そもそも酪農家って、どんな仕事をしているの?
今週は川上牧場に、中学生の女の子2人が水・木・金の職場体験に来ています。毎年恒例の回として、まずは学校から出された「職場へのインタビュー」を進めていきます。
事業所名は川上牧場。仕事の内容はとても多岐にわたります。
牛の乳搾りやエサやり、掃除に加えて、牛の種付けなど赤ちゃんを産む準備もあります。それだけではありません。
川上牧場は消費者活動にも力を入れていて、牛乳や酪農の魅力をたくさんの人に知ってもらう発信もしています。
さらに島根県などいろんな組織に所属していて、日本や島根の酪農の未来を話し合う会議にも出席しています。
ただ牛を飼うだけではないことを、いろいろやってますね。
朝5時起き・365日、酪農家の1日と「休みの買い方」
仕事の時間も気になるところ。川上さんの1日は、朝5時ごろに起きるところから始まります。
そこからエサやり、搾乳、牛のベッドの掃除をして、だいたい8時ごろに一区切り。
8時から12時ごろまでは、籾殻を取りに行ったり、堆肥を配達したり、別の牧場へ種付けに行ったりと、いろんな作業が続きます。酪農体験の受け入れや企業とのミーティングもこの時間です。
12時か1時ごろから15時まではお昼休憩。実は川上さんは、朝5時から休憩まで飲み物だけで、何も食べていないそうです。
私はね、そういう習慣にしてるからだけど、食べた方がいいよ。絶対食べた方がいいですけど。
15時からは夕方の乳搾り・エサやり・掃除。終わるのは夜7時ごろで、その後ご飯やお風呂をすませて、また翌朝5時に起きる。これを365日やっています。
気になるのが休日です。酪農家は牛の世話を止められないので、休むときは「酪農ヘルパー」に頼みます。
川上牧場では1人1万5000円で、2人来てもらうため1日休むのに3万円を払っています。1週間旅行に行こうとすると、21万円ほどかかる計算です。
牧場物語がきっかけ、そして「酪農家に資格はいらない」
この仕事を選んだ理由は、小学2年生のときにさかのぼります。お年玉で初めて買ったゲームボーイのソフトが「牧場物語」でした。
ソフトが1本しかなかったので、それをひたすらやり続けたそうです。もともと田舎育ちで、犬や猫、鶏やアヒル、鯉や金魚などたくさんの動物に囲まれていました。
そんな環境から動物に関わる仕事がしたいと思い、図書館で酪農ヘルパーや酪農という仕事を知って、酪農家を目指すようになりました。
続いて必要な資格の話。ここが意外なポイントでした。
酪農家になるための資格ってないんです。ゼロです。だからすぐなれます。
医師免許や教員免許のような免許はいらず、誰でもなれる仕事だと話します。ただし、持っていると仕事がやりやすくなる資格はたくさんあります。
たとえば牛の赤ちゃんを作るための家畜人工授精師免許は国家資格です。寝床掃除で使う小型機械には小型車両免許、重い荷物を運ぶクレーンには小型クレーンや玉掛けの資格が必要になります。
ほかにもフォークリフト、修理のためのガス溶接やアーク溶接、大型特殊や牽引の免許まで持っているそうです。
楽しいのは子牛が生まれた瞬間、辛いのは「飲んでもらえない」とき
仕事が楽しいときは、はっきりしています。子牛が生まれたときです。
赤ちゃんが生まれるまでには時間がかかり、優秀な父牛と母牛を掛け合わせて、どんな子牛を作るかを自分で選べるのが酪農の面白さだといいます。
仕事が楽しい時は子牛が生まれた時です。子牛が生まれた時が一番最高に楽しいですね。
一方で辛いのは、儲からないときと、一生懸命搾った牛乳を飲んでもらえなかったときだそうです。
コロナ禍では学校給食の牛乳が飲まれなくなり、牛乳が大量に余りました。バターや脱脂粉乳に加工しても倉庫がいっぱいになり、捨てるしかないところまで追い込まれたといいます。
さらにロシアやウクライナの戦争の影響でエサの値段も高騰。作っても飲まれず儲からず、「何やってんだろうな」と思った時期があったと振り返ります。
この仕事に向いている人、そして出雲で暮らす良さ
どんな人に向いているかを聞かれ、川上さんはまず「牛が好きな人」を挙げます。
そして体が健康なことも大切だといいます。ただし、これは体が不自由な人を否定するものではありません。
事故で片腕無くなった人も見たことあるし、足が無くなっちゃって、それでも乳搾りしてる人を超僕は見たことがある。
体が動かせないと、牛にエサをやりたいときにやれないことも起きてしまう。だからこそ「健康が第一」で、それはどの仕事でも同じだと話します。
出雲の魅力についても語ります。川上さんはもともと鳥取県出身で、結婚を機に婿として出雲に来ました。
海にも山にも行けて、大きなショッピングモールもあり、雪も降らない。外から来た人の目線で、とても過ごしやすい土地だといいます。
出雲で働く良さを一言で聞かれると、迷いながらも「雪が降らないこと」を挙げていました。
給料20万円から、お金はどんどん出ていく
学校のインタビューが終わると、ここからが毎年恒例の本題です。将来のお金について、紙に書きながら一緒に考えていきます。
まず「毎月いくら欲しいか」を聞くと、100万円という夢の答えも。そこで川上さんは現実の数字を示します。
22歳の平均月収は約17万〜24万円。100万円もらうには、その4人分の働きを1人で見せる必要があると説明します。
22歳の時に就職しましたって同級生がいっぱいいるけど、その4人分を一人で出せるぞっていう仕事の量を出せたら、それぐらいもらえます。
島根・出雲だと平均より1〜2割少なく、月20万円ほど。そこを出発点に、生活費を1つずつ引いていきます。
そのまま計算を進めると、20万円がどんどん減っていきました。
- 家賃は出雲市の古いアパートでも2.8万円、きれいだと5〜6万円
- 食費は1食1000円×3食×30日で9万円
- 水道光熱費は1人暮らしの月平均で約1万2816円
- スマホ代は動画も見て、iPhoneを分割で買うと月1万円ほど
- 中古の軽自動車は平均100万円前後、ガソリン代は月5000円ほど
家賃・食費・光熱費・スマホ・服・車を引くと、手元に残るのはわずか。さらに遊びに月2万円かけると、貯金できるのは7000円や1万5000円ほどになってしまいました。
結婚に25年!? 「支出を減らし、収入を増やす」で夢が近づく
ここから川上さんは、人生の大きな出費も並べていきます。子どもたちの表情はどんどん暗くなっていきました。
結婚費用の全国平均はゼクシィの調査で、2023年は454万円。出産費用は正常分娩の平均で約48万2000円。一軒家は建売で3600万円、注文住宅だと4900万円かかります。
さらに子ども1人を大学卒業まで育てるには、教育費と養育費を合わせて約2000万〜3000万円。月7000円の貯金だと、結婚費用だけで25年かかる計算になります。
ここからが川上さんの本題です。まずは支出を見直します。
遊びを1万円に減らし、服はメルカリやリメイクを活用する。ご飯もお弁当600円ではなくおにぎりにする。実家暮らしなら家賃も光熱費もかからない。こうして削っていくと、貯金がぐんと増えていきました。
貯金が3万5000円に増えれば、結婚費用は約10年に短縮。夫婦2人で割れば5年になります。子どもの5万6000円まで削れた場合は、3〜4年で結婚式が挙げられる計算になりました。
支出を抑えるってのがまず大事ですね。出ていくお金を少なくすると、貯まっていくお金が大きくなっていきます。
次のステップは収入を増やすこと。子どもたちからは「副業」「給料の高い仕事」という言葉がすぐに出てきました。
では、そのために中学生の今すべきことは何か。答えは「勉強」でした。大学卒業や資格の有無で給料は変わり、資格を持つほど優遇されると話します。
副業のアイデアとして、動画配信や料理配信も挙がりました。サッカーが得意ならプレイ動画、料理が得意なら料理配信や作りだめの販売など、自分の得意を活かせる道もあります。
最後に川上さんは、今から少しずつ準備することの大切さを伝えます。お小遣いの何割かを貯金する習慣や、苦手なことを1日5分でも続けることを勧めました。
まとめ
酪農家の仕事の中身から、給料20万円で生きるお金のシミュレーションまで、中学生と一緒に「働くこと」と「お金」を考えた回でした。支出を減らし収入を増やすという発想と、今から準備する習慣の大切さが、具体的な数字とともに伝わってきます。
- 酪農家は乳搾りから種付け、消費者活動や会議まで幅広く担い、朝5時起きで365日働く仕事
- 酪農家に必須の資格はないが、人工授精師免許や各種機械の資格を持つと仕事がやりやすくなる
- 楽しいのは子牛が生まれた瞬間、辛いのはコロナ禍のように牛乳を飲んでもらえないとき
- 給料20万円からは家賃・食費・光熱費などでどんどん減り、貯金はわずかしか残らない
- 支出を減らし収入を増やす、そして今から貯金や勉強の習慣をつけることで将来の選択肢が広がる

