神戸のギャラリーで出会ったオリジナルジン
この回はまず、二人が初めて家で開封したジンの話から始まります。神戸のVAGUEというギャラリーで作られているオリジナルジンで、なぎさんが身内の結婚式で神戸に行った際に立ち寄って買ってきたものです。
後味の、なんて言うんだろうね、ジンってほんと不思議で複雑な余韻感というか。口に入った時のインパクトも、穏やかだけどちょっとスパイシーで、その後が不思議だね。
でも私これめっちゃ好きかもしれない。これはリピートしたい。
なぎさんの説明によると、このジンにはエルダーフラワー、ローステッドグリーンティー、山椒ペッパーが入っていて、スウェーデンで作られているそうです。すっきりしていて癖が少なく、ジンが苦手な人でも飲みやすそうだと話されています。
現在はオンラインでは買えず、神戸の現地でしか手に入らないとのこと。VAGUEでは1杯1000円ぐらいで飲めるそうです。おつまみは生ハムとイチゴに蜂蜜、ペッパー、そしてカルダモンを合わせた一皿でした。
自己紹介回、そもそも撮っていなかった
乾杯のあとは、この回の本題である自己紹介の話に入ります。二人はこれまで自己紹介をしないまま番組を進めてきてしまったそうで、「二人のことを知りたい」というリクエストももらっていたと言います。
ただ、いざ自己紹介回を撮ろうとして、そもそも自己紹介って難しくない?という壁にぶつかったそうです。そこで自己紹介そのものについて話そうという流れになりました。
そもそも自己紹介を我々はせずに、ぬるっと始めてしまったので、誰やねんっていう感じなんですけど。
きっかけは、なぎさんが赤ちゃんを預ける産後ケアの施設で、他のママさんたちと小一時間ほど話したときのこと。その場でお互いの仕事の話をほとんどしなかった、というエピソードでした。
ゴルフの一人予約で見えた、自己開示の暗黙のルール
なぎさんの話を聞いて、ゆうさんはゴルフの「一人予約」を思い出したと言います。知らない人同士がゴルフ1ラウンドのためだけに集まり、終わったら解散するサービスです。
本当に知らないおっさんたちと、ゴルフ1ラウンドするためだけに、4人がその予約に入って、1ラウンドしたら解散っていう。
1ラウンドは2時間半ほどで、昼食を挟むと長いときは7時間ほど一緒に過ごすそうです。それだけの時間を共にしても、自己紹介をするかしないかはその時々でまったく違うとゆうさんは話します。
グイグイ聞いてくる人は仕事や住んでいる場所をどんどん尋ねてくる一方で、多くの場合はお互いのマナーとして仕事の話をあまり深く聞かない暗黙の了解があるそうです。
ゆうさんは、美容院や歯医者など、日常には自分のことを話すか話さないか微妙なラインの場面がちょこちょこあると言います。その距離感の取り方が難しい、というのがこの回の出発点です。
聞かれたら「会社員」と書く、ゆうのスタンス
なぎさんが「職業を聞かれたらどうしているか」と尋ねると、ゆうさんは嘘はつきたくないので聞かれれば普通に答えると話します。ただし、書類などではあえて無難に書くこともあるそうです。
この前行った車のディーラーで仕事欄を書く時は、もう会社員とかって書いて、めんどくさいから。
理由は、医者だと書くと「お医者さんなんですね、すごいですね」という会話が続くのが面倒だから。実際に会社員でもあるので、一番無難なことを書くことが多いそうです。
自分から仕事を明かしていくスタイルは取らず、聞かれたら聞き返す程度。ゆうさんはその理由を「意外と人見知りだから」と話します。
俺が先頭を切って、グイグイとプライベートのことを明かしていくスタイルは、あんまりやってない。
さらに、明かしたあとの会話も面倒だと言います。変に持ち上げられるのも嫌だし、健康相談をされるのもちょっと気が重い。医者はあまり職業を明かさない人が多い、という点でもゆうさんは一般的なタイプのようです。
一方で、ゴルフの一人予約ではスコア画面にフルネームが表示されるため、実は身バレしやすい環境でもあります。美容院やお店でも予約時に名前を伝えるので、検索すれば分かってしまうよね、と二人は話します。
どこ行っても聞かれる、なぎの「突き抜けた」スタンス
続いてなぎさんのスタンスに話が移ります。ゆうさんが他の医者と近いスタンスなのに対し、なぎさんは自分のことを「突き抜けている」と表現します。
あまりにも聞かれるから、その後の会話がめんどくさいとかじゃなくて、もはや楽しむ。
なぎさんは自分から明かすことはしないものの、とにかくよく職業を聞かれるそうです。コーヒーを飲んでいても、服を買いに行っても、居酒屋でもバーでも、本屋やアートブックの店でも聞かれると言います。
なぎさんは、自分が聞かれる場所には条件があると気づいたと話します。ゴルフや産後ケアのように、お互いの素性が分からず平等な場では、自分もあまり聞かれないというのです。
逆に聞かれるのは、相手の素性がすでに分かっている場面。バーのスタッフや服屋、コーヒー屋など、相手が売り手としてそこにいて所属が分かっている場合です。
私が聞かれる場所って、相手はだいたいバレてる時。要はお店とか。売り手としているから、こっちはわかってるじゃん。だからそこはある意味平等じゃん。
相手はすでに自分の立場を明かしているようなものなので、聞くことがそれほど憚られないのではないか、というのがなぎさんの見立てです。
クイズにして楽しむ、なぎ流の返し方
なぎさんは職業を聞かれると、答えをすぐには言わずクイズにしてしまうそうです。相手が自分をどう見ているのか、その心理が気になるからだと言います。
最初から答えを言っちゃうと、向こうの心理にバイアスがかかっちゃう。素のありのままの直感を、そこをちょっと私は聞きたいなと。
当てられたことはまずないそうで、2回ほど外れたら答えを教えてあげるとのこと。「アパレルですか?」と言われることが多いそうです。
最近のなぎさんは、聞かれたらデフォルトで「精神科医です」と答えるようにしていると言います。単に「医者です」と言うと「何科ですか?」と続いて面倒だからです。
聞かれたら、もう精神科医ですって言って。そしたら向こうも一瞬びっくりするじゃん。
そう答えると、相手は「え、お医者さんってことですか?」と確認してくることが多いそうです。なぎさんはそれを面倒とは感じず、その後の会話もだいたい面白いと話します。
「大体人生相談が始まる」精神科医と明かした先の会話
なぎさんによると、精神科医だと明かしたあとは「大体人生相談が始まる」そうです。病院に来ないような人でも、誰もが何かしら抱えているのだと感じると言います。
広島で一人でラーメンを食べていたときには、居合わせた人とLINE交換をし、後日かなり深刻な恋愛相談が届いたこともあったそうです。真面目に相談に乗ったと振り返ります。
コーヒー屋さんで職業を明かしたときには、友達や本人の話として「この病気はどういうものか」「薬は飲み続けるものなのか」といった素朴な疑問を聞かれることもあると言います。
なぎさんは、そうした質問を面倒とは思わず、むしろ一般の人にどう説明すれば伝わるかを考えるいい機会だと捉えています。ここが、面倒さを感じるゆうさんとの大きな違いです。
全然めんどくさくない。むしろ、それはわかんないよね、そうだよねって。逆に一般の人にどう説明したら伝わるだろうって、いい機会じゃん。
精神科医のイメージを、出会った人だけでも変えたい
なぎさんが精神科医だとあえて明かすのには理由があります。世間の持つイメージと実際が違うだろうと感じているからです。
めっちゃびっくりされるよね。「え、意外です。全然見えません。そんなお医者さんいるんですか?」みたいな。
どんなイメージなのかと聞き返すと、「もっと地味でおとなしそう」「おっとりしていて、こもっていて暗そう」といった答えが返ってくるそうです。
なぎさんは、自分が明かすことで「こういう人もいるんだ」と身近に感じてもらいたいと話します。深刻に病む前の、ちょっと気になるぐらいの段階でメンタルの話をラフにするきっかけになればいい、という思いです。
だからこそなぎさんは、精神科医のイメージが出会った人たちの中だけでも少し変わるといいなと思って、わざと明かすようにしているそうです。
「産業医って何?」に定型文がないゆうの悩み
一方でゆうさんは、自分の仕事を説明するのがまず面倒だと言います。産業医という仕事は、聞かれても定型文で答えられないのが悩みだそうです。
企業の中の保健室みたいなもんですかね、とか。いつもこれっていう定型文がない。
ゆうさんの体感では、産業医を「知っている・会ったことがある」という人はごく一部。「聞いたことはあるけど何をする人か分からない」人と「まったく聞いたことがない」人が、それぞれ3分の1ずつぐらいだと言います。
相手にほとんど知られていないと、「働く人の健康、例えばメンタルヘルスをやっています」とふわっと答えることになるそうです。なぎさんはそれを「すっごいふわっとしてるね」と笑います。
食いつかれるなぎ、食いつかれないゆう
ゆうさんは、多くの場合あまり食いつかれないと言います。それに対してなぎさんは「私はめっちゃ食いつかれる」と返します。
一応聞いただけで興味ないから、興味持たれないから。「ああ、そんな感じですかね」って言うと、「そうなんだね」で終わっちゃう。
ただしなぎさんも、精神科医だと言ったからといって必ず深い話になるわけではないと言います。相手が驚くだけで、あとは普通に友達のように仲良くなることも多いそうです。
話しているうちにゆうさんは、自分が苦手な会話を思い出します。産業医の説明をしたあとに「で、何が専門なんですか?」と聞かれる場面です。
「産業医が専門なんです」って言うと、相手が「はぁ?」ってなって、そこで会話が思考停止しちゃう。
なぎさんは、そこもチャンスだと言います。精神科や循環器内科と同じように「産業医というものがあるんです」と説明すればいい、と。しかしゆうさんは、その一瞬の気まずい空気が苦手だと打ち明けます。
ちょっと気まずい、点点点みたいな空気を、俺は好まない。弱い生き物だから。
なぎさんに「そこを楽しめないか」と言われ、ゆうさんは「ちょっと楽しもうと思いました。反省した」と応じます。
アイデンティティは断片、小出しにすればいい
なぎさんは、相手が知りたいと思っていることだけ言えばいいと考えています。どこまで話しても、それは自分の一部分でしかないからです。
なぎさんは自分を、ママであり、精神科医であり、女性であり、妻であり、30代であり、と数え上げます。昔は世界を飛び回るのが好きで、デザインや場作り、お酒、器、レコード集めも好きだ、と。
だからなぎさんは、相手が自分のどこに興味を持ったかに合わせて、職業などを小出しにするそうです。何度も会っているのに職業を言っていなかった、ということも珍しくないと言います。
この考え方の背景には、学生時代に言われて嬉しかった言葉があるそうです。当時大きな肩書きがあったなぎさんは、肩書きで語られるのが好きではなかったと振り返ります。
「◯◯をしているナギじゃなくて、ナギがこれをしていて、これもしていて、あれもしている、と捉えてるよ」って言ってくれて。すごいいいなと思って。
その人はあくまで「ナギという人」を見ていて、その人が何をしているかとしか捉えていない、と言ってくれたそうです。なぎさんは「私はそう思われたいんだ」と気づいたと言います。
仕事の比重が大きい男性ならではの重さ
なぎさんの話を受けて、ゆうさんは思ったことを整理します。まず一つは、男性はアイデンティティに占める仕事の比重が大きいのではないか、という点です。
仕事が大きすぎるからこそ、男性同士でも聞きにくかったり、逆に聞くとそれがメインの話題になってしまう。否定されたくない気持ちや、会話上の摩擦を生みたくない気持ちが、自己開示をあえてしない態度につながっているのではないか、とゆうさんは分析します。
自己開示した瞬間に、「あなたはこの仕事のこの人なんだ」ってなって、それまでの関係じゃなくなるみたいな。
二つ目は、自分自身についてです。ゆうさんは胸を張って仕事をしている一方で、いつも不安を抱えながらやっている側面もあると言います。
自分自身、胸を張ってやってるけど、いつも不安を抱えてやってる。だからこそ、自己開示に不安があるみたいな。
だからこそ、否定されたり、相手に興味なさそうな反応をされたりすると、少しグラグラくるものがあるそうです。自分のアイデンティティのどのぐらいの割合を仕事が占めるかも大きいのかな、とゆうさんは話します。
これから来る「◯◯ちゃんパパ・ママ」問題
ゆうさんは最後に、これからの話として子育てに触れます。子供が生まれると「◯◯ちゃんパパ」「◯◯ちゃんママ」と呼ばれるのが必ず来るらしい、という点です。
その属性で呼ばれる自分を、ゆうさんはあまり好きではない気がすると言います。なぎさんも「私もあんま好きじゃない」と同意します。子供もパパ・ママと呼ぶので、その界隈では自分の名前やアイデンティティがどんどん薄れていく、と。
五十嵐家では今のところ、二人はお互いを下の名前で呼び合っているそうです。子供はまだ0歳7ヶ月で言葉を発していないため、これから二人をなんと呼ぶのかはまだ分かりません。
ゆうちゃんが私のことをママとは絶対に呼ばず、変わらず下の名前で呼んでくれてて、私も下の名前で呼び続けてるから、私のアイデンティティを大事にできてるのかなと。
なぎさんは、お母さんという役割もあくまで自分の一側面であって、それだけがアイデンティティだと思い詰めずにいられるのは、そうした呼び方の習慣もあるからかもしれない、と話します。
ゆうさんは、パパという属性が自分の中に生まれ、他者からも認知されていくことも、人生の面白い変化として楽しむしかないんだろうね、と受け止めます。
最後に二人は、少なくとも二人の会話ではママ・パパで呼び合いたくない、という思いを確認します。今後この番組での呼び方がどう変わっていくのか、それも見ものだと笑い合いました。
まとめ
自己紹介というありふれた行為をきっかけに、初対面の相手にどこまで自分を明かすかという距離感を、対照的な二人が掘り下げた回でした。楽しんで明かすなぎさんと、面倒さや不安から一歩引くゆうさん。どちらも自然な感覚で、正解がないからこそ面白いテーマです。
- 自己紹介の距離感はその場のマナーや関係性次第で、決まった正解はない
- なぎさんは職業をクイズにしたり精神科医とあえて明かしたりして、会話そのものを楽しむスタンス
- ゆうさんは説明の面倒さや否定されることへの不安から、あえて自己開示を控えめにしている
- 仕事の比重が大きいと自己開示が重くなりやすく、そこに男女差や個人差が出る
- 肩書きは自分の断片の一つにすぎず、相手の興味に合わせて小出しにすればいいという考え方






