九州が「餃子アイランド」である理由
番組冒頭、小野寺さんは九州を「様々な餃子の文化がある島」と紹介します。
その背景にあるのが、中国との距離の近さです。ちゃんぽんや唐揚げ、ラーメンと同じく、中華ルーツの料理が九州には数多く根づいてきました。
餃子もその一つで、九州各地でそれぞれに進化してきた料理だといいます。今回はその名店を県ごとにたどりながら、小野寺さん自身の「野望」も語られます。
宮崎と鹿児島 畜産王国の餃子
最初に挙げられるのは宮崎です。家計調査の餃子支出金額で日本一となり、日本を代表する三大餃子の一つと呼ばれるようになりました。
特徴は、豚肉だけでなく牛肉や鶏肉など、肉のバリエーションが豊かなことです。昭和30年に延岡で生まれた黒兵衛や、高鍋町のたかなべギョーザなど、戦後から続く店があります。
宮崎市民に人気なのが、生餃子販売専門店の餃子の馬渡です。その日に作ったものが夕方には売り切れるほどの人気だといいます。
以前は大阪にも店舗がありましたが、地元の需要が増えすぎて撤退。現在は宮崎県内に6店舗、鹿児島と福岡に4店舗、熊本に2店舗を展開しています。
お取り寄せもできますが、賞味期限は出荷日を含めて4日間と短いため、計画的な利用がすすめられています。
宮崎に刺激を受けているのが鹿児島です。こちらも畜産王国で、質の良い豚肉を使った餃子が多く、黒豚の餃子のイメージを持つ人も多いといいます。
餃子のOEM製造を手がけるビッグファイブは、創業者の昌田久子さんがシングルマザーとして餃子を売り歩き、5人の子どもを育てたことが社名の由来です。小ぶりで口溶けの良い、肉の旨みが溢れる餃子だと紹介されます。
鹿児島餃子協議会の会長を務めるまる千の女将が作る、桜島溶岩黒餃子も紹介されます。ゴリゴリとした溶岩のような食感が特徴で、鶏肉なども使われているといいます。
余談として、鹿児島には京都の餃子の王将から暖簾分けされた鹿児島餃子の王将があります。京セラを創業した稲盛さんの弟が暖簾分けを願い出て生まれた別会社の店で、天津飯には鹿児島の黒酢が使われているそうです。
熊本の名店 弐ノ弐と人吉の餃子
続いて熊本です。代表格として挙げられるのが餃子屋 弐ノ弐で、熊本で生まれ、瞬く間に福岡や沖縄、大阪などへ展開した人気店です。
薄皮で一口サイズ、豚肉や玉ねぎの甘さが印象的な餃子だといいます。店名の由来は、最初の店の住所が「二番二号」だったことにあります。
人吉市で人気なのが茶びんです。一度閉店したものの、クラウドファンディングをきっかけに復活しました。たっぷりのニラと牛肉の味が強く、小野寺さんは個人的に少し癖を感じると話します。
同じ人吉市の松龍軒は、平べったい棒形で、キャベツとニンニクがたっぷり入った餃子です。冷凍でお取り寄せすると、なぜか軽く焼いたものが送られてくるのが不思議だといいます。
大分と、餃子の古い歴史
大分では、まず大分市の餃子屋 華永が紹介されます。肉は牛肉のみを使い、九州では珍しくやや厚めの皮が特徴です。
小野寺さんが特に好きだというのがカボス餃子です。餃子から爽やかなカボスの香りがするうえ、通販で届くと緑色の網に餃子が入っていて、そのセンスの良さも魅力だと語ります。
最近知った店として、杵築ぎょうざ小春も挙げられます。大井町の阪急の催事で挨拶をした際、通販サイトはこれからと話していたそうで、小ぶりで薄皮の餃子に地元の食材を使い、いろいろなことにアグレッシブに挑戦している店だといいます。
そして大分といえば、現在日本で最も古い焼き餃子専門店とされる別府の湖月です。昭和22年創業で、営業日は金土日のみ、メニューは焼き餃子とビールのみという割り切った店です。
芸術的な薄皮とサクサクした食感が唯一無二だといいます。お取り寄せもできますが、作られているのは別府ではなく久留米です。
その由来には歴史があります。創業者の向瀧ミサオさんは久留米出身で、満州で餃子の作り方を学びました。帰郷した際、久留米が空襲で焼け野原だったため、やむなく別府で開業したといいます。
現在は久留米で、店主のいとこにあたる人が同じ名前の湖月を営み、そこで冷凍餃子を作っています。この流れが、次の福岡の話へとつながります。
福岡と久留米 鉄鍋餃子のルーツ
福岡の話は久留米から始まります。久留米市の湖月も薄皮の餃子で、冷凍餃子の製造には古い機械をメンテナンスしながら使っているそうです。あの薄皮はロストテクノロジーとも言えるほど難しいといいます。
同じ久留米には、鉄鍋餃子のぎょうざ屋五十番や、皮の厚めな一口餃子の店もあり、人気を集めています。
さらに、九州北部に暖簾分けされている宝雲亭も、創業の地は久留米です。小野寺さんは、久留米が意外にも餃子の町のルーツになっていると語ります。
福岡といえば鉄鍋餃子のイメージが強いですが、その代表格が本店鉄なべです。北九州市の八幡地区で昭和33年に創業しました。
八幡は製鉄が盛んな土地で、鉄に絡んだものを餃子にしたいと考えたのがきっかけです。銀座の喫茶店で鉄皿にスパゲッティを熱々で出すのを見てヒントを得て、京都の鋳物屋に鉄鍋を作ってもらい、一口餃子を熱々で提供したといいます。
八幡といえば製鉄所。鉄に絡んだものを、なんか餃子にやりたいと。銀座の喫茶店でスパゲッティを鉄の皿で熱々で出しているところからヒントを得まして、京都の鋳物屋さんに鉄鍋を作ってもらった。
これが人気となり、今では博多の祇園など各地に親戚などが出店しています。
一口餃子の宝雲亭は昭和24年に久留米で創業しました。現在は福岡・博多などに移転しており、ニンニクを使わず、玉ねぎや合い挽きの旨みが一口で味わえるのが人気だといいます。福岡各地や長崎、熊本にも広がっています。
佐賀と長崎 満州と中華街のルーツ
佐賀では、名前がストレートなぎょうざ屋が人気です。昭和27年創業で、こちらも満州にルーツがあるとホームページに記載されているといいます。古びた商店街の中で大変繁盛している店だそうです。
もう一つはぜんです。佐賀では父親が店を営み、息子2人が関東に出て溝の口と鷺沼に出店しています。皮から手打ちする一口餃子で、餡は豚肉と玉ねぎ。皮のおいしさで人気だといいます。
最後は長崎です。福岡で紹介した宝雲亭から派生した店があり、宝雲亭や雲龍亭が人気です。そこに台湾出身の老李なども加わり、中華街を中心に名店が並びます。
長崎といえば、ちゃんぽんのチェーン店リンガーハットの餃子もおいしいと小野寺さんは話します。中華街で鍛えられてきたことが、長崎の餃子のおいしさにつながっているのではないかといいます。
リンガーハットの柚子胡椒もおすすめだといいます。柚子胡椒は九州北部の大分や福岡、長崎などでよく使われ、餃子の味変の調味料として親しまれています。
餃子アイランド九州の構想
県ごとにたどってみると、それぞれ強い個性を持ち、古い歴史を持つ店や、時代とともに九州一帯へ派生していった時の流れが感じられます。
小野寺さんは、九州の餃子は簡単には語り尽くせないほど、文化的にも歴史的にも面白いものが多いと語ります。
焼き餃子協会としては、すでに宮崎の常吉浩之さん、鹿児島の片岡愛美さんが支部長として、地元の餃子文化を掘り起こし発信する活動をしているといいます。
これを九州全域に広げるため、毎月XのスペースでNaN「餃子アイランド九州公開会議」を配信する構想が語られました。次回は7月11日木曜日の18時からの開催予定です。
最後に小野寺さんは、九州の餃子ツアーへの参加を呼びかけて番組を締めくくります。
まとめ
中国との距離が近い九州には、県ごとに個性豊かな餃子文化が育まれてきました。宮崎・鹿児島の畜産王国の餃子から、久留米や満州、中華街をルーツとする歴史まで、その広がりと奥行きが紹介された回でした。
- 九州は中華ルーツの料理が多く、餃子も各地で独自に進化してきた
- 宮崎は餃子支出日本一で三大餃子の一つ、鹿児島は黒豚など畜産を生かした餃子が多い
- 別府の湖月や久留米、佐賀のぎょうざ屋など、満州や中華街をルーツに持つ店が多い
- 福岡の鉄鍋餃子は八幡の製鉄文化から生まれ、各地へ派生していった
- 焼き餃子協会は九州各地の餃子文化を掘り起こし、公開会議で発信を広げていく構想を持つ
