リスナーから届いた「牛乳は約9割が水」という素朴な疑問
この日の配信は、リスナーさんから届いた質問に答える回です。テーマは、普段なにげなく飲んでいる牛乳についての素朴な疑問でした。
今日、お家にある材料でパンケーキを作ったんですよ。牛乳がなかったんで水で代用したんですけど、水分として牛乳を使うと味以外で何か変わったりしますか?
川上さん自身、酪農家でもふだんは調べないテーマだったようで、面白い質問だと話しています。
めちゃめちゃ面白いですね。こんなの酪農家でなかなか調べないです。知らないですよ。
そして、調べてみた結論をこう切り出します。水と牛乳じゃ全然、味も香りも風味も変わってきます。
ただ、ここで面白いのが、牛乳は約9割が水分だという事実です。だったら水でもほぼ同じでは、と思ってしまいますよね。
牛乳の中身は?成分ごとに見る「ほとんど水」の正体
まず川上さんは、牛乳の中身を成分ごとに分けて説明していきます。牛乳を100とすると、大部分を水分が占めていました。
乳糖は「お乳の糖」と書く成分で、そのほかにタンパク質やミネラルなどが含まれます。乳糖 ── 牛乳に含まれる糖の一種。加熱時の焼き色づきなどに関わる成分です。
なので「牛乳はほとんど水」というのは、間違いではありません。でも料理という視点では、何パーセント入っているかだけでなく、その成分が加熱されたときに何をするかが大事になります。
水には基本的に水分を与えるという役割があります。一方、牛乳は水分を与えながら乳糖、タンパク質、脂肪なども一緒に料理へ持ち込んでいる。
つまり牛乳は、水分を与えると同時に料理に成分を持ち込む素材だという整理です。ここが水との大きな違いになります。
パンケーキで水と牛乳を比べると、何が変わる?
続いて、質問にあったパンケーキで考えていきます。レシピや粉の配合にも左右されるので必ずこうなるとは言えませんが、と前置きしたうえで、牛乳を使うと3つの要素が加わると説明します。
焼き色・香ばしさ
乳糖とタンパク質による加熱反応
コク・口当たり
乳脂肪による滑らかさ
風味・質感
牛乳由来の固形分が生地に加わる
まず焼き色です。牛乳に含まれる乳糖という糖分とタンパク質は、加熱すると条件によってメイラード反応を起こし、褐色や香りの成分を生みます。メイラード反応 ── 糖とアミノ酸が加熱で反応し、こんがりした焼き色や香ばしさを生む現象。パンやお肉の焼き色などにも関わります。
水は生地を濡らしますが、牛乳は生地を濡らしながら焼いた時の反応にも参加する。ここが面白いところかなと思います。
次に乳脂肪です。割合だけ見ると数パーセントと少ないのですが、この脂肪がコクや滑らかな口当たりに関係してきます。
白く見えるのはなぜ?牛乳が「複雑な食品」である理由
川上さんは、牛乳を「脂肪入りの水」とはっきり区別します。牛乳の中では、脂肪が小さな脂肪球として分散し、タンパク質もカゼインミセルという微細な構造で存在しているそうです。カゼイン ── 牛乳に多く含まれる主要なタンパク質。酸性になると固まり、ヨーグルトやチーズの食感づくりに関わります。
そして、牛乳が白く見えるのも、こうした微粒子が光を乱反射させるためだと説明します。
牛乳は透明な水に栄養素が完全に溶けただけの液体ではなく、水の中に脂肪やタンパク質などが非常に細かく分散したかなり複雑な食品と言えます。
さらに、牛乳のタンパク質は加熱・酸・酵素などで状態が変わります。これを極端に利用したのがヨーグルトやチーズです。同じ白い液体が、条件を変えることでまったく違う食感になる、というわけです。
パンケーキではチーズほど大きな変化は起きませんが、牛乳由来の固形分が生地の風味や食感に加わっていく、と川上さんはまとめています。
牛乳がない日は水で作ってもいい?誤解しないための答え
では、牛乳がない日は水で作ったらダメなのか。ここは誤解してほしくない、と川上さんは念を押します。
パンケーキミックスは商品ごとに配合が違い、水で作ることを想定した商品もあります。まずはパッケージ通りの作り方に従うのが基本です。
牛乳指定のレシピを水に置き換えても、パンケーキ自体はちゃんと作れます。ただし、同じ量の液体を入れたから同じものになるとは限らないという点が、この日のポイントでした。
この質問を調べながら、川上さんは改めて牛乳の面白さに気づいたようです。
約9割の水分、そして残り1割ちょっとの中に乳脂肪があって、乳糖があって、カゼインがあって、乳清タンパク質があって、ミネラルがある。
料理を「化学実験」として見る視点
最後に川上さんは、視点を牛乳だけにとどめず、料理そのものを見る面白い見方として広げていきます。
たとえば、なぜパンに牛乳を入れるのか、なぜシチューに牛乳を入れるのか。これを「牛乳だから美味しい」で終わらせないのがポイントだと言います。
乳糖は何をしているのか、脂肪は何をしているのか、タンパク質は何をしているのかと分解すると、料理がちょっとした化学実験に見えてきます。
そして質問の答えを一言でまとめます。牛乳の約9割を占める水ではなく、残り約1割の成分が料理でかなり働いているから、料理では水と違うのだ、ということです。
川上さんは、水では作れるのになぜ牛乳を入れるのか気になる料理があれば、ぜひコメントで教えてほしいと呼びかけ、また科学的に調べて配信で取り上げたいと話していました。
まとめ
「牛乳はほぼ水なのに、なぜ料理で水と違うの?」という質問への答えは、残り約1割の成分にありました。水を牛乳に変えるだけで、乳糖・乳脂肪・タンパク質が料理に加わり、焼き色や香ばしさ、コク、風味を生み出しています。牛乳を飲み物ではなく料理の素材として眺めてみると、ぐっと面白く見えてきますね。
- 牛乳は約9割が水分で、残り1割ちょっとに乳糖・乳脂肪・タンパク質・ミネラルが含まれる
- 水は生地を濡らすだけだが、牛乳は成分が加熱反応やコク、風味に参加する
- 牛乳が白いのは、脂肪球やカゼインミセルなどの微粒子が光を乱反射させるため
- 水で置き換えてもパンケーキは作れるが、同じ量でも同じものになるとは限らない
- 料理に牛乳を入れる理由を成分から分解すると、料理が化学実験のように見えてくる

