話し方本は「著者の肩書き」で選ぶ
今回のしゃべりの相談室は、ポッドキャスト読書会というイベントへの参加回です。
主催はポッドキャスト「大丈夫じゃなくて大丈夫」のしおりさんで、今回のテーマは「話すことについて考える」でした。
早坂さんは、このテーマなら自分にぴったりだと感じ、参加を決めたと話しています。
まず早坂さんが率直に指摘するのは、話し方の本が世の中にあふれているという現実です。
わんさかあるからこそ、どれを読んだらいいかわからないって思う方いませんか。安心してください。話し方講師の私ですら同じような思いです。
どの本も書いてあること自体は正しく、内容に大きな差はないといいます。
では何が違うのか。早坂さんは、読む人の立場や年代、そして「話すことでどうなりたいか」というゴールによって、本の向き不向きが分かれると考えています。
たとえば経営者でない人が経営者向けの本を読むと堅苦しくなり、笑わせたいわけでもないのに元芸人の本を読むと方向性がずれてしまう、というわけです。
そのうえで、本選びのコツとして早坂さんが挙げるのが、著者の肩書きをチェックすることです。
著者が元営業マンなら営業向け、元CAならおもてなしを重視した内容だと、肩書きから中身の見当がつくといいます。
『人は話し方が9割』が万人に受けた理由
ここから、読書会向けの新たな2冊が紹介されます。1冊目は永松茂久さんの『人は話し方が9割』です。
2024年時点で133万部を売り上げた本で、今も書店で見かけることが多いといいます。
早坂さんがこの本のヒットの理由に挙げるのが、わかりやすさと、話す技術よりも「聞くこと」の大切さが書かれている点です。
本の冒頭には、噛み砕くとこう書かれているそうです。人は誰もが自分のことが一番大切で、自分に一番興味がある生き物である、と。
話し方の本なのに、まず人間そのものを知ろうという話から始まる。ここが早坂さんの共感ポイントです。
人は自分が一番大切だからこそ、会話では相手を主役にすれば喜ぶ。相手にたくさん話してもらう会話を意識すればいい、というのが永松さんの主張です。
だからこそ「話し上手は聞き上手」という慣用句があるのだと、早坂さんは重ねます。
一方で早坂さんは、これはあくまで傾向の話だと注釈を忘れません。
もちろん全員じゃないよ。中には自分語りはあんまり好きじゃないっていう方も世の中にはいるよ。こうやって注釈を入れていかないと。私がいつも言っている「100パーセント当てはまる」なんてことはないからね。
人は自分をわかってほしいと熱望している。それを知っていれば、相手の話を聞き、傾聴に重きを置くだけで、会話は怖くなくなるといいます。
この内容は40ページあたり以降に書かれており、読み進めるうちに「これは聞き方の本では」と気づく構成になっているそうです。
ただし早坂さんは、これは会話やコミュニケーションの話であり、プレゼンやスピーチはまた別だと補足しています。
師匠が書いた『話術!虎の穴』とフリートークの3要素
もう1冊は、GENという出版社から出ている三橋泰介アナウンサーの『話術!虎の穴 現役アナウンサーが明かすトークのネタ帳』です。
三橋さんは元東北放送のアナウンサーで、早坂さんが話し方講師として第一歩を踏み出すきっかけとなった人物だといいます。
現在はプロ野球ゲームやNBA中継の実況、研修講師、そして商業出版のプロデュースを150冊以上手がけるなど、多彩な顔を持つ大先輩です。
早坂さんが三橋さんと出会ったのは、楽天イーグルスの球場取材でした。他局の垣根を越えて若手アナウンサーを集め、話芸を磨く勉強会を開いてくれたそうです。
その背景には、早坂さんが入社した2005年当時の放送局の空気がありました。
ハヤサカが入社した2005年って、まだほんのり昭和の根性論が残っている時代なんですよ。先輩の背中を見て聞くんじゃなくて、技を盗みなさいみたいな時代だったんです。
むやみに先輩に聞けない雰囲気のなか、局を越えて若手を集めてくれた三橋さんの勉強会は、早坂さんにとって大きな存在だったといいます。
そこで早坂さんは、再現性のあるアドバイスができる人になりたいと思ったそうです。
本の中で早坂さんが今も指導に使っているのが「フリートークの3要素」です。三橋さんが言語化したもので、共感、知識・情報、笑いの3つを指します。
この3つのどれか1つでもないと、他人の話は聞くに堪えないものになる、というのが三橋さんの考えです。
三橋さん自身も、どうすれば視聴者やリスナーが喜んでくれるかを考え抜き、後輩に伝えられる形にまとめた結果が、この3要素だったといいます。
共感・知識・笑い、そして「好き」の力
早坂さんは、この3要素をポッドキャストに当てはめて説明します。
共感もなく、知識や情報も得られず、笑いもないポッドキャストは、正直聞いていられないというのです。
知らない人の番組がおすすめで流れてきたとき、早坂さん自身も最初の30秒から1分だけ聞いてみるそうです。
そこで共感できず、価値観も違い、テーマにも興味がなければ、途中で止めてしまう。それは誰にでもある自然な反応だといいます。
だからこそ、終盤まで聞いてくれるリスナーには、共感か、知識・情報か、笑いのどれかが届いているはずだと感謝を述べます。
そしてもう1つ、大きく作用するのが「好き」という感情です。早坂さんは推し活を例に挙げます。
推しがパーソナリティなら、内容がどうであれ声が聞きたい。言うことなら何でも肯定的に受け取れる。それは好きという感情や愛があるからだといいます。
逆に、喋り手への好意がゼロで、共感も知識も笑いもなければ、聞かないのは当然だと早坂さんは言います。
そして、刺さらなかった自分を悪い人間だと思わなくていい、相性の問題なのだと優しく付け加えます。
ただし、ポッドキャストなら止めれば済みますが、仕事や学校ではそうもいかない。だからコミュニケーションは大変なのだ、という話につながっていきます。
その深掘りは1時間以上かかるからと、早坂さんはここで話を締めています。
まとめ
話し方の本を選ぶときは、著者の肩書きと自分のゴールを手がかりにするとよさそうです。そして今回紹介された2冊に共通するのは、話すこと以上に「聞くこと」や相手への意識が大切だという視点でした。
- 話し方本は数が多いので、著者の肩書きと自分のゴールで向き不向きを見極める
- 『人は話し方が9割』は、相手を主役にし、聞くことを重視する内容が支持されている
- 『話術!虎の穴』の「フリートークの3要素」は、共感・知識情報・笑いの3つ
- どれか1つでも欠けると、他人の話は聞きにくくなると三橋アナは説く
- 話し手への「好き」という感情も、聞き続けられるかを大きく左右する






