同じ仕事で300円の日も9000円の日もある?
この回のきっかけは、マッキンゼーがオンラインセッションで語った内容です。AIエージェントは同じタスクでも実行ごとに手順が変わるため、運用コストが最大30倍も変わり得ると警告しました。
CEOセオさんはこのニュースを「仕入れが最大30倍もブレる」話として受け止めています。同じことを要求しても、毎回AIが手順を生成するので、Aのパターンで進む回もあればBのパターンで進む回もあるからです。
同じ仕事を頼んだのに、今日は300円でした。ただ、明日は9000円になりますというぐらい、こう30倍もブレちゃうと、非常にこう、経営はしづらくなりますよね。
一方で、AI自体の仕入れ単価は下がり続けているとCEOセオさんは補足します。上位モデルは高いままでも、モデルによっては単価が300倍近く下がったといいます。
それでも企業のAIの請求書は増え続けています。利用者が増え、使うトークン ── AIが文章を処理するときの単位。多くのAIサービスは入力と出力のトークン量に応じて料金が決まる従量課金の仕組みです量も増えているためです。
モデルによっては300倍近く安くなっている
利用者とトークン量が増え、企業の支払いは増え続けている
なぜエージェントへの丸投げはトークンを食うのか
CEOセオさんは、文章生成型のAIとエージェント型のAIを分けて考えます。ChatGPTに「これ教えて」と聞く使い方はシンプルですが、エージェントに作業を任せる場合は事情が違います。
エージェント型のAIに作業を丸投げすると、複数の工程、再試行、検証などが発生し、トークンを大量に消費します。特にコーディングの自動化はトークンを大量に食うことがあり、マッキンゼーは深刻だと語っているそうです。
丸投げ
作業をまるごとエージェントに任せる
工程の発生
複数の工程や再試行、検証をAIが自分で組み立てる
トークン増大
実行のたびに手順が変わり、消費量が読めなくなる
CEOセオさんは、以前話したJebなどを例に、手前でハンドリングすることや、全部を丸投げして高度なモデルを使わないことが重要になると話しています。
「使えばいい」から「使うな」へ。企業が利用制限を始めた
企業の側でも、AIの利用に上限を設ける動きがニュースになっているとCEOセオさんは紹介します。SalesforceやCoinbase、Amazonでも同じようなことが起きているといいます。
Amazonは、従業員のトークン使用量をランキング化し、誰がちゃんと使っているかを見える化していました。しかし、順位を上げるためだけにトークンを消費する社員が現れたため、このランキングを撤廃したそうです。
使えばいいってもんじゃない。むしろ使うなということも、企業としては求められるようになってきたということですね。
大量に使った結果、有効な使い方とそうでない使い方が見えてきたというのがCEOセオさんの見立てです。コストが30倍かかり得るなら、どんどん使ってもいられないと話しています。
トークン使用量をランキング化し、たくさん使うことを促す
ランキングを撤廃し、上限を設けて無駄な利用を抑える
さらにCEOセオさんは、トークンの使われ方がブラックボックスになっている点も指摘します。指示を高度にすればよいとはいえ、毎回生成するAIの出した価格が正当かを追うのは大変で、人間の検証にもお金がかかるといいます。
AIの使い方は人間の組織マネジメントと同じ?
CEOセオさんは、マッキンゼーの警告の核心を「丸投げは危険」だとまとめます。実行のプロセスを考えるのはAIであり、人間が考えているわけではないからです。
これって、冷静に考えてみたら、人間と一緒ってことですよね、要するに。
人間の組織でも、営業が得意な人にクリエイティブを任せれば、費用対効果が悪く、制作物の質も下がり、時間もかかるとCEOセオさんは例えます。だから適材適所が言われ、マネジメントがタスクを分配し、作業まで落とし込んで渡す必要があります。
AIも同じで、作業まで落とし込んで渡せば、短い時間と低いコストでちゃんと結果を返してくれるといいます。まるごと投げると、考えるプロセスが発生してコストがかかるのは人間と同じだという整理です。
AIが自分で考えるプロセスが発生し、時間もコストも読めない
短い時間と低コストで、ちゃんと結果を返してくれる
そこでCEOセオさんは、ある種のAI組織を考える時代になりそうだと話します。どの作業をどう投げかけるかを設計し、トークンの使用量を常に分析していく必要があるという見方です。
ヒグスフィールドの急成長が示すアプリケーションレイヤーの価値
トークンの最適化には、AIを活用したサードパーティーのプレイヤーが出てくるとCEOセオさんは予想します。すでに出始めているとしたうえで、動画制作の例を挙げています。
映像制作にはポストプロダクション ── 撮影後の編集や仕上げなど、制作物を納品するまでの工程の総称。略してポスプロとも呼ばれますのように、納品までの複雑なプロセスがあります。脚本をポンと投げて動画を作らせるのと、AIが理解しやすい形に脚本を整えてから投げるのとでは、結果が違うといいます。
CEOセオさんが例に挙げたのがヒグスフィールドです。2025年の売上が30億円しかなかったものが、2026年には1600億まで伸び、10億ドルを超えたとして、エンタープライズ型が伸びていると紹介しています。
ヒグスフィールドの使い方は、生成動画のファウンデーションモデル ── 大量のデータで事前学習された汎用の基盤AIモデル。さまざまな用途の土台として使われますに丸投げしない点にあるとCEOセオさんは説明します。シードダンスやクリングなどの基盤モデルに投げる前に、アプリケーション側で脚本やストーリーボードを作るという流れです。
このやり方なら制作が効率化され、安くできるとCEOセオさんは話します。プロセスを最適化するアプリケーションを使うことで、結果としてファウンデーションモデルの利用も安くなるという見方です。
単純にもう価格っていうのは見切れなくても、要するに作業をいかに丁寧に仕分けするかということが、重要になってきそうですね。
トークン代だけではない、AIにかかる3つのコスト
CEOセオさんは、AIにかかるお金はトークン代だけではないと整理します。トークン代に加えて、出力が合っているかを人が確かめる検証コストと、基盤の固定費がかかるといいます。
基盤モデルが受け取ったお金はクラウドの支払いを通じて、NVIDIAのような半導体企業へ流れていきます。マッキンゼーは使い方と仕入れの両方を見ているので、30倍のボラティリティが使い方次第で起きているのは間違いなく事実だろう、とCEOセオさんは受け止めています。
AIの予算超過93%、利益を実感する企業はわずか?
CEOセオさんは、企業のAI支出に関する調査データも紹介します。2026年5月から6月の約1ヶ月間に、97か国の1719人を対象にした調査だそうです。
運用コストを理由に利用を制限している企業は、5社に1社にあたります。ただCEOセオさんは、単純な制限よりも、使い方やサードパーティーのアプリケーションの利用法を考えるべきではないかと話しています。
一方で、AIによるEBIT ── 利払い前・税引き前利益のこと。番組では営業利益に近い指標として紹介されていますの押し上げを実感している、または前年とほぼ同じという企業は約4割でした。利益を5%以上押し上げる大きな価値を実感したという企業は6%にとどまります。
支払いのコストは増えたし、制限も仕掛け始めているんだけど、実際利益に効いてるのはほぼいないというのがこの残酷なAIの事実なんですね。
CEOセオさんは、AIで利益が一番伸びるのは10人以下のような小規模事業者だろうと考えています。やれる工数が大きく増え、アウトプットも確実に増えているので、収益性も売上も上がっているはずだという見立てです。
工数とアウトプットが増え、売上と収益性が伸びやすい
売上は簡単に伸びず、全員が使うとコストが大きく膨らむ
大きな組織は善意でClaudeやChatGPTの利用を全社に広げてきましたが、意外とコストも馬鹿にならないとCEOセオさんは指摘します。サブスクだけならまだしも、トークン課金まで増えると負担は大きくなります。
調査では、AIの予算を超過している会社が93%にのぼったそうです。トークンなど読めないコストが予算以上に増え始めている、とCEOセオさんは読み取っています。
エージェント導入で口座開設の原価が5分の1に
CEOセオさんは冒頭の話に戻り、ChatGPTの新旧モデルを比べると単価が約300倍下がっていると話します。安いモデルを使う分にはコモディティ化が進んでいる一方で、上位モデルと下位モデルの間には24〜25倍の差があり、モデルの選択だけで値段が大きく変わるといいます。
さらにAIエージェントになると、値段はまた読めなくなります。それでも、銀行がAIエージェントを口座開設の業務に使った例では、コストが大きく下がったそうです。
7000円〜2万円
エージェント導入後は1500円〜4700円
エージェント単体のコストは高くなっても、仕事1件当たりの原価は5分の1になっています。CEOセオさんは、KPIの見方が変わってきていると表現しています。
わざわざ人がやった方が安いのに、AIエージェントにやらせて高くなって、コストが増えて意味ないじゃないですか。
ただし、仕事単価が安くなるのはあくまで「かもしれない」だとCEOセオさんは念を押します。人がやったほうが安い場合もあるので、その判断が重要だという立場です。
月5兆トークンの偏りが示す危うさ
マッキンゼーは間に入るコンサル会社として、月に約5兆トークンを処理しているそうです。CEOセオさんは、その結果を見たうえでの警告だと受け止めています。
マッキンゼーのデータでは、利用者の約10%がトークン消費の65%を占めていました。CEOセオさんは、二八の法則 ── 全体の結果の大部分が一部の要素から生まれるという経験則。パレートの法則とも呼ばれ、上位2割が8割を占めるといった形で語られますに近い状況で、使うところはめちゃくちゃ使っていると見ています。
この偏りについて、CEOセオさんは「うまくいけばいいが、うまくいかないと本当にやばいことになりそう」と危うさを指摘しています。
さらに、AIのファウンデーションモデルが上場していけば利益を押し上げる必要が出るため、利用側はアリ地獄にハマっていきそうだとCEOセオさんは話します。
NVIDIAとクラウドは得をし、Accentureは逆ザヤになる?
AIの競争の中で利益率が最も高いのは、最上流にいるNVIDIAのような企業だとCEOセオさんは説明します。使われれば使われるほど収益が増える構造です。
その下のクラウド3社もプラスになっていきます。Amazonのようなクラウド側にとっては、30倍ブレてくれたほうが30倍のリターンがあるかもしれず、なかなかやめられないといいます。
一方で、Accentureのような会社は人月モデル ── 作業にかかる人数と月数を掛けた工数で料金を決める課金方式。システム開発やコンサルの業界で広く使われていますなので、課金モデルを変えないと逆ザヤになる可能性があるとCEOセオさんは指摘します。
| プレイヤー | 立ち位置 | コスト変動の影響 |
|---|---|---|
| NVIDIA | 最上流の半導体 | 使われるほど収益が増える |
| クラウド3社 | 基盤の提供 | ブレが大きいほどリターンもあり得る |
| Accenture | 人月モデルのサービス | 課金モデルを変えないと逆ザヤの可能性 |
AIビジネスの正しい課金モデルとは?
CEOセオさんは、インターネット広告の歴史を例に挙げます。インプレッション保証から始まり、クリック保証やアフィリエイトなどの成果報酬型が出てきた流れです。
AIのビジネスでも、人月、トークン、成果報酬、仕事当たりのどれで売るのが正しいのかが問われるとCEOセオさんは話します。5分でできる仕事を30倍で売れば大きな利益が出ますが、逆ザヤの可能性もあるからです。
保険会社みたいにある程度一定の、あらゆるテストをした上で平均値を取って、どういう課金モデルにしていくのか。
CEOセオさんは、ある種のポートフォリオでビジネスの利益を生み上げていく発想が必要かもしれないと話します。トークンはもう、そういうレベルにまで来ているという認識です。
パケ死の次は「AI死」?
最後にCEOセオさんは、AIのコスト問題を身近な例で言えば「パケ死」に近いと話します。かつての携帯電話の、使いすぎて高額請求が来る現象です。
CEOセオさんによれば、パケ死がなくなったのは、5ギガ以上使うと通信速度が遅くなるような契約が広まったからです。AIにもこうした仕組みが搭載されないと、怖いことになるかもしれないといいます。
使った分だけ課金され、使いすぎると高額請求が来る
一定量を超えると通信速度が遅くなる契約で、請求額が抑えられる
使いすぎるととんでもない請求が来ることがあり得るので、AI担当者はもちろん、経営者も注意を考えていかなければならない、とCEOセオさんは締めくくっています。
まとめ
マッキンゼーが警告したAIエージェントの最大30倍のコスト変動は、AIに作業を丸投げすることから生まれます。CEOセオさんは、人間の組織と同じように作業を仕分けて渡し、仕事1件当たりの原価や課金モデルまで見直すことが、経営者に求められると話しています。
- AIエージェントは実行ごとに手順が変わるため、同じ仕事でもコストが最大30倍ぶれ得る
- 丸投げをやめ、作業まで落とし込んで渡すことで、短時間・低コストで結果を得やすくなる
- 予算超過の企業は93%にのぼる一方、利益を5%以上押し上げた企業は6%にとどまる
- エージェント単体のコストより、仕事1件当たりの原価で判断する視点が重要になる
- パケ死のような「AI死」を防ぐため、課金モデルや利用上限の仕組みづくりが求められる




