牧場に茶色い子牛?酪農家が和牛を育てるワケ
この牧場には白黒模様のホルスタイン種の牛だけでなく、時々茶色い和牛の子牛がいます。研修生がその理由をたずねたところ、川上さんの経営チャレンジだと明かされました。
実はあれ、うちの牧場の収入をもう少しアップさせるための僕なりのチャレンジなんだ。
使っているのは受精卵移植、通称ETと呼ばれる技術です。優秀な和牛の受精卵を、ホルスタインの母牛のお腹を借りて産んでもらう仕組みです。
簡単に言うと、優秀な和牛の受精卵をうちのホルスタインのお母さんのお腹を借りて産んでもらう、いわば代理出産みたいなものだね。
1個8万8000円の受精卵に夢を見た結果
川上さんは「どうせやるなら最高級の和牛を産ませて儲けよう」と、鳥取の受精卵バンクで当時一番高かった受精卵を買ってみたそうです。
最初は夢を見てね。よし、どうせやるなら最高級の和牛を産ませてガンガン儲けてやるぜって息巻いてたんだ。
気になるお値段は、なんと1個8万8000円。研修生は「車のエントリーモデルのナビと同じくらい」と驚いていました。
それを3つ買って、2頭が無事に生まれました。1頭はすくすく育って市場で約62万円で売れましたが、もう1頭は生まれつき虚弱で、頑張って育てても約24万円だったそうです。
利益21万円でも「思ったほど儲からない」
売上62万円と聞くと大成功に見えますが、当然そこには経費がかかります。研修生が利益を聞くと、川上さんはうまくいった方だけで計算した数字を答えました。
受精卵代や約10万円かかったミルク代、その他の経費を全部差し引いて、手元に残った利益は約21万円だった。
21万円の利益と聞けば十分すごい気もしますが、川上さんの表情はあまり嬉しそうではありません。これがnoteにも書いた正直な感想でした。
そしてこの利益の裏には、酪農家にとって見過ごせないリスクが隠れていることに気づいたと言います。
見過ごせないリスク?本業の牛乳が犠牲になる
1つ目のリスクは、本業への影響です。高い受精卵を無駄にしないためには、妊娠の可能性が高い健康な母牛を選ぶ必要があります。
ところが、その母牛を選んで使っていると、牛乳を搾るサイクルに戻るのが遅れて、本業である牛乳の生産量が落ちてしまう可能性があるのです。
2つ目は、子牛そのもののリスクです。生まれた子牛が病気になったり、今回のように虚弱だったりすると、高い受精卵代やミルク代を考えて一気に大赤字になりかねません。
まさにハイリスク・ハイリターンなんだ。
結論はコツコツ?川上さんが出した現実的な答え
いろいろ試した川上さんの今の結論は、意外にも現実的なものでした。副業でやるなら、高級な受精卵で大きく狙うより、コストをかけない方がバランスがいいというのです。
具体的には、和牛とホルスタインのハーフであるF1の子牛より少し高く売れればラッキーくらいの感覚で、知り合いから安く譲ってもらったそこそこの血統の受精卵を使う、というやり方です。
ただし、本気で和牛との複合経営を目指すなら、高級な受精卵に挑戦するべきだとも話しています。その場合は相応の覚悟と設備投資が必要になります。
正直に儲からない部分まで話す一方で、川上さんはこの挑戦をやめるつもりはありません。その理由は、関わる全員が幸せになれる仕組みを信じているからでした。
酪農家さんも和牛農家さんも、美味しい和牛を食べる消費者の皆さんも、みんながハッピーになれる仕組みがきっとどこかにあると信じているんだ。
まとめ
派手な売上の数字だけでなく、経費もリスクも正直に公開してくれた回でした。酪農の副業がどれだけ奥深いか、そして川上さんの誠実な姿勢が伝わってきますね。
- 和牛ET(受精卵移植)は、ホルスタインの母牛に和牛を産ませる収入アップのチャレンジ
- 1個8万8000円の受精卵を3つ購入し、育った子牛は62万円と24万円で売れた
- 62万円の子牛でも経費を引くと利益は約21万円で「思ったほど儲からない」のが本音
- 母牛選びで本業の牛乳生産が落ちたり、子牛が虚弱だと大赤字になるリスクがある
- 副業なら高級卵で狙うより、コストをかけずコツコツやるのが現実的という結論


