餃子王ではなく「伝道師」を名乗る理由
番組冒頭、パーソナリティの高島克英さんは、ゲストの小野寺力さんに「餃子王になるのか」と切り出しました。しかし答えは、意外なものでした。
餃子王になりません。
小野寺さんは、餃子を作る職人たちを「神々」に、自分を「伝道師」にたとえました。あくまで職人に仕える立場だといいます。
その餃子作っている職人たちを神々としたら、僕は伝道師であるっていう役割で。
僕にとって作ってる人たちが王なんですよね。僕は仕えている立場なので、王にはならないです。
肩書きの「餃子ジョッキー」も、音楽のDJになぞらえたものだと説明します。世界中の音楽から選んで届けるように、多様な餃子をアレンジしたりセレクトしたりする活動だといいます。
そして小野寺さんは、多くの人がこの多様性に気づいていないことこそが課題だと話します。北海道から沖縄まで、おいしい餃子を作る人がいて、お取り寄せもできる。けれど、その体験をしたことがない人が多いといいます。
調布・国領の名店「吉春」
調布FMでの収録ということで、話題はまず地元・調布の名店に及びました。国領駅から徒歩10分ほどの「吉春」というお店です。
注文を受けてから、旬の野菜を餡に練り込み、皮もその場で作って焼いたり茹でたりする、いわば「生々餃子」が食べられる店だといいます。
もうね、最近ちょっと有名になりすぎちゃったんで、もう今予約しないと入れないぐらいな人気店になっちゃってるんですけど。
小野寺さんが特に評価するのは、皮と野菜の旨味です。調布で取れた新鮮な野菜をそのまま生で包むため、野菜の旨味が他と段違いだといいます。
何がおいしいって、皮がとにかく美味しいし、調布で取れた野菜とかをそのまま新鮮生で包んでるんで、野菜の旨味がすごい。他と段違いで美味しいんですよね。
カウンターしかない小さな店ですが、季節の野菜の餃子が8種類あり、そのすべてを食べるだけでも幸せな気持ちになると話します。定番のピーマンの水餃子などは冷凍でお取り寄せもできるそうです。
100人が集まって気づいた「餃子への無関心」
餃子に関わるきっかけは、友人が宇都宮の「まさし」から餃子を持ち帰り、みんなで焼いて食べようとなった集まりでした。そこに100人ほどが集まったといいます。
集客力の高さに驚く一方、餃子が足りなくなって取り寄せを探したところ、想像以上の種類があることを知りました。
その時調べただけで2000種類ぐらいあって、あ、これを僕は全然知らなかったんだなっていうことがまずきっかけで。
イベントを重ねるなかで、小野寺さんはあることに気づきます。みんな餃子は「好き」だけれど、餃子そのものには「関心」を持っていない、ということでした。
餃子好きやって言うんだけども、餃子に関心を持ってないんだなということに気づいて。
ラーメンは店ごとに味が違うと思われているのに、餃子は「どこも同じ味」という固定観念が強い。スーパーの餃子と店の餃子が同じレベルだと思われがちだといいます。小野寺さんは、職人たちの愛がまだ届いていないと感じ、2013年ごろから届ける仕事に使命感を持つようになりました。
地域の食材が生む餃子の多様性
餃子はシンプルな料理だからこそ、皮に何を包むかで無限に広がると小野寺さんは言います。ご当地の食材を包むことで、地域ごとの多様性が生まれるのです。
すごくこう、なだらかなグラデーションのある餃子だな、食文化だなと思いますね。
ここで高島さんは、打ち合わせなしに自身の母の餃子を持ち出しました。具を先に炒めて味付けしてしまうのが特徴で、具だけでご飯にかけられるほどしっかり味がついているといいます。
理由を母に聞くと「生肉を手で扱うのが嫌だった」からだったそうです。高島さんはそれを「邪道な理由」と笑いつつ、それでも思い出に残るおいしい餃子だと振り返りました。
餃子って多分あの好みもそうだけど、家庭の味もお店の味もいろんなのがあるっていうのが楽しくて。みんな美味しいじゃないですか、大体ね。
みんな美味しいし、みんな好きなんですよ。
変わった餃子の例として、北海道には海産物を入れるものが多いといいます。タコやホタテを入れたり、皮に青のりを練り込んで、まるでたこ焼きのような餃子もあるそうです。
見た目は変わらなくても食べると味がしっかり違う。だからこそ食べ比べをしてほしいと小野寺さんは話します。地元の豚肉や野菜を使うことが多く、餃子から地域の特産品に気づくこともあるといいます。四国・香川では、香川の小麦粉とアスパラを使った餃子もあるそうです。
最初は餃子に旅してきてもらって、で、気に入ったものがあったら自分が旅に行くっていう。
宮崎の餃子については、豚肉の名産地ゆえに残るラードで焼く文化が今も生きていると紹介しました。焼いている最中から香りがよく、手作りの皮を使う老舗もあるといいます。
冷凍餃子をおいしく焼く三要素
番組では、スペチャオ餃子バンドの「酒と泪と肉汁と」を紹介したのち、話題はお取り寄せ餃子の焼き方に移りました。
お取り寄せの餃子は基本的に冷凍です。小野寺さんは、多くの人がやりがちな「解凍してから焼く」を明確に否定します。
冷凍餃子は冷凍したままフライパンに置くっていうのが鉄則でして。
おいしい焼き餃子には三要素があると小野寺さんは言います。モチモチな皮、ジューシーな肉、パリパリの焼き目です。一度解凍するとこの三要素が失われてしまうのだといいます。
水ではなくお湯を使う理由は、フライパンの温度を一定に保つためです。温めたフライパンを冷ますと、沸騰までの時間がかかってしまうといいます。この点は高島さんも「あまり知られていないのでは」と驚いていました。
水がなくなった瞬間に焼き目がすぐシュンってできちゃうので、もう満遍なく綺麗に焼き水がなくなるようにフライパンをちょっとずつ動かしながら、最終最後焼き上げていただくと、パリパリの焼き目ができるんですね。
最後に焼き目をお皿に返すと、その瞬間にみんなが盛り上がる。小野寺さんは、その「わーっ」という瞬間が見たくて餃子を焼き続けていると話します。
まずはスーパーの水も油も不要なタイプで練習し、自信がついたら水と油が必要なお取り寄せ餃子に挑戦するのがおすすめだといいます。フライパンにこだわるのは温度管理に慣れてからで十分で、安いフライパンでも温度管理さえできれば大丈夫だと話しました。
ちなみに焼き方の講座では、男女で質問が分かれるそうです。女性は工程やお湯の量を聞き、男性はまず「どんなフライパンを使っているか」を聞くといい、高島さん自身も道具の質問をして苦笑する場面がありました。
職人の愛を届ける係として
小野寺さんは、自分は餃子そのものが好きというより、職人たちの愛を届ける「係」だと繰り返し語ります。
本当に僕はね、職人たちの愛を届ける係なので、いかに皆さんの愛が届いてないかの課題をすぐ克服しようと頑張ってことですね。
「焼き餃子協会」という名前にも理由があります。水餃子は中国のもの、焼き餃子は日本の食文化だということを、きちんと伝えたいという思いからだといいます。
焼き餃子ってのは日本の食文化なんだってことを今あんまり意識されてないことが多くて。
最近気になっているのは、スーパーで手軽に買える「生餃子」の台頭です。従来スーパーには火を通したものが多かったなか、お取り寄せと同じような生餃子が身近になってきたといいます。
番組の終わりに、小野寺さんは自身のポッドキャスト「聴く餃子」を紹介しました。焼き方に迷った人へは、焼き餃子協会のホームページに焼き方を漫画にして載せていると案内しています。
ちょっと分かんなかったなと思った方は、焼き餃子協会のホームページ見ていただくと、その餃子焼き方漫画にして置いてありますので、それで見ていただいて参考にしていただければと。
まとめ
餃子は「どこも同じ味」ではなく、地域の食材や作り方によって大きく変わる多様な食文化です。小野寺さんは職人の愛を届ける伝道師として、その魅力と正しい焼き方を伝え続けています。
- 小野寺さんは餃子王ではなく、職人を「王」とする伝道師・餃子ジョッキーを名乗る
- 餃子は地域の食材を包むことで多様性が生まれ、食べ比べや旅の楽しみにつながる
- 冷凍餃子は解凍せずそのまま焼き、水ではなくお湯を使うのがおいしく焼くコツ
- おいしい焼き餃子の三要素はモチモチの皮・ジューシーな肉・パリパリの焼き目
- 「焼き餃子は日本の食文化」であり、職人の愛を届けることが活動の軸になっている

