怪異譚シリーズの人面樹とは?
小柳省三さんは、日本画の怪異譚シリーズとして、人面樹という妖怪を描いています。和紙に墨と岩絵の具で描いており、絵本の一場面のような可愛らしい仕上がりになっているといいます。
これまでには夜泣き石や、エリンギのような姿のくさびら神も描いてきました。小柳さんは、神と妖怪の境界は曖昧で、神が落ちぶれて妖怪になる話はよくあるが、その逆は聞かないと話しています。
遠景を青く、霞をかけるには?
作業では、昨日使い切るつもりだった群青の残りを水で溶き、背景の山々に少し足していきます。遠くのものは赤い光が弱まり青い光が届くため青っぽく見える、という性質を踏まえた表現です。ただし夕焼けのように、絶対ではない例もあると小柳さんは付け加えています。
その上から全体に薄い青を霞のようにかけますが、小柳さんは「意外と難しい」と話します。やりすぎると霧を感じず、足りないと効果が出ないためです。
霧を感じられなくなる
霧の効果が出ない
ただ塗ればいいんだったら簡単なんだけど、霧が出てるような効果を意識してってなると案外難しいんですよ。
焼き物の霧はエアブラシ職人の仕事?
小柳さんは洋食器の絵付け師だった頃、大きな壺に山水を描いていました。焼き物に筆で山水画のような霧がかった感じを出すのは難しく、エアブラシで絵の具を吹きつけていたそうです。
エアブラシ専門の職人に頼むと、一日置くとできあがっていたといいます。実作業は15〜20分ほどでも、実験や試行で悩むため一日かかるのだろうと小柳さんは推測しています。
紙の上では、乾いた擦筆でぼかす方法を使っています。濡れた筆だとぼけすぎて抑揚がなくなりますが、乾いた筆ならコントラストが残ったままぼかせると説明しています。
自分が見たいものから描くのはなぜ?
青を塗りながら、小柳さんは表現活動を「自分の見たいビジョンを表現すること」と語ります。順番としては、まず自分が見たい、できたものを人に見せたい、最後に売れたい、という流れだといいます。
最初から売れることを目的にすると、マーケティングばかりで頭でっかちになり、つまらないものになりやすいと小柳さんは見ています。マーケティングで2〜3年は売れても、10年、20年は続かないだろうという考えです。
一方で、一瞬売れればよい人がマーケティングを学ぶのも、ありだと話しています。全員が同じ道をたどる必要はないという立場です。
最初は自分で見たいっていう動機から始めた方が、うまくいくし、ノリがいいですよね。
絵描きの収入は桁が違う?
話は芸能人の事業の成功に広がり、小柳さんはリアーナさんを例に挙げます。歌手としての収入よりブランド収入のほうが大きいのではないか、という見方です。ジャスティン・ビーバーさんも例に出しています。
絵描きで成功して事業を起こす例はあまり聞かず、ピカソでも億万長者止まりで、経営者や音楽家とは桁が違うと話しています。
墨の上に緑青をのせるとどうなる?
手前の草には、墨の上に薄い緑をふわっと重ねることにしました。緑青の読み方の話から、群青、群緑といった業界の読み方にも話が及びます。
小柳さんは、寿司屋のガリやシャリが元は店内の隠語で、客が使うと本来は感じが悪かったらしい、とも語ります。業界用語は、少しかっこいいところが魅力だと話しています。
AIエンジニアの息子とAPI費用の話
休憩中の雑談では、前夜のPHPの脆弱性対応が話題になりました。エンジニアである息子さんの仕事に触れ、プロの世界ではAPIキーの費用が1つのアプリで月120万円かかる例があると聞いたそうです。
自作のミニアプリでは、APIの費用は1日0.2円ほどだといいます。
絵と写真ではピントの合い方が違う?
人面樹にピントが合ったような画面を見て、小柳さんは望遠レンズで撮ったようだと話します。普通にスケッチすると見たところごとにピントが合うため、絵は全体にピントが合いやすく、写真は一部にピントが合って他がぼけます。
そのため、図鑑も絵のほうが参考にしやすいといいます。文化財の撮影では、わずかな凹凸でもピントがずれるので、超望遠レンズで遠くから撮り、全体にピントを合わせるそうです。
見るところごとにピントが合い、全体の解像度がそろう
一部にピントが合い、他はずれてぼける
物撮りする時、全部にピントを合わせようと思ったら、望遠レンズで遠くから撮れば、全てにピントが合います。
白の胡粉を重ねると何が変わる?
紐の部分には白の胡粉を塗ります。小柳さんは結び目をごまかさず、実物の構造を見て描くほうが結局楽だと話しています。
文化財複製の仕事では、掛け軸や箱の紐掛けを学芸員の代わりに行っていたそうです。学芸員資格は名乗る資格で、文化財に触れるために必要な免許ではないと説明しています。
乾くと、卵の殻のような色の和紙に白い胡粉の効果がはっきり出ました。小柳さんは、この小さな工程が仕上がりを変えると述べ、料理の隠し味や下ごしらえに例えています。
人面樹はほぼ完成?
配信の終わりに、小柳さんは人面樹がほぼ完成だと話します。明日確認はするものの、これ以上描き込む必要はなさそうだとのことです。
このチャンネルは月曜から土曜の21時から22時まで配信しています。
まとめ
小柳省三さんは、人面樹を仕上げながら、霞の表現や絵の動機、写真とのピントの違いなどを語りました。
- 遠景の青と霞は、足りなくても過剰でも効果が出ない
- 乾いた擦筆を使うと、コントラストを残してぼかせる
- 最初は自分が見たいものから描くほうが長続きする
- 絵は全体にピントが合いやすく、写真とは性質が異なる
- 胡粉のような小さな工程が仕上がりを変える





