搾乳前の休憩に録る「質問に答える会」
この配信は、搾乳前の休憩時間にいつもやっている研修生の質問会を、そのまま録音したものです。
川上さんは、研修生以外にも酪農に興味がある人や従事している人に向けて、自分が思う酪農を音声で残していきたいと話しています。
搾乳前の休憩にいつもやっている研修生の質問に答える会をただ録音しているだけ、このスタイルでやらせていただきます。
今回のテーマは乾乳期の飼料設計です。飼料メーカーからもらった資料やインターネットの情報を見ながら、乾乳器(乾乳牛)の管理を勉強していきます。
「飽食」って結局どういう意味?
もらった資料には、乾乳用の配合を2キロ与えて、稲科牧草(チモシー、スーダン、オーツなど)は「飽食」と書いてあります。
研修生は、この「飽食」という言葉をどう捉えればいいのか引っかかります。食べ放題という意味だとしても、食べる牛もいれば食べない牛もいるからです。
その、この言葉の意味合いはどう捉えたらいいんですかね。
食べ放題にしましょうですね、本当に。
つなぎ牛舎のように餌を決まった量だけ持っていく飼い方なら「2キロ」のように数字で書けますが、飽食は個体に任せる書き方だと2人は整理します。
マニュアル的には、現物で11キロ以上食べられている状態が理想だと書かれています。川上さんは、飼料設計上は無難に食べられる8割ぐらいのところを狙うイメージだと補足します。
食べる量は乾乳期の中でも変わる
研修生は、この飽食の量が時期に関係なく同じでいいのかと尋ねます。川上さんは、それは変わると答えます。
時期関係なく同じ。いや、変わるよ。変わる変わる。お腹がやっぱこう。
ボディコンディションスコアが低めで入った牛、太りすぎで入った牛、痩せすぎで入った牛では、食べさせ方も違ってきます。
川上さんとしては、粗飼料をメインに11キロ以上食べさせたいのが理想です。ただ、粗飼料ばかりで栄養要求量が満たされないと、乾乳期に重要なバイパスタンパクが不足してしまいます。
その、チモシーとスーダンでもなんか全然ちゃいます。
同じ稲科牧草でも、成分値や嗜好性はチモシーとスーダンで全然違います。だからこそマニュアルには数字でビシッと書きにくい、と川上さんは言います。
走り出した車を止めるような乾乳期の調整
川上さんは、子牛や育成は生まれた0日から徐々に上げていくのに対し、乾乳期は事情が違うと説明します。
乾乳期の牛は、これから仕事(搾乳)をしなければならないし、今まで仕事をしてきた牛でもあります。だからこそ調整が難しいと言います。
もう走り出してる車を止めたり、ゆっくり走ったりっていうのを調整するのを難しいんだけど。
搾乳の前期・中期・後期の管理がうまくいかないと、そのまま乾乳期にも影響します。中期がちゃんとしないと後期がうまくいかず、後期がうまくいかないと乾乳期に入れない、という連鎖です。
だからこそ、この飼料設計はマニュアルに書きにくいのだと川上さんは繰り返します。
バスっと変える川上牧場のやり方
もらったマニュアルは、乾乳前期にシナジードライを2キロ、後期に3〜4キロ与えて、稲科牧草は飽食という、途中で切り替えないタイプの内容です。
分娩に向けて配合が急に切り替わると、ルーメンの状態が悪くなることがあります。中の微生物は食べ物によって変わるため、乳廃(搾乳用配合)を混ぜて慣らす方法もあります。
研修生は、分娩の2週間前ぐらいから徐々に変え始めるパターンが多いのかと思っていた、と話します。
ちなみにうちはそのバスっと変えるタイプだよ。
川上牧場では慣らさずにバスっと切り替え、乾乳後期は配合を1キロしか与えません。この点で、一般的なマニュアルとはやり方が違います。
一般的な乾乳管理をググって確かめる
マニュアルだけでは乾乳の勉強にならないと感じた川上さんは、その場でインターネット検索を始めます。
出てきたのは十勝農協の技術情報で、乳牛の乾乳期飼養管理のポイントがまとめられています。前期・後期の牛群管理で泌乳期への「慣らし給与」をすることが基本だと書かれています。
そこには、良質牧草の飽食と濃厚飼料12キロといった具体的な数字も載っています。粗飼料主体にすることで、ルーメンの機能と容積を回復させる狙いです。
粗飼料にして、そのルーメンの状態をリセットというか、休憩させてやりましょうという意味がありますよということが書いてあります。
カルシウムを制限する?しない?
十勝農協の資料には「カルシウムの給与制限はしないようにしましょう」と書かれています。ただ、別のマニュアルでは十分に与える、切る、といった真逆のコンセプトもあると川上さんは指摘します。
だからこそ、自分が使っている配合のコンセプトを餌メーカーにしっかり確認することが大事だと言います。
研修生が制限の理由を尋ねると、川上さんは低カルシウム症の仕組みを説明します。分娩後にたくさん乳が出ると、餌からのカルシウムだけでは足りず、体が骨などから削って補うようになります。
削られ削られて余剰がなくなってしまうと、低カルシウムという病気になってしまうわけですよ。
カルシウムをうまくコントロールすることで、骨からの移行をスムーズにする方法があります。川上さんのやり方は、乳を出さないように飼うことで、この移行の負担を減らすものです。
事故が起きやすいのはこのカルシウムのコントロールの部分で、分娩後だけでなく乾乳前期から意識して飼うほうがいいと川上さんは話します。
低水分・高水分と「乾物摂取量」の話
資料にある「低水分ラップサイレージ」について、研修生はどこからが低水分なのかと尋ねます。川上さんは、低水分とは要するに乾燥のことだと答えます。
乾乳期に大事なのは、乾物摂取量(DM摂取量)を確保することです。高水分だとほぼ水分なので、乾いた乾物をしっかり食べさせたいという狙いがあります。
川上さんは、この違いを人間がキャベツを食べる例えで説明します。
千切りのキャベツ食べるのと、レンジでチンして温めたり、お湯でして温かくなってキャベツ食べるのと、えーと、どっちがお腹が膨れるっていうと。
乾乳期はお腹を膨れさせたいけれど、エネルギーはあまり要りません。エネルギーを与えすぎると太ってしまうからです。
太らせたくない、でも丸くはしたい
研修生は、乾乳期は「太りすぎたらダメだけど丸くはなりたい」という、わかるようでわからない感覚だと率直に打ち明けます。
川上さんは、それは適切なボディコンディションを目指す話であり、ケースバイケースだと答えます。
乳量をガンガン絞って痩せた状態で乾乳に入る牧場なら、少し太らせるような管理をしてもよいと言います。逆に、太りすぎているところに栄養の高い餌を与えると、乾乳のときに問題が出ることもあります。
大事なのは、どの段階でも痩せさせないことです。ルーメンの容積を確保するために牧草をしっかり食べさせる、という点では、子牛や育成の管理と同じ考え方になります。
分娩前3週間は「食べられなくなる」時期
乾乳後期は分娩予定前の3週間ほどで、胎児が急激に発育する栄養要求量の大きいステージです。
この時期は採食量が下がりやすくなります。子牛が1日1キロぐらいのペースで大きくなり、ルーメンを圧迫して食べられる量が減ってしまうからです。
ほぼほぼみんな。(分娩前は食べる量が)低下しやすい時期。
だからこそ、11キロ食べられていない個体は注意して見る必要があります。つなぎ牛舎なら回数を分けて与え、フリーストールなら餌押しを増やしたり、いつでも食べられる状況を作ります。
研修生は、川上牧場の分娩前の牛は食べる量が落ちていないように見えていた、と気づきを話します。川上さんは、落ちてきているはずだと答えつつ、その観察がうれしいと言います。
落ちたなってことは近いなみたいな。
低カルシウム対策とルーサンを避ける理由
低カルシウム症(乳熱)を予防する方法はいくつかあります。一般的に多いのは、乾乳後期(クロスアップ期)でカルシウム給与を制限する方法です。
十勝農協の資料では、乾乳前期はカルシウム給与を制限せず、後期で乾乳牛のカルシウム給与を制限する、という書き方になっています。
あわせて、カリウム含量の低い牧草を与えることや、マグネシウムをたっぷり与えることが重要とされています。カリウムはカルシウムの移行を邪魔する成分だからです。
一般的には間牛期に、あの、ルーサンは与えませんって言われてますね。
ルーサン(アルファルファ)などのマメ科牧草はカリウムが多いため、乾乳期には避けられます。マメ科から稲科に切り替える方法もあれば、マメ科の量を減らして別のものを添加する方法もあります。
重曹も乾乳期にはあまり与えないほうがよいとされています。川上牧場の公苑(配合)は乾乳牛用で、重曹などは入っていません。
乾物摂取量を落とさないための工夫
乾物摂取量を落とさないために、資料には具体的な工夫が並んでいます。川上さんはこれらが自分の考えと一致していると話します。
- 噛み継ぎ(食べ残しの発酵)をさせない
- 水槽は常に綺麗にする
- 十分な採食スペースを取る
- 嗜好性の良い良質粗飼料を十分に与える
あわせて、左肩部の張り具合(ルーメンフィルスコア)を見て、しっかり食べられているかを確認します。
研修生が、乾物摂取量は生まれてから死ぬまで基本的に落とさないものかと確認すると、川上さんは大事だと繰り返します。太ったり痩せたりすると乾物摂取量が維持できないため、ボディコンディションも適切に保ちます。
乾乳期は「次の乳期の始まり」
もう一つの資料(ユキタネネット)では、乾乳期は単なる休養期間ではないと強調されています。乳牛の疾病の多くは分娩前後に発生するため、乾乳期を上手に使うことが次の乳期の生産性につながるとされています。
川上さんは、牛の管理の中で乾乳期と子牛が一番重要だと考えています。乾乳期にしっかり乾物摂取を取れれば、次の肥育期でも取れる、という連鎖の考え方です。
乾乳期にはルーメンだけでなく乳腺も休ませる意味があります。乳房炎を乾乳期に徹底治療する「乾乳期治療」という方法もあります。
蹄の治療は乾乳に入る前に
乾乳期には削蹄も関わってきます。川上さんは、蹄病があると食べられなくなるため、乾乳に入る前に蹄を整えておくべきだと考えています。
間牛の時に足が痛いと食べれないじゃん。
乾乳期に入ってから治療するのもありですが、ベストコンディションで乾乳に入るために、川上さんは乾乳前に準備期間を設ける管理をしています。
さらに、乾乳期の卵胞が、分娩後に種付けする時の卵胞になります。だから乾乳期をしっかり飼っておくと、産んだ後すぐに種付けができるという繁殖上のメリットもあります。
川上牧場の実際の飼料メニュー
ここで川上さんが、自牧場の実際のやり方を明かします。搾乳用のPMRを飽食で与え、その中にチモシー・スーダン・オーツが入っています。マメ科牧草は全く入っていません。
乾乳期専用の配合は使わず、搾乳用の乳廃を乾乳前期に2キロ与えます。
乾乳後期になると、乳廃を1キロに減らし、バイパスタンパクなどが入った飼料添加剤(エーパス)を足して、牛のコンディションを見ながら微調整します。
もう乾物摂取量しか考えてないので、僕は間牛期の中に。
川上さんは、この飼い方が飼料設計上は微量要素が足りていない部分もあると認めつつ、基本を踏まえた上で違うやり方をしていると話します。
だから混乱すると思います。研修生のあの方は。マニュアルにはこうやって書いてあるじゃないかって思うかもしれないけど。
前期・後期の分け方と乾乳に入れるタイミング
川上牧場では、分娩3週間前を乾乳後期、それ以前を乾乳前期としています。ただし、これは牛によって1ヶ月前にしたり変えているそうです。
乾乳期間そのものも、60日ではなく30日を採ることが多いといいます。30日乾乳の場合、乾乳前期は1週間しかないことになります。
乾乳に入れるタイミングは、日数ではなく乳量で決めています。乳量が15キロ以下になったら乾乳にするそうです。
乳量が十五キロ以下になったら勧誘にしてしまいます、僕は。
15キロという基準は、餌の採算ベースが合わなくなる目安です。それ以下で絞り続けても餌代だけがかかり、労力や手間を考えると採算に合わない、という考え方です。
一般的にはマニュアルに「何日休ませて」と書いてあるため日数で区切る人が多いのですが、川上さんはあくまで牛に合わせています。
痩せた牛と太った牛で入り方を変える
乳量が15キロでも、コンディションによって入り方は変わります。痩せた牛でまだ乾乳期に余裕があれば、少し太らせるように搾乳後期に入っていきます。
たとえば乳量15キロでも、設定乳量を20〜25キロにした餌を与えて体を太らせることもあります。
一方、泌乳後期に牛を痩せさせるのはあまり良くないため、太った牛は太らせないような乾乳の入り方をします。維持を狙い、下げるところまではしません。
どちらかというと下がるより上がるの方がまだ、まだマシだと思ってるんで。
結果として、太っている牛はバスっと乾乳にできる一方、痩せている牛は入るタイミングが少しずれる可能性がある、と整理されます。
「乾乳前期・後期」は牧場ごとに全然違う
研修生は、乾乳前期・後期という言葉は知識として絶対に欲しいが、行った牧場の先々で意味合いが全然違う点が難しいと指摘します。
辞書としてね、(乾乳前期って言葉は)まあ乾乳の後、大体何日ぐらいですよでいいんですけど。で止めずに。ただ牧場ごとに全部違いますという米印を書いておかないと。
川上さんも、インターネットで乾乳前期を調べても、サイトごとに意味が全然違うと同意します。
さらに研修生は、牛のことを考えたくても自分たちの経営バランスも見て牛を飼うため、地域のつながりなども含めて言葉の意味合いが変わってくると話します。
マニュアル通り勧誘前期後期皆さんが言ってる勧誘前期後期やればまあ六十点は取れる。
「変わるもの」だと教えないから続かない
川上さんは、自分が学生の頃の乾乳管理と今の管理は変わってきていると話します。乳牛が改良され、昔のやり方では事故が増えたためです。
ところが農家がその変化を理解しておらず、昔のままの「乾乳ってこういうもの」という考えで止まっていることがあります。だから餌屋さんも売りにくいと言います。
研修生は、遺伝改良は確実に進むのだから、今の正解も正解でなくなると指摘します。そして、それを最初から教えていないことが問題だと言います。
これが正解じゃなくなると。てかそうならなあかんもんだって教えれてないからあかん。
乾乳期は、乳を出さず仕事もしていない「ただ飯食い」の期間でもあります。だから乾乳期を短くすれば、その分だけ働く牛を牛舎内に増やせる、という経営の視点もあります。
どんな経営をしたいかで餌のメニューが決まる
どういう経営をしたいかというコンセプトがないと、乾乳期のメニューも決められない、と川上さんは言います。
たとえば自給飼料としてサイレージがたくさんあり、乾乳期にも食べさせたいなら、そういう前提でメニューを組みます。配合や他の粗飼料の組み合わせも、そこから逆算していくことになります。
農場でどこをゴールに目指すのかっていうのをやっぱ考えないと。
そのため、ゴールが牧場ごとに違ってよく、後から学ぶ人には「川上牧場ではこれが乾乳前期・後期の感覚で、違うところは違うかもしれない」という前提が必要だと2人は話します。
川上さんは、こうしたニュアンスはどこにも書いていないが、業界にいれば「当たり前」として共有されている暗黙知だと言います。
一人ではなく複数で管理するときの難しさ
研修生は、一人でやっていれば自己完結できるが、複数人で管理するときにこそニュアンスの共有が難しいと問題提起します。
同じ一キロ与えるでも二キロ与えるでもその意味合いが変わってくるというか。
違うよ。本当に違う。一キロ、一キロやっといての中にいっぱい入ってる。副美がいっぱい入ってるで。
「1キロ与えておいて」という一言の中に、太らせたいのか維持したいのかといった多くの含意が詰まっています。それが共有されていないのではないか、と研修生は指摘します。
この共有のずれこそが、太った牛を「痩せさせなあかん」と思ってしまうような誤解につながります。川上さんは、どの状態でも痩せさせてはダメだと念を押します。
マニュアルを分厚くすれば解決するのか
川上さんは、どう書いてほしいのか、本当に細々と全部書いてほしいのかと研修生に問い返します。
営業マンがこの餌売ろうと思って分厚いマニュアルボンって出してきたら使おうと思う?
研修生は、読み物としては面白いが、農家が分厚いマニュアルを渡されても使わないだろうと同意します。多くの農家は「うちの飼い方はこうだ」と思っているからです。
各社の配合はコンセプトが全く違い、それを正確に伝えるには本来分厚いマニュアルが必要になります。しかし、それを見せられると面倒に感じて使われない、というジレンマがあります。
餌屋さんに求めたいのは「口に届くまで」の設計
研修生は、自分は営業の人柄よりも製品で選ぶタイプだと話します。だからこそ、餌屋さんには自分たちの計算をどれだけしやすくしてくれるかを求めます。
そのうえで研修生は、成分の話も大事だが、餌が牛の口元に届くまでのデザインにこそ改善の余地があるのではないかと提案します。
牛の口に、の前に来るまでを設計してくれる。
具体例として研修生は、食べさせてはいけないひも(トワインやラップ)で餌を巻いていることや、指を刺さないための注意書きが付いた包装への違和感を挙げます。
食べれるもんで縛ったらええやんぐらいのふうに思ってたり。
研修生は、餌屋さんが中身だけでなく、牛の口に入るまでの部分をもっと考えれば、その分を餌代として取れるかもしれないと話します。作業のしやすさこそ、餌屋さんの良さになるという視点です。
お客様の声ではなく「自分らのエゴ」で作る餌
研修生は、餌屋さんがお客様の声に合わせてセミオーダーで対応してきた姿勢は素敵だが、今後はそれが牧場側の変化を遅らせる面もあるのではないかと考えます。
そこで研修生が提案するのが、餌屋さんが「自分たちが一番楽できて、いい感じに回る餌」を作ってみることです。それをあえて牧場に提供し、実験の場にするという発想です。
お客様の声から製品を作るんではなくて、自分らのエゴで作ってみるのはどうなのかな?
研修生は、お客様が言葉にしない「小声」や心の中の気持ちにこそヒントがあると言います。だからこそ、たまには「知らんけど、これ使ってみて」という提案があってもいいのではないか、というわけです。
コンセプトまで話すから「30日乾乳」もできる
川上さんは、自分は営業マンと餌のコンセプトや背景まで話すからこそ、歩み寄れるところを歩み寄れると話します。
この餌をなぜやってるかっていうので、で、僕がその歩み寄れるところは歩み寄ってみたいなことできるから。
その結果、あるものを組み合わせて30日乾乳を実現したり、農産の餌に別の会社の餌を足して活かせないか提案したりできる、と言います。
研修生は、乾乳前期が何日から、といった「1+1は?」のような単純な話ではなく、「四角+四角が乾乳前期で、そこに何を入れるか」という自由な考え方が本質だとまとめます。
だからこそ、この知識は断定できるものではなく、常に「変わる」「牧場によって意味が違う」という注意書きが根元にあるべきだ、と2人は話します。
リニューアルした餌は「別の餌」
研修生は、資料や本を読むときにも、その著者の考え方の流れを感じ取ると話します。川上さんも、著者の過去の資料を読めば人柄がわかり、新しい文献も理解しやすくなると言います。
一方で、それは入門者には難しく、最初に入った情報で考えが固まってしまう危険もあります。だからこそ「意味合いは変わるよね」という前提が要ります。
話は、餌のリニューアルにも及びます。「愛されて何十年」とうたう餌でも、中身のコーンの処理がスチームに変わったり、圧延が変わったりして、実は大きく変わっていることがあります。
名前変わってるんですけど、中身変わってんだよ。
研修生は、リニューアルすれば別の餌なのだから、同じ飼い方をしてはいけないはずだと指摘します。にもかかわらず、10年20年変わらず全く同じにやっているのはおかしい、と言います。
入れたあかんもん入れてるというか。軽油入れたあかんでっていう感じ。
マニュアルは「話半分」で聞くもの
結局この回も、乾乳の管理を突き詰めると「マニュアルなんてない」という話に着地します。川上さんは、それをやや申し訳なさそうに認めます。
研修生は、マニュアルに書いてあることを頭から信じるのも、話半分で聞くのも、どちらも少し違うと言います。牛が改良されていくスピードが早い分、他の業界以上に前提が変わりやすいからです。
そのうえで研修生は、頭のいい人だけでなく、わからない人も5〜6割はいる前提で伝えないと届かないと話します。マニュアルの数字だけでは、そこが埋まらないというわけです。
最後に川上さんは、6月も勉強を続けていきましょうと締めくくり、作業に戻っていきました。
まとめ
今回は、川上牧場の川上さんが研修生と一緒に乾乳期の飼料設計を掘り下げました。マニュアルの数字を追いながらも、最後は「牛に合わせる」「変わることを前提にする」という考え方に行き着く回でした。
- 乾乳期の「飽食」は食べ放題の意味だが、牛のコンディションによって食べさせ方は変わる
- 川上牧場は乾物摂取量を最優先に、乳廃2キロから後期1キロへ、慣らさず切り替える飼い方をしている
- 乾乳に入れる基準は日数ではなく乳量15キロ以下で、痩せた牛と太った牛では入り方を変える
- 乾乳前期・後期の定義や餌のコンセプトは牧場ごと・各社ごとに全く違い、確認が欠かせない
- 牛は改良され続けるため、今の正解も変わる前提で学び直す姿勢が大切だと2人は語り合った


