国内外にいくつある?チーズコンテストの全体像
今回の話題は、放送の頃にはもう終わっているかもしれないというジャパンチーズアワードです。山川さんによると、ジャパンチーズアワードは2年に1回、日本各地のチーズ工房のチーズが集まって競うコンテストです。
藤川さんの説明では、ジャパンチーズアワードの主催はCPAと呼ばれるチーズプロフェッショナルの人たちです。藤川さんは、CPAを「ソムリエみたいな感じ」とたとえています。
国内にはもう1つの大きな大会として、オールジャパンナチュラルチーズコンテスト ── 国産ナチュラルチーズを対象にした全国規模のコンテスト。加熱して再加工したプロセスチーズではなく、ナチュラルチーズだけを審査しますがあります。藤川さんは農林水産省が主催する大会だと紹介しています。この大会とジャパンチーズアワードが、1年ずらしで交互に開かれています。
国内の大会は、この2つだけではありません。藤川さんは、フランスのMOF ── フランス国家最優秀職人章(Meilleur Ouvrier de France)。料理やチーズなど各分野で卓越した職人に与えられる称号ですを持つチーズ職人が来日して評価する大会も挙げ、「フランス国民栄誉賞みたいな感じ」と説明しています。
さらに、日本チーズ職人協会が主催したHワングランプリという「変態チーズグランプリ」のような催しもあったといいます。国内の大会で上位の賞を取ると、国際大会に出品できる権利がもらえることもあります。
国際大会として名前が挙がったのは、ワールドチーズアワードやモンディアル・デュ・フロマージュ、アメリカの大会などです。藤川さんは、国内外に大会が「いっぱいある」と話しています。
番組で名前が出た主な大会を並べると、次のようになります。
| 大会 | 主催・特徴 | 開催頻度 |
|---|---|---|
| ジャパンチーズアワード | CPA(チーズのプロフェッショナル)が主催 | 隔年 |
| オールジャパンナチュラルチーズコンテスト | 農林水産省主催と紹介。ナチュラルチーズが対象 | 隔年(ジャパンチーズアワードと交互) |
| MOFの職人が評価する大会 | フランスのMOFを持つチーズ職人が来日して評価 | 毎年あるとの話 |
| 国際大会 | ワールドチーズアワード、モンディアル・デュ・フロマージュなど | 国内大会の上位が出品権を得ることも |
ぶっちゃけ僕は(チーズの)大会が多すぎて疲れてしまう。
なぜチーズだけコンテストが多いのか?
山川さんは2021年に事業承継を受けてチーズ工房を始め、チーズの世界に入りました。山川さんがチーズの世界に入って驚いたのは、コンテストの種類の多さです。
乳製品でいうとさ、バター、ヨーグルト、牛乳、ソフトクリームいろいろあるけれど、そういう賞はないわけよ。
チーズは本当にさ、(コンテストが)いっぱいあるよね。
山川さんによれば、ヨーグルトでは何年か前に企画として開かれたことがある程度で、他の乳製品には基本的にコンテストがありません。チーズの大会がなぜこれほど多いのかという問いに、藤川さんは「なんか増えていったって感じ」と答えています。
藤川さんは前置きとして「僕の解釈」と断ったうえで、ジャパンチーズアワードの成り立ちを語ります。オールジャパンナチュラルチーズコンテストは、料理人や著名な芸能人なども審査員に入って決める賞でした。
藤川さんの話では、チーズのソムリエのような人たちがオールジャパンの審査方法に異議を申し立て、そこから生まれたのがジャパンチーズアワードだといいます。あくまで藤川さん個人の解釈として語られた経緯です。
コンテストは日本のチーズをおいしくしたのか?
山川さんは、チーズをまったく知らない状態から業界に入った立場として、コンテストの存在そのものを「素敵」だと感じています。簡単には取れない賞に向かって職人が努力していく姿に惹かれたといいます。
山川さんは、2つの大会の受け止められ方の違いも感じています。ジャパンチーズアワードは職人同士が切磋琢磨する雰囲気が強く、オールジャパンは多くの人に親しまれるチーズを作れるかどうかを問う印象だといいます。
職人同士が切磋琢磨する、職人としての技を競う雰囲気
多くの人に親しまれるチーズかどうか。知らない人にも分かりやすい
山川さんは、オールジャパンの方向性についても「いいか悪いかは別にして」と前置きし、知らない人からすれば分かりやすさがあり、それも1つの形だと話しています。
藤川さんは、コンテストによって日本のチーズが実際においしくなっていると考えています。藤川さんは2013年か2014年に初めてオールジャパンに出品しましたが、そのときは賞をまったく取れませんでした。
そこから美味しいチーズってどんなチーズなんだろうっていって、試食とかもしたりとか、買って食べたりとかしたり。
藤川さんはその後、ほかの工房を見学させてもらうなどしながら学び、自分たちのチーズも、日本のチーズ全体もコンテストを通じておいしくなってきているのではないかと話しています。
藤川さんがもう1つ大会の価値として挙げるのが、表彰の後の飲み会です。いい賞を狙いにいくのはもちろんですが、年に1回、職人がみんなで集まる機会そのものがいいと感じているそうです。
山川さんも前回の大会に参加し、チーズ職人の知り合いがほとんどいない中で、いろいろな人と話せて新鮮で楽しかったと振り返っています。
職人は何を出品する?藤川さんの「2年連続」ルール
山川さんから、職人としてコンテストにどう臨んでいるのかを聞かれた藤川さんは、まず社内での吟味から始まると答えます。同じチーズでも個体差があるため、しっかり見比べてから出品するチーズを決めるそうです。
ジャパンチーズアワードは10月の大会ですが、出品は5月ごろに決めなければいけません。1工房あたり5個ほどしか出せないため、藤川さんは毎年どれにするか悩んでいるといいます。
一回最優秀賞とか取ったのももう一回取りたいじゃん。うちが取らないとどっかが取る。
山川さんは、実績のあるチーズを出すのか、新しいチーズで挑戦するのかをどう決めているのかを尋ねます。藤川さんの答えは、受賞が偶然なのか本当においしいのかを見極めるためのルールでした。
たまたま取れたのか、本当に美味しいのかを見極めるために、二年連続で(賞を取ったものは)出すようにしてる。
藤川さんの出品の考え方を順に追うと、次のようになります。
出品するチーズの状態にも、藤川さんは細かく気を配っています。保険として候補を3点ほどキープし、熟成チーズは一番いいものをピックアップします。発送から審査まで5日ほどかかることも踏まえて精査するそうです。
藤川さんは、出品チーズの梱包だけは自分でやっていると明かし、「執念は他の人たちよりあるかもしれない」と笑っています。
今年の出品作は?ゴーダに込めた山川さんの戦略
今年の出品作を聞かれた藤川さんは、すぐには思い出せず「忘れちゃうんですよ」と笑います。挙がったのは、ブラータ、トライアルとして出すいちじくブラータ、セミハード、カチョカヴァロ ── 南イタリア発祥の、ひょうたん形に吊るして熟成させるチーズ。弾力のある生地と、熟成による旨みが特徴ですでした。
藤川さんのセミハードは、ワールドチーズアワードでは銀賞をもらっているものの、ジャパンチーズアワードではまだいい賞をもらっていないといいます。いちじくブラータも、ジャパンチーズアワードには出していなかったチーズです。
山川さんの工房も、スタッフ内で話し合って出品を決めています。まだ出していないものや賞を取っていないものを中心に選ぶ方針で、オールジャパンにはチャレンジしているチーズを多く出しているそうです。
山川さんは当初、自社のセミハード「森のチーズ」の長熟を定点観測として出していると話しましたが、調べ直して今回は長熟を出していないと訂正しました。今年の山川さんの工房の出品は、ブリーとゴーダです。
結構ね、俺は戦略的にゴーダをしっかり作ってきたくて。
山川さんがゴーダに力を入れる理由は、熟成期間の違うチーズをそろえることにあります。長熟は9か月から12か月、通常の森のチーズは5か月から8か月で出しており、そこに3か月ほどで出せる若いゴーダを加えたいという考えです。
| チーズ | 熟成期間 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 森のチーズ 長熟 | 9〜12か月ほど | 長く熟成させたタイプ |
| 森のチーズ | 5〜8か月ほど | 長熟の手前で出すタイプ |
| ゴーダ(開発中) | 3か月ほど | 今回出品した若いタイプ |
3か月ほどで出せるチーズがあると熟成をコントロールしやすく、工房の稼働率を上げやすいと山川さんは話しています。藤川さんも、若いチーズならスライスやボード向けにも使えると応じています。
営業メールから始まったチーズカッター開発
熟成チーズの話から、山川さんは工房に新しくチーズをカットする機械を導入する予定だと明かします。既製品ではなく、ゼロから開発しているオリジナルの機械です。
きっかけは、ある会社から届いた特別なカッターの営業メールでした。山川さんが「うちはチーズの会社です。チーズが切れるなら」と返したところ、先方が機械を持ってきてくれ、技術担当の人がゼロから開発してくれたそうです。
カットってどうやって?その、何?セミハードとかそういう硬いやつを百グラム単位でカットしてくれるみたいな。
山川さんによると、新しいカッターはセミハードのような硬いチーズだけでなく、ブリーのような柔らかいチーズも切れるといいます。藤川さんも山川さんも、現在はワイヤーなどを使って手でカットしており、手間がかかっている作業です。
山川さんは、チーズの重さを測りながらグラム単位で切り分ける機械だと説明し、うまくいったら番組で改めて紹介したいと話しています。藤川さんも「もちろん」と快諾しました。
部門賞を狙う理由と、全国の職人が集まる価値
話はチーズのコンテストに戻ります。チーズには非常に多くの種類があるため、コンテストでは全体の1位とは別に、部門ごとの最優秀部門賞が設けられています。
リコッタが最優秀賞を取っても、なかなかハードチーズのさ、旨味があるチーズには勝てない。
藤川さんの工房は、もともとモッツァレラやリコッタ、ブラータといったフレッシュチーズを中心に作ってきました。そのため、まずは部門の最優秀賞を取れるように狙っているといいます。
山川さんは、大会の打ち上げの話を改めて取り上げます。全国の職人が集まること自体が面白く、それが大会の1つの価値だと話しています。
チーズ職人からしたら他の工房のチーズ食べれるのもそうだけど、職人同士で交流がある。
藤川さんは、職人だけでなくCPAの人たち、チーズの販売者、小売店の人なども集まるため、いろいろな立場の人と交流できる点が大きいと付け加えています。一般の来場者にとっては、全国のさまざまなチーズを食べられる魅力もあるといいます。
賞を取り続ける職人が感じる「コンテスト疲れ」
山川さんは、冒頭で藤川さんが漏らした「コンテスト疲れ」に話を戻します。藤川さんは、年1回でも多いと思っていたのに、年に何回も大会があるのは多すぎると率直に語りました。
皆さんなんかこう、ワンチームになって。まとめてほしい。ワールドカップで四年に一回じゃん。
山川さんは、この声は全国のチーズ職人が思っている素直な気持ちかもしれないと受け止めます。そのうえで、賞を取り続けている藤川さんに、取り続けなければいけないプレッシャーはないのかと尋ねました。
プレッシャーまではいかないけど、(賞を)取れないとすごい悔しいし。結構負けず嫌いなんで。
山川さんは、負けず嫌いだからこそ大会が多いと疲れてしまうのではないかと指摘し、藤川さんも「それかもしれない」と認めています。大会ごとに主催団体の考えや目指すものが違うことも、山川さんは理解を示しています。
藤川さんは、疲れてしまうとは言いつつも、大会自体は「すごい良いイベント」だと話しています。コンテストへの不満というより、多すぎる大会への疲れが本音だと読み取れます。
山川さんが気にしているのは、1位を取ったことばかりが注目されてしまう点です。賞はブランドを作り、目指すことでチーズもおいしくなるものの、山川さんは賞を目指す過程で得られる価値にもっと光が当たってほしいと考えています。
フィードバックシートと六本木ヒルズでの開催
藤川さんがジャパンチーズアワードの良い点として挙げるのが、フィードバックシートです。CPAの人たちが出品したチーズにコメントをくれる仕組みで、藤川さんは「チーズ作りに関してはすごいプラス」だと話しています。
藤川さんの工房では、フィードバックシートのコメントを読んだスタッフが「こうすればいいんだ」という気づきを得ているといいます。
山川さんは、大会を運営するCPAの人たちにも感心しています。藤川さんが聞いた話では、CPAの人たちは勉強会を開き、部門ごとにチームを組んで担当するチーズをたくさん食べて準備しているそうです。数年前には東京ドームで開かれたこともあり、大きな会場を借りての運営です。
ジャパンチーズアワードは、一般の人もチケットを買えば入場でき、さまざまなチーズを試食できる企画があったと山川さんは紹介しています。藤川さんによると、「和チーズ」で調べると情報が出てくるそうです。
今回のジャパンチーズアワードは、10月10日と11日に六本木ヒルズアリーナで開かれます。藤川さんは行けないものの、CHEESE STANDのスタッフが試食を担当する予定です。のもりはスタッフが2日間とも出て、山川さんも会場に行く予定だと話しています。
まとめ
チーズには国内外に多くのコンテストがあり、藤川さんと山川さんは、それが日本のチーズの質を高め、職人同士の交流を生んでいると考えています。一方で、大会の多さへの疲れや、受賞ばかりが注目されることへの違和感も、作り手の素直な本音として語られました。
- ジャパンチーズアワードとオールジャパンナチュラルチーズコンテストは、1年ずらしで交互に開かれる国内の2大大会
- 藤川さんは、自身の経験からコンテストを通じて日本のチーズがおいしくなってきたと考えている
- 藤川さんは、受賞が偶然か本物かを見極めるため、賞を取ったチーズを2年連続で出品している
- 山川さんは、熟成3か月ほどのゴーダを戦略的に開発し、今回の大会にも出品している
- 大会の多さに疲れるという本音の一方で、フィードバックシートや全国の職人との交流は大会の大きな価値とされている


