「油いらないって嘘つき」から始まった騒動
話の発端は、味の素冷凍食品の餃子を焼いたらフライパンにくっついてしまったという、写真付きのSNS投稿でした。
油いらないって書いてたじゃん。嘘つき。
この投稿に対して、味の素冷凍食品がフライパンを着払いで提供してほしいと返信します。その返信が週末にかけて大きく拡散しました。
リポストは1万件に達し、餃子が張り付くフライパンを提供したいという声が数多く集まりました。
投稿が発見されたのは2023年5月12日の金曜日。週末のうちに、会議室が埋まるほどのフライパンが届いたといいます。
3520枚のフライパンと、現場のてんやわんや
その後1ヶ月で、合計3520枚のフライパンが集まりました。これ以上は倉庫に入りきらないとして、募集は終了となります。
1枚ずつ管理するために荷札でナンバリングしようとしたものの、手元の荷札は500番台までしかありませんでした。
そこで500番までの荷札を色分けしながら管理するなど、現場は試行錯誤を重ねたそうです。
送られてきたフライパンの中には、餃子の皮がくっついたままの状態のものもあったといいます。
言葉にできないほど、やばいものもあった
その後、フライパンを1枚ずつ確認する作業と並行して、3Dスキャナーによる立体撮影や、電子顕微鏡での表面調査も進められました。
さらに、実際に届いたフライパンで餃子を焼いて検証する取り組みも行われました。こうした調査が、社内の複数の部署を横断しながら同時並行で進んでいったそうです。
原因は「見えないタンパク質汚れ」だった
餃子がフライパンにくっついて取れない原因が、どこにあるのかも探られました。フッ素加工の問題か、フライパンの歪みか、といった観点です。
その中で浮かび上がったのが、フライパンに目に見えない汚れが残っているのではないか、という説でした。
台所洗剤を開発するライオンがプロジェクトに加わり、研究を進めたところ、見えないタンパク質汚れが残っている場合に餃子が張り付きやすいことが分かりました。
そこでライオンは、タンパク質汚れを落とす酵素を3倍にした「チャーミーマジカ酵素プラス」を開発。これで洗ったところ、多くのフライパンで餃子が張り付きにくくなったといいます。
また、洗う前につけ置きしてから洗うことでも、張り付きを減らす効果があったそうです。
餃子そのものも2回アップデート
一方で、「永久改良」を掲げる味の素冷凍食品の餃子そのものも、この1年半で2回のアップデートがありました。
2023年6月に始まったプロジェクトを受けて、2024年2月発売の餃子では羽根の素を改良し、張り付きが約26パーセント改善しました。
さらに1年をかけて改良し、2025年発売のバージョンでは張り付きが約54パーセント改善したそうです。
12個すべてが張り付いたままというフライパンは、最終的に7パーセントのみになりました。つまり集まったフライパンの93パーセントで、何かしら改善が見られたことになります。
2025年版では、羽根が広がりやすくボロボロになりにくいという改良も加えられています。
新しい餃子の見分け方
スーパーによっては、去年版と今年版が混ざっている可能性もあるといいます。スタンダードな餃子に限った見分け方が紹介されました。
パッケージ中央のカタカナ「餃子」のすぐ上に、アルファベットで味の素と表記。富士山の絵はない
富士山の絵が描かれている
今年版は、パッケージ表面の真ん中にあるカタカナの「餃子」のすぐ上に、アルファベットで味の素と書かれています。
去年版には富士山の絵が描かれていますが、今年版にはありません。生姜餃子や黒豚大餃子など他の商品はデザインが異なるため、これはあくまでスタンダードな餃子の話です。
3520枚はリサイクルされ、新しいフライパンに
2023年6月までに集まった3520枚のフライパンは、その後どうなったのか。実はリサイクルされています。
このうち鉄やステンレス製は100枚程度で、それ以外はすべてアルミ製でした。3000枚以上のアルミ製フライパンを溶かし、新しいフライパンへ再生するプロジェクトが行われたのです。
この話を聞いた小野寺さんは、焼き餃子協会として、業界の発展に貢献したフライパンたちを見送りたいと申し出ました。
リサイクルに向かうこのフライパンたちを見送りさせてもらえないか
2024年12月、餃子愛好家に声をかけ、群馬にある味の素冷凍食品の倉庫に集合。みんなでフライパンをトラックに詰め込み、見送る「フライパン見送り式」が開催されました。この様子の動画は番組概要欄から見られます。
燕三条で生まれ変わった新フライパン
溶かして再生されたフライパンは、今年3月に発売開始されました。製造したのは、燕三条で77年間フライパンを作る杉山金属です。
新しいフライパンは、直径22センチとやや小さめ。底面を広く取れるよう壁面が直角に切り立ち、ちょうど餃子12個が入るサイズになっています。
フライパンは深いより浅い方がしっかり蒸せるため、高さは35ミリと比較的浅い作り。ステンレスも合板され、IHでも使えます。
ひっくり返す際、小野寺さんはフライパンの中に皿を入れる方式ですが、味の素冷凍食品と杉山金属はフライパンの上に皿を乗せて返す方式を提案しています。
その返し方をしやすくするため、取っ手はフライパンの上面と平行なフラットな形状になっています。数量限定での発売で、小野寺さん自身もすでに発注し、手元に届いているそうです。
愛する道具としてのフライパン
1年半にわたるフライパンプロジェクトは、これで一段落となりました。この間、プロジェクトはさまざまなPR・広告の賞を受賞しています。
最初の受賞は2023年年末。焼き餃子協会の会員投票で決まる「焼き餃子協会アワード」で、このフライパンプロジェクトが大賞に選ばれました。
このご縁から、小野寺さんは見送り式の企画にも関わり、3520枚のフライパンとの縁を得たと振り返ります。
美味しい餃子を焼きたければ、フライパンは常に綺麗に丁寧に扱うことが大切だと小野寺さんは話します。そうすればフッ素加工のフライパンも長く使えるといいます。
番組の締めくくりでは、道具へのこだわりについても語られました。同じ餃子でも、いいフライパンを使うと焼きやすさや焼き上がりのもっちり感、パリッと感が違うと感じるそうです。
餃子の焼き方を実演していると、フライパンのメーカーを聞きたがるのはほぼ男性だと小野寺さんは話します。自身もその一人だとして、フライパン好きに気軽な声かけを呼びかけました。
まとめ
1枚のSNS投稿から始まったフライパンチャレンジは、洗剤・餃子・フライパンそれぞれの改良を経て、集まったフライパンのリサイクルと新製品化にまで至りました。企業を横断した1年半の取り組みが、一つの循環として着地した回です。
- 発端は「油いらないって嘘つき」という餃子の張り付きを訴えるSNS投稿だった
- 1ヶ月で3520枚のフライパンが集まり、社内で調査・検証が進められた
- 原因の一つは見えないタンパク質汚れで、ライオンが専用洗剤を開発した
- 餃子は2回改良され、2025年版で張り付きが約54パーセント改善した
- 集まったフライパンはリサイクルされ、燕三条の杉山金属が新フライパンに再生した
