乳房炎ってどんな症状?予防のためにやっていること
乳房炎は、乳房が腫れ上がって痛がるような症状が出る病気です。研修生も牧場で見たことがあると話します。
川上さんによると、乳房炎は炎症が起きている状態のこと。多くの場合、原因菌が乳房の中に入って炎症を起こすのが原因だそうです。
この牧場では、研修生が来てから発症した牛はほとんどいないとのこと。衛生管理を徹底している成果だと言います。
予防として挙がったのは、牛のベッドをきれいにすること、搾乳後の消毒、そして夏場の免疫力低下に備えてビタミン剤を多めに与えることなどでした。
ああいうのを放置して放っておくと、本当はそこから傷口から感染して、みたいなことが起こったりするので。ですけど、あれは毎日ディッピングするじゃないですか。ディッピングがそれが予防薬になってるので。
なぜ乳頭は4つあった方がいいのか
話題は、乳房が1つ使えなくなっても搾れる量はあまり変わらないという以前の話に戻ります。牛の乳頭は4つあります。
川上さんは、たとえ乳房炎になっていなくても、牛の生涯の生産性を考えると乳頭は4つあった方がいいと話します。
乳房炎になってない牛も、それでもその生涯の生産性を考えると、4つあった方がやっぱりいいじゃないですか。なるべくだったら4つやりたい。
前しぼりして正常なら搾って大丈夫。ただし、乳房が垂れている牛だと自分の足で乳房を踏んでしまうことがあり、そこから出血して切り落とさないといけないレベルになる場合もあるそうです。
つま先で立つ牛、なり手が減る獣医さん
収録中に獣医さんが到着し、話は牛の獣医事情へと広がります。
牛の獣医は、豚などの家畜も診る「大動物」の分野。今は7割から8割が女性だそうです。
なんでですか?
いや、だって同じ獣医でお医者さんで同じ勉強量で、すごいお金も同じぐらいかかってるから。生涯年収を考えたら、やっぱり人間の方に行っちゃうよ。
同じ学費と勉強量なら、生涯年収の高い人間の医師や、ペットを診る小動物の獣医へ進む人が多く、家畜の獣医はなり手が不足しているといいます。
そのため、牛の分娩を夜中に呼んでも対応できないことが増え、農家自身が処置をせざるをえない状況になってきているそうです。
300kgのリュックを背負って歩く感覚
立つのが下手で滑ってしまう牛を心配する研修生に、川上さんは牛の体の構造を具体的なたとえで説明します。
牛の体重はおよそ600〜700kg。足首の太さは人間とほぼ同じで、1本の足に150kgほどの体重がかかっています。
自分の体重が300キロになって、その足を自分で支えると思ってもらったら、牛がどれくらい立ち座りしにくいかっていうのが。300キロのリュックサックを持って、この上を歩いてみてくださいって言ったら、やっぱりこけちゃうよね。
さらに驚くのは、牛がつま先で立っているという点。研修生は「意味がわからない」と何度も口にします。
つま先で立ってるってのが私は一番意外でした。あれ、こうじゃなくてこうなんだ、みたいな。
重い体を細い足、しかもつま先で支える牛。サイやゾウと比べても足が細く、変な生き物だから面白いと川上さんは笑います。
乳房炎予防の9割は「搾乳」にある
話は本題に戻り、乳房炎予防で最も大切なのは搾乳だと川上さんは強調します。
乳房炎になる90%がほとんど搾乳って言われてますんで、搾乳主義ですね。やっぱり。
ポイントは前しぼりのタイミング。前しぼりをするとオキシトシンというホルモンが出て、乳が出やすくなる「射乳」が起こります。
ホルモンの効果が続くのはおよそ5分。前しぼりから1〜2分でミルカーを装着するのが一番きれいに搾れるタイミングだと言います。
一方で、早くつければ早く搾れると思ってすぐミルカーをつけると、牛が出す準備をしていないのに機械が吸い続ける「過搾乳」になってしまいます。
前しぼり
乳頭を刺激してオキシトシンの分泌を促す
1〜2分待つ
射乳が起こるタイミングを見計らう
ミルカー装着
ホルモンの効果が続く5分以内に搾る
過搾乳が乳頭を傷める理由
過搾乳を続けると、乳頭にダメージが蓄積していきます。
乳頭は毎日365日、1日2回搾られるためささくれ、花が咲いたように開いてしまうことがあるそうです。
本来だったらバイキンが入らないように乳頭がキュッと締まるんだけど、それが浅くなるので締まらなくなって、細菌が入りやすくなる。
一度開いてしまった乳頭は、もう元には戻らないとのこと。だからこそ日々の搾乳のやり方が重要になります。
さらに、ミルカーの真空圧の設定やゴムチューブの劣化も搾乳の質に関わります。川上さんの牧場ではチューブを半年ごとに交換していて、4本で1万5千円ほどかかるそうです。
機械化と、それでも残る「搾乳手技」
搾乳の道具も進化しています。牛乳が出なくなると自動でミルカーが外れるタイプや、次の牛の位置まで自動で移動するロボットもあるそうです。
キャリロボっていうロボットがありますね。
重労働のイメージがある酪農ですが、川上さんは女性も慣れれば十分にできると話します。腰の曲がった高齢の女性でも、ミルカーを持つと背筋が伸びるほどの働きぶりだと言います。
腰を曲げたすげえ70代80代のおばあちゃんがミルカーを持ったら、背が伸びるからね。いや、あれはマジで感動するよ。
最後に川上さんは、乳房炎対策の核心をこう語ります。機械化が進んでも、搾乳そのものは技術なのです。
まとめ
今回は乳房炎をテーマに、その予防から搾乳の技術、牛という動物の不思議な体まで幅広く学びました。機械化が進む今も、日々の搾乳の丁寧さが牛の健康を左右するという点が印象的な回でしたね。
- 乳房炎の多くは細菌が乳房に入って起こる炎症で、予防にはベッドの清潔さ・搾乳後のディッピング・餌のコントロールが重要
- 乳房炎の原因の約9割は搾乳にあるとされ、前しぼりから1〜2分でミルカーをつけるのがきれいに搾るコツ
- すぐミルカーをつける「過搾乳」は乳頭を傷め、一度開いた乳頭は元に戻らず細菌が入りやすくなる
- 牛は600〜700kgの体を細い足のつま先で支えていて、立ち座りは想像以上に大変
- 牛の獣医はなり手が減っており、農家自身が処置をせざるをえない場面も増えている




