焼肉屋の立て直しから2000億を狙うまで
The Solutionsの「公開壁打ち」は、事業の成長に挑む経営者から課題を聞き、三浦崇宏さんが1時間きっかりで「その手があったか」と思えるアイデアを出す企画です。今回の相談相手は、和牛バーガー「SHOGUN BURGER」を手がける株式会社ガネーシャCEOの本田大輝さんです。
三浦さんは、SHOGUN BURGERについて予備知識はほとんどないと前置きします。知っているのは、ハンバーガーがとてもおいしいことと、本田さんがナイスガイだということの2つだけだそうです。
本田さんの実家は富山の焼肉店「焼き肉ハウス大将軍」でした。20歳から25歳まで東京で修業したあと、傾いていた実家の会社を継いで立て直します。そのうえで、富山だけで飲食を続けるのは難しいかもしれないと考え、和牛専門のSHOGUN BURGERを始めました。
現在のガネーシャの事業は2本の軸で動いています。1つは富山・金沢の北陸で約14ブランドの飲食業態を運営すること、もう1つはSHOGUN BURGERをファストフードとして世界にチェーン展開することです。
ガネーシャには韓国料理の「豚魔神」や、大将軍の逆を取って名付けた「足軽おにぎり」、今年オープンした「SHOGUN PIZZA」などがあります。本田さんの事業スタイルは、まず富山でテストし、数字とお客様の反応で手応えがあったものを東京に出すという流れです。
三浦さんはこの構造を、富山をテストマーケティングの場にして東京へ出し、場合によってはグローバルまで行く仕組みとして整理しました。ほかにも、バディカの中村さんのドーナツ店を一緒に運営したり、原価率80%ともいわれた箕輪さんのラーメン店の再建に関わったりしているといいます。
売上は今期で約36億円、2027年に約58億円の見込みです。2045年に2000億円という目標は海外展開を前提にしたもので、アメリカでは来年3月にニューヨーク1号店がオープンし、ヨーロッパではロンドン店がオープンしています。
本田さんによれば、2000億円という数字は、国内で100億円規模に届く見込みのSHOGUN BURGERの国内シェアを、欧米やアジアのハンバーガー市場に当てはめて組み合わせたものだそうです。
インバウンドがいない地方で、高単価バーガーは売れるのか
本田さんが持ち込んだ課題は2つです。1つ目は、観光地ではうまくいっているSHOGUN BURGERを、インバウンドのいない地方都市にどう出店するか。和牛を使うためハンバーガーとしては高単価になることが、その壁になっています。
2つ目は海外戦略です。日本ではうまくいく兆しが見えてきたものの、グローバルなファストフードとしてどうローカライズし、外国人に伝えていくかに悩んでいると話します。
SHOGUN BURGERの現在の出店先は、すすきの、ニセコ、新宿、浅草、渋谷、金沢、横浜の赤レンガ、京都の祇園、大阪の心斎橋、沖縄の恩納村と宮古島など、観光地が中心です。京都では京極商店街への出店も控えています。
客層は場所によって大きく違います。新宿や渋谷では約7割がインバウンドで、駒沢公園や来月オープン予定の広尾は9割ほどが日本人になる見込みです。地方の観光地ではインバウンドが約60%だといいます。
本田さんの見立てでは、インバウンドのいない地域の店は赤字にはならないものの、それほど利益が出ません。目標は60店舗で、福井、青森、四国のような地方も視野に入れています。
社内では「地方に出す必要があるのか」という議論もあるそうです。それでも、100億円を目指し、SHOGUN BURGERの名前をもっと多くの人に知ってもらうには、地方にも出したいと本田さんは考えています。
地方より先に世界で憧れを作るという順番
三浦さんの第一印象は、地方への出店の前に一度海外に出店し、海外で話題にしてから地方へ行くべきではないか、というものでした。理由は、地方では「人口×所得」の条件が厳しいからです。
多分この地域の方々って2,000円のランチってないと思うんですよ。
三浦さんが食べたSHOGUN BURGERは2000円でした。地方で食べてもらえるとしても夜か、テレビで紹介されたあとの「週に1回のご褒美」のような需要にとどまるのではないか、と三浦さんは考えます。
そこで三浦さんが示したのは、ニューヨーク、パリ、ミラノ、ソウルのような世界の観光地に出して憧れとブランド力を作り、そのあとで地方ごとの中心となる駅に「ハブ店舗」を置くという順番です。北陸なら金沢駅がその候補になります。
ニューヨークでめっちゃ流行ってるあのハンバーガー屋さんが富山駅にできたよとか、あのハンバーガー屋さんが福岡駅の近くにできたよ。
さらにその先の地方には、ユニクロに対するGU、ジョルジオ アルマーニに対するエンポリオ アルマーニのように、価格を下げたサブブランドを出す案も出ました。3分の2くらいの価格で食べられる「侍大将バーガー」のようなブランドがあれば、本店への憧れもハブ店舗に流れていく、という構想です。
三浦さんはこの流れを、フェーズごとに何になるかで整理しました。
フェーズ1
日本の観光地を押さえ、日本の名物になる
フェーズ2
世界の観光地に出し、世界の憧れになる
フェーズ3
地方のハブ駅に出し、日本のデスティネーションになる
フェーズ4
地方にサブブランドを出し、日本の国民食になる
本田さんは、フェーズ2までなら飲食では一蘭 ── 福岡発祥のとんこつラーメンチェーン。個室風のカウンター席などで知られ、海外にも出店し、訪日客にも人気がありますのような存在だと応じます。三浦さんは、SHOGUN BURGERが一蘭と違うのは単価が高いことであり、だからこそ憧れをきちんと作る必要があると返しました。
夜に客が来ないなら、フードコートごと請け負う
三浦さんが昼と夜の客入りを尋ねると、本田さんは「地方になるほど夜は来ない」と答えます。日本人にとってハンバーガーはディナーの食べ物ではないためです。
それ(夜に客が来ないこと)がやっぱりハンバーガー、全国のハンバーガー屋さんが悩んでることじゃないですかね。
この話を聞いた三浦さんは、ガネーシャが14ブランドを持っていることに目をつけます。イオンなど地方のショッピング施設で、うまくいっていないフードコートをまるごと請け負い、置き換えるビジネスにしてはどうかという提案です。
本田さんも、おにぎり、ピザ、焼肉、イタリアンなど、フードコートに必要な業態は全部そろえられると反応しました。
ただ、いきなりイオンに持ち込んでも話は進まないと三浦さんは考えます。そこで間に挟むのが「フードテーマパーク」です。5年ほど前の恵比寿横丁のような横丁ブームを例に挙げ、2〜3年後には再び人が集まる場所が求められるはずだと話します。
まず富山で「将軍フードテーマパーク」を作って評判を集め、それを地方にも作れると売り込む。地元の店も入れて、地域の食を生かしたフードコートをプロデュースするビジネスにしていくのが、三浦さんのいうフェーズ5です。
一番でかい夢を書くのが僕の仕事なので、なんかこういうストーリーにするとめちゃめちゃ夢あります。
本田さんは「今までやってきたことが全部意味を持ってつながる」と受け止め、そのフードテーマパークを日本で成功させて海外でもやりたいと話を広げます。三浦さんもフェーズ6として、ディズニーランドやアマンリゾーツ ── 世界各地で高級リゾートホテルを展開するホテルブランド。少ない客室数と土地の文化を生かした建築で知られますのような、世界の人が目指すデスティネーションを日本から作る構想を語りました。
三浦さんは、星のやなどと総力戦で取り組むことや、事業を切り出してディズニーやラスベガスのMGMのようなグループと組む可能性にも触れます。本田さんも、日本人は個人で戦うから難しく、もっとチーム戦でやりたいと応じました。
地方で知名度を上げるには「イオン」と「書籍」
本田さんは、もう1つ聞きたいことを挟みます。東京では名刺を渡すと「知っています」と言われることが多いのに、地方ではSHOGUN BURGERを知る人がとても少ないという悩みです。
これまでの反響を聞かれた本田さんは、ジョブチューンや王様のブランチなど地上波のグルメ番組の反響が、ネットより強かったと答えます。イオンのフードコートには、確率の高い場所を優先しているため、まだ出していません。
三浦さんは、テレビの影響力が落ち、ネットも細分化した今でも、誰もが知っているものはあると話します。三浦さんがそれを呼ぶ言葉が「ネクストマス」で、大谷翔平さんはその一例です。
例えば僕がよく言ってるのは、イオンってマスメディアなんですよね。
三浦さんは、幕張のイオンモールの目立つ場所にテスラが置かれていた例を挙げます。そこでテスラが売れるかどうかより、「当たり前の存在だ」と伝える広告になっているという見方です。SHOGUN BURGERもモールに1店舗出せば、尖った人のものではなくみんなのものだと表現できる、と三浦さんは提案しました。
もう1つの提案は書籍です。インターネットは検索しないと現れませんが、本は街の書店に置かれます。三浦さんは、コンテンツを求めている地方局に本を持って紹介を頼んで回る「書籍×地方局」は堅い方法だと話します。
ただし、モールへの出店も書籍も、三浦さんは採算というより広告費として考えるべきだとしています。
OishiiFarmに学ぶ、ブランドは上から作るという原則
話はニューヨーク出店に移ります。三浦さんが研究すべきだと勧めたのが、日本発でアメリカで人気を集めるOishiiFarm ── 植物工場でイチゴなどを栽培する、日本人創業のアメリカ企業。高価格帯のイチゴで知られますです。
三浦さんの説明では、OishiiFarmは世界で一番おいしいとされるイチゴを工場で製造し、工業製品として出荷して価値を高めています。社名そのものがブランドになり、コラボのハンドクリームが売れるほどだそうです。創業者の古賀さんはデロイト トーマツ出身で、イチゴ農家の出ではありません。
OishiiFarmがたどった順番を、三浦さんはクイズ形式で本田さんに問いかけながら説明しました。
三浦さんは、カニエやビヨンセが欲しがったと紹介しつつ、アリアナ・グランデだったかもしれないと言い直しています。いずれにしても、トップの店を押さえることで影響力のある人に届いたという点が要です。
ブランドって一回作ったら上からしか行かないんですよ。一番上をやっつけないと、そこから下に降りてこないんで。
本田さんは、SHOGUN BURGERも日本のトップのフーディーたちとの試食会を経て商品化したと応じます。三浦さんは、ニューヨークでも一番グルメで一番お金を持っている人に食べてもらうことから始めるべきだと話しました。
トランプに食べてもらう「ターゲット20」
三浦さんは『ローマ教皇に米を売った男』という本を紹介したうえで、ニューヨーク出店の目標を大胆に掲げます。
三浦さんによれば、日本企業がアメリカを目指すときの戦略は2つに分かれます。日本の変わったものとして面白がられる「イエローモンキー戦略」と、世界の新しい標準を取りに行く「ネクストグローバルスタンダード戦略」です。
日本の尖った変わり種として面白がられる。三浦さんいわく、多くの日本のマーケターがこれで失敗する
メジャーな商品で高い品質を武器に、上から次の世界標準を取りに行く
本田さんも、今回はイエローモンキー戦略を取らないつもりだと話します。三浦さんは、ハンバーガーというメジャーな商品でクオリティも高いのだから、上から攻めていいと背中を押しました。
具体策として三浦さんが挙げたのは、ある慈善団体の新聞広告です。その国の富豪6人を名指しし、「あなたたちが寄付してくれないので困っている」と全面広告で訴えたところ、すぐに寄付が集まったといいます。
そこから生まれたのが、オープンから1カ月以内に食べてほしい20人を決める「ターゲット20」です。トランプさん、イーロン・マスクさん、大谷さんのような人に、どうすれば食べてもらえるかを本気で考えるところから始めようという提案です。
(創業者の)本田はマジで頭おかしかった。初めてニューヨーク出す時にターゲット20って言ってこのリストを広げたって。それが伝説になったらもうそれでいいじゃないですか。
三浦さんは、本田さんがオフィスに戻ってニューヨークチーム全員に宣言するところから始めればいいと話し、「ドキドキしなきゃダメなんですよ」と付け加えました。
ニューヨーク店は「いつものSHOGUN BURGER」で勝負する
ニューヨーク店の出店地はSOHOです。本田さんは、日本と同じ形で出すか、日本らしいデザインにするかで悩んでいると明かします。
三浦さんは、意識しすぎず普段のSHOGUN BURGERでいいのではないかと答えます。おいしくて、日本では高い価格も世界から見ればそれほどではないため、「おいしくて高いハンバーガー」から「ただのおいしいハンバーガー」になるという見立てです。本田さんも、その線で考えていると応じました。
広告のアイデアも出ます。トランプさんとイーロン・マスクさんがマクドナルドを食べる写真が話題になったことを引き合いに、「あなたにはもっといいハンバーガーを食べてほしい」と呼びかけるメッセージです。
だってチャレンジャーなんだもん。普通にやったらうまくいかない可能性の方が高いから、ギリギリまでやっちゃっていいんじゃないかな。
ただし三浦さんは、アメリカの訴訟は怖いので弁護士に相談すべきだとも話します。「これはダメ」ではなく「こういう抜け道がある」と言ってくれる「攻める国際法務」を組むことが大事だという考えです。
本田さんは、地方の悩みに対して「海外から行くべき」という論理的な答えが返ってきたかと思えば、急にターゲット20の話になったと振り返ります。そのうえで、提案がワクワクすることに価値を感じたと語りました。
マジで最短距離で急所刺しに行くってこういうことかみたいなのが、なんかもう肌で感じれたというか。
三浦さんも、GO自身もまだグローバルでヒットを出したことはないため、一緒にトライできるパートナーになれたらいいと話し、まずはOishiiFarmの古賀さんの紹介から進めたいと締めくくりました。
まとめ
SHOGUN BURGERの地方展開という相談に対し、三浦崇宏さんは地方を直接攻めるのではなく、世界で憧れを作ってから地方へ下ろすという順番を示しました。フードテーマパーク、イオンや書籍を使った認知、ニューヨークでのターゲット20まで、すべてが「ブランドは上から作る」という考えでつながっています。
- 地方の高単価という壁には、世界の観光地で憧れを作り、ハブ店舗とサブブランドで下ろしていく順番が提案された
- 夜に客が来ない課題には、14ブランドを生かしたフードコート請負とフードテーマパーク構想が示された
- 地方での認知には、「マスメディア」としてのイオンと、書籍×地方局を広告費として使う案が挙がった
- ニューヨークではイエローモンキー戦略ではなく、トップ層に食べてもらう「ターゲット20」で上から攻める
- 品質に自信があるからこそ、攻める法務を備えたうえで大胆な打ち手を取ってよいというのが三浦さんの結論



