即興オープニングで見えてきた番組のかたち
初回は2026年1月13日の23時50分スタート。もともと晩酌タイムは23時から始める予定だったそうですが、子供が生まれてから予定が押しがちだといいます。
なかなか子供が生まれると全部押し押しになりますね。そんな今日この頃です。
作戦会議に入る前に、凪さんが「とりあえずオープニングを撮ってみよう」と提案します。音楽が流れながら番組名を言う、ラジオでおなじみのあれです。
ちょっと即興でお互いワンパターンずつ撮ってみようぜ。
凪さんが先攻。お風呂で考えたという口上を、噛むこともなくスラスラと披露します。
五十嵐夫婦の晩酌。この番組は、お酒を片手に語らうことが大好きな我々医者夫婦が、晩酌トークをお送りするラジオ番組です。
ここで番組名が「五十嵐夫婦」なのか「五十嵐家」なのかが議論に。凪さんが「家」にしたい理由を説明します。
なんで私が家にしたかったかっていうと、誰かが加わる可能性があるから。
この一言で、番組名は「五十嵐家の晩酌」に決まりました。将来、家族の誰かが加わる余地を残した名づけです。
目的を決めずにやりたい、という番組の芯
続いてゆうさんがオープニングを即興で口にしていきますが、途中で「違うな」と止まります。凪さんが「今のポイントは何だったの?」と聞くと、ゆうさんは番組の目的について語り始めました。
ゆうさんが大事にしたいのは、「社会の役に立つ」「特定のターゲットのため」といった明確な目的を設定しないことでした。
我々が楽しいからやるというか、ちょっと我々の会話を世間様に聞いてもらうことは、結果的に我々にもメリットがあるのではないかぐらいの感じ。
とはいえ、二人で話していると「これ結構いいこと言ってない?」と感じる瞬間はあるといいます。それを「ためになるよ」というトーンではなく、緩く届けたいという考えです。
ゆうさんによれば、この理屈は全部後付けで、話しながら言語化していったものだそう。凪さんも「いつもゆうちゃんそうだもんね」と笑います。
ゆうさんは、第三者に聞かせる体でやったほうが議論が建設的になる可能性や、本を読んだあとに誰かに話すことでインプットの質が上がる感覚にも触れました。
読んだ時に、それを誰かに喋るっていう風にした方が、結果的にそのアウトプットを意識することでインプットの質が上がる。
そもそも夫婦の会話に目的はない
話は「夫婦の会話に目的はあるのか」というところへ。ゆうさんは、あるとすれば「喋りたい」という気持ちだけだと言います。
そもそも夫婦の会話に目的はないよね。あるとすれば喋りたいっていう感じだから。
そんな会話も、「誰かのため」となった瞬間に大きく話が変わってしまう、とゆうさんは指摘します。二人がいつも見ているYouTube番組『ひげと私』も、誰かの参考になればいいくらいの温度感なのではと話題に出しました。
番組収録中も、我が家スタイルは健在。ゆうさんがキャンドルを取り出し、着火盤で火をつけていきます。10月末にデンマークで買ったHAYのキャンドルは、残り4本ほど。
有限の美しさはあるよね。
なくなるからこそ、次も同じものを使うのか新しいものに目を向けるのかを考える。凪さんは、その有限さこそがいいのだと話します。
テレビは持っていかれる。音声が心地いい理由
ここからは二人が音声コンテンツを好きな理由へ。ゆうさんは、ある音声番組にゲストで呼ばれた人が「自分も音声に救われた経験があるから、誰かに届けばいいと思ってやっている」と話していたエピソードを紹介します。
ゆうさん自身には音声に救われたほどの原体験はないものの、音声コンテンツ自体は好きだといいます。長距離移動などとの相性のよさや、想像力が掻き立てられる感じが理由です。
なんか想像力が掻き立てられる感じもちょっと好き。
一方でテレビは、視覚情報にかなり引っ張られると感じているそう。多動だからか、テレビの前にずっと座っているのが正直しんどいとも話します。
なんかテレビにすごく持ってかれる感じ。なんかもったいない感じが自分の中でするのもあるかな。
倍速で聞くゆう、一言一句聞きたい凪
二人の聞き方は対照的です。ゆうさんは基本的にラジオを倍速で聞くタイプ。Spotifyでかなり細かく速度を調整するそうです。
2.5から、いやもう3の時は…3はないか。でもSpotifyかなりいじれるから。
凪さんが「そのぐらい早かったら集中して聞かないと入ってこなくない?」と驚くと、ゆうさんは意外なほどあっさり答えます。
そんな集中してない。
ゆうさんいわく、本を読むときですら集中していない時間は結構あって、音声も「3、4割ぐらい入ってくればいいかな」ぐらいの期待値だといいます。
対して凪さんは、テレビもラジオも「全部聞きたい人」。倍速にすることは基本なく、その人の声や間、トーンをすべて気に入って聞いているからだと語ります。
ラジオは基本的に、それぞれのその人の声とか、喋りの間とかトーンとか、そういうのを全て気に入って聞いてるから。変えたくないのね。
学ぶ目的が強い。2.5倍などに速度を上げ、3〜4割入ればいいという期待値で聞く
声や間、トーンを味わいたい。倍速はせず、一言一句を至福の時間として聞く
情報が少ないからこそ没入できる
速度は違っても、「映像がないから想像力が掻き立てられる」という感覚は凪さんも共感します。テレビは情報が多すぎて、良くも悪くもトークには向かないと感じているそうです。
凪さんは、生きているだけで目から入る情報が一日中多すぎる、と表現します。人も風景も音も、常にノイズとして押し寄せてくるという感覚です。
だからこそ、音しか聞こえない音声コンテンツは情報が限られていて、かえって集中して聞けるのだといいます。
この感覚をゆうさんは「没入感」と言い換え、二人の間で腑に落ちます。凪さんは散歩中も料理中も聞いていて、それが心地いいのだと話しました。
ゆうにとっての音声は「学ぶ」時間
凪さんは心地よさを求めていますが、ゆうさんは「別に心地よさはそんなに求めてない」と対比を見せます。ゆうさんにとっては、学ぶという目的のほうが強いのです。
かつて通勤に1時間ちょっとかかっていた頃、AudibleのようなAmazonの読み上げサービスにハマっていたそう。歩く時間も含めて活用していました。
ここで凪さんが鋭いツッコミを入れます。「さっき自分は目的的にしないって言ってたのは?」。ゆうさんは、聞くことと作ることを分けて説明します。
目的的になっちゃうと自由度が失われるのと、やってる側の楽しさよりも、やらなきゃいけないっていうのが強くなっちゃう。
自分でコミュニティやモヤハルという番組を運営しているからこそ、目的を決めるとネタ選びがしんどくなり、いずれネタが尽きる感覚があるといいます。
自由度を狭めるほど、なんかやれるネタが減ってくるんだよね。ただのおしゃべりとかって、広げると何でも喋っていいって感じになるから。
この夫婦の番組は、そんな窮屈なものにはしたくない。普段の会話が目的的でないのと同じ温度で続けたい、というのがゆうさんの着地点です。
凪が挙げる、繰り返し聞く3つの番組
ここでゆうさんが「好きな音声コンテンツを3つ挙げると?」と質問。凪さんが定番で毎週聞いているものを紹介します。
あえてここで挙げるとすると、好きな音声コンテンツは何ですか?
ゆう さんからの質問
凪さんが挙げたのは、フードエッセイスト平野紗季子さんの『アジナフク音声』、北欧暮らしの道具店の『チャポンと行こう』、吉岡里帆さんがパーソナリティを務めるUR賃貸住宅の『URライフスタイルカレッジ』の3つです。
凪さんによれば、どれも早送りはしていないとのこと。理由はシンプルで、癒しであり、面白いから。トークの内容をちゃんと聞きたい人だからこその選び方です。
凪さんは、聞くシチュエーションまで選ぶといいます。聞きたいけれど今ではなく、「この時に聞こう」と取っておくこともあるそうです。
番組ごとに使い分ける、聞くシチュエーション
凪さんは、番組のトーンによって聞くタイミングを細かく分けています。まず『チャポンと行こう』は、40代くらいの二人がお風呂に浸かっているようなトーンで話す番組です。
感性が素敵なんだよね、その二人は。いい年の取り方をしているというか。
ただ和やかなトーンゆえに、眠い時に聞くと眠くなってしまうのが難点。だから気分がいいとき、ゆったりした運転中や散歩中に、ほのぼの聞きたい番組なのだそうです。
一方、平野紗季子さんの『アジナフク音声』は、比較すると早口でテンポがよく、言葉選びが巧み。食べ物のトークがメインなので、料理をしながらや仕事の帰り道に、気分を高めるために聞くといいます。
最近のおまけとして挙がったのが、料理家・長谷川香さんの『しゃに構』。長谷川さんと、天才てれびくんで戦士をしていた同時代のメンバー(現・担当編集)による番組です。
つまり長年の友達同士の女子トークで、ガヤガヤと元気なのが特徴。凪さんは、夕方に一日の疲れが溜まってきて、赤ちゃんの相手にもうひと踏ん張りしたいタイミングで、活気をもらうために聞くそうです。
番組名が「概念」を作る、という気づき
ここでゆうさんが、凪さんの挙げたタイトルに反応します。『アジナフク音声』や『しゃに構』のような名前がいい、と。
ゆうさんが挙げたのは、経営者に寄り添う番組『経営中毒』。会社の不祥事で一時休止したものの、聞いていて楽しい番組だったといいます。ゆうさんが惹かれたのは、その番組名の力でした。
番組名が言葉を作ってるっていうか、その概念を作ってるっていうか。
「アジナフク音声」も「しゃに構」も、もともとは世の中にない言葉。名づけることで新しい概念が生まれている、というのがゆうさんの見立てです。
凪さんも『チャポンと行こう』を例に納得します。お風呂にチャポンと浸かる情景から生まれた略称で、たしかにタイトルが概念を作っているといえます。
比べると『五十嵐家の晩酌』はド直球すぎる、とゆうさん。技巧を凝らしすぎないけれど、喋りたくなるような何かがある名前がいい、という方向性を示します。
技巧を凝らしすぎない。でもなんか喋りたくなるような何かがあるといいんじゃないかな。
宿題は番組名。反対語の組み合わせという発想
収録から30分ほど経ち、そろそろ終わりへ。次回までの宿題は、番組名を考えることに決まりました。ただし凪さんは、名前は狙って出てくるものではないとも感じています。
考えようと思って考えるっていうよりも、ふとなんか「あれ、いいんじゃね?」みたいな。会話の中で生まれたりもするかもしれない。
そこでゆうさんが、昔メールアドレスで憧れた発想を持ち出します。「ホワイトアップル(白いリンゴ)」のように、一般的な概念とはちょっと違う言葉の組み合わせが好きだというのです。
反対的な言葉を組み合わせるみたいな。例えばホワイトアップルみたいなやつ。
凪さんはこれを、キャッチコピーの考え方として整理します。使いたい言葉を先に固定し、そこに何を組み合わせたら面白いかを考える、というアプローチです。
使いたい言葉を先に決めて、何をそこに組み合わせたら面白いかみたいな。
終われない夫婦。目的のない会話こそ雑談
番組名が決まるまでは、いったん『五十嵐家の晩酌(仮)』でいくことに。すると終わりかけたところで、また新しい会話の種が生まれます。ゆうさんが「目的のない会話」とつぶやきました。
凪さんはすかさず「それを雑談というんじゃないですか?」と返します。ここから、二人らしい言葉遊びが続きます。
そうか、目的のない会話ことを雑談と言うのか。
「目的がないことを目指してるからな」と言いかけたゆうさんに、凪さんは「目的って言葉を使った時点でもう目的的だ」と指摘。「目的」という言葉自体を封印しようという流れになります。
「お風呂上がりのアイスクリーム」とまた話を広げようとするゆうさんに、凪さんは笑いながらツッコミます。終わろうとしているのに、新しい会話を始めるから終わらないのだ、と。
まとめ
初回は番組づくりの作戦会議でありながら、二人の会話そのものが番組の魅力を体現する回になりました。目的を決めずに、ただ楽しく喋る。その温度感が最後まで一貫しています。
- 番組名は将来家族が加わる余地を残して『五十嵐家の晩酌』に。ただし「概念を作るような名前」を目指し、正式名は宿題に
- ゆうさんは学ぶ目的で倍速、凪さんは声や間を味わうため等速と、聞き方は対照的
- 凪さんは番組のトーンごとに聞くシチュエーションを使い分けている
- 二人が共感するのは、情報が限られた音声だからこそ没入できるという感覚
- 目的を決めないことが、この夫婦番組の芯として繰り返し語られた





