リスナーからのコメント紹介
番組冒頭では、リスナーからのコメントが2件紹介されました。いずれもXから寄せられたものです。
1つ目は、エピソード73「現場主義は正義か?」への反応です。マジシャンこけしさんが、このエピソードを図解した投稿をしてくれました。
確かにこの回は、話だけ聞くと難しいので、誰か図解してくれると助かるなと個人的に思ってたんです。
図解では、経営を「部分と全体の綱引き」という切り口で整理してくれていたといいます。高宮さんは、その図解がAIで作られたものだろうと推測しました。
リスナーの皆さんも同じような感じでAIを使ってんだなみたいなのを思うと、すごい共感しますね。
2つ目は、エピソード71「Whyの深さとは」への反応で、うにたまさんからのコメントです。OODAループとPDCAサイクルのハイブリッドとして捉えるとしっくりきた、という内容でした。
エピソード71で何を話したか覚えてないんですが。
「Corehourで十分」は間違いだった──ビジネス側でもAIを回すべき
ここから本題です。以前のエピソードで、高宮さんは「ビジネス側がワークフローを構築する程度なら、Claudeは低いプランで十分」といった趣旨の発言をしていました。この回で、その認識を全面的に訂正します。
私めが全く認識を間違っておりましたと。
いやもうビジネス側でもぶりぶり(AIを)回すべきです。
高宮さんは、ここ2、3週間、寝る間も惜しんでAIを回していると語ります。会社のチームプランでも足りず、従量課金の枠まで使っている状況だといいます。
同時並行で3、4個のプロジェクトを回し、5時間ごとの制限と週間制限の両方を使い切ろうとする「貧乏性」から、夜中の3時に起きてしまうこともあると打ち明けました。
(AIに)一旦タスクを投げて置きっぱなしと思っても、途中で「確認があります」とか聞いてくるわけですよ。
高宮さんは、重要な意思決定はAIに勝手に進めさせず、必ず自分に確認するよう指示を出しています。そのため大きな作業を任せるほど枝葉の質問が返ってきて、やめられなくなるといいます。
無限ループでなんか使い続けて、気がつくと朝が明けてるみたいなのがよくあるわけですよ。
AIで何かを作ること自体が楽しすぎて、麻薬のようにAI漬けになっている。高宮さんは自身の状態をそう表現しました。
上場企業リサーチのスキルを作る──先行投資と「複利」の実感
高宮さんがAIで作っているのは、企業リサーチ用のスキルです。上場企業と未上場企業でプロジェクトを分けて開発を進めていると話します。
上場企業とかは、EDINETのAPIをつないで「APIを叩け」とか。1企業あたり2万字ぐらいのレポートができて。
作ったレポートは、あとで横断的に検索・分析できるようNotionのデータベースに格納しています。最初はNotionをMCPで繋いでいましたが、文字化けやセクションの抜け落ちといった品質の問題が起きたため、APIで繋ぐ方式に切り替えたといいます。
データソースの選定にも試行錯誤がありました。Yahoo!ファイナンスから財務・株価情報を引っ張ると、株式数のずれで時価総額が出せないといった問題が起きたため、最終的にはAPIをメインにして足りない部分を補完する形に落ち着きました。
さらに4社ほどで実験的に回す中で、業界のKSF(重要成功要因)の項目が足りない、PERとPSRの推移だけでなくEBITDAマルチプルも必要、といった課題を1つずつ潰していったといいます。
1社を調べるだけなら、自分でやったほうが早い。それでも高宮さんが開発にこだわるのは、一度スキルができてしまえば、あとは対象企業を次々に回して蓄積できるからです。
一旦(スキルが)できちゃったら、ブリブリブリブリ回しだして、どんどん蓄積していくわけですよ。
上場企業のスキルができたら、未上場企業でも同様の仕組みを作ります。未上場は情報量が少ないため、経営陣のキーマンのソーシャル発言を時系列で整理し、表に出ていない戦略を分析するといった、その領域ならではの工夫を加えているといいます。
高宮さんはもともと「AIをちゃんと触らないと出遅れるおじさんになる」という危機感から始めたと振り返ります。それがやるほどに楽しくなり、社数が増えるほど横断分析も積み上げられるようになったといいます。
ちょっとした出遅れが、時間が先に行けば行くほど、累乗どころか累乗の累乗ぐらいで効いてくる感覚があって。
この積み上がりの構造を、高宮さんは図解のように整理しています。
先行投資
1つのリサーチスキルを開発する。ここは時間がかかる
量産
対象企業を次々に回し、レポートを蓄積する
横断分析
蓄積を土台に、領域内での横串分析や比較ができるようになる
さらなる積み上げ
その分析をベースに、より高度なスキルを作る
業務・ワークフロー・ビジネスプロセスの置き換え
高宮さんは、AIによる置き換えを段階で整理します。単純作業が「業務」だとすると、そこに示唆まで加わったものが「ワークフロー」だといいます。
PERとPSRとEBITDAマルチプルを引っ張ってきて、その推移をまとめて、株価の評価として何がどうなった時に高くなってるの、みたいなのをやると、示唆まで出てワークフローになるわけです。
究極的には「どのセクターのどの会社が買いか」という候補出しまで到達し、ビジネスプロセス全体の置き換えに近づいていく。そうなると周囲の工程も次々に置き換わり、AI駆動が加速するといいます。
一方で高宮さんは、置き換えられない領域も明確に線引きします。どんなアウトプットが必要で、どんなプロセスでそれを取ってくるのか、という全体設計は人間の役割だと語りました。
ただし、ワークフローの自動化に集中するあまり、副作用も感じているといいます。
(AIの)アウトプットを見て自分で考えて、自分にインサイトが溜まっていくみたいなところがどんどん疎かになっていくのも感じていて。
AIによる加速というブーストは欲しい。しかし、人がAIに振り回されて焼き切れないようにもしたい。高宮さんは、そのバランスの取り方に悩んでいると打ち明けました。
松浦さんの「AIが書いてます」──使いこなしと、自分だけの蓄積
長谷川さんは、直近で話題になった事例として、avexの松浦さんのnoteを挙げます。実はAIが書いていた、という内容の記事群でした。
「AIに書かせたら前より休めなくなった」っていうnoteなんですけど、今高宮さんが言ったことと、かなり近いことを言ってて。
精度を上げるほど自分にも確認が来て、かえって忙しくなる。高宮さんの実感と同じ構造が、そこにも描かれていたといいます。
一方で長谷川さんは、そのnoteが面白いのは、松浦さんの人生の蓄積があってこそだと指摘します。AIの使いこなしと、自分にしかないストーリーや経験。その両輪があって唯一無二のコンテンツになっている、という見立てです。
長谷川さん自身は、社会の最先端とは逆行して、むしろAIを使わなくなってきていると語ります。人事労務や利用者管理のSaaSを自分の会社向けにClaude Codeでリプレースする作業が一通り終わり、無理に作るものがなくなったといいます。
AI自体が楽しいからってところまで、僕はのめり込まなかったんで。
人間そのものがボトルネックになる
高宮さんは、自身を「効率厨」「無駄が大嫌い」と表現しつつ、AIを使うほどに感じ始めた世界観を語ります。人が組織でやっている営みも、結局はインプット・プロセス・アウトプットに分解できるのではないか、というものです。
逆に人も、システムとしてインプットする一要素なんじゃないかなと思ってきていて。
松浦さんの例で言えば、人生の断片をインプットすれば、それを紡いでストーリーに仕立て、記事にするところまでAIがやってくれる。プロセスとアウトプットのスピードが凄まじいため、どれだけインプットできるかが律速になっているといいます。
だからこそ、指示の入力方法も変わると高宮さんは言います。コンテキストや厳密な指示は長文になりがちで、タイプよりも音声で入れたほうが速いと感じているそうです。
さらに深刻なのは、アウトプットが出るスピードに人間の咀嚼が追いつかない点です。レポートが一日10個も作れる一方、それを読み込んで考える人間側が追いつかない、と高宮さんは語ります。
加えて、そもそも人生の含蓄が蓄積していない人は、ゼロからどうAIを使えばいいのか、という問いも残ります。
インプットがない時に、プロセスが回んないじゃんみたいなところの鶏と卵。
一度先行されると追いつきづらい。この複利の構造ゆえに、高宮さんは強い焦燥感を覚えていると明かしました。
自分も複利サイクルを回さないと、すぐに賞味期限切れになって取り残される。やばい。
「誰が言うのか」の権威性も、いずれAIに移る
AIが人間を代替する未来で、何が高宮さんという存在を担保するのか。長谷川さんは、これまでのトラックレコードやブランドではないかと問いかけます。
同じことを言うにしても、誰が言うのか、結構大事みたいな。
この「誰が言うのか」という価値は、AI時代にいったん加速する。しかし高宮さんは、それもどこかで低減すると見ています。根拠として、がんの画像診断の例を挙げました。
画像診断はすでに人間より精度が高い場面がありますが、患者は「がんです、5年生存率は30%です」とドライに告知されたくない。だから患者との接点は医師が担い、AIは補助にとどまっている、という現状です。
ただしこれは、人間の受容性が追いついていないだけだと高宮さんは言います。幼い頃からAIにドライな評価をされ慣れた世代が大人になれば、状況は変わるかもしれません。
AIが言うなら、そうなんだよな、しょうがないよな、みたいな、受け入れちゃう可能性もあって。
信頼性や権威性は関係性から生まれる。AIとの関係が長くなれば、本来なら人に付くはずの権威性がAIに移るのではないか。高宮さんはそう予測します。
本も著者もいらなくなる?──代替の連鎖
話は出版に及びます。長谷川さんは、ライターの作業がAIに置き換わり、次に編集者、そして著者自身がAIで本を書く段階へと進むのではないかと述べます。
編集者がClaudeを使って本を書くのが段階としてあって、そのさらに次が、著者がClaudeを使って自分でやるっていう。
これに対し高宮さんは、さらにその先を示します。最後は著者すらいなくなる、というものです。
「青木さんっぽい本を書いて」って言ったら、多分できちゃうんですよ。
高宮さんは、自分らしいアドバイスを返すボットならもう作れると具体例を挙げます。過去のQAの蓄積と、言い回しや気遣いの芸風を学習させ、質問にぶつければ「自分っぽい回答」が返ってくる、というものです。
長谷川さんは、松浦さんのような人生譚は物語性が重要だと前置きしつつ、企業の戦略論のような実用書ではどうかと問います。AIが書いた本と、高宮さんというバックグラウンドがセットの本。長谷川さんは後者のほうがいいと感じると述べました。
今はね、それは多分、オールドスクール、オールドタイプだからのような気がしますけどね。
さらに高宮さんは、本というパッケージ自体が不要になる可能性まで踏み込みます。1段上の抽象度で、スタートアップの戦略を考えるAIが出てくれば、人は本を読まずに戦略を立てられてしまうからです。
人側は実は「企業の戦略論」を読んでなくても、そのガイドに従って戦略が立てられちゃうかもしれない。
長谷川さんも、本を作る立場からこれに同意します。数年かかっていたものが一日でできる時代には、本というパッケージでは情報が古く、読者向けに整理もされていない、と語りました。
AI同士が発展する未来と、人間に残るもの
高宮さんは、本の役割がなくなるのと同様に、人の役割もなくなるのではという危機感を口にします。長谷川さんは、LLMの根っこは活字であり、その源は人間だと指摘しました。
AIたち同士で勝手に発展していくみたいな、ディストピア感もあるんじゃないか。結構な確率であるんじゃないかなと思ってますけど。
そんな未来が既定路線なら、あがいても無駄ではないか。長谷川さんの問いに、高宮さんは2つの応じ方を示しました。1つは、あがく中でしか賞味期限の長いものは見つからない、という考えです。
もう1つは、ベットした領域が一瞬で残れなくなり、ピボットが必要になったとき、それをサポートしてくれるのもまたAIだろう、という見方でした。
長谷川さんは、自身がライター業から福祉業界に来た背景に触れます。10人でトランプを囲むポーカーや、人が人を支援する福祉といった、AIがまだ介在しない領域への感覚がむしろ強まっていると語りました。
高宮さんも、そうした領域は相対的に代替が遅いと認めつつ、油断すべきではないと釘を刺します。浸食のスピードは、テックのサイクルより人間側の受容のサイクルに制約される可能性もあるといいます。
永遠にそこ(人との触れ合い)が残り続けると油断しちゃまずいんじゃないか、そういう危機感を感じます。
バーンアウトしない付き合い方──切り上げる勇気
高宮さんは、大局的な10年単位の焦りと、足元で夜中3時に起きてしまう焦りが結びついていると分析します。そのうえで、こうした働き方はサステイナブルではないと自覚しているといいます。
あえてデトックスしないと、自分がハイのまんま高速回転しすぎて焼け切れちゃう感覚もあるんですよね。
高宮さんはその感覚を「バーンアウトというより、クロックアップして無理に回している感覚」と表現しました。
一方の長谷川さんは、対照的な方向に進んでいます。AIはほどほどに使い、むしろ友達やコミュニティを作りたいと語りました。
僕は結婚もしてないし、家族もいないんで、なんか普通にそういう(人との繋がりの)方が重要なのかなみたいに思ってますね。
高宮さんは、家族との旅行中のエピソードも打ち明けます。子どもの競技金魚すくいの全国大会で奈良の大和郡山を訪れた夜も、みなが寝静まった後にAIを回していたといいます。
明日もあるからここでやめないと永遠に続くっつっても、もったいなくても蓋を閉じて、再開ポイントを作って止めてパタッと閉じるんですよね。
AIには麻薬のような魔力がある。高宮さんはそう繰り返しました。
時間持ちという発想と、リスナーへの問いかけ
2人は、周囲の起業家やIT業界の人には同じ焦燥感を持つ人が多いと感じつつ、それが狭い世界の話かもしれないとも振り返ります。世の中の平均的な人々がAIとどう付き合っているのか、と問いかけました。
高宮さんは、Yahooの元社長・会長の川邊さんが掲げる考え方を紹介します。AIソロプレナーとして、一人とAIですべてを回す働き方です。
川邊さんは「お金持ちから時間持ちになる」と掲げているといいます。時間持ちとは、AIのJカーブを超える先行投資を人より多くできる状態のことだと高宮さんは説明しました。
優秀な部下に指示を出して打ち合わせしてると、目先の仕事は回るんだけど、AIにアップフロントに先行投資する時間が取れなかった、とかも言ってたんですよね。
目先の仕事をこなすだけで一日が終わり、先行投資の時間が取れない。高宮さんは、この指摘に強く共感したと語りました。
めっちゃわかるって思って。
最後に長谷川さんは、結局はバランスの問題であり、各々がバーンアウトしない範囲でやるしかないとまとめます。ただし、この波がどう着地するかはまだ想像がつかない、とも付け加えました。
同じ焦燥感を感じている人はわかると共感して慰めてください。やりすぎない方がいいという人も、そう言って僕を慰めてください。いずれにせよ、僕を慰めてください。
まとめ
AIで作業が加速するほど、確認や咀嚼の負荷は人間側に集中し、かえって忙しくなる。この回は、複利で効く先行投資の魅力と、燃え尽きないための「切り上げる勇気」という、相反する2つのテーマを行き来する対話でした。
- 一度スキルを作れば量産と横断分析が積み上がり、AIの効果は複利で効いてくる。ちょっとした出遅れが後になるほど大きく効く
- プロセスとアウトプットのスピードが上がるほど、インプットと咀嚼をする人間そのものがボトルネックになる
- 「誰が言うのか」という権威性も、AIとの関係が長くなればAIに移り、本や著者の役割すら揺らぐ可能性がある
- 高宮さんは夜中3時に起きてAIを回すほどの焦燥感を抱えつつ、焼き切れないための切り上げる勇気が要ると自覚している
- 長谷川さんは逆にAIをほどほどにし、ポーカーや福祉のような人との触れ合いの価値がむしろ増していると感じている






