3年目の義務餃育、授業スタイルを変えた理由
小野寺さんは、餃子を通して国語も算数も理科も社会も学べるのではないかと考え、高鍋町の小学校で年に1度の授業を3年間続けてきました。
今年は高鍋西小の5年生と東小の3年生を対象に授業を行ったといいます。
これまでは、スライドを見せながら小野寺さんが話し、生徒が答える一般的なスタイルでした。内容も、高鍋町の餃子にどんな価値があるのか、そのバリューチェーンを子ども向けに噛み砕いて伝えるものだったと振り返ります。
家庭の仕事がどんな形であれ、餃子の経済圏のどこかに関わっているはず。だから餃子は自分事なのだ、と伝えたい狙いがあったそうです。
ただ、一方通行になりがちな授業スタイルへの物足りなさもあり、3年目は「餃子の食材を考えてみよう」というテーマで、ゲーム形式に切り替えました。
48種類の食材カードで作るオリジナルゲーム
小野寺さんが用意したのは、完全オリジナルの48種類の食材カードです。
野菜はキャベツ、白菜、ニラといった定番に加え、ほうれん草やクワイも入れたといいます。
肉は定番の豚肉のほか、鶏肉、牛肉、さらにサバや卵も「お肉」として並べました。大豆は大豆ミートという概念があるため、野菜でもあり肉でもあるトリッキーな存在として加えたそうです。
調味料も、醤油や塩、ごま油といった定番のほか、味噌や蜂蜜、チーズまで用意しました。
各カードには、野菜・肉・調味料のアイコンに加え、甘味や香り、酸味といった味の情報アイコンも付けられています。
授業では生徒を6チームに分け、チームごとにカードをカルタのように広げて眺めてもらいました。
定番餃子を当てるクイズから、オリジナル餃子づくりへ
最初のお題は「高鍋餃子はどんな食材で作られているか」というクイズです。
そのままでは難しいため、ヒントが与えられました。皮が1つ、メインの野菜が1つ、メインの肉が1つ、香りのする脇役の野菜が3つ、しょっぱい調味料と甘い調味料が1つずつ、全部で8種類という具合です。
子どもたちが考えたあと、小麦粉、キャベツ、豚肉と1つずつ答え合わせをし、正解1つで1点というルールにしました。
高鍋餃子や一本寿さんの鶏餃子といった定番でクイズをしたあと、いよいよオリジナル餃子づくりへと移ります。
定番の理解を土台に、他のチームが使わない食材で新しい餃子を作るというテーマです。
ただ適当に並べても面白くないため、食材は10種類使うこと、どの食材をなぜ入れたのか、そして餃子の名前を紙に書いて発表することが条件でした。
どうしてこの食材を入れたのか。漬物とクワイがあったら、これは食感が楽しい餃子なんですと話ができるかしら、なんて思ったりですね。
肉を使わず皮も大根にして全部野菜の餃子、といった発想も想像していたそうですが、実際にそうした餃子が子どもたちから出てきたといいます。
大人しい子も叫ぶほどの熱狂
10人でカードをワイワイと囲み、どれを入れるか、10種類に絞るために何を省くかを相談する。その様子は本当に楽しそうだったと小野寺さんは振り返ります。
最後は各チームが発表し、校長先生が「どれが一番美味しそうか」を選ぶなどして、美味しそうなものや面白いものに点を与えていきました。優勝チームには小野寺さんのステッカーが贈られたそうです。
普段は大人しい子供もキャーキャー言いながら楽しんでるのに驚きました、なんてね。先生も大好評でした。
子どもたちからは「このゲームまた来週もやりたい」という声も上がり、小野寺さんがいない日も先生がリードして続けてくれたといいます。
着想のもとになった「探究学舎」
この授業スタイルには、ある学びのヒントがありました。それが「探究学舎」という教室です。
小野寺さんは子どもと一緒にこの授業を受けており、ゲームを取り入れながら好奇心を出発点にする姿勢に感動したといいます。授業を受けて帰ると、子どもがもっと知りたいと言ってくる。そんな教室だと語ります。
同じような学びを義務餃育でもやってみたいという思いから、「餃子はどんなものでできているんだろう」というゲームを作ったそうです。
餃子が探究の入り口になる理由
餃子は食べるものであると同時に、地域の食材や食文化が反映され、食材の産地といった地理まで学べる。小野寺さんは餃子を探究の入り口としてとても良い題材だと考えています。
定番の組み合わせがありながら、具材を1つ変えるだけで新しい餃子になり、創造性も発揮できる。世界中にある餃子の親戚のような料理につながる可能性もあると話します。
今回はあえてクワイのような、小学生には馴染みの薄い食材も入れました。「クワイって何?」というところから、餃子の食材の多様性に気づいてもらう狙いです。
一方通行の授業では得られない、子どもたち自身が話し合って考える瞬間こそが学びそのものだと小野寺さんは考えています。
全国の町へ広げたいフォーマット
3年間の実践を経て、小野寺さんはこの仕組みを全国に広げたいと考えています。
「うちの地域の特産を生かした餃子を考えよう」というワークショップは、大人でも楽しめるといいます。
そうすると、その土地の食材が教材に変わっていくっていう風に考えております。
実際に餃子を作るとなると衛生管理や調理、洗い物など大変なことも多い。まずはどんな餃子が作れるかを考えて会話をする、そこからイマジネーションを広げる授業なら全国各地でできるのではないかと語ります。
今回の授業を支えたのは、ふるさと納税方式のガバメントクラウドファンディングです。今年は200パーセント近い支援が集まったといいます。
まとめ
3年目を迎えた高鍋町の義務餃育は、食材カードを使ったゲーム形式へと進化し、子どもたちが叫ぶほどの熱狂を生みました。餃子を入り口に食材や地域、世界へと関心を広げる授業は、全国の町にも応用できるフォーマットとして提示されています。
- 今年の義務餃育は「餃子の食材を考えてみよう」をテーマに、48種類の食材カードを使ったゲーム形式で実施された
- 定番餃子を当てるクイズからオリジナル餃子づくりへと進み、発想を広げる授業が狙い通りに機能した
- 着想のもとには、好奇心を出発点にする「探究学舎」の姿勢があった
- 餃子は食材・地域・世界へと関心が広がる探究学習の題材になりうる
- 「特産を生かした餃子を考える」ワークショップは、地域や大人にも広げられるフォーマットとして提案されている




