CHEESE STANDの「10の原則」はどこで読める?
今回のエピソードでは、山川さんが藤川さんに、CHEESE STANDが大事にしている言葉について改めて聞いていきます。前回は、山川さんの会社であるのもりの言葉を紹介した回でした。
CHEESE STANDの「10の原則」は、藤川さんのnoteのほか、CHEESE STANDのホームページにあるコンセプトページの一番下に掲載されています。現在はオンラインショップとホームページを兼ねた構成になっているそうです。
チーズスタンドのこれまでの10年を踏まえて、これから10年のために提示する10の原則っていうページがありまして、そこに僕たちが大事にしていることを、まあマニフェストって感じですね。
藤川さんはこの原則を、会社として守っていく「約束」だと表現します。ただし、すべてを実現できているわけではないとも率直に話しています。
全部が全部できているっていうとね、まだちょっと、全部ではないんですけど。
リブランディングのはずが「インナーブランディング」へ
CHEESE STANDの10の原則が生まれたきっかけは、10周年を迎える際に、ブランディングに携わる知り合いへ相談したことでした。当初の藤川さんは、ロゴを変えるようなリブランディングを漠然と考えていた程度だったといいます。
相談相手との話し合いの中で見えてきたのは、CHEESE STANDはインナーブランディング ── 企業の理念や価値観を、顧客ではなく社員やスタッフなど社内に向けて浸透させる取り組みのことが弱いという課題でした。スタッフへの教育をしっかりしていこう、という方向に話がまとまっていきます。
しましょうと言われたわけじゃなくて、していこうかみたいな、ちょっと話し合いの中で決まっていったって感じです。
相談相手は、301という会社の大谷さんです。minimalの山下さんの紹介で知り合い、藤川さんが立ち上げたトークイベント「クラフトマンシップ」の取りまとめも担った人物だと紹介されています。
ロゴを変えるなど、見た目を変えるリブランディングを想定
スタッフに向けた原則を作るインナーブランディングに注力
ラグビー由来の行動指針から「原則」へ
CHEESE STANDには、10の原則の前から行動指針がありました。ラグビー経験者の藤川さんが、ラグビーのスローガンになぞらえて掲げていたものです。
これ僕がラグビーやってたからなんですけど、チェンジアンドゲインとか、あとスピードみたいな行動指針として持ってたんだけど。
藤川さんたちは、それまでの歩みも踏まえて、より本格的な「原則」を作ることにしました。大谷さんとは月に1回ほど直接会い、2時間ほど集中して話し合ったそうです。
1回ぐらいこう直に会って、2時間ぐらいガーって。もうすごい頭疲れるんですよ、話してると。
この話し合いは10月から6月までのおよそ半年にわたって続きました。山川さんも「汗かく感じするよね」と共感しています。
下敷きになった「グッドデザインの10の原則」とは?
原則の中身に入る前に、藤川さんは参考にしたものを紹介します。デザイナーのディーター・ラムス ── ドイツの工業デザイナー。家電メーカーのブラウンで数多くの製品を手がけ、「より少なく、しかしより良く」という考え方で知られますが提唱した「グッドデザインの10の原則」です。
藤川さんが挙げた10項目は、革新的、実用的、美しい、わかりやすい、主張しない、誠実である、長持ちである、細部まで完璧、環境に優しい、純粋で簡素というものです。
10個すごくわかりやすくて、デザインを作るときの1つの指針になったりするじゃないですか、これって。
山川さんはこの原則を初めて知ったそうです。藤川さんは、食品メーカーとして飲食の人たちなど他の人も使えるような、シンプルで普遍的な原則を目指したと説明しています。
なぜ1番目が「美味しいこと」なのか?
CHEESE STANDの10の原則の1番目は「美味しいこと」です。藤川さんは、食に携わる以上、ここだけは外してはいけないと考えました。
僕たち何やりたいんだっけ?みたいな。美味しいものを作って届けたいよねっていうのは、やっぱそこがすごく根幹にあるので。
藤川さんは、流行り廃りを追うのではなく、美味しいものをきちんと作って届けることを最初に掲げたと話します。
山川さんは、原則が発表された当時にSNSで見て、「美味しいこと」が1番目にあることが強く印象に残ったといいます。
やっぱり美味しいって人を幸せにするし。
藤川さんによると、ミスターチーズケーキの田村さんも、X上でこの1番目を評価してくれたそうです。藤川さんは「わかってくれた」とうれしく感じたと振り返っています。
「美学」と「誠実さ」が並ぶ理由
2番目の原則は「美学があること」です。藤川さんは、かっこつけて聞こえるかもしれないと前置きしつつ、プロダクトや取り組みには必ず美学が伴うと考えています。
絶対美学って伴うもんだと思ってるんですよ。何かしら理由があって。
藤川さんは、こだわりや生き様が感じられるものを作り、そうした行動基準を会社として持ちたいと話します。山川さんは、経営者には美学が必要だと言われる一方、美学が強すぎると経営はできないとも言われる、という話を紹介しました。
3番目は「誠実であること」です。作り手を含めたすべてのステークホルダー ── 顧客、社員、取引先、地域社会など、企業の活動に利害関係を持つ人や組織の総称の気持ちを想像し、誠実かつ真摯に向き合うことを掲げています。
(真摯って言葉が)本当に真面目にね、しっかりやると。お客様に対しても、スタッフ同士でもですね、それはすごい大事にしたいなと思って。
4番目は「情熱が注がれている」です。藤川さんは、機械のように作るのではなく、プロダクトにもお店作りにも熱量を注ぎたいと話しています。
面倒でも変わる、「挑戦し続けること」
5番目と6番目の原則は、以前の行動指針を進化させたものです。5番目の「挑戦し続けること」は、かつて「チェンジアンドゲイン」と呼んでいた考え方にあたります。
藤川さんは、変わることの面倒さを、メニューを1つ変える場合を例に説明します。
メニュー変更
新しいメニューを決める
メニュー表
メニュー表を作り直す
プライスタグ
値札を変える
レジ
レジの設定を変える
そんなちょっとした1個のことって変えることおっくうになっちゃうんですけど、でも変わんなければ本当にそのままだし。
山川さんは、スタッフには挑戦や変化を恐れないよう伝えながらも、自分自身が挑戦を妨げている瞬間があると打ち明けます。
自分の実績とか経験とかだからで、もうこれはこうだからみたいなのだったり。
全然チャレンジしてないことって意外と振り返るとあって、結構自分でハッとさせられることが最近ある。
0.1の差にこだわる「プロフェッショナルであること」
6番目の原則は「プロフェッショナルであること」です。以前の行動指針では「ラスト0.1」と表現していました。
プロである以上しっかり責任持ってやりましょうと。そこは結構ね、スタッフと話す時にすごい大事にはしてますね。
藤川さんは、0.1の違いは大きな違いだとスタッフに伝え、「神は細部に宿る」という考え方を大切にしています。山川さんも、細かいことができる人はきちんと全体を見られている、と応じました。
これができる人は本当に細かいことができる人はちゃんと全体を見れてるなと思うし。
「伝統の更新」と「普遍性」は矛盾しない?
7番目の原則は「伝統を継承し更新すること」です。藤川さんは、明治時代から続くチーズ業界の歴史を尊敬しつつ、そこに新しい価値を加えていきたいと話しています。
8番目は「普遍的であること」です。藤川さん自身、7番目の「更新」と言っていることが違うように見えるかもしれないと認めています。
「普遍的であること」の背景には、大谷さんとの話し合いで出た「CHEESE STANDは無印良品っぽい」という指摘がありました。純粋にいいものを作りたい姿勢や、当初の白黒のシンプルなデザインがそう感じさせたようです。
山川さんは、のもりが無印良品と取引する中で、スタッフから「毎日感」を大事にしていると聞いた経験を紹介します。
日常にチーズを取り入れてもらうって、1日1日感動的なすげえうめえも大事かもしれないけど、また明日も食べたいなとか、毎日食べたいなみたいなことすごく大事じゃん。
藤川さんは、奇をてらった商品にもラボとして挑戦していると前置きします。そのうえで、流行りに乗るのではなく、1番目の「美味しいこと」にも通じる普遍的なものをしっかり作りたいと話しました。
チーズの長い歴史を尊重しつつ、新しい価値を加えていく
流行りを追わず、毎日食べたくなるようなものを作る
土台に置かれた「サステナブル」と「繋がり」
9番目の原則は「サステナブルであること」です。藤川さんは、環境だけでなく、スタッフの雇用や働きやすさまで含めた言葉だと説明しています。
チーズ作りではホエイ ── チーズを作る過程で、固まった乳から分離して出る液体。乳清とも呼ばれ、たんぱく質などの栄養を含みますが出るため、その活用も9番目の原則に含まれているそうです。
10番目は「繋がりを大切にすること」です。藤川さんはこの原則を、全体を支える土台のように最後に置いたといいます。
取引先さんとか仕入れ先さんとかね、もちろんお客様も含めて繋がりを大切にして、その人たちと何かを作っていきたい。
藤川さんは、10番目の原則について、山川さんが手がけるのもりクラブにも似た考え方だろうと話しています。
| 番号 | 原則 | 藤川さんの説明の要点 |
|---|---|---|
| 1 | 美味しいこと | 食に携わる以上の根幹 |
| 2 | 美学があること | 理由やこだわりを伴うものづくり |
| 3 | 誠実であること | 全ステークホルダーに真摯に向き合う |
| 4 | 情熱が注がれている | 商品にも店作りにも熱量を注ぐ |
| 5 | 挑戦し続けること | 面倒でも変わる |
| 6 | プロフェッショナルであること | 0.1の差に責任を持つ |
| 7 | 伝統を継承し更新すること | 歴史を尊重し新しい価値を作る |
| 8 | 普遍的であること | 毎日食べたくなるものを作る |
| 9 | サステナブルであること | 環境と働き方の両方を考える |
| 10 | 繋がりを大切にすること | 取引先や客と一緒に作る土台 |
商品ラインナップに表れる「チーズスタンドらしさ」
山川さんは、CHEESE STANDの10の原則について、らしい言葉がそろっていると感想を述べます。
チーズスタンドのチーズのラインナップとか見た時に、やっぱりすごいチャレンジもしているし、一方でやっぱこう普遍的なモッツァレラはモッツァレラだしみたいなさ。
山川さんは、挑戦と普遍性の両方が商品に表れている点が、この原則と一致していると話します。藤川さんは今後について、スタッフから自然に湧き上がってくるほどに原則を浸透させたいという思いをにじませました。
まとめ
CHEESE STANDの10の原則は、10周年を機に、見た目を変えるリブランディングではなく、スタッフに向けたインナーブランディングとして半年かけて作られました。1番目の「美味しいこと」から土台となる10番目の「繋がり」まで、藤川さんのものづくりへの考え方が一つずつ言葉になっています。
- 原則は大谷さんとの対話の中で、インナーブランディング強化の方針から生まれた
- ディーター・ラムスの「グッドデザインの10の原則」を下敷きに、シンプルで普遍的な形を目指した
- 1番目に「美味しいこと」を置き、食に携わる者としての根幹を示している
- 「更新」と「普遍性」、「挑戦」と「細部へのこだわり」が両立する構成になっている
- 原則は全文がCHEESE STANDのホームページのコンセプトページで読める





