仙台の大学で議論した「ブルーカラーシフト」
石角さんは、NHK仙台の番組出演で東北学院大学を訪れ、学生や職員とAI時代のブルーカラーシフトについて議論してきたと切り出します。
皆さんこんにちは。パロアルトインサイトCEOの石角友愛です。
CTOの長谷川貴久です。
インテグラルの山崎です。
いつも「Level 5 by Palo Alto Insight AI時代のキャリア戦略」をお聞きくださりありがとうございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
ということで、実は一昨日ぐらいに仙台に行ってきまして。
仙台は結構久しぶりだったんですけど、NHK仙台の番組の出演で行ってきたんです。東北学院大学のキャンパスの中で撮影をしてきました。
学生の皆さんと職員の皆さんを交えて、アメリカをはじめブルーカラーシフトっていう動きが来てることについて議論をしてきました。非常に面白かったです。
ブルーカラーシフト ── オフィスワーク中心のホワイトカラー職から、現場で体を動かす技能職・現業職へ人材や関心が移る動きのこと。AIによる事務作業の自動化を背景に語られることが増えていますの議論がどんな形式だったのか、山崎さんが尋ねます。
それは討論をするとか、パネルディスカッションするみたいな、そういう形式だったんですか?
いや、私とゲストの声優さんの方と司会の方がいて。番組では、東北地方を中心に、エンジニアから別の職業に転職した方など、ブルーカラーシフトしている方をドキュメンタリーで取材してきていて。
それを見ながらみんなで議論をすると。私は専門家の立場から、今何が起きてるかっていう説明をしたりする番組だったんですけど、結構面白くて。
放送日が10月16日金曜日の夜7時半から7時56分、NHK総合宮城で、再放送が17日土曜日10時5分から10時31分までです。『東北ココカラ』という番組です。
このAI時代に、いろんな仕事の定義も変わってきてるし、若い方を中心に仕事のあり方が変わってきちゃうなというのを感じました。
大学でね、(その議論を)やったのは面白いかもしれないですね。
(学生は)仕事のやり方を、これから考えるってことだと思うんで。
親子ほどは離れていない、20歳前後との対話
話題は、普段あまり接点のない20歳前後の学生と話した新鮮さへ移ります。
そうそう。普段生活してると、22歳とか20歳ぐらいの方とあんまり出会う機会ってないじゃないですか。まだ自分の子供の世代ではないし、非常に新鮮ですよね。
でもそれ、すごい感覚わかりますね。20代前半から半ばぐらいまでの人って、自分の子供よりも大きくて、ただ世代も結構離れてる人ってことで。
最近だと(その世代を)自分の子供と比較したりするんですけど、自分の子供と年齢がそんなに変わらないじゃないですか。だけど、結構しっかりされてるじゃないですか。
まあそうですね。冷静ですよ。
しっかりしてるけど、ちょっと抜けてるとこもあったりして。不思議ですね。自分の子供が数年経ったらそうなるかっていう。
そうそう、そういう見方もしちゃう。自分の子供、これからどうなるんだみたいな。
仕事でも22、3歳の人とあんまりやりとりしないから、すごく面白いですよね。一般論にはなっちゃうけど、世代を超えた交流がある場がもっとあると面白いなという気はします。
「紙と鉛筆」で頭を悩ませる教育は残るか
山崎さんは、子供が鉛筆で問題を解く姿を見て、手を動かして考える学校教育の大切さを感じていると話します。
最近思うのが、学校の教育ってすごい重要だなって。今日のテーマにも絡むかもしれないですけど、子供が勉強してるのを見てると、鉛筆とか消しゴム使って普通に手動かしてやるじゃないですか。
今って、ペン使って書くことも減ってきましたよね。私、結構ノートを取る派だったんですけども、パソコンに打ち込んだりするのが多くなってきたので。
現代社会でいろんなツールがある中で、何も矯正しないでいくと、鉛筆で字書いたりして頭を悩ませるとか、そういうことってないんじゃないかなって気がしてきていて。
少なくとも高校生ぐらいまで、鉛筆かシャーペンで手動かして問題解いたり、試験やったりするっていうこと自体が、すごいいいことだなと思いましたね。
そういうふうにしないと、頭がなんとなく鍛えられないのかなみたいな感覚はあるよね。もしかしたら初っ端パソコンでやっても身につくのかもしれないけど。
紙と鉛筆の脳に対する刺激って、やっぱ物理的なものがあるじゃないですか。記憶の作り方、回路の作り方なのかもしれないし。すごくわかります、私も。
あと、AI時代だから、逆にもうテストは紙と鉛筆にまたなるんじゃないかなっていう。
他のソフトウェアが一切使えないパソコンを全部設置してテストするのもありですけど、会場のキャパの問題とかも考えると、逆に紙と鉛筆に回帰するのは面白いかもしれない。
(これからは)AIのアシストを受けないで物事に取り組むことが少なくなるはずなので、そういう場を維持し続けるのが重要なんだけど。
大人になったり社会に出ちゃうと、そんなことも言ってられないので。そう考えると、やっぱ教育の場って重要なんだなと思いましたね。
OpenAIが数学論文722本を一挙公開
今週のホットニュースは、OpenAIが未公開の社内AIモデルによる数学論文722本をGitHub ── ソフトウェアのコードや文書を公開・共有できるプラットフォーム。研究成果やデータの公開先としても広く使われていますで公開した件です。
OpenAI、数学論文722本を公開。10月6日に、OpenAIが未公開の社内AIモデルが書いた数学論文、なんと722本をGitHubでまとめて公開したということです。
論文は372グループに分かれて、数論、幾何学、理論計算幾何学など未解決問題を扱っていると。社内モデルに約4000件の未解決問題を与えた結果だそうです。
1件の成果あたりの計算量は、ChatGPT Proの高度推論を約3時間動かす程度であったとされているという記事が出ています。
長谷川さん、この722本の数学論文を公開したことに対して、数学界からはどんな反応が出ているんでしょうか。
前回の反応っていうのは、テレンス・タオをはじめとするフィールズ賞受賞者が連名で書いた手紙で、数学の問題は、問題自体が貴重な資源であると。
長谷川さんは、フィールズ賞受賞者たちの懸念を「釣り」にたとえて説明します。
釣りでいうと、OpenAIがいい魚を全部釣り上げてしまうと、面白い問題っていう母集団が枯渇して、みんなの数学に対する興味が薄れていってしまう。
面白い問題を見つけるという作業がなくなって、どんどん負のスパイラルが起きてしまうんじゃないかという危惧を、手紙として連名で出してるんですけれども。
今回もOpenAIは勢いを止めずに、4000個(の未解決問題)を手当たり次第に解決しようと試みたところ、やっぱり数学界からの反応はあんまり良くなくてですね。
今私が見てるブログ記事は、アサフ・カラギラという、パーティション・プリンシパルという分野に深く携わっている数学者の方のものです。
彼が自分のホームページで、この問題を解決した数学者がいたら僕はウイスキーを買ってあげるよみたいな、学者的なノリで書いてるんですけれども。
OpenAIの発表の翌朝起きたら、もう3人の人から「お前はサム・アルトマンにウイスキーを買え」と言われて、絶対に買わないって抗議しているブログ記事があるんです。
論点としては、1つはクオリティが低いと。人間の数学者からすると読みづらいし、変なペーパーを引用したり、変な手法を使ったりしていると批判しています。
AIの文章って、やっぱAIの文章っぽいので、なんとなくわかる気がするなって思うんですけれども。
科学っていうのは、科学者たちが論文を通してコミュニケーションをし合いながら、知識の体系を積み上げていっている。
その中に、AIというある種エイリアンみたいな存在が参加し始めて、面白いのを全部釣り上げてしまおうとするのは非常に危険なんじゃないか、と言っているブログ記事かなと思います。
私も今見てる感じ、もちろん歓迎しているグループもあるみたい。トロント大学のダニエル・リット教授とか。ただ、懸念、批判、留保付きの距離っていう感じの人が多いみたいで。
証拠を見せてほしいとか、検証可能性への懐疑っていう声が出てきたり。Lean形式化の範囲も限られていて、主結果が機械検証済みなのは722本中162本、22%にとどまる。
量が多いことは正しさの証明にはならず、生成したモデルにアクセスできないまま、成果の上に研究が積み上げられるのかという疑問も出ているそうです。
強いボイコットとしては、トップクラスの数学者が立ち上げたAssociation for Human Mathematics、AHMという団体が、数学者にOpenAIとの協働をやめるよう呼びかけていると。
(AHMは)OpenAIの数学を前進させるという主張を退けて、OpenAIが研究規範を完全に無視していると批判しています。
フィールズ賞受賞者25人が9月11日に、AI企業が数学の問題をベンチマークとして使うことは有害だという宣言を出していたという背景もある中で。
あえてこうやって喧嘩売ってるみたいな、なんであえて出したんだろうっていう気は私はしちゃったんですけど、壯さんどう見てますか。
人間に残るはずだった「テイスト」とは何か
これはめちゃくちゃ面白いですね、本当。
AIが面白い問題をいろいろ解いて潰しちゃうと、面白い問題に取り組もうっていう研究者の数が減ったり、モチベーションが減っちゃったりするわけであって。
非常に危ないですね、これは。(数学の)発展が止まっちゃいそうな感じがしましたけどね。LLMの根幹的なところに行きそうな気もしますね。基礎研究の話じゃないですか、これって。
長谷川さんは、基礎研究で起きていることが応用やビジネスに波及した場合の姿を、ヘッジファンドを例に考えます。
これは基礎研究の話なんですけれども、ヘッジファンドとかは、アービトラージとかアルファを追いかけていくわけです。
生成AIベースのトレーディングが進んでいくと、アルファが生成AIに食われ尽くしちゃって、レガシーのトレーダーは見つけられるアルファが少なくなってしまうとかも考えられるのかなと。
ビジネスの世界でも、LLMが人間の代わりに意思決定や判断をする時代になると、一番いいトイレットペーパーってどれなんだろうっていうロジックが成り立つ。
そうすると、トイレットペーパーの商品が1つだけ勝者になってしまうみたいな。
マーケティングの意味がなくなってくるということですね。
本当に、completely efficient marketみたいな感じ。
人間が機械の指示で購買をするようになれば、もう広告宣伝もいらないし、ベネフィットを訴求する必要もないと。
意思決定を機械に委ねて、人間はそれをただ実行するだけの媒体になっていくっていう、そういう危険性がある。
その発端が見えるような気がするんですよね、この数学の事件からすると。今は面白い問題を探すのに、人間のテイストが必要。
テイストっていう言葉が今フロンティアラボ周りでよく言われていて、「テイストは人間にはかなわないよね、LLMは」みたいなことが言われてるんですよ。
じゃあ「テイストって何なの?」っていうことを、Thinking Machinesのジョン・シュルマンが言っていて、結局は長期的視野に立ったロングタームシンキングなんじゃないかと。
エンジニアリングでいうと、センスのあるやつは10年先、30年先を見てもロバストなシステムにつながる。
センスのないやつはすぐ壊れそうとか、先に進んでいくとどっかしらロードブロックが出てくるとか、そういうことだと(ジョン・シュルマンは)言っていて、すごく面白いなと思ってたんです。
じゃあテイストをLLMが身につけた後に何が起きるか。結局、数学の問題を発見するっていうのもセンスの問題だと思うんですよ。
そのセンスをフロンティアラボが解決して(LLMが)身につけてくると、今度は問題の発見も、別に人間に頼らなくても。
AIができる。
問題も発見できるという時代になってくると、数学者としてはすごく微妙な。
それってさ、もう数学だけじゃないよね。学問全てに言えちゃいますよね。問題提起とか仮説から始まるわけだから、学問の追求は。
今までは問題を作る力とか、プロンプトは人間がやっていたわけだけども、テイストとかセンスっていう定義化できないものすらAIができるようになってきちゃうと。
確かにこれは学問全体における危険な感じもするけど、壯さんどうですか。
基礎研究はLLM的なアプローチで進むのか
山崎さんは、世の中の原理原則を扱う基礎研究と、AIを社会に応用して価値を出すことは分けて考えたほうがいいと話します。
個人的には、ちょっと違う考えがあって。数学とか物理学とか、世の中の原理原則に関する基礎研究的な学問がありますと。
それと、ヘッジファンドとか、AIを社会に実際応用していろんなソリューションを出していくっていうことは、ちょっと分けた方がいいかなと、なんとなく思っていて。
この前シンガポールに行っていた時に、AI×サイエンスっていう分野の中で、創薬、薬の開発のAIの話を結構聞いてきたりしたんですけれども。
そういうのって、AIを実際使っていくことで、世の中に結構価値が生まれていくじゃないですか。
LLM自体は、テキストやコードなどの言語情報に基づいて、次に来る単語や記号を予測するっていうのが基本的なベースの作りになっていて。
いろんなものを組み合わせて、次は何っていうのを人間より早く深くできるようになってきてるのかなと。それが創薬とかで価値が出るんだったら、どんどんやればいいのかなと思うんです。
一方で、基礎の方って、LLM的なアプローチで進むのかなっていうのが、個人的にはなんとなくモヤっとしてる疑問であって。
物理の世界だと、アインシュタインの相対性理論とか量子力学の基礎みたいな根本的な発見って、50年ぐらいされていないじゃないですか。
既存のものを組み合わせて突き詰めたり、早くやったりするのはLLMは得意なのかもしれないけど、全然新しいものを見つけるのはそんなに得意じゃないんじゃないかなって感覚があって。
そうすると、人間がまだそういうところをやんなきゃいけない。でも、AIが(面白い問題を)いっぱい取れちゃうと、そもそも人間が考えることをやめてしまうみたいな。
その分野は面白くないねってなって取り組まなくなっちゃうと、超長期的には発展が遅れそうな感じしますよね。
長谷川さんどうですか。
だから、LLMがニュートンとかアインシュタインのレベルのインサイトにたどり着けるかっていうところですよね。ここは究極のテーマだと思います。
テイストを突き詰めると、リンゴが落ちたのを観察して重力に行き着くみたいな、そういうところに果たして(LLMが行けるのか)。
この2、3年のスパンでは多分そこまではいかないだろうなと私は思いつつも、フロンティアラボが真剣に考えてるのを聞くと、もしかしたら新しい分野の開拓もあるのかなと。
ニューラルネットワークを発案した人とか、チューリングとか、そういう巨人のレベルにLLMが近づけるのかっていうのは、フロンティアラボもすごく考えてることだと思いますし、やろうとはしてると思います。
テイストはその一端だと思いますし、もう1つはやっぱ観察力だと思うんですよね。LLMにどうやってこの実世界を観察させるのか。例えばワールドモデルとか。
そうそうそう、ワールドモデルとかの話だよね。LLMってある種AIの一部なわけじゃないですか。ものすごいそこが今発展してるから、LLMがメインに見えちゃってるけど。
ワールドモデルやフィジカルAI的な世界って、画像認識だったり、物理の法則をバーチャルに再現するとかって、LLMだけじゃできないじゃないですか。
数学と物理の関係性って私もちゃんと理解してないですけど、結構密接な関係があるのかなと思っているので、数学分野が発展しなくなると、物理の分野の発展にも影響出そうな感じもして、ちょっと怖いですね。
DeepMindのデミス・ハサビスも、壯さんと全く同じことを言っていて。
1940年代くらいまでの知識だけを持たせた上で、アインシュタインの相対性理論にたどり着けるかっていうテストが、真のAGIのテストだとかって言ってたこともあり。
最近、彼らもノーベル賞を取ったじゃないですか。デミスも取ってるし、DeepMindの他の人も取ってると思うんですけれども。
科学とAIの融合が、フロンティアラボに科学を集中させてしまうっていう流れが始まってると思うんですね。これからもフロンティアラボ発のノーベル賞受賞者は増えてくると思うし。
生成AIとか、もしかしたらワールドモデルとか、そういったものを使わないとたどり着けない領域が結構あって。その発展は巨大生成AIラボでしかできない時代が徐々に来つつあるんじゃないかなと。
だとすると、やっぱり大学にとっては脅威ですよね。大学って何のために。
だから、ノーベル賞を受賞する人が、ほとんどDeepMindとかAIの会社の人になっちゃうかもしれないっていうことがね。
(そういう時代も)おかしくないんじゃないかなと思いますね。
ただ、分野を開拓するっていうのも、何かを研究してる間の副産物とか、いやこれって実は大きな課題じゃない?って気づいてできていったりする。
そういう有機的な発見みたいなものは、やっぱり人間しかできないんじゃないかと。最後は、これってすごい大事なことだからやろうよみたいな意思決定や意思であったり。
そこからムーブメントを作って、研究を続けたり、他者を巻き込んだりとかすると、どうしてもフィジカルな現場との関わりも必要になってくるし。
そうですよね。でも結局、AIだけにやらせときゃいいじゃんってなっちゃうわけじゃないですか。
この数学の話だって、実際に人間が解けない問題をたくさん解き始めてて、今は内容が乱暴だとか査読できないとかあるけど、それって多分本質的には些末な問題で。
もうちょっと時間経ったら、そういうのもAIでできるはずだから。それで数学を発展させていいのかっていうのは、最初の数学者の先生の話に戻る気がしますね。基礎分野で人間が思考放棄することになっちゃう気がするので。
今までは未解決の問題を解くことにフォーカスがあったけど、どういう問いを立てるべきかっていうところが人間の役割になっていたのに、それすらもAIがやるようになってしまうと。
特に基礎研究の分野で大きな脅威になると。基礎研究で脅威になるってことは、応用の分野でも影響が出るし、研究者の数が減ること自体は社会にとって良くないことだから。大学にとってもね。
数学者たちが懸念するのはわかるけど、だからって、数学でAIを使うなっていう規制の議論にするのは、やっぱ難しいじゃないですか。
懸念を発表するのはすごい大事で、ちゃんと議論すべきことだと思うんですが、じゃあどうするかっていうところがすごく難しい。
AIの開発のスピードを弱めるみたいな動きも今ある中で、どうするんだっていうね。もう便利すぎて、使わないわけはないから、それこそ数学の世界でも。
数学なんて、究極的に言うとLLMがすごい得意な分野のはずじゃないですか。いろんな組み合わせで解いていくわけだから。
将棋みたいに時間制限があるわけでもないし、3時間で1個解けるとか書いてあったわけだから、3時間を30分にしたっていいわけだし。
そしたら、数学者としての新しい成果って、AIが解けなかった問題を解くっていうことになるわけじゃないですか。
そうすると、AIとの戦いはもう難しいですよね。
決着ついちゃってるよね。そうすると、その分野に進もうって人って、明らかに減っちゃうよね。
オフィスアワーの学生が「4人から2人」に
石角さんは、ジョージア工科大学の大学院でTAを務める長谷川さんに、アメリカの学生の肌感覚を尋ねます。
長谷川さんは、アメリカのジョージア工科大学の大学院で、コンピューターサイエンスの機械学習、強化学習を教えてるTAですけど。
そういった分野に対する今のアメリカの若い人の興味っていうのは、現場の肌感覚として何か感じるところありますか?
強化学習は、生成AIのかなり重要な学習手法の1つとして発展してきていますので、分野自体への興味関心はものすごい高まっていると思います。
でもその反面、生成AIが出てきて、学校の性質が本当にガラッと変わっちゃった気がしますね。
(オフィスアワーには)大体生徒の10分の1くらいは出てたんですね。200人くらいいると20人くらいは出てたんですけれども。
先週やったオフィスアワーなんかは、最初4人いて、途中から2人になりましたね。これ何なんだろうとか。
悲しい。AIでもう解決できちゃうからでしょ、質問も。
そうなんですよね。
いや、わかる。生徒の気持ちもわからなくはない。先生と会うのってストレスだから、ジャッジされるじゃないですか。変な質問して成績悪くなったらどうしようみたいなのもあるし。
目上の人と話すのって疲れるから、行かないでいいなら行きたくないっていう心理と、テクニカルな質問ならAIで解決できちゃうっていうのが重なって、オフィスアワーに行く必要がないってなっちゃうんだと思う。
もしこれを聞いてる方で、オフィスアワーにアクセスがある学生の方がいらっしゃったら、私は言いたい。オフィスアワーは行った方がいいですよ。
教授とかTAの先生と話す中で、自分の課題が明確になるってすごいあるから。AIとの壁打ちで明確になるのもあるけど、目上の人、専門家と話すっていうところ。
心理的なハードルがあるのはわかるんだけど、そのハードルを越える訓練は絶対に必要だから、オフィスアワーはどんどん行った方がいい。
評価につながるかは先生次第だからわかんないけど、少なくとも悪い評価になることは絶対にない。学習意欲が高いと思ってもらえて、顔を覚えてもらえるし。
学校っていう環境は、まだまだ先生が裁量を持って成績評価をする状況である以上、先生に名前を覚えてもらうのも大事だと思う。
話は逸れちゃうけど、オフィスアワー、人が減ってるの悲しいけど、ぜひ行ってもらいたいなとは個人的には思うけどね。
このAIが研究分野で大きな進化を遂げる中で、基礎研究をはじめとして、大学のあり方、研究者のあり方まで変わってくるんじゃないかという、非常に興味深いニュースでした。
『プラダを着た悪魔2』、上司はいつまでも上司?
今週のおすすめコンテンツは、石角さんが飛行機の中で観たという映画『プラダを着た悪魔2』です。
私からおすすめしたいと思います。『プラダを着た悪魔2』。ちょっと遅ればせながら飛行機の中で見まして、面白かったです。
1ほどのアイコニックな、本当に完成された感じとはもうちょっと別ですけど、2は2で、1のいろんな話をちゃんと反映した作りで、私は好きでした。
あんまり好きじゃないっていう人も結構いるみたいですけど、メリル・ストリープが好きなので、ミランダが相変わらずで面白いなと思いました。お二人は1か2は見たことありますか?
1は見たことあるんですけど、2はまだ見てないですね。
なんとなく1のキャストが年老いてるんじゃないかっていうので、なんとなく見たくないなと思って見てないみたいな。謎の思いです。
だいぶ時間が経ってますよね。20年ぐらい多分経ってますよね。なんでこんな時間かかったんだっていうのはすごいある。
メリル・ストリープとか、元からもう年いってる役だったから。
貫禄ある役だったから。
そうそうそう。まだやってんのかいみたいな。
アン・ハサウェイ演じる主役のアンディは、最初から別の会社でジャーナリストとして成果を出している役なんだけど、いろいろあって、またミランダの下で働くところから始まるんです。
私が思ったのは、どんなにその人が成功しても、上司っていつまでも上司なんだなっていうのを感じた。
ああ。なるほどね。
アンディはもう40代で立派なジャーナリストなのに、ミランダの下に入った途端に、1のアンディみたいに振る舞ってるんですよね。それがすごい私は興味深くて。
外から入ってきてるから、ペコペコする役柄でもないわけですよ。なんだけど、組織の中の人間関係って変わらない部分があるのかなと。逃れられない上下関係みたいなの、あるんですかね。
どうなんでしょうね。アン・ハサウェイがリードする立場になったとて、またミランダの下で働くことで得るものもありそうですね。それはそれでいいのかなと思いました。
ということで、興味があればぜひ皆さん見てみてください。この番組は毎週木曜の朝に公開します。概要欄のご意見箱やXのDM、リプライまでお気軽にご連絡ください。
それではまた来週お会いしましょう。ありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
まとめ
この回では、NHK仙台の番組で議論したブルーカラーシフトをきっかけに、紙と鉛筆で考える教育の場の価値が語られました。続いて、OpenAIの数学論文722本公開に対する数学界の懸念を起点に、AIが「テイスト」や問いを立てる力まで持ったときの基礎研究のあり方が議論されました。フロンティアラボへの科学の集中は大学にとって脅威だという見方や、人間が思考放棄することへの懸念も出ています。
- AIのアシストなしで考える場として、紙と鉛筆の教育が改めて重要になるかもしれない
- OpenAIの722本公開には、品質や検証可能性、面白い問題の枯渇を懸念する声が多い
- 問いを立てる「テイスト」までAIが担うと、基礎研究や大学の役割が揺らぐ
- AIで質問が解決できる時代でも、オフィスアワーで専門家と話す経験は価値がある







