多くの人の手に渡るという嬉しさ
正直に言うと、増刷の知らせは本当に嬉しいものです。
語学書も教材もアプリもサービスも、これだけたくさんあるご時世に、13年経っても刷られ続けているというのは、ありがたいことだなと思います。
私はあくまで訳や語句解説を担当しているだけで、メインはバーダマン先生なのですが、勝手にお礼をさせてください。
単語一語ではなく「フレーズ」で覚えるということ
そもそも『毎日の英単語』って何?という方もいると思うので、少しだけ。
この本には751番まで、日常の英語でよく使われるフレーズが紹介されています。日常英語の9割をカバーしているという、かなり効率のいい作りになっているんです。
私たちは単語を勉強するとき、「この単語はこういう意味だ」とインプットしていきますよね。それはもちろん大事なことです。
でも、いざアウトプットしようと思ったとき、単語一語だけで話すことって、基本ないはずなんです。何かしら組み合わされている。
使い方としては、フレーズを見て目を離して言ってみる。あるいは音声だけを聞いて、文字に頼らずに言えるか試してみる。
物足りない人は、主語を足したりして自分ごとに置き換えてあげると、より実践的になります。
ただ、ここは前にも話したことなのですが、最初から正確な英文を作ろうとすると学習が進まないんです。
まずはフレーズをどんどん入れて、スムーズに言えるようにする。慣れてきたら主語をつけたり形を変えたりして、自分の形に近づけていく。この段階を踏むのがいいと思います。
私のお気に入りのフレーズ
751個のフレーズの中にも、自分がよく使う、まあまあ使う、といったグレードがやっぱりあります。
その中で私が気に入っているものを、いくつか紹介させてください。
仕事のカテゴリーにある「量より質」。これは Quality over Quantity と言います。「より」の部分を over で表すんですね。
病気・医療のカテゴリーにある「健康に気を使わない」。これは Neglect my health。neglect は「怠る」と覚えがちですが、日本語では「怠る」ってあまり使わない。「気を使わない」という感覚で health と結びつくと知っておくと、アウトプットしやすくなります。
基本動詞 play の項目にある「事の成り行きを見守る」。これは See how things play out。play out は「展開する」とよく訳されますが、ニュースや映画でもよく出てくるんです。
性格・態度のカテゴリーにある「大きな望みを持ってよく働いている」。これは Be ambitious and hardworking。ambitious も hardworking も知っている単語ですが、知っている単語の組み合わせというのが、この単語帳の最大のメリットだと思っています。
最後に、家族・友人の項目にある「友人関係を深める」。これは Cultivate friendly relationships。cultivate は「耕す」と覚える人が多いと思います。友人関係を深めるって、関係を耕してどんどん良くしていく、まさにそういうことですよね。
この3語、それぞれ知っていても、組み合わさるとなかなかとっさには出てこない。でも「友人関係を深める」なんて、日本語ではスラっと言えるじゃないですか。
日本語でスラっと言えるものは、英語でもスラっと言えるようにしたい。そう思いながら、私は日々この本を使っているんです。
増刷しているから売れている、とは限らない話
ここからは少しマニアックな話をさせてください。
「増刷しました」というニュースを見ると、「売れているんだ、いい本なんだ」と思いますよね。私も今日そういう知らせをお伝えしているわけですから。
でも、増刷というのは、実は出版社のさじ加減でできてしまう部分があるんです。
最初に刷る部数は本によって違います。仮に5000部刷って、それがはけて増刷したというのと、2万部刷って増刷したというのとでは、全然規模が違いますよね。
増刷する分の部数も、5000部なくなったから1000部刷るところもあれば、2万部なくなって2万5000部刷るところもある。
だから「また重版です」という言い方だけを使っているのを見ると、こういうことを知っている人間からすると、少し萎えてしまうんです。「何万部か言ってくれよ」と。
ちなみにこの本は30刷まできて、おそらく10万部はいっていると思います。正確な数字は把握していないので言えないのですが、10万部から15万部の間くらいでしょうか。
普通の本で10万部というのは、実はすごいことなんです。語学書を長く手掛けてきましたが、10万部いっている本は片手で数えるくらいしかありません。
もちろん、私自身も正確な数字を言えないので「お前も同じじゃないか」と思われるかもしれません。ただ、知らない人を騙すようで嫌だなという気持ちがあったので、共有しておきたかったんです。
反応があるということのすごさ
とはいえ、増刷しているということは、当然反応があるということでもあります。
これは本当にすごいことなんです。私、戦略特急というTOEICの本を出しましたが、あれは一度も増刷していませんから。悲しいかな、反応がなかったということなんですよね。
語学書に詳しくなっていくと、こういう裏側も見えて、だんだん見る目が肥えてくると思います。
ただ、変にマニアックになって「じゃあお前の英語力はどうなんだ」となってもよくないですし、批判家みたいになるのも違う。そのあたりのバランスは、お互い気をつけていければなと思います。
まとめ
一番言いたかったのは「増刷してくださってありがとうございます」ということに尽きます。皆さんのおかげです。近々、この本を使ってライブ配信をしながら一緒に勉強できたらと思っているので、よかったら本を用意してお待ちください。
- 『毎日の英単語』は、単語一語ではなくフレーズで覚えることを狙った単語帳
- 最初はフレーズをスムーズに言えるようにし、慣れてから主語や形を足して自分ごとに近づけるのがおすすめ
- 増刷は必ずしも売れ行きを正確に表すわけではなく、部数を知ると見る目が変わる
- 一度も増刷しない本もある中で、反応があること自体がありがたいことだと感じている



