採用は「選ばれる」ところから始まる
『ファミリーマート』のCMに、レディー・ガガさんが店員として登場したことが話題になりました。
世界的スターを使った求人CMなので、普通に見たら「すごいお金をかけたな」と思われるかもしれません。でも私は、これを採用の仕組みとして見ると、とても学びが多いと思ったんです。
まず結論からお伝えすると、採用で大事なのは働いてくれる方に選ばれることだと考えています。
選ばれなければ、そもそも選ぶことすらできないんですよね。
どこも採用難で人手不足だと思いますが、人が来ないとき、社長や採用担当がやりがちなのは、時給を上げる、手当をつける、求人広告を増やすといった「条件をより良くする」打ち手です。
ただ、条件を良くしても、必ずしも人が来るわけではありません。実はその手前、入り口で止まっているんじゃないかと思うんです。
応募の手前にある「うーん」という摩擦
会社から見ると、求人票を見て、応募して、面接を受けて、出勤する、という流れで考えがちです。
でも私は、入り口とは「働こうと思ってから初日を迎えるまでの道のり」だと思っています。
その途中で「この会社、この仕事で大丈夫かな」と止まっている人が、結構多いんじゃないかなと。
私はこれを、入り口の「摩擦」と呼んでいます。働こうと思っている人の「うーん」という迷いです。
面接が怖い。この髪色やピアスで大丈夫だろうか。初日、知らない人ばっかりだったらどうしよう。
応募しない理由は、シンプルに不安が大きいんじゃないかと思うんです。そして不安はイコール摩擦です。
今はスマホを見れば、自社以外の求人がすぐ上下に並んで、比べて選べる時代です。隣の求人はワンタップで見られます。
だから不安が1つでもあれば、どんなに条件を上げても、人はどんどん隣に行ってしまう訳です。
逆に入り口を大きくしてたくさんの候補者が来てくれれば、こちらも比べて、より良い人を選べるようになります。
商売はお客様に選ばれるから売上が立ちますよね。採用も同じで、マーケティングにかなり近い考え方が必要になってくると思っています。
ファミリーマートは受け皿を先に整えていた
ファミリーマートさんも、人が来ない、来ても辞めてしまう、という課題を抱えていたようです。
そこで掲げたのが「一番働きたいコンビニ」を目指すということでした。
やってきたことを並べると、こんな取り組みがあります。
- 約10年ぶりに制服をリニューアル(Tシャツ型、XSから大きいサイズまで全14サイズ)
- 身だしなみの基準を新しく発表
- 店舗に行かずにできるWeb面接・録画面接の導入
- 応募にギフトがつくキャンペーン
- そして最後に、レディー・ガガさんのCM
制服のサイズも、実は摩擦なんです。「自分の体型で着られる制服はあるのかな」と止まってしまえば、応募はなくなってしまいますから。
身だしなみの基準は、個人的に大きな変化だと思っています。髪色の自由や重ね着などの基準を広げつつ、清潔感や衛生、安全性、いい接客のマナーといった変えないものは残しています。
CMは、出勤してレジを打って、商品を並べて、モップをかける、というお店の日常をライブステージのように見せる内容でした。店内の『ファミマTV』でも2日間ほど流れたようです。
面白いのは、日付で並べるとCMが一番最後の取り組みだったことです。
もし豪華なCMを先に打って応募が集まっても、「髪色は黒に戻してね」「面接は来週の平日のお昼にしてね」となったら、呼び込んだ方は入り口で止まってしまいます。
受け皿を先に整えて、一番大きな呼び込みは最後にする。全体の設計がちゃんとしているなと感じました。
これは完全に私の個人的な読みなんですが、なぜレディー・ガガさんだったのか。彼女のような独創的な方でも受け入れますよ、という多様性のメッセージが、見ている人に一瞬で届くからじゃないかなと思っています。
ただ、この取り組みが成功したかどうかは、まだ見えていません。半年、1年経って応募がどう変わるのか、結果を追っていくのが楽しみです。
自社の採用にも「不安の点検」を
では、これをどう仕組みにするか。私は「不安の点検」から始めるのがいいと思っています。
アルバイトでもパートでも、新卒でも中途でも同じです。応募者の目線で、どこに不安があるかを見て、基準を作り直したり、不安を軽くしたりしていく。
改めて流れで見てみると、求人票を見て「この髪色、この服で大丈夫かな」。応募で「履歴書が面倒」「電話が苦手」。面接で「怖い」「平日の昼しか空いていない」。初出勤で「知らない人ばっかりだったら嫌だな」。
どの段階にも、必ず「うーん」があるんです。この「うーん」を早くなくしていった企業が、これから採用を伸ばしていくんじゃないかなと思っています。
私たちの会社も、本社が群馬県にあります。引っ越して来られる新入社員さんや中途社員さんは、「群馬県でどんな生活になるんだろう」「田舎なのかな」と、きっと「うーん」が起きていると思うんです。
だから、本社のある群馬県太田市がどんな場所なのかを、もっと打ち出していけば、その不安も消せるんじゃないかと。本当に打つ手はたくさんあるなと感じました。
皆さんの会社の採用の入り口にも、「うーん」が残っていないか、ぜひ点検してみると面白いと思います。
最後は少し宣伝になりますが、私は仕組みづくりの経営者コミュニティ『松田幸之助の仕組み化実践会』と、AIをみんなで学んで実装する『AI実践会』を運営しています。仕組みづくりやAIを中小企業に浸透させたい方は、ぜひチェックしてみてください。
それではまた次回お会いしましょう。さようなら。
まとめ
採用は条件を良くする前に、応募者が働こうと思ってから初日を迎えるまでの「うーん」という不安を消すことが大切だと私は考えています。ファミリーマートは受け皿を先に整え、レディー・ガガさんのCMという大きな呼び込みを最後に置いていました。
- 採用は「選ぶ」前に「選ばれる」ことから始まる
- 応募しない理由の多くは不安、つまり入り口の摩擦
- ファミリーマートは制服・身だしなみ・面接方法を先に変え、CMを最後に打った
- 自社でも応募者目線で各段階の「不安の点検」をする





