番組が目指すもの、そしてキノさんのキャリア
番組の冒頭で、キノさんは「値札に書いていないモノの価値を様々な視点から考えていく」という番組の趣旨を語ります。
その根底には、小さい頃から抱いていた「人類が幸せになるには」という壮大なテーマがあるといいます。
ただしキノさんは、それを深く突き詰めるのではなく、ざっくり考えるタイプだと話します。
楽しい時間をすごく届けられたら幸せだなと思ってラジオDJになりたかったり、みんなが美男美女になれば幸せになるんじゃないかと美容師になりたかったり、そんなぐらい簡単な感じで思っていたんです。
その後、音楽やクラブの店員、古着屋やセレクトショップの店員を経て、時代の変化とともにECの世界に入っていったと振り返ります。
さらに美容室の広報やマーケティング、通販を経験し、ブランドのリユース業界へ。そこで広報、営業、企画、物流、ブランディングなどを約10年続けてきたといいます。
オフラインからSNS、そしてAIへ。変わり続ける価値観
キノさんが仕事を始めた頃、市場はオンラインではなくオフライン中心だったと話します。
インターネットは存在していたものの、まだ商売と密接につながる感覚はほとんどなかったといいます。
セレクトショップ時代に楽天などが登場し、ネット通販が台頭。ブランド系に入る頃にはSNSが主流になっていきました。
そしてここ3年ほどで、ChatGPTやGemini、ClaudeといったAIが登場したと続けます。
キノさんは、まだAIは調べ事に使う程度で、市場に十分反映されてはいないと見ています。
ただし、AIに慣れた人が増え、AIエージェントが主流になっていく中で、モノやお店に対する価値観も変わっていくと予測します。
物に対する考え方、お店に対する価値観というのも変わっていくんじゃないかなと。むしろもう変わり始めてきているんではないかなと感じています。
リユースが意味してきたもの、大量生産の時代
続いてキノさんは、価値観の変遷を時代ごとに振り返ります。
90年代には様々な文化を取り入れたファッションがあり、環境配慮も謳われ始めていたといいます。
ただ、当時の3Rは「いいことをしている感覚」程度で、企業が本格的に取り入れる動きは少なかったと振り返ります。
一方で、大量消費・大量生産はどんどん進みました。スマートフォンや冷蔵庫、テレビ、パソコンなど、新しいモノが次々と作られる世界観の中で私たちは生きている、とキノさんは言います。
古着文化からブランドリユースへ、価値観の移り変わり
モノが溢れた結果、オンリーワンを求める時代が訪れたとキノさんは分析します。
ここで起きたのが、キノさんの言う「第2回目の古着ブーム」です。時代とともに残ってきた商品を買い付けて売ることで、様々な時代のモノが集まり、多くが一点物になったといいます。
その一点物を探すことが楽しみとなり、自分の個性を伸ばすものにつながって古着屋文化が生まれた、とキノさんは見ています。
環境配慮というより、アイデンティティとしてのリユースが流行った時代なんじゃないかなと思いますね。中古というより古着、ユーズドという言い方を生み出したのが、価値観の変化につながっていったんじゃないかなと。
古着文化には波がありますが、今はブランドリユースがかなり進んでいるとキノさんは指摘します。
その背景にあるのが「資産的価値の時代」だといいます。
ブランドという記号に価値をたくさん乗せていった結果、転売などの売買がすごく盛んになって、物が金融資産のように扱われる価値観が徐々に浸透してきています。
モノを買うときに「リセールはいくらか」と考える人が増えたと話します。2010年代半ばから流行り始め、その後急に伸びたといいます。
有限の世界で、私たちにできること
AIの登場で、モノだけでなく情報も桁違いに増える世の中になったとキノさんは言います。
生産性が高速で高まる中で、地球の資源にも限界があることが、多くの人に知られるようになってきたと話します。
キノさんは、この有限の世界で人間が生きていく術は二つしかないと考えます。
限りある資源を贅沢に循環させ、その取り合いの中で生きていく道
宇宙などへ活路を求める道。ただし国ぐるみの規模で、一般市民には手が届きにくい
新たなフロンティアを探す人として、キノさんはイーロン・マスクやホリエモンの名を挙げます。
ただ、宇宙に行けない一般市民にはどうしようもないため、私たちは贅沢な循環の取り合いに巻き込まれていくしかない、と少し暗い見方を示します。
そんな中で、キノさんは私たちにできることは「哲学すること」だといいます。
昔の人たちは情報がない中でどうするかというとき、自分の中で考える思考は無限大で自由なので、そういうところにたどり着いていった。これが哲学の時代だと言われている理由の一つなんじゃないかと、勝手に解釈しています。
飽きるものと、飽きないもの。価値はどこにあるのか
ここでキノさんは、リスナーに一つの問いを投げかけます。
持っているだけで幸せになれるものと、すぐ飽きてしまうものの差はどこにあるのか。
すぐ飽きてしまうものは買いたくないですし、限りある資源の中でそれを持ち続けるのも辛い、とキノさんは言います。
現時点での答えとして、キノさんは物への歴史や哲学、自身との共通性がポイントではないかと考えます。
物が存在するだけでは価値にはならない。歴史や哲学、そして自分との重なりがあってこそ、その人にとっての価値になる、というのがキノさんの見立てです。
例としてキノさんは、音楽経験からエレキギターを挙げます。興味のない人には価値を感じにくいものです。
しかし、たとえばジミ・ヘンドリックスが好きな人にとって、彼が使ったストラトキャスターには音楽や歴史が染み付いています。
その楽器で練習していく過程で、自分自身のストーリーが重なることで、価値は何倍にもなる、とキノさんは話します。
キノさんは、ハイブランドにも幸せになるきっかけとなる歴史や構造、制作者やコンセプトの哲学がたくさん詰まっていると考えます。
それを知ってもらえれば、飽きてしまうものが減っていくのではないか。そこにこの配信を始めた理由があるといいます。
まとめ
第1回では、オフラインからSNS、AIへと移り変わる時代の中で、モノの価値観がどう変化してきたかを、キノさん自身のキャリアとともにたどりました。価格やリセールだけでなく、歴史や哲学、そして自分とのつながりの中に価値を見出す。それがこの番組の入口として示されています。
- 番組のテーマは、値札に書かれていないモノの価値を様々な視点から考えること。
- 価値観はオフラインからSNS、そしてAIの時代へと変わり続けている。
- リユースは環境配慮からアイデンティティ、そして資産的価値の時代へと意味を変えてきた。
- 有限の世界で私たちにできるのは、物への歴史や哲学、自分との共通性を「哲学する」こと。
- 物は存在するだけでは価値にならず、自身のストーリーが重なって初めて価値が何倍にもなる。
