休憩中の勉強会、テーマは「牛の病気」
収録日は9月2日。この日も研修生と休憩中にお勉強しながらの配信です。
話のきっかけになったのは、昨日分娩があって立てない牛がいたこと。親牛も子牛も立てない状態で、夏の暑さも重なってなかなか危うい状況だと川上さんは話します。
そこから、乳牛によく起こる代表的な病気を4つ紹介していく流れになりました。
産後の母牛がよくなる病気。業界では「低カル」と呼ばれる
体脂肪を燃やしすぎて肝臓に負担がかかり、餌を食べなくなる病気
穀物の食べ過ぎで胃のpHが下がり、中毒症状が出る病気
4番目の胃袋がガスで変な位置に上がってしまう病気
産後の牛が立てなくなる「低カル」とは
最初に紹介されたのが低カルシウム血症、通称「低カル」です。
低カルになると、ああやって立てない。赤ちゃんのために牛乳に栄養を持っていこうとします。
牛乳にはカルシウムが豊富に含まれるため、母牛は体の中からカルシウムを動員しようとします。
一番カルシウムを蓄えている骨から持ってくるほか、筋肉を動かす伝達や脳の神経系にもカルシウムが必要なので、そこからも一気に使われてしまうんですね。
結果として筋肉に力が入らず、ぼやーっとした状態になります。走ったら息が上がるのと同じで、低カルは病気というより生理的なものだと川上さんは言います。
だからこそ「なるもの」と思って対策しておくことが大事だと話します。
もう本当にどの牛を調べても、産後の牛を調べてもなります。だからなるもんだと思って、買わないといけないですね。
太った牛が危ない「ケトーシス」
2つ目はケトーシス。太り気味の牛が乾乳から分娩を迎えると起こりやすい病気です。
分娩後、母牛はたくさんの牛乳を作ろうとして、一番エネルギーのある体脂肪を燃やしてお乳に回そうとします。
すると体脂肪を分解するために肝臓に負担がかかり、処理が追いつかなくなると肝機能が止まってしまうんですね。
そうなると餌を食べなくなり、ケトーシスという病気になります。人間でいえば二日酔いのような感じだと川上さんは例えます。
分娩後にお乳を作る
たくさんの牛乳を出そうとする
体脂肪を燃やす
一番エネルギーのある脂肪をお乳に回す
肝臓に負担
脂肪の分解で肝機能がオーバーヒート
餌を食べなくなる
ケトーシスを発症
なお、牛の肝臓は大きくても処理能力が低く、人間の10分の1ほどしかないそうです。
その太るっていう行為が自然界にないじゃん。だから肝臓が別に働かなくても良かったんじゃないかなと思ったりするけど。
穀物の食べ過ぎで起こる「アシドーシス」
3つ目はアシドーシス、別名「足道質(そくどうしつ)」です。
トウモロコシや大豆カスといった穀物、いわゆる配合飼料をたくさん食べると、胃の中のpHが急激に下がって酸性に傾きます。
すると体の中で中毒症状のようなことが起こり、その毒が体に回って症状が出るんですね。
ただ川上さんの牧場では、この病気はほとんど起こらないそうです。理由は餌の設計にあります。
足道質はほぼならないです。うちの餌の設計では草ばっかり食べてるんで。
低カルもケトーシスもアシドーシスも、共通するのは「餌を食べなくなる」こと。それぞれ原因は違っても、食欲が落ちるサインは見逃せないポイントです。
ガスで胃袋がずれる「第4胃変位」
4つ目は第4胃変位。牛の4番目の胃袋がガスで膨らみ、いつもと違う位置に上がってしまう病気です。
産後や暑さで餌が食べられないと1番目の胃袋が小さくなり、その隙間を縫うように4番目の胃袋が上がってきてしまうんですね。
見た目ではわかりにくく、お腹に手を当ててポンポンと叩くと金属音のようなキンキンという音がするのが目印です。
上がってきたらどうするんですか?
研修生 さんからの質問
切開して手術になります。4番目の胃袋を元の位置に戻して縫うそうです。9割は左側に上がってきますが、右側に上がるとねじれて血管も詰まり、そのまま死んでしまうこともある危険な病気です。
「そういうもん」で済ませない予防の姿勢
話は目の前で立てずにいる牛に戻ります。研修生は、命懸けで出産する牛のたくましさに驚きます。
人間でも普通、子供を産んだら二日とか安静にするじゃないですか。でもそんなの普通に立って、飯もりもり食ってるから。
一方で川上さんは、寝たままだと足がしびれたりお腹にガスが溜まったりするため、早く立たせることが大事だと話します。
見ている側は「しんどいなら寝かせてあげたら」と思いがちですが、知れば知るほど「早く立って」と願う気持ちに変わるのが現場の視点です。
そして川上さんは、これらの病気を「出産にはつきもの」と割り切らない姿勢を強調します。
配信の終盤、立てなかった牛が自力で起き上がる場面もありました。研修生の「起き上がった、自分で」という声に、川上さんも「良かったです」とほっとした様子です。
まとめ
今回は、分娩後の牛に起こりやすい4つの病気を、研修生とのやり取りを通して学ぶ勉強回でした。夏の暑さが重なる時期だからこそ、予防の大切さが伝わってくる内容です。
- 乳牛の代表的な疾病は低カルシウム血症・ケトーシス・アシドーシス・第4胃変位の4つ
- 低カルは産後の母牛がほぼ必ずなる生理的なもので、対策前提で臨む
- ケトーシスは太った牛が体脂肪を燃やしすぎて肝臓が悲鳴を上げる病気
- 第4胃変位は胃袋がずれて手術が必要になることもある危険な病気
- 病気を「出産のつきもの」と割り切らず、予防していく姿勢が現場では大切




