新しい技術は、最初はおもちゃに見える?
「イノベーションは加速しているか減速しているか」の後編は、前編の振り返りから始まります。宮武さんによると、イノベーションが減速していると主張する人の多くは、生産性の数字を根拠に挙げます。
宮武さんは、生産性だけでイノベーションを測るのは難しいとしつつ、どこかのタイミングで生産性は上がらなければならないとも考えています。後編では、その「どのタイミングで起きるのか」という問いから話が広がります。
宮武さんが手がかりにするのは、Off Topicでも過去に紹介した「次の大きなことは、おもちゃとして始まる」という考え方です。草野さんがクリス・ディクソンさんの言葉かと尋ねると、宮武さんは何人かが言っていることなので確かではないと答えています。
この最初におもちゃに見えるっていうのは本当にそうで。(新しい技術について)実際に「おもちゃです」っていうのを言う人がいるんですよ。
宮武さんは以前、新しい技術が何年に「おもちゃ」と言われていたかをまとめた画像をリツイートしたことがあるそうです。元のソースは覚えていないとしつつ、その中身を順番に紹介しています。
草野さんが「本当に記事に『おもちゃ』と書いてあるのか」と確かめると、宮武さんは「Streaming is a toy」のように、実際にそう書かれた記事があると答えます。草野さんは、並んだ技術が今では普及しているものばかりだと驚いています。
宮武さんの見方では、初期の技術がおもちゃに見えるのは仕方のないことです。初期の段階では、実際におもちゃのようなものだからです。
車を分解して草むらに隠せという法律
新しい技術がおもちゃ扱いされた例として、宮武さんが特に面白いと挙げるのが車です。前編でも触れたJPモルガンは、エジソンに投資した人物ですが、アメリカで最初期の自動車会社であるフォードには投資しませんでした。
(フォードに)投資しなかった理由が、「お金持ちのおもちゃだから」っていう理由で。
宮武さんは、JPモルガンのこの判断は当時としては正しかったと考えています。最初の車は買うのにかなりのお金が必要で、持ち主は自分で運転せず専属のドライバーを雇いました。設備もよくなかったため、修理をする人も常に乗せる必要があり、持ち主を含めて3人体制で動かす乗り物だったといいます。
草野さんは「馬のほうがいいですよね」「めちゃめちゃコストがかかりますね」と反応します。お金持ちのおもちゃとして見られたのも無理はない、というのが2人の受け止めです。
宮武さんがさらに面白いと話すのが、当時のイギリスとアメリカの法律です。法律を見ると、車が未来のイノベーションになるとは社会がいかに信じていなかったかがわかるといいます。
イギリスには、自動車には必ず3人が乗っていなければならないという法律がありました。さらに、走行中は60ヤード前を徒歩の人が旗を持って歩き、馬に乗っている人たちに車が来ることを知らせなければなりませんでした。
車じゃないっていう。そうそう、徒歩じゃんっていう。
宮武さんによると、アメリカの法律はもっと極端でした。1896年のある法律は、おそらく特定の州だけで適用されたものですが、馬に乗った人とすれ違うときには車を止め、分解し、近くの草むらに隠さなければならないという内容だったそうです。
もう意味ないです。意味ないですか。よくわかんないですね。
宮武さんは、こうした法律が生まれるほど、新しいイノベーションは理解されず、おもちゃとして見られていたと話します。そのうえで、車の価値は車そのものだけでなく、車から生まれた新しい業界やライフスタイルにもあると指摘します。
宮武さんの例では、郊外や地方に住むという暮らし方自体が車によって生まれた社会です。草野さんも「確かに遠くに住めますもんね」と応じています。
おもちゃ扱い
高価で、ドライバーと修理係が必要な「お金持ちのおもちゃ」
社会の抵抗
3人乗車や旗持ちの先導、分解して隠せといった法律
波及
郊外に住む暮らしや、そのライフスタイルに合う家や業界が生まれる
イノベーションのインパクトが社会に広がるには時間がかかります。ただ、問題はそれがどれくらいかかるのか、そして今の数字を見るとそれほど伸びていないのではないか、という点です。宮武さんは後編で、生産性以外の要因に目を向けると話しています。
マーク・アンドリーセンが「It's Time to Build」を書いた理由
生産性以外の要因を考えるにあたって、宮武さんが最初に注目するのは、コロナが始まった2020年にマーク・アンドリーセン ── ネットスケープの共同創業者で、ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツを率いる投資家。テクノロジー楽観論の論客としても知られていますさんが書いた有名なエッセイ「It's Time to Build」です。
宮武さんによると、このエッセイは日本語にも翻訳されていますが、一部の翻訳では冒頭が省かれています。しかし、その冒頭こそ、マーク・アンドリーセンさんがなぜこのタイミングで書いたのかを示す重要な部分だといいます。
エッセイが書かれた当時、ニューヨークではコロナの感染が大きく広がり、医療物資が不足し始めていました。ナースが使う手術用ガウンが足りなくなり、市長が市民にゴミ袋を持ってきてほしいと呼びかけ、ゴミ袋からガウンを作るという話にまでなったそうです。
そこでマークさんが思ったのが、「アメリカってガウンまで作れない世の中になっちゃったんですか?」っていう。
マーク・アンドリーセンさんが問題にしたのは、ガウンのようなものまで海外に頼ってよいのか、という点でした。宮武さんは、その背景にグローバリゼーションがあると説明します。
宮武さんは、グローバル化そのものは悪い話ではないとしています。ただ、特定の国に頼る構造が50年かけてできあがったため、コロナが起きたからといってすぐに覆すことはできません。
(グローバリゼーションを)やる理由って、全員平和で暮らすことを想定して、多分グローバリゼーション皆さんしてたので。
平和を前提にできない世界では、もう一度ゼロから考え直さなければならない。マーク・アンドリーセンさんは、そうした問題意識から「It's Time to Build」を書いたというのが宮武さんの説明です。
ヴィトクラシーとは何か。ゴールデンゲートブリッジと高速鉄道の差
宮武さんによると、マーク・アンドリーセンさんは「It's Time to Build」の中で、アメリカでイノベーションが足りない理由として社会的な要因を挙げています。それが、今のアメリカが「ヴィトクラシー」に包まれているのではないか、という指摘です。
ヴィトクラシーの「ヴィート」は拒否を意味します。宮武さんは簡単な言い方としつつ、拒否権を持つ人が多すぎて物事が進まない状態だと説明しています。
宮武さんは具体例として、建設にかかった期間をクイズ形式で草野さんに尋ねます。サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジについて、草野さんが「3年か4年」と答えると、宮武さんは「3年5か月ぐらい」でかなり近いと返しました。
次の問題は、1931年に完成したニューヨークのエンパイアステートビルディングです。草野さんは大きい建物なので5年ほどと予想しましたが、実際は15か月、およそ410日しかかかっていないそうです。
これと比べる対象として宮武さんが挙げるのが、2008年に立ち上がった、LAとサンフランシスコを3時間以内で結ぶ高速鉄道のプロジェクトです。宮武さんはこれをトリッククエスチョンだとして、草野さんに完成時期を尋ねます。
いまだにできてないんですよ。
宮武さんによると、プロジェクト開始時に与えられた予算は90億ドルでした。それが14年後の今では、全体で1000億ドルほどかかると言われており、元の予算の10倍ほどに膨らんでいます。
| プロジェクト | 時期 | かかった期間 |
|---|---|---|
| ゴールデンゲートブリッジ | だいぶ前 | 約3年5か月 |
| エンパイアステートビルディング | 1931年完成 | 約15か月(約410日) |
| LA〜サンフランシスコ高速鉄道 | 2008年開始 | 14年経っても線路ができていない |
高速鉄道が進まない理由について、宮武さんは「いろいろ政治周りとかで」と話しています。14年経っても、鉄道の線路は1メートルもできていないそうです。
駅のトイレ再開に20年。住宅・学校・銀行・病院も既存側が承認する
宮武さんは、サンフランシスコの例をもう1つ紹介します。Twitterで話題になっていた話で、サンフランシスコ市がBART ── サンフランシスコのベイエリアを走る鉄道システム。Bay Area Rapid Transitの略で、市内と周辺都市を結ぶ通勤の足になっていますの駅にあるトイレを、20年ぶりに再オープンしたというものです。
二十年間かかってようやく再オープンしたっていう。そのトイレを。駅じゃなくて駅の中のトイレを。
トイレの再オープンには、なぜかリボンカットのセレモニーまで行われたそうです。宮武さんはトイレの例は例外かもしれないとしつつ、何かを作ることに対して拒否権を持つ人が多いため、作りたくないという声が強くなると話しています。
住宅も同じ構図です。テック業界があるサンフランシスコは住みたい人が多く、ベイエリア全体では200万世帯ほど住宅が不足していると言われています。それでもサンフランシスコ市が今年新しく建てることを許可したのは、70世帯だけだったといいます。
宮武さんは、Off Topicで去年扱った教育の回にも触れます。アメリカで新しい学校を作るには、ほかの学校から承認を受けなければなりません。既存の学校は、学生ローンなど政府が提供する資金のプールを分けたくないため、基本的に承認しないという話です。
銀行でも同じことが起きていると宮武さんは話します。JPモルガン、シティ、バンク・オブ・アメリカといった大手はどんどん大きくなる一方で、新しい銀行の設立免許は減り、新しい銀行が作れなくなっています。
病院でも、新設には認定(accreditation)が必要です。その認定プロセスを運営しているのがほかの病院であることもあるといいます。宮武さんは、教育、ヘルスケア、交通、航空会社など、既存の業界が新規参入の入り口を握っている構図を指摘しています。
| 領域 | 新規参入に必要なこと | 誰が承認するか |
|---|---|---|
| 学校 | 新しい学校の承認 | ほかの学校 |
| 病院 | 認定(accreditation) | ほかの病院が運営することもある |
| 住宅 | 毎年の建設許可 | サンフランシスコ市(今年は70世帯) |
アーモンドミルクは「ミルク」と名乗れない?規制で守られる既存プレイヤー
宮武さんは、自由市場を謳うアメリカでも、自由なのは特定の領域だけだと話します。政府が絡む領域は、3〜4社しかいない寡占市場 ── 少数の企業が市場の大半を占めている状態。競争相手が少ないため、価格や品質の競争が起きにくいとされますになっているケースが多いといいます。
最近の例として宮武さんが挙げるのが乳製品です。オーツミルクやアーモンドミルクのような植物性の代替ミルクが出てきたことで、既存の大手乳製品メーカーはそれらを敵視しているそうです。
宮武さんによると、大手乳製品メーカーはロビー活動を通じて、代替ミルクのパッケージから「ミルク」という言葉を取り除くよう圧力をかけています。そうなると、アーモンドミルクは「アーモンド飲料」とでも呼ぶことになるのか、と宮武さんは話しています。その要求は通りそうな状況だといいます。
規制によって既存企業が生き残る構図は昔からあるものの、コンピューター周りの領域にはそうした規制が少なかった、と宮武さんは考えています。だからこそ、コンピューターの世界では革命が起きやすかったという見方です。
あのテスラが出てくるまで六十年間ぐらいもう三社しかいなかったんですよね。アメリカだと。もうGM、フォード、クライスラーって。
宮武さんは、テスラでさえ参入には大変な壁を乗り越えなければならなかったと話します。バイデン大統領は電気自動車を推進し、アメリカの自動車会社に資金提供や補助金を出そうとしていますが、なぜかテスラが含まれていないという課題もあるといいます。
保険が効くインシュリンは高く、効かないレーシックは安い
宮武さんは、政府が絡むことのもう1つの影響として価格の上昇を挙げます。政府が既存プレイヤーを守るだけでなく、政府自身がお金を出すことで値段がどんどん上がっていくという指摘です。
教育の回で話した例では、このままいくと4年制大学の学費が1億円かかるようになるといいます。ヘルスケアでも、アメリカのインシュリンは本来8ドルほどであるべきなのに、800ドルほどになっていると宮武さんは話します。その理由として宮武さんが挙げるのが、保険でカバーされていることです。
反対に、保険でカバーされない領域では値段が下がっています。宮武さんの例はレーシック ── レーザーで角膜の形を整えて視力を矯正する手術。アメリカでは保険の対象外になることが多く、自費で受けるのが一般的ですで、保険が効かず自分で払うケースが多い一方、テレビと同じように値段が大きく下がっているそうです。
レーシックは、目をリアルタイムで3Dマッピングしてレーザーを照射する複雑な技術です。それでも値段が下がり続けているのは、消費者が自分で払うため本当の競争が起きているからではないか、と宮武さんは考えています。
インシュリンは本来8ドルほどであるべきところ800ドルほど。値段を下げなくても政府が補うため、価格が上がる
レーシックは複雑な技術なのに、競争が起きて値段が下がり続けている
宮武さんは、これまでのイノベーションはGDPのほんの小さい部分にしか当てはまらなかったのではないかと話します。コミュニケーションやエンタメではイノベーションが起きている一方、ヘルスケア、教育、エネルギーではそれほど起きていないか、起きても政府に制限されているという見方です。
アメリカのGDPの20%はヘルスケアで、このままいくと50%になるといいます。宮武さんは、その理由は値段が上がっているからだけだとしたうえで、テクノロジーには本来デフレ効果があるため、価格が上がり続けているのはイノベーションが足りていない証拠だと考えています。
エネルギーでも、テスラやバッテリーの新技術など新しいイノベーションは出てきています。しかし政府が石油に多額の補助金を出しているため、代替エネルギーは石油の価格に届かず、およそ2倍の水準にとどまっているそうです。
それと同じように政府が動いてたんですけど、政府の方がお金持ってるので、VCより。
宮武さんはこの構図を、VCの大量の資金でウーバーやリフトが料金を安くしていた時代にたとえています。石油の場合は、その役割を資金力でVCを上回る政府が担っているというわけです。
テクノロジーへの恐怖は、格差とSFから生まれる?
宮武さんは、政府だけを責めるのはよくないとも話しています。社会やカルチャー全体に、テクノロジーに対する恐怖感があるのではないか、というのが次の論点です。
宮武さんが最初に挙げるのは、テクノロジーが格差を生むことです。宮武さんが面白いと話すのは、格差が生まれている一方で、全体の水準は上がっているという点です。
宮武さんの例はAmazonです。多くの人はAmazonがあることで便利になり、全員が何らかの恩恵を受けています。それでも究極的にはジェフ・ベゾスさんが最も大きな恩恵を受けてお金持ちになり、それを嫌がる人はどうしても出てきます。
人間って他の人間をどうしても比較しちゃうので。そうすると、そこの格差を嫌がるっていうのが一つの多分カルチャー的なものとしてありますと。
もう1つの要因として宮武さんが挙げるのがSFです。1940年代に書かれたSFの多くは、1960〜70年代には月に行くことなどで実現されていたといいます。一方、ドラえもんの世界や空飛ぶ車のように、多くの人が思い描いた未来には実現していないものもあります。
宮武さんは、SFの役割を新しい技術を実現することではなく、将来起きるかもしれないイノベーションに対する心の準備だと考えています。SFが未来をポジティブに見せるかネガティブに見せるかによって、社会の受け止め方が変わるという見方です。
ポジティブに描いた代表例がスタートレックです。どんな質問にも答えるコンピューターは今のGoogle、コミュニケーションデバイスはスマホのようなもので、昔のエピソードでは登場人物がタブレットを持ち歩いていたそうです。宮武さんは、ナイトライダーの車も現代の車とリンクする部分があると話しています。
ただ、こうしたポジティブなIPから生まれたのは、主にコミュニケーションのようなデジタル上の発展でした。リアルな世界のものの発展は少ないと宮武さんは指摘します。
なぜかあの、そのiPhoneを使って、なんかあの豚に鳥を飛ばすとか、アングリーバーズですよね。
月に行くロケット以上の処理能力を持つiPhoneが、アングリーバーズのようなゲームに使われている。宮武さんは、全然新しいことをしていないように見える状況も同時に起きていると話しています。
シリコンバレーの研究者自身が、AIを恐れている
宮武さんによると、テクノロジーへの恐怖感はシリコンバレーの中にもあります。2000年代の初めには、AIがどこかのタイミングで人間を超えるというシンギュラリティ ── AIが人間の知能を超え、社会や技術の変化が予測できなくなる転換点を指す言葉。技術的特異点とも呼ばれますを想定して、多くのAIプロジェクトが立ち上がっていたそうです。
当時の議論の中心は、人間を超えたAIが人間をポジティブに見るのか、ネガティブに見るのかという点でした。宮武さんによると、2017〜2018年ごろには、シリコンバレーの多くの人がネガティブな結論を出していたといいます。
AIが人間を超えると、人間を全員殺してしまうと。
宮武さんは、この最悪のシナリオを信じてしまうと、AIの研究者は全力で研究してよいのか迷うようになると話します。研究を進めた先で、自分や人類を滅ぼしてしまうかもしれないからです。
悲観的な結論
シリコンバレーで「AIが人間を超えると人類を滅ぼす」という見方が広がる
研究者のためらい
全力で研究してよいのかという迷いが生まれる
スピードの低下
無意識に研究のスピードを落とすケースがあるのではないか
この仮説は宮武さん自身の主張ではなく、そう指摘する人もいるという紹介です。宮武さんは、イノベーションの減速を考えるときは生産性を見るべきだとしつつ、細かく見ると社会学的な要素もかなりあるのではないかと話しています。
宮武さんはさらに、エネルギー業界のように世界に大きな影響を与える領域では、新しい技術が出てきても浸透やスケールが制限され、テクノロジーがまだ十分に入り込めていないと指摘しています。
SpaceX、テスラ、そして「テックバイオ」に見える希望
ここまでの話は暗く聞こえるかもしれません。それでも宮武さん個人は、この状況をポジティブに見るべきだと考えています。宮武さんは、これらはすべて解決できる問題であり、解決の事例も出始めていると話しています。
宮武さんが挙げる事例は、NASAを圧倒的に追い抜いたSpaceXや、既存の自動車会社を追い抜いたテスラです。Off Topicで去年扱ったキャナのような飲料プリンターも、サプライチェーンや飲料の生産をゼロから考え直した例として挙げています。
宮武さんは、教育、不動産、銀行などの金融業界でも、新しい会社が次々に出始めていると話しています。
バイオの分野では、これまで「バイオテック」と呼ばれてきた会社を、「テックバイオ」と呼ぶ人が増えているそうです。まだ一般には普及していない呼び方ですが、テクノロジーファーストのバイオ企業という意味だといいます。
従来の呼び方で、バイオテクノロジーの会社
テックが先に来る、テクノロジーファーストのバイオ企業
モデルナってワクチン会社、ワクチンを作る会社ではなくて、mRNAのテクノロジープラットフォームだっていう話。
テックバイオの代表例として挙げられるのがモデルナです。宮武さんは、こうした新しい領域にテクノロジーの要素はもっと入るべきであり、入れない理由があるなら、それをこれから覆していかなければならないと話しています。
制限は事実でも、なぜポジティブに見るべきなのか
宮武さんは、「これだけ制限がかかっているからできない」という主張のほうが、正しいケースは多いと認めています。今のアメリカ政府が一瞬で変わるとは思えず、石油企業への補助金もおそらく出し続けるだろうと話しています。
そのうえで宮武さんは、世界を変える人と同じように、自分たちもポジティブに見なければならないと考えています。宮武さんにとって、そのために必要なのは、既存の業界をゼロから考え直すことです。
草野さんは、コロナは予想できたはずなのに、いざ起きると大騒ぎになった出来事だったと振り返ります。そのうえで、コロナによって新しいテクノロジーや業界が一気に盛り上がった面もあったと話しています。
でもやっぱりコロナが起きたからこそ、レギュレーションが緩めて、だからモデルナとかファイザーとかがあのスピード感でワクチンを出せたんですよね。
宮武さんによると、モデルナやファイザーがワクチンを作るのに使ったのも新しい技術でした。こうした技術はコロナのような対立や危機の時期に生まれやすく、これまでは戦争がそのきっかけになることもあったといいます。
宮武さんは、今のアメリカ政府の取り組みの一部は既存プレイヤーを守ることになっており、それは競争をなくすことでもあると指摘します。
まとめ
後編では、イノベーションの停滞を生産性以外の視点から見直しました。宮武さんが挙げた主な要因は、拒否権を持つ人が多すぎる社会、既存プレイヤーを守る規制、テクノロジーへの恐怖感です。そのうえで、制限を乗り越えるためには、既存の業界をゼロから考え直し、競争を取り戻す必要があると語られました。
- PC、インターネット、車など、多くの技術は最初「おもちゃ」と見なされ、車には分解して隠せという法律まであった
- マーク・アンドリーセンさんが指摘したヴィトクラシーにより、高速鉄道は14年経っても線路ができず、学校・銀行・病院の新設も既存側の承認に阻まれている
- 保険が効くインシュリンは高騰し、自費のレーシックは安くなるなど、誰が払うかによって競争と価格が変わる
- 格差への反発、SFの描き方、AIへの悲観が、テクノロジーへの恐怖感を生んでいる可能性がある
- SpaceX、テスラ、テックバイオのモデルナなど、ゼロから考え直す企業に解決の兆しが見えている


