トイザらスがドン・キホーテ傘下へ、報道は何を伝えたのか
日本トイザらスの国内事業を、ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が取得する見通しだという報道が話題になっています。CEOセオさんは、会社による正式発表ではなく報道ベースの話だと断ったうえで、この件を深掘りしています。
報道によると、2026年9月29日の夜に共同通信が第一報を出し、日経は年内にも撤退と伝えました。トイザらスとベビーザらスの国内約150店舗を引き継ぐ方針で、日経は取得価格が約100億円規模になる可能性を報じています。
従業員はアルバイトを含め約6000人いて、読売は雇用も含めた取得という書き方をしています。一方で、時期については10月末までにという報道もあり、金額も含めて明確なところはまだ出ていないとセオさんは整理しています。
トイザらスは「黒船」と呼ばれて海外から上陸し、ブランド力もイメージも高い、おもちゃといえばトイザらスという存在でした。そのトイザらスが、少子化とネット通販の拡大を背景に8期連続の最終赤字に陥っているのが現状です。
子供は減ってるけど、おもちゃは絶好調で、マーケットとしては絶好調であるという中で、なぜこの35年続いたおもちゃの黒船と言われるトイザらスが、ディスカウントストアに買収されるような流れになってしまったのか。
セオさんによれば、ドン・キホーテ側には150店舗の好立地が欲しいという見方があります。ただ、赤字のまま100億円をかけて買えば損失が積み上がるだけなので、どうプラスに転じさせるかが重要だと指摘しています。
黒船トイザらスはどう稼ぎ、なぜ古びたのか
日本トイザらスは1989年、アメリカのトイザらス本社と日本マクドナルドの合弁で設立されました。1991年12月に1号店、翌1992年1月に2号店を開き、2号店には当時のブッシュ米大統領が来店しています。
わざわざこうね、(トイザらスの)店舗に大統領が来るってよっぽどですよね。
トイザらスの稼ぎ方はカテゴリキラー ── 特定の商品分野に絞り、圧倒的な品揃えと低価格で他の小売店から顧客を奪う大型専門店のこと。家電量販店や家具チェーンなどもこの型に分類されますと呼ばれるものです。一つの商品分野を、圧倒的な品揃えと安さで売る大型専門店という形でした。
セオさんは、カテゴリキラーの弱点として、当たっている商品を大量に扱える時はよくても、その分野の市場の形が変わると店ごと古くなってしまう点を挙げています。
昔はトイザらスというと、流行の先進的な玩具が売ってるというイメージあったんですけど、今はなんか、ちょっと古いイメージ、なんか焼き増しというかね。
トイザらスの売上は、2018年の約1400億円から2025年には752億円となり、およそ8年でほぼ半減しました。粗利率は32.5%ある一方、営業損失は28億円で、営業利益率はマイナス3.7%です。
セオさんの見立てでは、トイザらスは粗利は取れているものの、店の固定費や販管費を補えていない状態です。ビジネスモデルを変えなければ厳しい、と読み取れる数字だと話しています。
買い手のPPIHは対照的で、2026年6月期の売上高は2兆4400億円、営業利益は1700億円、営業利益率は7.2%と絶好調です。
| 項目 | 日本トイザらス | PPIH |
|---|---|---|
| 売上高 | 752億円(2025年) | 2兆4400億円(2026年6月期) |
| 営業損益 | 28億円の損失 | 1700億円の利益 |
| 営業利益率 | マイナス3.7% | 7.2% |
PPIHは、M&Aで買った店を業態転換して成功させる手法を繰り返してきました。2007年に長崎屋、2019年にユニーを完全子会社化し、2026年7月にはオリンピックグループを株式交換で完全子会社化しています。
セオさんは、PPIHが自前の出店だけでは展開のキャパに限界があるため、弱った大型店舗を見つけて立地ごと買い、ドンキ化して生活に根付いたサービスを提供していく戦略だと説明しています。
子どもが減っても玩具市場が伸びる理由とは
玩具市場が伸びている中身について、セオさんは、子ども向けから大人が買うトレカやホビーへと広がっている点を挙げます。シールやサンリオなども、実際には大人が買っているといいます。
その子供と一緒に親が買いに行くっていうところから、実は気づいたら大人もハマっちゃってるみたいなね。
セオさんによれば、メーカー側も、子どもだけを狙うのではなく親子で一緒に入り、親もしっかり囲っていく仕掛けをしています。子どもが減っている以上、子どもだけをターゲットにし続けるのは厳しいからです。
セオさんは、この構図を旧ジャニーズのファン層にたとえています。子どもがファンになり、気づけば母親もファンになり、さらに次の子どもがファンになるという形で、親子世代を取りに行くことで市場を広げているという見方です。
数字で見ると、出生数は2020年の87万人から2025年には70万人と、5年で2割減りました。一方、玩具市場は同じ期間に8200億円から1兆1600億円へと41%増えています。
セオさんは、子どもの数と玩具市場はもうリンクしていないと指摘します。そのなかでトイザらスの売上は半減しており、市場とは逆の動きをしてしまったことになります。
命運を分けたとセオさんが見るのがトレーディングカードです。トレカ市場は2025年に約3400億円まで拡大し、前年度から約350億円増えました。市場全体の増加分690億円のうち半分強がトレカだとされ、2017年以降8年連続で拡大して市場全体の3割を占めています。
セオさんは、トイザらスにとってはトレカを押さえることに加え、大人も含めたターゲットへのマーケティングも必要だったとしつつ、今のトイザらスの環境ではそれが難しかったのかもしれないと述べています。
赤字の会社を100億円で買うPPIHの勝算は?
日本トイザらスは2019年から2025年まで8期連続で最終赤字となり、8期の純損失の合計は245億円にのぼります。直近でも27億円の赤字を出しています。
(8期連続赤字の会社を)100億で買うっても結構勇気いりますよね。
一方で、PPIHの2026年6月期の純利益は1100億円あります。セオさんは、報道どおり100億円なら利益の約1割を使って150店舗を取りに行く計算になると整理しています。
ただし、150店舗すべてをドンキ化して利益が出る保証はありません。セオさんは、ドンキの方程式がはまる立地もあれば、はまらない立地もあるだろうと見ています。
150店舗のうち、まあ仮にですよ、50店舗でも成功したドン・キホーテになるのであれば、十分100億とかぐらいの利益は回収できるというふうに見ているのかもしれないですよね。
トイザらスの本家アメリカはすでに終わっています。2005年にKKRがLBO ── 買収先の資産や将来の収益を担保に借入を行って企業を買収する手法。少ない自己資金で大型買収ができる反面、買収後の企業に多額の負債が残りやすいのが特徴ですで買収し、2017年9月にチャプターイレブン(日本でいう民事再生のようなもの)を申請しました。
負債の重さから、2018年3月には米国の約735店舗の清算を裁判所に届け出ています。日本事業は2018年に米本体から切り離され、それから8年間展開してきましたが、ついに撤退の流れになったということです。
「黒船が負けた」は正しいのか、タワーレコードとの違いは
セオさんは、玩具業界で今稼げているのはバンダイナムコのようにIP ── Intellectual Propertyの略で、キャラクターや作品などの知的財産のこと。玩具業界では人気キャラクターを持つ企業が商品展開で強みを持ちますを持つメーカーと、ドン・キホーテのように場所を作り変えられる総合店だけだと話します。その意味で、今回はいい転換なのかもしれないという見方です。
表向きには、35年前にやってきた黒船が、日本生まれのディスカウントストアに負け、少子化とネット通販に勝てなかったと語られています。しかしセオさんは、別の見方を示します。
(トイザらスの)アメリカはとっくに清算をしていて、8年間、日本もなんとかこう8年間粘ってきた、耐えてきた、まあというのがまあ正しい論調で。
ただ、日本も8年耐えたとはいえ240億円以上の累損を出しており、かなり厳しい状況でした。セオさんは、ドン・キホーテとしてはその状況でできるだけ安く拾いたいということだろうと見ています。
一方で、店舗が賃借か自社保有か、売り場面積はどうかといった情報はまだ公開されていません。セオさんは、何を買ったのかはまだ正確にはわからないとしつつ、150店舗を改革し、良い店舗だけを残して悪い店舗を清算していく流れになるのではないかと想像しています。
似た事例として挙がるのがタワーレコードです。日本法人は2002年10月にMBOで米本社から独立し、米国本社が2006年10月に競売にかけられた後も営業を続けています。
2002年にMBOで独立し、米本社の競売後も日本法人は営業を続けている
米本社は2018年に清算、日本法人も8年粘ったがM&Aされる流れに
親が倒れても子は残ってるというのが今タワーレコードになってますけども、まあトイザらスは両方ダメになっちゃったということですね。
セオさんはシンガポールに住んでいた時、ドン・キホーテが来た瞬間に日本のあらゆるものが買えるようになった経験を語ります。国内はほぼ取り切ったと考えられる一方、海外にはまだ伸びしろがあり、これからは海外なのではないかと見ています。
最後にセオさんは、トイザらスというブランドが終わっていくのは寂しいとしつつ、変化できるものだけが生き残るというダーウィンの言葉を引き、変化し続ける必要性を改めて感じたと締めくくっています。
まとめ
トイザらスの苦境は、少子化だけでは説明できません。玩具市場が大人向けのトレカやホビーで伸びるなか、カテゴリキラー型の店がその変化に乗れなかったことが大きく、PPIHはその好立地を安く取得して業態転換する狙いがあると考えられます。
- 出生数は5年で2割減ったが、玩具市場は41%増えて1兆円規模になった
- 成長を支えたのは大人も買うトレカやホビーで、トレカは市場の3割を占める
- トイザらスは売上がほぼ半減し、8期連続の最終赤字で累計245億円の純損失
- PPIHは弱った大型店を立地ごと買い、ドンキ化する戦略を繰り返してきた
- 米本社は2018年に清算済みで、日本は8年粘った末の撤退という見方もできる




