なぜ今、経営顧問がテーマになるのか
前回のチームビルディング回を受けて、宇尾野さんは今回のテーマを「経営顧問との向き合い方」と紹介します。チームは生き物で決まった答えがないという前回の話の延長として、顧問もチームを形づくる要素の一つとして扱われています。
池原さんが「経営顧問は最近プチブームなのか」と尋ねると、宇尾野さんは顧問紹介やマッチングのサービスが世の中で増えていると答えます。外部から支援する会社や個人も増え、顧問を活用したい企業が宇尾野さんの周りでも増えてきたといいます。
ただ、宇尾野さんが話を聞くと、顧問の活用には明暗がはっきり分かれているそうです。契約したのに思ったように機能しないケースもあれば、顧問が入ったことで会社が本当に変わったケースもあります。
よくよく聞くと、契約というか、一緒に握手はしたんだけど、なかなか機能してくれない、思った通りになってないとか。
逆にすごいこの人が入ってきてくれて、本当に会社変わったみたいな、明暗がはっきりしていたりもする。
契約したものの、期待した通りに動いてもらえていない
顧問が入ったことで、本当に会社が変わった
顧問は社外取締役やコンサルと何が違う?
池原さんはまず、顧問が社外取締役やコンサル、メンターとどう違うのかを整理しようと提案します。社外取締役は会社法などで役割が決められている一方、顧問はアドバイス、メンタリング、コーチングなど、さまざまな役割を担う存在として話が進みます。
宇尾野さんは、顧問の役割で一番大きいのは外部から情報を入れてもらうことだと話します。経営の知見としての情報もあれば、人の情報としての人脈もあり、場合によってはそのネットワークから資本が入ってくることもあります。
さらに宇尾野さんは、顧問が自社のサポートに入っていること自体が、会社の権威性 ── 外部の実績ある人物が関わっていることで、会社や事業の信頼性・正当性が高く見える効果を指しますや正当性を示す手段になるとも付け加えます。
池原さんはこの話を受けて、アドバイザーやコンサル、メンターが対話を通したアイデア提供や壁打ちの色合いが強いのに対し、顧問には人脈の提供や「ドアノック」のサポートといった具体的な動きが期待されるのではないかと整理します。宇尾野さんも、経営顧問へのオーダーとしてはその整理で合っていると応じています。
対話を通したアイデアの提供や、壁打ちの要素が強い
情報・人脈・資本を外から持ち込み、ドアノックやスポンサー的な動き、権威性も期待される
顧問とはどこで出会うのか
池原さんは、スタートアップが顧問を雇うのは大きな決断であり、そもそもどこで顧問候補と出会うのかと問いかけます。宇尾野さんは、冒頭で挙げたような顧問紹介サービスを使うケースもあると答えます。
宇尾野さんの会社にも、顧問と呼んでいる人が数人いるそうです。その人たちとは、人からの紹介や、たまたま出会った人と長く関係を築いた結果として顧問をお願いする形になったといいます。
最初から顧問ありきでお会いした人もいれば、関係が構築されていく過程で顧問として一緒にやりませんかっていうお願いをした方もいる。
池原さんは、何社ものベンチャーやスタートアップで顧問を務める人をよく見かけると話します。宇尾野さんは、そうした人には「この人に顧問になってほしい」という依頼が集中しやすく、それで生計を立てているケースもあると説明します。
一方で宇尾野さんは、顧問の兼任が過剰になると「ここもここもそこもやってるんですか?」と懸念を持たれるのも自然だと話します。池原さんも、質が本当に担保できるのかという不安はありそうだと応じています。
良い顧問を見分ける基準は「自社に翻訳できるか」
池原さんは、市場拡大や大企業との接点を目指して顧問を探す場合、良い顧問をどう見分ければいいのかと尋ねます。宇尾野さんは「私調べ」と前置きし、恐る恐るといった様子で答え始めます。
宇尾野さんによれば、顧問の前提は会社の成長や経営者のレベルアップに活用されることです。そのため、会社や経営者に本当にフィットしたアドバイスや、本当に必要な情報を提供できるかどうかが大事だといいます。
逆に宇尾野さんがフィットしないと感じるのは、顧問のアドバイスが一般論に寄っている場面です。その人が語るとそれっぽく聞こえても、自社に本当に合っているのかわからない話では、顧問として機能しにくいと考えられています。
自社にそのまま活用できるかどうかだったり、自社に翻訳できないものを渡す人っていうのはちょっと危ないかなっていうふうには思いますね。
池原さんもこの考えに同意し、正論や大企業ならできる話ではなく、自社の業界特性や規模、予算、限られたリソースの中でどうやればできるかを一緒に噛み砕いて考えてくれる顧問にいてほしいと話します。
外部助言ネットワークがCEOの成果を左右する
宇尾野さんは、CEOやCXOがアドバイスを得られるネットワークの大切さにも触れます。海外の研究として、良質な外部からの助言ネットワークを持つCEOのほうが良い成果を出すという話があると紹介しています。
宇尾野さんはこれを番組のテーマである料理になぞらえます。自社の経営チームだけでは見いだせないものを、顧問という外からの調味料が「味変」させ、会社が変容するきっかけになるという考え方です。
良質な外部からの助言ネットワークをちゃんと持っているCEOの方がいい成果が出ると。言われてみれば当然ですよね。
池原さんは、経営陣との相性やスタイルの一致を完全に求める必要はないとしつつ、「どうすれば自社でできるか」を話し合える関係が土台として大事かもしれないと話します。
宇尾野さんはさらに、顧問選びの前に「自分たちに足りないのはここだ」「こういうものを増やしたい」という選定軸を持つことを勧めます。その軸が先にあれば、「それを持っているのはあの人だ」と、顧問候補をリストアップすることにつながるといいます。
足りないものを特定
自社に足りないところや、増やしたいものを明確にする
持っている人を考える
それを持っている人は誰かを考える
候補をリストアップ
顧問の可能性がある人を挙げていく
最初の契約はなぜ3ヶ月がおすすめなのか
池原さんは顧問の実務面として、年間契約で月額なのか、スポットなのかを尋ねます。宇尾野さんは、スポットかどうか、テーマ、そして人によって決まると答えます。
宇尾野さんが関わったケースでは半年契約もあれば、3ヶ月から、まず1ヶ月一緒にやってみるという形もあり、幅があるそうです。そのうえで宇尾野さんは、初期の契約は3ヶ月を勧めているといいます。
宇尾野さんが3ヶ月を勧める理由は、1ヶ月ではお互いのことがわからないからです。最初の1ヶ月はむしろお互いを理解する期間になり、残りの期間でテーマに対するプランや、一緒に広げていく営業リストのようなものを見いだせれば、契約を更新するという流れになります。
顧問の方にとっても、自分たちの会社と働きやすいかっていうことを見極めていただいた方がお互い幸せなので、その辺をなんか3ヶ月ぐらいでお互い見守るみたいなのはできるんじゃないかなと思いますね。
「いい感じで顧問してください」がうまくいかない理由
池原さんは、契約期間の話を聞きながら、顧問に何を期待するのかをはっきり伝えないとうまくいかないと気づきます。
(顧問に)何を期待するのかっていうところを結構はっきり言わないと、良い感じで顧問してくださいだと絶対うまくいかないなって今思ったんですけれども。
宇尾野さんは、顧問への期待が「会社に対するバッジ」で、名前だけ貸してほしいというケースもあり得ると話します。その場合でも、名刺を配ってくれたか、自社を紹介してくれたかを確認する、という話になるといいます。
池原さんは、役割と何をしてほしいかを明確にし、お互い定期的にモニタリングしながら対等な関係で一緒に走るイメージだと整理します。
ただ宇尾野さんは、顧問は業界での影響力があったり、年齢や視座が経営者より2段3段上だったりするため、言いなりになりがちだとも指摘します。「時間を取っていただいてありがとうございます」から始まる関係で、「3ヶ月以内にこれをやってください」と仕切れるかというと、池原さんも「それちょっと自信ないですよね」と応じます。
結構難易度高いことを今優しく言ってる感じなので。
失敗例:評判の悪い顧問と、多すぎる船頭
池原さんは、良い顧問の話へのカウンターとして、顧問を雇ってうまくいかなかった例を尋ねます。宇尾野さんが最初に挙げたのは「この人が顧問で大丈夫?」というケースです。
1つ目の失敗例は、新しい業界の開拓や権威付けを期待して迎えた顧問が、実はその業界で評判が悪かったり、経歴が違っていたりするケースです。会社にとってプラスになるはずの印象づくりが逆に作用し、しかもお願いした手前、外せないという状況に陥るといいます。
よくその業界知ってる人からすると、「リスブランディングだよ」みたいな話を相談を受けて、どういうふうにこの人との関係を解消するか。
池原さんは、依頼する前に周りに聞いてみることが失敗を防ぐ第一歩かもしれないと話します。宇尾野さんは、信用調査まではかけづらくても、名前を特定せずに業界の人にライトに聞いてみることはやってもよいかもしれないと応じています。
2つ目の失敗例は、業界向け営業、大手企業向け営業、営業戦略づくりなど、分野ごとに顧問を揃えて周りを固めすぎるケースです。顧問がそれぞれ違うことを言い、経営者が何をすればよかったのか迷ってしまうといいます。
宇尾野さんによれば、顧問たちはそれぞれ権威や実力を持っているため、「この人の意見を飲まずにこの選択は取れない」というデッドロック ── 複数の要素が互いに相手を待つなどして身動きが取れなくなる状態を指す言葉。ここでは顧問同士の意見が割れて経営判断が止まる状況のたとえですに陥る構図が意外に多いそうです。池原さんは、顧問への忖度が生まれてしまうのだと受け止めています。
業界での評判が悪く、ブランドを損なう。お願いした手前、外せない
船頭が多くなって意見が割れ、忖度から判断がデッドロックになる
取り入れるかは本人の選択、顧問もコントロールを手放す
池原さんは、メンターの世界でも同じことが言えると話します。アドバイスを取り入れるかどうかは本人の選択であり、受け手が意志を強く持つ必要があるということです。
顧問側の方もせっかくいいこと言ってやったのにってなると、やっぱりちょっとコントロールが発生してしまうので、そのコントロールをどう手放すかっていうのはちょっと大事な観点かもしれないですね。
宇尾野さんも、期待値や目的の共有に加えて、アドバイスはもらいつつ「この件はこういうふうにやろうと思っています」と伝え、それを顧問が認めてくれるやりとりを定期的にしておくことが大事だと話します。そうした関係なら顧問も気持ちよく働け、その才能をより活用できると考えられています。
顧問から借りられるのはレシピであって厨房ではない
池原さんは、宇尾野さんが用意したメモの中で特に気に入った言葉として、「顧問から借りられるものはレシピであって厨房ではない」を紹介します。番組名の「おいしい組織」にかけた表現だと宇尾野さんは笑います。
宇尾野さんによれば、顧問を「レシピの提供者」として捉えると、関係の中の力関係がバランスよく保たれ、顧問に何を期待するかも明確になるといいます。助言をそのまま適用するのではなく、自社で料理するという姿勢が、ここまでの失敗例への処方箋にもなっています。
池原さんは、「誰が顧問か」に加えて「どんな関係か」が次のステップとして育てていくものだと話します。宇尾野さんは、レシピ通りに作っても味は変わるとしつつ、新しい手順や作り方を外から取り入れること自体が経営者やリーダーにとって大事な工程であり、顧問を活用する機会は今とても手に取りやすくなっていると勧めています。
顧問に何かを作ってもらう、言われた通りにする存在として迎える
顧問はレシピの提供者。作るかどうか、どう作るかは自社が決める
顧問を名乗れるのはどんな人?経験資本という考え方
残りの時間で池原さんは視点を変え、顧問になりたい側の胸の内に話を向けます。どんな実績がある人なら経営顧問を名乗れるのか、という問いです。
宇尾野さんは、一般的な基準はないとしたうえで、「経営者が顧問を雇う理由を達成できる人」だと答えます。豊かな実績や示唆に富んだコミュニケーション、バッジとしての肩書きなど、経営者の役に立てる武器をすでに持つ人には、顧問としてのチャンスが広がっているといいます。
池原さんは、ここで経験資本 ── どれだけ豊かで深い経験を積んだかを、人生の後半で生かせる資本として捉える考え方。番組では、シニア以降に役立つ資産として紹介されていますという言葉を紹介します。40代、50代までにどれだけ多様な経験を積んだかが、60代になって顧問を名乗れるかどうかを左右する、大きな資産になるという考え方です。
宇尾野さんは、経験資本に加えて状況に合わせてアジャストできる能力があれば、どの会社でもその資本を生かせると話します。そして、どこにでも適用できる力の反対が「老害」であり、両者は紙一重だと指摘しています。
多分この経験資本が豊かであることによる、さっきのどこにでも適用できる力の反対が多分老害みたいな話だと思うんで。
池原さんは、「老害になっていないか、私たち」というテーマでもう1話語りたいと笑い、最後は顧問と老害の違いに行き着いたとまとめます。宇尾野さんも、顧問のベストプラクティスや、顧問が老害にならないための視点は、今後どこかで扱いたいと話して回を締めくくっています。
まとめ
今回の回では、経営顧問を情報・人脈・資本、そして権威性を外から持ち込む存在として捉えつつ、その力を生かせるかどうかは、選び方と関係づくり次第だということが語られました。
- 良い顧問の基準は、一般論ではなく自社に翻訳できるアドバイスをくれるかどうか
- 初期契約は3ヶ月がおすすめで、最初の1ヶ月はお互いを知る期間にする
- 「いい感じで顧問してください」ではなく、役割と期待を明確にして定期的に確認する
- 評判の確認不足や、顧問を固めすぎることによるデッドロックが代表的な失敗例
- 顧問から借りられるのはレシピであって厨房ではない。取り入れるかどうかは経営者が決める






