景品はなくなっても、その日には気づけない
『くら寿司』さんでは、8月21日からちいかわのコラボキャンペーンが始まっていました。本来は9月30日までの予定だったんです。
ところが、景品が出ないという報告が相次ぎ、9月5日ごろにキャンペーンの中止が発表されました。従業員の不正行為が判明したことが理由とされています。
こういうことが起きると、普通は従業員のモラルの問題として見られるんじゃないかと思います。
ただ、少し考えてみてほしいんです。レジのお金が1万円足りなかったら、その日のうちにチェックして原因を突き止めますよね。
毎日レジ金を数えて、記録と突き合わせているからです。
一方で、景品が100個なくなったとしても、その日にわかるかというと、おそらくわからない訳です。
違いは、チェックしているか、していないか。帳簿で管理しなければ、なくなってもわからないんです。
くら寿司さんが実際にどうチェックしていたのか、詳細はわかりません。ただ、私たちがこのチェックをどうしていくかが大切だと思っています。
売ればお金になるのに、誰も数えていない「数えない在庫」
私はこういうものを「数えない在庫」と呼んでいます。
定義は、売ればお金になるのに、誰も数えて突き合わせていないものです。
たとえば、次のようなものがそうです。
- 景品、ノベルティ、試供品
- 商品券、ギフトカード、回数券
商品券のように在庫として数えているところもあるかもしれませんが、数えていなければ、なくなってもわかりません。
実は私たちにもあります。本社に私の本『ヤバい仕組み化』がまだ残っているんですが、何冊あるか、私もパッと答えられないんです。
販売すればお金になるのに数えていないので、誰かが持って帰ってもわからないかもしれません。こういうものは、どこの会社でも1つや2つあるんじゃないかと思います。
チェックを機能させる1つ目は「整頓」
では「数えてくださいね」と言えば解決するかというと、そうはいきません。
本社にある私の本を「毎週数えて報告してね」と言ったとしても、それだけではなかなか動ききれないんです。
チェックの仕組みがあることと、機能していることは全くの別物なんですね。
チェックを機能させる方法は、大きく3つあると思っています。整頓、意思決定、そして罪を作らない仕組みです。
1つ目の整頓について。先日、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)の新刊がおよそ5年ぶりに出るとSNSで知って、近くのコンビニで思わず買ってしまいました。懐かしかったです。
そのこち亀も、全巻持っていてもバラバラに並んでいたら、抜けている巻を探すのはすごく大変ですよね。
でも1巻から順番にきれいに並んでいれば、どこが抜けているか見ればパッとわかります。
整頓されていないと、チェックという行為自体が面倒になってしまうんです。面倒だと後回しになったり、「だいたい何個ぐらい」でざっくり済ませたりしてしまいます。
バックヤードの段ボールの中がぐちゃぐちゃだったら、棚卸しも億劫ですよね。だから、届いた瞬間から数えられるように整頓しておくことが大事なんです。
2つ目は、チェックを意思決定につなげること
2つ目は意思決定です。私がいつも言っている「報告・決定・実施・チェック」という決定サイクルの考え方ですね。
チェックをしても、それを報告してもらい、意思決定につなげなければあまり意味がありません。
たとえば在庫を数えたら、「100個中、残り48個です」と報告してもらう。実数と記録に差異があるかないかも含めてです。
ちいかわの件でも報告の仕組みはきっとあったと思います。そのうえで、たとえばGoogleフォームなどで、全店舗から残りの在庫数や提供した数を上げてもらう。
そうすれば会社全体でどのくらい残っていて、どのペースで減っているかがわかり、企画が早めに終わりそうだといったことも見えてきます。
業務の報告が、経営や事業の視点につながる訳です。店舗数が多くなると難しいところもあるとは思いますが、ここをやりきるかどうかは大事なところだと思います。
3つ目は、従業員を守るための「罪を作らない仕組み」
3つ目が、今日いちばん伝えたいことです。
チェックをすると、社員を疑っているみたいで嫌だという気持ちもあると思います。でも私たちは、罪を作らない仕組みのためにチェックをしています。
私たちも小売業をやっているので、過去にはいわゆる打ち抜きのようなこともありました。これが起きてしまうのは仕組みの問題だと、私たちは考えています。
そこで私たちがやっているのが「バッグチェックの仕組み」です。帰るときに店長やリーダーに自分のバッグを見せて、何も取っていないことを確認してから帰るようにしています。
そのほうがお互い疑われずに済みますし、気持ちよく仕事ができるんじゃないかと思います。
ちいかわのような大きなキャラクターIPがあれば、魔が差すこともあるかもしれません。だからこそ、従業員さんを守ってあげるためにチェックの仕組みを作るんです。
金額の大小ではありません。会社の備品を持って帰ることも不正ですし、ちょっとしたことがもっと大きなことにつながっていくかもしれません。
社内不正が起きてしまったら、社長も寂しいし、チームメンバーも寂しい。何よりお客様にご迷惑をかけてしまいます。
今回のくら寿司さんのニュースは、私たちにとっても罪を作らせない会社組織について改めて考えるきっかけになりました。
皆さんも、罪を作らせないためにどんなチェックの仕組みを作り、それが報告されて決定サイクルが回るようにするか、ぜひ考えてみてください。大切な従業員の皆さんを守る仕組みを、一緒に考えていければと思います。
私は『松田幸之助の仕組み化実践会』と『中小企業経営者のためのAI実践会』という経営者コミュニティを運営していて、両方合わせると会員数は100社近くになっています。興味がある方はぜひチェックしてみてください。
それではまた来週お会いしましょう。さようなら。
まとめ
景品の不正は従業員のモラルだけの問題ではなく、売ればお金になるのに誰も数えていない「数えない在庫」の問題だと私は考えています。チェックを機能させるには、整頓、意思決定へのつながり、そして罪を作らない仕組みの3つが大事です。
- レジ金はすぐ不足に気づけるが、景品は数えていなければ気づけない
- チェックの仕組みがあることと、機能していることは別物
- 整頓して数えやすくし、報告を意思決定につなげる
- バッグチェックのような仕組みは、従業員を疑うためではなく守るためにある





