった理由とファンベース
藤川さんは、実は昔は「ラボ」という名前があまり好きではなかったと打ち明けます。実験しているということは、まだ完成品ではないと受け取られると考えていたからです。
新しい取り組みをしているところまで見せることが、実はファンベースっていう考え方でいうとすごい大事なんじゃないかなと思って。
藤川さんは、何度も試食を重ねたうえで送っていると断りつつ、CHEESE STAND CLUBで届けるのは完成しきった商品ではないかもしれないと話します。そのうえで、成長段階まで見せることがファンとの関係を育てると考え、チーズ工房を「ラボ」と名付けたといいます。
山川さんも、モッツァレラやブッラータのような定番から派生して挑戦することで新しいものが生まれると共感し、チャレンジすることの大切さに同意します。
ブッラータの「クリームに香りを移す」挑戦
藤川さんは、料理人がCHEESE STAND CLUBに関わっていた頃、料理の観点からのアイデアが持ち込まれたと振り返ります。その一つが、賞を取ったという「いちじくブッラータ」です。
藤川さんによると、乳脂肪分は香りが移りやすい性質を持っています。そこで、いちじくの葉っぱから香りを移したり、次の7月はレモングラスの香りをクリームに移したブッラータに取り組んだりしているそうです。
ブッラータって何でも袋の中に入れようと思えばできるんだけど、それって別にお皿で完結すればいいじゃんと思ってて。
藤川さんは、ピスタチオなどを中に入れたブッラータも見たことがあると言いつつ、それは食べるときにお皿で合わせれば済むと考えています。作り手にしかできない、製造の前段階でクリームに香りを移す工程にこそ商品価値がある、というのが藤川さんの考えです。
ピスタチオなどを袋の中に入れる。食べるときにお皿で合わせても完結できる
いちじくの葉やレモングラスの香りを製造段階で移す。作り手にしかできない
山川さんが挙げた「桜ブッラータ」は、オープン当初からの定番で、今も改良を続けているそうです。また、日本草木研究所 ── 日本の山に自生する植物や木を食材として研究・活用する事業者。料理人や食品メーカーとの協業も行っていますとのコラボでは、スパイスなどを使った商品も作りました。
テーマから逆算する、タイ・サワー・糠漬けのチーズ
山川さんが「さけるモッツァレラ太刀魚パウダー」という響きの面白い商品について尋ねると、藤川さんはCHEESE STAND CLUBの商品づくりはまずテーマを決めるところから始まると説明します。
まず最初にテーマを決めて。本日はタイだみたいな。コップンカーだとか言って。
テーマがタイなら、コブミカンやレモングラスを使おうと発想を広げていきます。先に話に出たレモングラスのブッラータも、タイのテーマから生まれたものです。島唐辛子を使ったセミハードチーズも作ったといいます。
考案するのは藤川さんと、製造担当の柳平さん、シェフがいた頃はシェフも加わっていたそうです。ほかにも「ハーブアンドスパイスサワー」や、セミハードチーズの糠漬けがあり、糠漬けは酒粕チーズへと派生しました。
「サワー」がテーマの月には、白カビがまだ生えていないほど若い白カビチーズをわざと送ったといいます。ボソッとした食感でも酸味があり、藤川さんは意外と面白いと感じたそうです。
失敗作の酸味がフォンデュチーズに変わった、のもりの話
酸味の話を受けて、山川さんはのもりでの体験を話します。仕込みの段階で酸が強く出すぎたセミハードチーズを熟成させたところ、カットして食べるとボソッとして酸っぱく、「これはダメだね」となったそうです。
あ、これダメだねってなったけど、溶かしたら美味しくて。
山川さんはそのセミハードチーズを、クラッシュしたパスタフィラータやウォッシュチーズと混ぜ、割合を変えながら試しました。ウォッシュを強めれば酸が控えめに、ウォッシュを減らせば酸が立った味わいになったといいます。
フォンデュチーズとして自分でレシピを割合変えてもらうので、ちょっと出してるんだけど。
山川さんは、試作としては失敗だったものの、見せ方を変えたら美味しい商品になったと話します。藤川さんはこれに対し、素材として見れば酸味や苦味も面白いと応じます。
藤川さんは、雑誌の取材で「バターのいとこ」を手がける後藤さんと話した際、苦味や酸味も何かに使えば面白いという見方を聞き、なるほどと思ったそうです。
知らないからこそさ、無知のところだからできるみたいな。あるよね。
山川さんは、自分はチーズ職人ではないからこそ、チーズの専門家なら「そんなのないよ」と言いそうなことにも挑戦できると語り、藤川さんも強くうなずいています。
テーマ「NEW」で生まれたビーガンチーズと「柳」シリーズ
藤川さんは、自身の無茶ぶりで生まれた一品としてビーガンチーズを挙げます。CHEESE STAND CLUBでは1月に「HAPPY NEW YEAR」といったテーマで送っており、2月のテーマを「NEW」にしたときに作ったそうです。
ビーガンチーズの素材はマカダミアナッツやカシューナッツで、ナッツのミルクを絞って作ったといいます。山川さんが「めっちゃ高くなったでしょ」と尋ねると、藤川さんは原価はあまり考えていなかったと答えます。
できたできた。ちゃんと美味しいのができて。
一方で藤川さんは、チーズを楽しみにしていた会員にとっては期待と違ったかもしれないとも振り返っています。
さらに、CHEESE STANDには定番商品「白柳」があり、そこから派生した「柳」シリーズも作ってきました。ヤギのチーズなら「山羊柳」、乾燥させてカチカチにしたものは「カチカチ柳」、日本草木研究所とのコラボでは「森柳」と名付けたそうです。
かおるの牧場の放牧乳チーズと「楽しまないと広まらない」
山川さんが「かおるの牧場」について尋ねると、藤川さんはこれはCHEESE STAND CLUBではなく定番の取り組みだと説明します。5月後半から牛が放牧される時期の乳をもらい、6か月ほど熟成させて冬に販売しているそうです。
山川さんによると、かおるの牧場は神奈川県山北町にある素敵な牧場です。牧場のかおるさんはのもりの牧場に研修に来たこともあり、オープン時には山川さんも足を運んでいたといいます。今年の分も仕込み中で、冬に出す予定だそうです。
山川さんが一連のチャレンジを面白いと評すると、藤川さんは作り手自身の楽しさこそが大事だと応えます。楽しみながらやらないとチーズは広まらないという言葉で、CHEESE STAND CLUBの話を締めくくりました。
エンディングでは、クラブという名前から山川さんの「のもりクラブ」の話になり、「タモリクラブじゃなくてのもりクラブ」と笑い合いながら、次回はのもりクラブを取り上げると決まりました。番組へのコメントもまだ届いていないため、ぜひ欲しいと呼びかけています。
まとめ
CHEESE STAND CLUBは、コロナ禍のレシピ付き定期便の反省から生まれ、チーズスタンドラボの実験的なチーズを毎月届ける場になっています。完成しきっていない挑戦まで見せることでファンと関係を築き、そこから定番商品も生まれている点が印象的な回です。
- CHEESE STAND CLUBは毎月第1土曜日ごろにチーズが届く定期便で、ワイン付きも選べる
- 藤川さんは、実験段階まで見せることがファンベースの考え方では大事だと考えている
- セミハードチーズ筋子青のりのように、反響の良かった試作は商品化されている
- ブッラータではクリームに香りを移すなど、作り手にしかできない工程に価値を置いている
- 山川さんの失敗作の酸味も、見せ方を変えてフォンデュチーズとして生かされた


