一度も途切れないのはなぜか、から始まった問い
冒頭は、長谷川さんが手がける大阪の純喫茶とゴーストレストランの話から始まります。ゴーストレストラン ── 実店舗の客席を持たず、デリバリー専門で複数の業態を展開する飲食の形態。既存店の厨房を使って別ブランドの料理を出せる。
そこから本題として、この番組がいつから続いているのかを二人で振り返ります。就職の少し前、5月ごろのスタートで、まだ1年半は経っていない計算です。
長谷川さんが注目したのは、その継続力でした。個人の習慣は崩れてきているのに、番組だけは途切れていないと言います。
一方、僕が元々持ってた習慣が、大阪に来て新しい仕事や忙しさにかまけていろいろ破綻してきてるものもあるんですよ。ブクブク太ってきたりとか。
でも、ぼく戦は続いてると。どうやって習慣って続けられるんだろうっていう話をしたくて。
この個人の習慣と番組の継続の差が、この回全体を貫く問いになります。
二人だけでは無理だった?仲間と締め切りの力
長谷川さんがまず立てた仮説は、高宮さんと二人だけだったら続かなかったというものです。
番組にはプロデューサーやCTOがいて、基本4人体制で収録している点を挙げます。スピーカー以外のチームメンバーの存在が大きいという見立てです。
つまり、毎回の収録日がかっちり決まっていて、やらざるを得ない状況になっている、と長谷川さんは整理します。
僕と長谷川さんだったら、「ごめん、ちょっと疲れた、今週パス」とか言っちゃいそうですよね。
実際に、企業の戦略論の執筆初期には寝坊で編集者に怒られたエピソードもあり、仲間へのドタキャンが申し訳ないというプレッシャーが継続を支えていると二人は認めます。
迷いを断ち切る「言い切り」が続ける力になる
高宮さんが続ける力の源泉として挙げたのが、プロデューサーの存在です。
構成や内容に迷ったとき、正解かどうか以上に「この道を進めばいい」と言い切ってくれること自体が、続ける支えになると話します。
高宮さんはこれを番組の戦略論に引きつけて、ビジョンを差し出し、戦略をきちんと提示すれば、人はそこに乗りやすいという話につなげます。
続けること自体は苦じゃない、では何がモチベーションか
高宮さん自身は、いったんサイクルが回り始めると続けること自体は苦にならないタイプだと語ります。
外資系コンサルに6年、その後グロービス・キャピタル・パートナーズに18年という経歴を挙げ、慣性の法則が働く一途なタイプだと自己分析します。
では何がモチベーションになるのか。高宮さんは、小さくてもいいから目標を設定し、達成していくサイクルだと答えます。
番組も、当初は1年以上鳴かず飛ばずと言われていたのが、意外と初速から立ち上がったことが励みになったと振り返ります。
リスナーの方が聞いてくれていて喜んでくれる、反応してくれるみたいなのはめっちゃ励みになります。
高宮さんはこの感覚を、VCという仕事とも重ねます。応援したい起業家に投資し、目の前の人に喜んでもらえることが励みになる、と話します。
フィードバックの速さがモチベーションを生む
話題は、なぜポッドキャストという手法が続けやすいのかに移ります。高宮さんは、本や記事は自分にとって遅筆だと打ち明けます。
本とか記事は、リアルタイムで反応が得られなくて、いろんなケースを妄想的に想定しすぎて筆が止まるみたいなところがあって。
一方でポッドキャストや登壇は、その場の勢いで話せて、反応も返ってくると言います。なんらかのフィードバックの仕組みがあることが、モチベーションにつながるという整理です。
長谷川さんは、より具体的な工夫にも触れます。収録が終わった瞬間、プロデューサーが必ず「めっちゃ良かったですよ」と言ってくれる点です。
アイドルの写真集を撮るカメラマンみたいに。「いいねいいね、めっちゃいいね」って。
これはスピーカーを安心させ、乗せるためのプロデューサーの役割ではないか、と二人は笑いながら話します。
バックグラウンドの違うチームが補い合う
前回の組織論を引き継ぐ形で、長谷川さんは4人チームが続く要因として、メンバーのバックグラウンドの違いを挙げます。
CTOはテクノロジーが強く、タイトル生成や収録の仕組み、ショート動画などをどんどん開発してくれると言います。
プロデューサーはポッドキャストに詳しく指揮力もあり、高宮さんが戦略を教える役、長谷川さんが聞き役・投げ込み役という役割分担が、緩やかな補完になっていると整理します。
ただし高宮さんは、足りない点も率直に認めます。マネタイズができておらず、誰も金銭では釣れていないという現実です。
楽しい間は参加してくれるが、切羽詰まると離脱が起きるかもしれない、という危機感も口にします。一方で長谷川さんは、直接でなくても間接的な恩恵で全員がつながっていると考えていると話します。
十代はできた習慣が、なぜ今は続かないのか
ここから、番組の話を長谷川さん個人の習慣論へ広げます。十代の頃は、英語やダイエットなど、やろうと思った習慣を地でこなせていたと言います。
ところが最近は明確にできなくなってきた。年齢か、忙しさか、一人でやっているからか、と長谷川さんは自問します。
高宮さんの答えは、ちゃんと自分の欲に結びつけてあげることです。十代はモテたいから痩せようとするが、今はそのインセンティブがゼロになったと率直に語ります。
モテなくていい、むしろモテちゃダメと思うから痩せるインセンティブゼロなんですよ。
「道」ではなく「道楽」だと気づいた瞬間
では番組を続けるモチベーションは何か。高宮さんは掘り下げていく中で、自分は何かを上手くなりたいタイプだと気づきます。
釣りでも、大きな魚や数よりも、釣りそのものが上手くなりたい。番組も、やるからには上手くなりたいという感覚だと言います。
樋口Pの指示とか、番組が上手くなっていくのがすごく気持ちいい。僕は道を極めるのが好きなんですよ。
しかし長谷川さんが「Howを磨くのはAIが得意な領域では」と返すと、高宮さんは話しながら自分で腑に落ちていきます。
道じゃなくて道楽なんですよ。究極の道楽って、無駄なことに時間を費やすことだと僕は思ってて。
高宮さんは、木のルアーでいかに魚を釣るかのように、一見無駄なことに情熱を注ぐことこそ道楽だと語ります。マネタイズできない番組が上手くなり、レベルアップしていく感覚が気持ちいいのだ、という整理です。
活字に萎え、声でアウトプットする
長谷川さんにとってのモチベーションも掘り下げられます。相談や思索を言葉にすること自体が一つのアウトプットになっている、という仮説です。
以前はXでよく発信していたのが最近はぱったり止まり、今アウトプットしているのはほぼ番組だけだと言います。
その背景として、長谷川さんは今の自分が活字に萎えていると打ち明けます。自分や他人の文章にAIが透けて見える中で、声はまだ人間がやっている領域だと感じているのです。
AIが透けて見える中で、こういうポッドキャストとか声って、今のところ人間がやってるわけじゃないですか。
高宮さんも、揚げ足を取られやすいソーシャルより、心理的安全性のある番組の方が思索を垂れ流しやすいと同意します。
欲かコストの低さ、続くのはどちらか
高宮さんは、話すことは自分にとってコストが低いとも言います。人と話すのが好きで、良くも悪くも考えずに勢いで話せるからです。
ここまでを長谷川さんがまとめます。欲に根ざしているか、コストが低くて楽しいことしか習慣にならないのではないか、という整理です。
高宮さんはさらに、習慣化そのものが持つ効果を付け加えます。習慣化するとコストに無自覚になり、コストが下がったように錯覚する、という見立てです。
毎朝起きるなんて冷静に考えると超めんどくさいのに、当たり前のように起きてるから普通だよみたいに感じる。
モテたい、成長したいなど、自分の欲と結びついているとモチベーションが生まれる
話す・楽しいなど、続けるための負担が小さいと自然に続けられる
自信のキャップと、循環参照を受け入れる
十代はできたのに今できない理由を、長谷川さんはもう一歩踏み込んで語ります。年を重ね、自分の能力の位置を相対的に把握してしまったことが大きいと言います。
自分の位置づけを勝手に知ってると思っちゃってるところに来ちゃった。十代の時はどこまでも行けるみたいな根拠ない自信があったんですけど。
高宮さんはこれを、Why・Whatと手段の関係として捉え直します。習慣化と言うと手段の目的化に見えるが、達成意欲を満たすことが自己成長というWhyにつながっている、と整理します。
そこには循環参照があるが、「意味ないじゃん」と切り捨てずに自分を持ち込むこと自体が、一種の自己催眠であり続けるコツだと語ります。
サークルか経営か、ゆるさと数値目標の間で
長谷川さんは、もし報酬が分配されたら、逆にやらされ感が出て楽しさが失われる可能性すらあると言います。
ギャラをもらってたら、逆にやらされ感とか仕事感が出てきて、楽しさが喪失される可能性すらある。
高宮さんは、人が集まれば組織になり、継続の仕組みを整えるのが企業だと展開します。サークル活動でさえ経営システムのように考えた方がいいのでは、と思いつつ、それは長谷川さんのやらされ感の話と矛盾すると気づきます。
この葛藤を、二人は部活の全国優勝を目指す例で表現します。高い目標と、楽しくやりたい気持ちのさじ加減の問題だ、というわけです。
高宮さんは達成感を求めてスモールゴールを数値で置きたくなるが、プロデューサーに「まだ数字を追う段階じゃない」とたしなめられると打ち明けます。長谷川さんは、ゆるく伸ばしていきたいという中間の立場を示します。
最後は、ビジョン一体化のための経営合宿という冗談で締めくくり、いつかオフ会ができたらいい、という着地になりました。
まとめ
一度も途切れない番組を実例に、習慣が続く条件を探った回です。結論は、仲間と締め切り、フィードバックの速さ、そして欲やコストの低さといった要素が重なることが継続を支えている、というものでした。
- 二人だけなら休んでしまうところを、チームと決まった収録日が続ける力になっている
- 迷いを断ち切る「言い切り」と、収録直後の即フィードバックがモチベーションを生む
- 続く習慣は、自分の欲に根ざしているか、コストが低くて楽しいことに絞られやすい
- 十代にできた習慣が続かない背景には、自分の位置を見切ってしまう自信のキャップがある
- 報酬があると逆にやらされ感が出ることもあり、ゆるいサークル性と数値目標の間でさじ加減が問われる



