ランキング上位と、ポッドキャストから届いた応募
「おいしい組織」は、ポッドキャストのマネジメントランキングで一時1位になり、その後も1位と2位をキープすることが多くなっているそうです。池原さんは、先週見たときも1位だったと話します。
たまに3位とか2位になったりするとちょっと悲しいんですけど、でもこの1位2位の、この辺にずっといるのはなんか嬉しいですね。
番組の広がりは、2人の仕事の場面にも表れています。池原さんは、初めて商談したお客様から「ポッドキャスト聞いてます」と言われて驚いたといいます。
宇尾野さんの事業人には、為末さんがゲストの回を聞いて応募してきた人もいたそうです。思い込みをテーマにした回を聞いて自分なりに考え、応募に至ったという経緯で、池原さんは「ポッドキャストから採用までつながった」と喜んでいます。
番組は100回に近づいており、今回はリスナーから届いたお便りをテーマにする回です。
「チームの半分が入社1年未満」というお便り
今回のお便りは、入社半年の新メンバーが馴染めず、既存メンバーとの温度差に悩んでいるという内容です。池原さんが読み上げました。
中途入社が続き、気がつけばチームの半分が入社1年未満に。阿吽の呼吸が通じず、会議も表面的な発言ばかりで本音が出てないように感じる。Slackでの業務連絡は活発なのに、雑談チャンネルは誰も書き込まない。バーベキューや交流会もやってはみたけれど、単発で盛り上がって終わりになってしまっている。
池原さんは読み上げながら、交流会が「打ち上げ花火」のようになり、翌日からまた静かになってしまう様子を想像しています。宇尾野さんは、チームビルディングという言葉は昔からあるものの、このお便りの状況は深刻で難しいシチュエーションだと受け止めました。
番組ではこれまであまりチームビルディングを扱ってこなかったため、今回はそこに焦点を当てます。池原さんは、ミッションやビジョンを共有して集まった会社でも、出来上がったコミュニティに新しい人が入るのは簡単ではないと話します。
既存メンバーがもう出来上がってるコミュニティに新しい方が入るって、早々ちょっとやりにくいだろうなっていうのは想像しますね。
新しい人が馴染む過程「組織社会化」とは?
宇尾野さんが最初に挙げたキーワードが「組織社会化 ── 新しく組織に加わった人が、その組織の価値観や規範、仕事の進め方を身につけ、メンバーとして適応していく過程を指す経営学・組織論の概念です」です。池原さんにとっては初めて聞く言葉でした。
宇尾野さんの説明では、組織社会化とは新しい人が組織という社会に馴染んでいく過程のことで、オンボーディング ── 新しく入った人が早く職場に適応し、力を発揮できるよう、会社やチームが計画的に支援する取り組みのことですの工程も含まれます。必要なプロセスを踏んでいけば、新しい人が馴染み、適正なチームになっていくという、いくつかの研究をまとめた名称だといいます。
池原さんは、組織社会化は新しく入った本人がやるものなのか、受け入れ側か、それとも人事や経営側かと尋ねました。宇尾野さんの答えは、そのすべてが必要なアプローチだというものです。
新しく入った本人
どういう形で組織に馴染んでいくか
受け入れる当事者
一緒に社会を作る立場としてサポートする
組織を俯瞰する人
全体をメンテナンスする立場でやるべきことを担う
馴染むまでの目安は半年、設計は90日
池原さんは、以前読んだ海外の論文を引きながら、転職を「異世界へのワープ」にたとえます。
ある意味転職って、全く異次元の異世界にワープするようなものだと思うんですよね。なので、そこに馴染むまでには大体半年間はかかるっていうのは一般的だなと思うんです。
宇尾野さんは、オンボーディングやチームづくりのプログラムでは、90日、つまり3か月を時間軸に置くケースが多いと答えます。宇尾野さん自身も過去の会社で3か月間のプログラムを作っていたそうです。
そのプログラムは、すごろく形式のチェックリストでした。最初にやること、次にやることを順に進めてもらい、90日後に目指す状態を共有ゴールとして置き、周りのメンバーもそこに関与していく形だったといいます。
中途がバラバラに入るとき、受け入れはどうする?
池原さんは、新卒のように一斉に入社するなら「よーいどん」で受け入れられるものの、中途入社がバラバラに続くと受け入れ側の負担が大きくなるのではないかと問いかけました。
もう負担高いですよね。
宇尾野さんは、今日も明日も明後日も人が入ってくる状態では、受け入れプログラムがずっと続いてしまうと指摘します。そのため、なるべく全員に月初の1日に入社してもらうなど、受け入れタイミングを揃えることが必要だと話しています。
毎日のようにバラバラに入社し、受け入れプログラムが途切れず続く
月初の1日などに入社をまとめ、受け入れタイミングを揃える
タックマンモデルの「混乱期」は避けられない
池原さんは、チェックリストで具体的に何をすればチームが育つのかと尋ねました。宇尾野さんは、1人の人をどう受け入れるかという組織社会化の側面に加え、チームがどういう流れでできていくかという側面として「タックマンモデル ── 心理学者ブルース・タックマンが提唱した、チームの発達段階のモデルです。形成期・混乱期・統一期・機能期の4段階に、のちに散会期が加えられました」を紹介します。
宇尾野さんは、混乱期は必ず発生するものであり、このモデルをどれだけ早く作り込めるかがチームビルディングでは重要だと話します。
ただ、実際のチームは全員が「せーの」でスタートするわけではありません。宇尾野さんは、タックマンモデルと組織社会化の2つを重ね合わせながら進めることが、流動性の高いチームではとても難しいと指摘しました。
半分ぐらいが新しい社会に馴染んでいる人で、かつ形成期、混乱期をやりながら、その人たち(新メンバー)を受け入れているんで、本当にカオスなんだろうなという感じですね。
チームビルディングのゴールは何か?
池原さんは、チームは生き物であり、同じメンバーでも置かれた環境によって穏やかな時も波乱の時もあると話します。そのうえで、チームビルディングは固定化ではなく、レジリエンス ── 困難や変化に直面しても、しなやかに回復し適応していく力のことです。個人だけでなく組織やチームにも使われますを高めることではないかと考えました。
多少ぶつかってもやっぱり戻っていけるとか、雨降って地固まるじゃないですけれども、そういう状態がなんか理想形なのかなと思うんです。
チームビルディングの最終的なゴールを問われた宇尾野さんは、2つの観点を挙げます。1つは共通の目的、つまりゴールを持つことで、当たり前のようで意外と難しいといいます。
もう1つが、役割の明確化です。ゴールに対してAさん、Bさん、Cさん、Dさんがそれぞれ何を担い、どこまでが責任の範囲かを決めることが、チームをつくるうえで最も大事な要素だと言われているそうです。
宇尾野さんによれば、関係性の話は機能するための必要条件ではあるものの、高い成果を出すうえでは、共通のゴールと役割分担が丁寧にできていることが非常に重要だとされています。
「みんなでボールを拾う」も1つの役割
池原さんは、小さなチームほど役割を決めずに「みんなでボールを拾おう」となりがちだと指摘し、それでもメインの責任は明確なほうがよいのかと尋ねました。
宇尾野さんは、ボールが10個だったのに急に100個来ることもあれば、逆に減ることもあると説明します。そうした状況では、きれいにパキッと分担しようとしても破綻します。
そのため、100個を10人でみんなで分担することがこのチームの役割だと決めるなど、どう動くかをセットアップすることが大事だと宇尾野さんは話しています。
バーベキューは懇親、チームビルディングそのものではない
話は具体的な施策に移り、宇尾野さんはお便りにもあったバーベキューを取り上げます。池原さんは「ちょっと憧れますよね」と応じました。
宇尾野さんは、バーベキューはこのチームにどんな人がいるかを理解するうえでとてもいい施策だと評価します。一方で、役割の明確化やゴールの共有からは離れた施策なので、成果を出すチームビルディングには少し縁遠いと捉えるのがよいといいます。
懇親っていうのと、チームビルディングは別物っていう風に、今ちょっと私は受け取ってるんですけれども、そこのニュアンス合ってますかね。
合ってますね。チームビルディングをするときに懇親をして、誰がいるかっていうことは大事な要素なんですけど、それ自体がチームビルディングをブーストする理由にはならないっていう、そんな捉え方してもらうといいかもしれないですね。
チームにどんな人がいるかを理解できる
共通のゴールと役割の明確化によって成果につなげる
強いチームは「誰が何を知っているか」を分かっている
池原さんから効果のあった施策を問われた宇尾野さんは、施策の前に大事な要素があると話します。それは、困った時にチームの誰に聞けばいいかを全員が分かっていることです。
宇尾野さんは例として、バーベキューの幹事なら誰が一番上手か、営業先の取引先の社長の癖を誰が一番知っているか、といった問いを挙げます。会社の中に落ちている情報に、誰へアクセスすればたどり着けるかが分かっていることが重要だといいます。
そのための施策として宇尾野さんが勧めるのが、お互いのいい仕事を共有し合う場です。ベストプラクティスを他の人が盗む効果もありますが、狙いは「こういう時はこの人を頼ればいい」と分かるようにすることにあります。
共有会では、仕事の内容だけでなく、なぜその仕事をしたいと思ったかという原体験や、自分の強み・弱みまで自己紹介してもらいます。「こんな私が作ったこの仕事です」と話してもらうことで、困った時に聞く相手が見えやすくなるそうです。
池原さんはこれを受けて、チームビルディングはメンバーの貢献や強みが可視化される場をつくることだとも捉えられると話します。「私はこれが苦手、でもあなたはこれが得意」と補い合うことが成果につながるので、それを意識した設計が重要だと述べました。
バーベキューを活かす「私だけが知っている会社の○○」ゲーム
宇尾野さんは、バーベキューと「誰が何を知っているか」の話を組み合わせたアイデアも紹介します。バーベキューのミニゲームとして、「私だけが知っているこの会社の○○」を3つずつカードに書いてもらう方法です。
誰が書いたかわからないカードをテーブルに置き、「これを知っているのは誰?」と名前当てクイズをします。事実と、それを知っている人を紐付ける作業をみんなで楽しむことで、会社のマル秘情報を実は誰が抱えているかが見えてくるといいます。
懇親にもつながりますし、ある種会社のメモリーじゃないですけど、と、その人が紐付くみたいなところですね。
池原さんも、自身が経験したチームビルディングを振り返ります。お互いの強みや感謝しているところをその場で言い合ったことは、とても良かったそうです。
また池原さんは、診断ツールでFFS理論 ── 人の思考や行動の特性を5つの因子で分析する理論です。組織づくりやチーム編成の場面で、メンバーの個性を可視化するツールとして使われていますに基づくタイプを可視化し、「だから自分はこれが強い、これが弱い」と話し合ったことも有効だったと話しています。
振り返りの頻度が高い人は成果も高い
宇尾野さんがもう1つ挙げたのが、プロジェクトや仕事の単位での振り返りです。チームで何が良しとされ、何が違うと思われたかを一度テーブルに出すことは、タックマンモデルの統一期から機能期へ移るうえで重要だといいます。
頻度は、毎週金曜日の夕方に振り返り会をするという形もあれば、3か月で終わるプロジェクトなら月1回にする形もあります。宇尾野さんは、この振り返りの技術がチームビルディングで非常に重要な考え方だとしています。
池原さんは、振り返りはこれだけで1回取り上げたいほど興味があるテーマだと話し、宇尾野さんも同じことを考えていました。
振り返りの頻度が高い人って、売り上げとか生産性が高いっていうデータって実際にあると言われているのと、やっぱり1日の終わりに、その日やった自分の判断とかを振り返るっていうことがパフォーマンスにつながるっていうことはもう明確に出てるので。
池原さんは、振り返りをチーム学習として行えば、新しい人も古い人も関係なく、一緒にパフォーマンスを上げていく共通の儀式になると評価しています。
宇尾野さんは、日報や個人のジャーナリング ── 頭に浮かんだ考えや感情を紙などに書き出していく手法です。感情や思考を整理し、自己理解を深める目的で使われますも振り返りの一種だとしたうえで、それを1人で閉じずにチームや集団で行うことが大事だと話します。
「馴染めない」と言える仕掛けをつくる
宇尾野さんはお便りに立ち返り、新メンバーが馴染めないという状態そのものを共有できる仕掛けをつくることを提案します。共有されれば、周りが助けることでチームも活性化するはずだといいます。
「お前自己解決しろよ」みたいな話ではなく、そういうの(馴染めないこと)もなるべく話せるような流れというか、空気、仕組みみたいなところを作っていただけると、非常によく働くんじゃないかなと感じてますね。
最後に宇尾野さんは、テクニックはあっても、どういうチームにしたいか、どんなゴールを設定するかの有無でチームは大きく変わると、多くのチームを見てきた実感を語ります。
池原さんも、自社でも今回のヒントをもとに、みんなでレジリエンスを高めていくチームビルディングをしたいと話しました。宇尾野さんは、今回のテーマは抽象度を上げれば組織開発の話でもあり、今後はそうした組織単位の話も扱っていきたいとしています。
まとめ
中途入社が続いて馴染めない新メンバーがいるチームに対し、宇尾野さんと池原さんは、組織社会化とタックマンモデルを重ねて考えることを出発点に、共通のゴールと役割の明確化、そして「誰が何を知っているか」を共有する仕掛けを提案しました。
- 転職は異世界へのワープのようなもので、馴染むには半年ほどかかり、オンボーディングは90日を目安に設計するケースが多い
- 中途入社はなるべく月初などに受け入れタイミングを揃え、受け入れ側の負担を抑える
- タックマンモデルの混乱期は必ず起きるもので、チームの核は共通のゴールと役割の明確化にある
- バーベキューは懇親としては有効だが、それだけでは成果を出すチームビルディングにはならない
- いい仕事の共有会や振り返り、「馴染めない」と言える仕組み、ゴールのしつこい発信が有効な打ち手になる






